そういえば自分の始めの…というより犬走夜桜になる前はペンネームが夜桜と通していたのを思い出しました。さらに夜桜よりも前にはハーメルンの笛吹きという名前を使ってました。このサイトと何か縁があったのかはたまた偶然なのか、っと何を話してるんだ。
次回は久し振りにまた風見幽香を描こうと思ってます。
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ではではどうぞ。
「ッ危ねぇ!」
椛を抱き締めたまま橙矢は横に跳んだ。
すぐ真後ろに何かが落下した音が響く。それと同時に煙幕が橙矢の視界を覆う。
「一体何が……!紫さん!あんたの仕業か!?」
椛を放して刀を抜きながら背後にいる紫に叫ぶ。しかし当の紫は上空を見続けたまま何も反応しなかった。
「……………―――――」
何か呟いたような気がしたが声がくぐもってよく聞こえなかった。
「おい!紫さん!聞いてるのか!?」
「――――ッ!な、何かしら東雲さん」
「これもあんたの仕業かって聞いているんだ!!」
「断じて違うわ」
「…………東雲?そこにいるの?」
不意に煙幕の中から弱々しい声が聞こえた。
聞き覚えのある声に橙矢は刀をその場に落として煙幕の中に入っていく。
そこには要石があり、その上では緋想の剣を携えた天人が倒れていた。
天人は比那名居天子だった。その背後にはしかし前回会った時のような活発さは無く、身体中に傷を負っている。
「………天子!?どうしたんだよそれ!?」
「東雲………。あぁ、良かったわ………」
慌てて要石に乗って天子を抱き起こす。
「ッおい!大丈夫か!?」
「……………………………」
既に天子は橙矢に凭れ掛かりながら気絶していた。
「………紫さん」
「えぇ分かってるわ」
紫がスキマを展開するとその中へと入っていく。
ちらとスキマの中を覗くと雲が広がっていた。紫が天界へと行った事を確認すると椛に視線を戻す。
「悪い椛。さっきの事はまた今度にしてくれるか?」
「うぅ…………はい」
何か言いたげな椛を隣を通って家の中へ天子を運んでいく。
「ったく……何があったんだ?というか天界から落ちてきた………」
(いや、それよりも逃げてきた、って言った方が自然か……)
一先ず天子を横にさせた。その傍らに座り込むと頬に手をついた。
「…………橙矢さん?お邪魔してもよろしいですか……?」
戸から顔を覗かせた椛が小声で聞いてきたので手招きだけで答える。
「失礼します……」
「ん……」
椛が入ってくると同時に天子が目を開けた。
「ん、起きたのか」
「あれ東雲………どうしてあんたがここに…………ッぅ」
身体を起こすと痛みが生じて顔を歪めた。その様子を見てか橙矢がやんわりと再び寝かせた。
「まだ寝てろ。お前に何があったかは後で聞くとして……大丈夫か?何処が痛む?」
「ぜ、全身………」
「………暫くは大人しくしておいた方がいいな。おい椛。悪いが里に行って医療品買ってきてくれ」
まだ残っている金額全てを椛に押し付けて家の外に押し出す。
「金があるだけ買ってきてくれ。なるべく迅速に頼む」
「え、あ、橙矢さ――――」
「早く」
「………分かりました」
冷たい瞳で見詰めると椛は少し顔を強張らせて足早に駆けていった。
「…………さて」
踵を返して天子の傍らに移動する。
「まぁ二人になれたんだ。何があったか教えてくれるか?」
「………どうしてここにあんたがいるのよ」
「ここが俺の家だからだ。それより質問に答えてくれるか」
「………あんたに話してなんか私に得があるのかしら?」
そう言う天子の頭を軽く小突いた。
「馬鹿、お前があそこまでやられてる事なんざ殆ど無いだろ。それにお前は空から来た。つまり天界から来た。けど天界は比較的平和なところだと聞くが……。だから何かあったとしか考えられないんだよ」
全てを見通すように視線で天子を貫く。
「それにお前は女の子なんだからな。放っておく訳ないだろ」
「お、女の子……!?」
天子が驚いた表情で言葉を連呼した。
「他に天から落ちてきた女の子が誰がいるんだよ」
「え……それはつまりあんたは私の事を……その……女の子として見てたの?」
橙矢を見て少し頬を朱に染めていた。
「は?じゃあ女の子じゃないならなんだよ?お前男なのか?」
「………………………」
呆れて言葉が出なかった。
「私の何処を見て男という言葉が出たの?」
「いやだって女の子として見てたの?→つまり男としては見てくれない→私が男だということに気付いてない……じゃないのか?」
「断じて違う。貴方の連想力に逆に感心するわ」
「………で、何があったんだ」
自ら話を逸らしたくせに橙矢は無理矢理戻した。
「結局そこに行き着くの?」
「当たり前だ。そのためにお前を保護したと言っても過言ではない」
「………呆れた」
「どうぞどうぞ勝手に呆れてくれ」
「………あんたに舌戦で勝てる気しないわ」
「じゃあ勝者に包み隠さず話せ」
「あんたもくどいわねー。……分かったわ、話してやろうじゃない」
観念したようにため息をつくと天子は話し始めた。
…………私、比那名居天子は今信じられない光景を目にしていた。
破壊神シヴァと名乗る男が幻想郷の神々の頂点である龍神を軽々と殺したからだ。
いや、詳しく言うならばシヴァが放った私のスペルの偽式を龍神が跳ね返したが、その跳ね返した事で力尽きたのか龍神は消えていったのだ。
「う……そ………」
さっきまで龍神が倒れていたところの傍らには竜宮の使いである永江衣玖が龍神の名を必死に呼んでいた。だが死んだ者が生き返るような奇跡は起きない。仕方無い。それが現実なのだ。
「龍神………?冗談よね………」
その時龍神の間が、というか天界が揺れた。
「ッ!?何が……!」
次いでそこに天人が一人入ってきた。
「龍神様!今シヴァと名乗る男が……!」
天人は龍神の姿が無いことを確認すると衣玖に駆け寄る。
「永江様!龍神様は何処に――――」
「…………死んだわよ」
自然と私の口がそう語っていた。
「ッ総領娘様……?」
「な……天人くずれのお前が何故ここにいる!」
「あんた、龍神がどうなったか知りたいんでしょう?だったら死んだわ。そのシヴァという奴にね」
「お前!戯れ言を……!」
「………………」
「何か言ったらどうだ!」
「止めなさい。今はそんなくだらない争いしてる場合じゃないですよ」
「いやしかし……」
「良いですか。そんな事よりも天界を攻めてきてるのでしょう?でしたらとにかく逃げてください」
「ですがもう逃げるところが無いんです!」
「ッ………仕方無いですね。私が出るとします」
纏う気を一変させて殺気を放つ。
その変わりように天人はもちろん私も身を震わせた。
「い、依久……?」
「総領娘様。貴方は地上へ降りていてください。………貴方には見られたくないので」
悠然と龍神の間から出ていく衣玖。それを私は追おうとしたが、羽衣によって阻まれる。
「聞こえなかったのですか……?」
依久が私を親の敵のような目で見てくる。
「…………ッ」
「………これ以上私達に迷惑をかけないでくれますか。貴方の所為で龍神様が亡くなったと言っても過言ではないのですよ」
「ち、ちが………」
「何も違わないです」
瞬間床を踏む音が聞こえた。
「ッ!」
衣玖が瞬間的に振り向く。
『なんだァ?仲良く喧嘩か?』
破壊神が再び姿を現した。
はい、今回は少し短めでした(苦笑
では次回までバイバイです!