今回は閻魔である四季映姫・ヤマザナドゥを描かせていただきました。
よくロリなザナたんが描かれているので私、それに反旗を翻して大人なザナたんを描かせて頂きました。
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ではではどうぞ。
真っ二つに裂かれたフランはゆっくりと地に落ちていった。
その光景を見ていたこいしは目を見開いた。
「フランちゃん!」
その声に気付いたのかこいしの方へ橙矢の首が回る。
「ッ!」
恐怖を感じて逃げようと試みる。
が、
斬、という音の後に背中に斬られた痛みが奔る。
「う………ァ……………」
身動きもままならず地に落ちた。
「まだ………」
意識させるのを止めて橙矢の無意識に入り込む。
「……………」
こいしが無意識に入ったからなのか橙矢の視界からこいしが消えた。獲物を探すように辺りを見渡すが誰もいなかった。
(危なかった……。もう一回斬られたら確実に死んでた……!それよりもフランちゃんが……)
「オオオオォォォォォォ!」
「ッ!」
いつの間にか目の前に橙矢が接近していた。
(嘘……!まだ能力は使っているはずなのに……!?)
「禁忌〈レーヴァテイン〉!!」
焔で形成された剣が横から橙矢を吹き飛ばした。
「フランちゃん……!」
「何してるのよ!早く離れるわよ!」
こいしの手を掴むと翼を広げて離脱する。
「フランちゃん……どうして?」
「あぁ?どうしてって何がよ」
「さっき斬られてなかった……?」
「斬られてたわ、私の分身がね。お兄様の事だからきっと狙ってくると思ってたからその裏を突いたのよ」
「一歩間違えれば死んでたんだけど……」
「その事は気にしない。そうでもしないと無理なのよ。あれに勝つのは」
「確かにそうだけど……」
「あれは強すぎる。貴方だって分かるでしょう?………けど必ず弱点はある。……強すぎる力を持っているのだものそれなりの代償はあるはずよ」
「………でも」
「弱音を聞いてる暇は無いね。行くわよ!」
「――――私も交ぜなさい!」
遠方から光の奔流が飛んできてフラン達の脇を通ってその遥か先にいる橙矢に直撃した。
「―――――――!?」
訳が分からなかったのか声にならない悲鳴をあげた。
「これは………」
「貴方達だけ抜け駆けなんてさせないわよ」
風見幽香が二人の背後に降り立つ。
「かと言っても東雲本人じゃないから少々気が乗らないのだけれど……」
「ア……ガ………」
相当な痛手だったのか息を大きく乱しながら橙矢は立ち上がる。
「……そろそろ限界が来たわね。ケリをつけるわ!」
地を砕いて橙矢に迫る。
「ッ!」
幽香に合わせて刀を振るうが傘によって受け止められる。その間にフランが後ろへ回り込み、レーヴァテインを振り上げた。
それにいち早くその事に気付いた橙矢は身体ごと回転して弾いてフランに向き直り、左手でレーヴァテインの柄を掴んだ。
「…………!」
フランの足を払って幽香を刀で裂く。
「二人とも下がって!」
こいしが真上から弾幕を放つ。
「そういう事ね……!」
自らを裂いた刀身を掴んで蹴りあげる。
そうすることで橙矢が弾幕に突っ込む形になる。
「ッ!?」
弾が直撃し、一瞬動きを止める。その時橙矢に標準を合わせた幽香が叫ぶ。
「終わりよ夜叉。マスタースパーク!!」
「ギャアアアアァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
最後の抵抗とミシミシと幽香の耳に入るほど大きな骨の軋む音が聞こえる。
「まずい……あれじゃ!」
いち早く止めさせるために一気に収縮させて光の奔流を橙矢目掛けて放った。
限界まで腕を強化させた橙矢はマスタースパークを弾き返す。
しかしその勢いは止められなかったのか吹き飛ばされた。里の中心部分に向けて。
「あら、飛ばす方向を間違えたわ」
「幽香!大丈夫!?」
幽香の身を案じてかフランが駆け寄る。
「えぇ、少し斬られたけどそれほどの傷ではないわ」
「それなら良いけど……」
『グ……ガアアアァァァァアアアアァァァァァ!!』
聞き飽きた咆哮が上がり、さらに悲鳴も聞こえた。
「あら、もしかしてヤバイ事しちゃった?」
「………どう聞いても里の人達の声だったよね」
「………それってまさか………」
「さすがに洒落にならないわよ!」
幽香が駆け出して里の中心部分に向かっていった。
「………………いえ、寧ろ好都合ね」
「ガアアアァァァァアアアアァァァァァ!!」
咆哮をあげる橙矢を前に避難していた里人はただ逃げ惑うしかなかった。
「ッ!元退治屋が謀反を起こしやがった……!」
「とにかく逃げろ!何か様子が変だ!」
一斉に逃げ出す里人を視界に入れた橙矢は一気に身を屈めた。
そして一気に解放―――
「止めなさい!!」
横から脇腹に深く蹴りが入り、吹き飛んだ。
「橙矢!いい加減目を覚ましなさい!」
蹴りを入れた霊夢は札を取り出すと橙矢目掛けて投げ付ける。が、橙矢が刀を振るうと切り裂かれた。
「封魔針」
指に札で生成された針を放つ。それも弾かれるが弾かれた針は札に戻り、橙矢を拘束する。
「霊符〈夢想封印〉!!」
七色に輝く弾が七つ出てくると橙矢に一直線に飛んでいった。
「ッ!」
常識を逸した動きで全て捌いた。
瞬間―――
「夢符〈封魔陣〉」
地に手を置くと橙矢の周りに結界が張られ、対妖怪の雷撃を放ち続ける。
「ガ……ァ……!」
無理矢理四肢を動かして結界を破った。
「星符〈ドラゴンメテオ〉!」
空から流星群のような弾幕が橙矢に降り注ぐ。
「ガアアアァァァァァァァァァ!」
ひとつの弾を強化した腕で殴り付けると衝撃波が起こり、他の弾が崩れ落ちる。
「何……!?だったら……!」
「下がってろ魔理沙!パゼストバイフェニックス!」
妹紅の身体から焔が巻き起こって不死鳥を模す。
『行くぞ橙矢!』
不死鳥が吼えて橙矢へと突撃していく。
「ジャマダアアアアァァァァァ!」
燃え盛る神なる毛を持つ不死鳥を殴り飛ばした。
『グ……。………ッまだだ!フェニックス再誕!』
消えかかる焔を巻き起こして先程よりかは多少小さいが不死鳥が顕現する。
再び橙矢は腕を強化させる。
「転世〈一条戻り橋〉」
慧音が宣誓すると回避不可の弾幕が左右に広がり、慧音への一本道が出来る。
「行け……妹紅ッ!」
「………………ッ!」
橙矢が僅かに焦りの表情を浮かべる。
「後は任せろ……!」
焔を一点に集中させて橙矢に迫っていく。さらに左右から霊夢が封魔針を、魔理沙がマスタースパークを放つ。
「ガ…ァ……アアアアァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
雄叫びをあげて身体全体を強化させる。が、それは無理も承知。橙矢の能力は『触れているものを強化させる程度の能力』だがそれはある一部分しか出来ない。
つまりは二ヶ所以上の強化は身体が耐えきれないのだ。
全身の筋肉が切れる音がし、骨に罅が入る。
「カ……ハ………ッ」
口から大量の血を吐いて崩れ落ちる。
「え……!?」
異常に気付いた妹紅が焔を霧散させようとしたがもう遅い。………不死鳥が橙矢に迫る。
「ッ!橙矢ァァァァァ!」
「橙矢!?」
「な、何だぜ……!?」
各々気付いたが時すでに遅く、それぞれに技をまともに受けた橙矢の身体が宙を舞った。
地に落ちた橙矢に四人が駆け寄る。
「橙矢!大丈夫なの!?橙矢!」
「………………………………………」
「おいらしくないぜ橙矢……起きろよ!」
「………………ぃ」
微かに唇が動いた。
「ッ!橙矢!」
「……るさぃ……」
「え………」
「頼む……から……静かに……してくれ」
「起きたのか!」
「何とかな………」
身体を無理矢理起こして立ち上がる。
「おい、あまり無理をするな!」
「大丈夫ですよ慧音先生……まだ終わってないんですから」
橙矢が睨み付ける先には風見幽香がこちらに向かっている姿があった。
「ようやく戻ったのね東雲」
「戻った………?どういうことだ……」
「……………惨状を見てみれば分かるわ」
「な、何言ってんだよ。妖怪は全滅して被害もそんな酷いはずじゃ――――」
辺りを見渡すと橙矢は絶句した。いや、絶句せざるをえなかったか。
何故なら護り通せたと思っていた家屋がほぼ倒壊していたから。
「………どう、して」
「………真実を知れば多分貴方は貴方でなくなるわ」
「……話せ」
「無理よ」
「話せっつってんだろうが……」
「無理」
「話せ!!」
一瞬で接近すると幽香の胸ぐらを掴み上げる。
しかし幽香は驚きもせず冷酷な瞳に橙矢を映す。
「…………じゃあ言うわ。……後にどうなっても知らないわよ」
「…………あぁ」
腑に落ちない表情をしながらも幽香から手を放した。
「幽香!止めろ!」
魔理沙が止めようとするが幽香に腹を蹴りあげられ、強制的に止められた。
「……幽香…!やめろ………!」
「風見幽香!お前……!」
崩れ落ちた魔理沙を支えながら幽香を睨んだ。
「それほど貴方にとって禁句な事なのよ」
「……!」
「この惨状の大半は――――」
「幽香!」
霊夢や妹紅が止めに入るが遅かった。
「――――貴方がやったことなのよ」
うん知ってた。
では次回までバイバイです!