東方空雲華【完結】   作:船長は活動停止

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久々にとらのあな行ったのですがやっぱり楽しいですね。東方のゲームやらグッズやら売ってますからね、また今度行ってみたいです。


さてさて今回幻想郷の記憶である稗田阿求を描かせて頂きました。うーん、ノーコメント



【挿絵表示】



次回は………そうですね、茨木華扇を描きたいと思ってます。

ではではどうぞ。




第五十五話 鳴り響く絶叫

 

冷たい風が頬を叩き、橙矢は目を開いた。

「………我ながら……しぶといな」

ゲホッ、と大量の血を吐きながら身体を起こした。その際に激痛が心臓近くに奔る。

「危なかった……もう少しずれていたら心臓に刺さってた………」

フランはレーヴァテインが橙矢の心臓に刺さったと思ってたらしいが実際は刺さったのは心臓の数センチ右側。

九死に一生を得ると言うのはまさにこの事だろうか。

「…………それよりもフラン様は……」

辺りを見渡すがフランの姿は見えない。

「いない………ッ!」

上空を見ると紅い霧がかかっていた。それも幻想郷中全てを覆っているようだ。

「これは……霧の異変……まさかフラン様が……ッ」

常備している懐中時計を見ると五時を指している。

「もう日ノ出のはずだが……霧のせいで見えないな」

だとしたら夜に活動が活発になる畜生共が動き始めてしまう。

「ッ!まさか外での活動を可能にさせるために……だとしたら……次向かうとこは何処だ!?」

「と、橙矢……さん……」

弱々しい声で自分の名前を呼ぶ声がし、振り向く。

ボロボロになりながらもこちらに歩んでくる美鈴だった。

「美鈴!……フラン様にか…?」

「……えぇ……私よりパチュリー様の方が…………」

美鈴が指差す方を見ると館が半壊の状態になっており、図書館が丸見えになっている。

美鈴を壁に凭れさせると一飛びで図書館の中に入る。

酷い有様になっていた。本棚は途中からへし折れて本はそこら中に散らばっている。

普段このような光景は目の当たりにしないだろう。

その散らばっている本の中にひとつの人影を見付けた。

「パチュリー様!」

「……あ、あぁ東雲………いたのね」

起き上がらせるがすぐにフラついて橙矢の方へ倒れてくる。

「ッ!大丈夫ですか……?」

慌てて受け止めてもう一度起き上がらせようとして、止めて寝かせた。

「貴方は……随分元気そうじゃない……」

「パチュリーの身体が病弱なだけですよ」

わざと意地悪そうな笑みを作る。

「それよりも他の皆は無事なんですか?小悪魔は何処に……?」

「………小悪魔は………もうちょっと奥で寝かされてる……わ。フランは……次は里を襲うつもりよ………。東雲、もうフランを止めれるのは貴方しかいないの……!お願い、フランを止めてあげて……」

「……俺は元からそのつもりですよ」

「………そう……ならいいわ……」

「妖精メイドはどうしたんですか?」

「………!」

急に表情が強張るのが分かった。

「……その……メイド達は……」

その言葉だけで結果が分かってしまう。

「まさか………!」

廊下へ飛び出て駆け出す。

「東雲……!」

 

 

 

 

 

 

 

「ハァッ……ハァッ……!」

紅魔館中のありとあらゆるところを探してようやく見付けた。

―――――妖精メイドの死体の山を。

「……………………………」

場所は紅魔館の一番奥にある部屋、つまりドラキュラが閉じ込めていた部屋だ。その中に大量の血と共に死体の山が築かれていた。

「…………………ァ」

脳内にあの時の光景が甦り、橙矢の脳裏を覆っていく。

「……………は、ははは」

あの時から護るって決めていたのに。

「あははは、何だよ……何だってんだよ」

何が護るだ。何一つ護れてないくせに。

「はははははははははははは!…は……はは………」

口が裂けるほど三日月に開き、嗤った。

徐々に自分の心が崩れていくのがよく分かる。

その時に頬に何かが伝った。

「は、はは……は?」

何かと思い手で触れると何やら滴が付いていた。

「何……だこれ……」

今は屋内にあるため雨は降らない。

それは橙矢がすでに枯れていたと思っていたもの。

「涙………?」

それが涙と分かるのにそう時間はいらなかった。

膝から崩れ落ちて手が地に着く。

「あれ……」

どうして自分は泣いているのだろう。言ってたじゃないか、妖精は万物の魂その物。つまりベースとなる万物を壊されなければまた生き返る。良いじゃないか。死んだって。

…………………………………それでも。

それでも死んだものは死んだんだ。その命は紡がれた。

「ァ………アァ……」

絶え間なく涙が出てきて視界を混濁させる。

「アアアァァァァ………」

橙矢の瞳に怨嗟が籠っていく。

「アアアアアアァァァァァァァァ!!!」

暗い牢獄の中。紅い血の海の真ん中で橙矢はただただ泣き叫んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

比較的紅魔館に近い湖の畔で一人の少女が降り立った。

「今戻ったわよ」

少女―――フランドールは着地すると同時に座り込んだ。

「あれー、かなり疲れちゃってるね」

フランに近付いてくる気配がひとつ。特にフランは敵視することもなく鼻を鳴らした。

「別に疲れてる訳じゃないわよ」

「少なからずでも自分の家族を潰したんでしょー?だったら無理もないよ。精神面ではかなり疲れてると思うよ」

「知った口を聞かないで頂戴。あんなもの………家族でも何でもないわ」

「………………そう」

もう一人の少女は不意にフランの背後に立つ。

「でも貴方の無意識は何処かで後悔している。………今からでも遅くはないよ」

「………五月蝿い。黙ってて」

「………はーい、ごめんなさーい」

すぐに表情を元に戻すとその場でクルクルと回りだす。

「にしても良かったの?貴方が固執していたその……お兄様、だっけ?」

「あぁもう良いのよ。やっぱり所詮人間は人間ね」

「…………人間なの?」

「元ね、今は半妖」

「へー…………で、そのお兄様はどうしたの?」

「あまりにもしつこいから殺したわ」

「元々家族だったんでしょー?」

「それは貴方もそうじゃない。私を見るなり背後から家族を刺すなんて」

「生物は皆無意識には逆らえないんだよフランちゃん」

「……………………」

「私は無意識でしか動けないからねー、そういうのにはもう慣れたよ」

「貴方の姉のように心が読めるのは怖いからかしら?こいし」

古明地こいし、そう呼ばれた少女は被っている帽子を深く被り直した。

「私は弱いからね。強いお姉ちゃんの気持ちなんか分かるはずないよ」

「あっそ、そんなこと私に話したってどうにもならないわよ」

「どうにもならないから話すんだよ」

「……………………」

「それよりもどーするのこれから」

「どうもこうも、すぐに次に行くわ」

するとフランの肩をこいしが抑える。

「焦る気持ちも分からなくは無いけど少し落ち着いたら?第一貴方連戦続きでしょう?」

「………大丈夫よ」

「ダーメ、貴方の大丈夫は少し信用出来ないから」

それに、とこいしは続ける。

「まだ教育し足りない子達がいるからね♪」

そう嘲笑うこいしの背後から幾つもの影が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

………とある霊廟で目を覚ました豊聡耳神子は口を歪めた。

「やっと目覚めそうになるか……」

急いで着替えを済ませると霊廟から出ていこうとする。

「太子、何処へ行く」

建物の柱の影に隠れていたのか布都が姿を現した。

「こんな夜明け早くに何処へ行こうとしている?」

「………布都か。なに、軽い運動だよ」

「………東雲のところに何しに行くつもりだ?」

「……………」

相変わらず変なところで鋭いな、と舌打ちすると布都が近寄ってくる。

「ふん、何やら最近お主が執拗に外出するからの、少しだが追尾させてもらった」

「………………で、だから何なんだ?」

「まだ分からんか。……お主阿呆になったのか?」

「失礼だな。少なくともお前よりは良いと自負している」

「そういう事ではない」

「では何だって言うんだ?」

「それは………我が言っているのはお主が今しでかそうとしていることについてだ」

「へぇ、さっき私が何をしようとするか分からないと言っていたくせにか?」

「……………だからこうしてお主から聞き出そうとしてな」

「やれやれ、だから君は私にいくら経っても勝てないんだよ」

布都を嘲笑して歩き出す。

「どうせならお前も来い布都。面白いものが見れるぞ」

「………………面白いもの?」

「あぁ。半妖が完全な妖怪になるその瞬間を、な」

 

 




はい、何だか今回の章は橙矢さん休む暇無いっすね。……少しくらい休みをあげなければ………。

では次回までバイバイです!

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