そういえばもう四月なんですね。まだ三月の気分でいました。怖いですね。休みボケって。
今回はルナサを描かせて頂きました。今度暇な時にプリズムリバー三姉妹とレイラを描きたいですね。
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ではではどうぞ。
椛は紙を掠め取ると破り捨てた。
「何が異変の首謀者ですって!?」
「落ち着け椛。お前が騒いだってどうこうなる問題じゃないんだ」
「聞きますけどどうして橙矢さんはそんな落ち着いていられるんですか!?」
「大方予想が出来ていたから」
さも当然のように話す橙矢を見て椛は怒りを抑えられなかった。
「―――止めてください橙矢さん!貴方は何もしてないのでしょう!?だったら今からでも遅くは――――」
「……遅くはない……ねぇ。それだったらどれだけ楽か」
「え………」
「俺が里に行ったって追い返されるか殺されるかのどっちかだ」
「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ橙矢さん……それじゃあ」
その時再び橙矢は椛を頭を撫でて家に戻っていく。
「さ、そんな話は止めてだ。家を直すのを手伝ってくれ」
苦笑する橙矢の横顔を見て椛は何か違和感を感じた。
「こんなもんでいいか」
近くの木を薙ぎ倒してそれを刀で裂き、それを壁に張り付けていく。
「やっと終わったな。これで夜も安心して寝れる」
満足そうに頷いて家の中に入っていく橙矢を椛が腕を掴んで止めた。
「橙矢さん、貴方は……何をしたいんですか?……退治屋を煽って里を敵に回すような真似をして、さらに犯してない罪を被って……」
「犯してない罪?何言ってんだよ。俺は事実里を半分潰したようなもんだ。冤罪なんて冗談キツいぞ」
「けど橙矢さんは里を護ろうとして……」
「その時点で間違ってんだよ。俺はフランドールとこいしを殺しに里に行っただけだ。里の奴等がどうなろうと知ったことじゃねぇ」
「じゃあ文さんが言ってた事は全部本当……?」
「いやまずあのエセ記者が何を言ったか知らねぇが……お前の反応を見る辺り正解のようだな」
掴まれていた腕を解くと家の戸を開けた。
「さて、お前のここに来た用件はそれの真偽を聞きに来ただけだろ?」
「…………他にもうひとつ」
「手短に頼む」
「はい………橙矢さんはご存知かもしれないですが里が襲撃されてこの五日間内で里の方に神様が訪れたそうです」
「神様が……?お前等のところの神か?」
「いえ、最近ここに来た神様のようです」
すると橙矢は身体を強ばらせた。
「どうしましたか?」
「………おい椛。その神の名……シヴァ、か?」
「そうですけど……何で分かったんです?」
「……………なぁ、シヴァは何をしていた?」
「えぇと………里の人に向けて『俺が今回の異変を解決してやる。だから安心していろ!』と自身が神だという正銘をしながら言ってました」
「チッ、あの野郎……」
「橙矢さん?……私話に付いていけないんですけど………」
「あ?………あー……」
何故か橙矢は暫く悩んだ後にため息をついた。
「付いていけなくて良い」
「どういう意味ですかそれは」
「まんまの意味なんだけど」
「そういう事を聞いているんじゃないです」
「じゃあ何を話せと言うんだ?そもそもお前に話してなんになる?俺に得があるのか?お前に得があるのか?無いだろ。理由が無いのに聞くもんじゃないぞ」
「私じゃ話せないって事ですか?」
「まぁそんな感じだな」
「………博麗の巫女や白黒の魔法使いには?」
「一応関わってるからな、話せる」
「もう一度聞きます。私には?」
「くどい。何回言わせるんだ。話せない」
「そんなに言いたくないものですか」
「………当たり前だ。これ以上被害者を出してたまるか」
「それでも私は――――」
瞬間目の前に橙矢の脚が迫っていた。
「――――――ッ!」
腕を交差して受け止めるが吹っ飛ばされて開けたままの戸から飛び出る。
「物分かりが良くないな、最近の輩は。なぁ椛。さっきの退治屋といいお前といい……どれだけ俺を困らせれば気が済むんだ?邪魔なんだよ」
ユラリと身体を揺らしながら橙矢が家の中から出てきて刀を抜いた。
「どうやらまだ躾が足りなかったようだな。まったく……鴉天狗に言っておくか」
めんどくさそうに足の爪先で地を蹴り飛ばす。
「さて、お前には二つの選択肢をくれてやる。動けなくなるまでやられるか今すぐにここから立ち去るか」
「決まってます!貴方の口から話してもらえるまで私は立ち去りませ―――――ングァ!?」
決死を込めた叫びは橙矢の蹴りによって止められた。
「決まったな。動けなくなるまでやってやる。………少々心苦しいが犠牲者を減らすためだ」
一旦橙矢は距離を離すと一気に詰めた。
が、橙矢の視界がブレて次に視界がハッキリと見えた時には目の前に地面が広がっていた。
「なん―――だっ!?」
顔面から地に突っ込んでいく形になり、なんともまぁみっともない。
すぐに身体を持ち上げて辺りを見渡す。
場所は変わっていない。橙矢の家の近くだ。
背後を見てみると椛が訳が分からないといった様子で橙矢を見ていた。
(なんだ?何が起きた?)
どういう事か分からず混乱していると橙矢の真上にスキマが開いた。
「お前かスキマ妖怪……!」
「さっき振りね東雲さん」
「何の用だ」
「貴方が良からぬ事をしでかしていたからそれを止めに来たのよ」
冷笑を浮かべている紫を睨み付けた。
「貴方こそ躾が必要じゃないのかしら?」
「俺がだと?ふざけるな!俺はただ……」
「被害者を減らしたかっただけ、ね。相変わらず人の事になると頑固になるのは変わってないわ」
それに、と紫は一旦姿をスキマに隠すと椛の後ろに出てきてその肩を掴んだ。
「貴方をこんなに心配してる子を潰そうとしていたのよ?」
「………心配なんていらない」
「馬鹿ねぇ。自分に好意を抱いている女の子くらい信頼しなさいよ」
「ゑ」
「あ」
しまったと紫が口元を押さえるが時既に遅かった。
「誰が好意だって?」
「はぁ……これほど鈍感とは思わなかったわ」
「や、八雲紫!何を言って………!」
すると椛は頬を真っ赤に染めながら食い上がる。
「じゃあ違ったかしら?」
「う…………ち、違わない……ですけどって何を言わせるんですか!」
「あらあら初々しいわね。可愛いわ。ねぇ東雲さん?」
「いや俺に聞かれても困るんだが………まぁ可愛い事は否定しないが」
「橙矢さんまで!?」
「それどーん♪」
紫が掴んでいた椛の肩を押した。
「え……!?」
「おっと」
バランスが崩れて倒れそうになるのを橙矢が反応して止めようとした。しかしその直前紫がスキマを使って橙矢の右足を払った。
「なん―――」
慌てて体勢を整えるがその時には既に目の前に椛が迫っており、身体で受け止める他なかった。と、椛が橙矢の胸に倒れこんだ。
「っとと。危なかったな。……紫さん、これは一体どういう意図での行動だ?」
「んー?素直になれないチワワちゃんの手伝い?」
「ほんと余計な事しかしねぇのな」
「う……うぅ……」
半泣き状態になっている椛の背をさする。
「聞かなかった事にするからほら、泣き止めよ」
「ほんとですか……?」
「あぁ、忘れるのは得意だからな」
放そうとする橙矢はしかし椛が橙矢の服を掴んで放さなかった。
「いえ、やっぱり……忘れないでください」
「は?」
椛が顔をあげて至近距離で見つめ合う。
「もう言えるときが無いと思いますので……」
一旦言葉を止めて一度深呼吸すると意を決したように口を開いた。
「橙矢さん。私は………」
『邪魔よ退きなさい!!』
意を決した言葉は上空からの乱入者によって遮られた。
椛ちゃんチャンス到来。いや待てそれはフラグだ。
だがそのフラグ。ぶっ壊すとみた!!
………はい(苦笑
では次回までバイバイです!