インフルエンザでぶっ倒れてました。
そのせいで修学旅行も行けず仕舞いで………。
まぁそんな事はどうでもいいです。
ではではどうぞ
第四十八話 退屈しのぎに
金属音が向日葵畑に響き渡り、衝撃波を生み出す。
「ッチィ!」
舌打ちしながら東雲橙矢は地を後ろに滑りながら刀を横に振った。再び金属音が響く。
次いで強化させた膝を真上に上げると拳を受け止める。
「―――――ッ!」
耐えきれずに吹き飛ぶ。
無理矢理地に足を着けて止まると刀を突き出す。
と同時に刀の先端に傘の先端が火花を散らして激突した。
「………また強くなったんじゃないかしら」
鬩ぎ合いながら風見幽香が刀を弾いて橙矢に傘の先端を向けた。
「ッ!」
上半身を倒すと光の奔流が髪を掠る。
「まだ五日しか経ってねぇだろうが……!」
「私は戦えればいいのよ!」
「お前の事情なんか知らねぇよ!」
刀を振り抜いて暴風を巻き起こし、幽香を退けさせる。
「鬱陶しいわ…!マスタースパーク!」
「ちょっ、いきなり大技撃つ馬鹿が何処にいやがる!」
器用に刀の上を滑らせると軌道を逸らした。
「ふふ、この技を刀ひとつでいなせる貴方だからこそ容易に撃てるのよ」
突撃してくる幽香に対して橙矢も足を強化させ、前方に跳ぶと激突する。
鬩ぎ合いながら橙矢はどうしてこうなったか思い出していた。
一昨日宴会があってその帰り際に犯人の一人にも関わらず宴会に来ていた幽香に見つかり、拉致された。そして次の日いきなり目を覚ますと同時にマスタースパークを放たれた。
以上
「…………馬鹿じゃねぇの?」
誰となく呟いた。
倒れていた橙矢に幽香が近付いてくる。
「急にごめんなさいね東雲。貴方を見つけたら急に戦いたくなって」
「……こっちの事情も考えろよ」
「それは出来ないわ。人の事なんか分かるはずないでしょう?」
「いやまぁ確かにそうだが……」
「それよりも早く立ちなさいな。お詫びとしては何なんだけどお昼ご飯ならご馳走してあげるわ」
「毒とか盛ってねーよな」
「さぁどうかしらね。…ここから歩いてすぐのところに私の家はあるわ」
差し伸べられた手を取り、立ち上げてもらう。
「まったく………その性格どうにかしろよな……」
「自重するわ」
「する気ないだろ」
「当たり前でしょ?」
「じゃあ言うなや、ややこしい」
「…………」
「……おい、聞いてんのか?」
「…あぁごめんなさい。貴方が言うなって言ったから黙ってたの」
「お前………」
額に青筋を浮かべながらも幽香に付いていくと幽香の家が見えた。
「どうぞ」
幽香が戸を開いて橙矢を先に入れる。
「……どうも」
「あら幽香に東雲君、終わったの?」
中にはすでに少女――メディスン・メランコリーが一人、二人を待っていた。
「あぁ、なんとかな」
メランコリーとは昨日幽香に拉致された時に知り合った間柄だ。
「戦いの余波がここまで響いていたわよ」
「マジか……そんなに酷かったのかよ」
「あれだけやってれば当然の事よね」
「得意気に言える事じゃねぇよ」
「………周りに誰もいなくて良かったね。衝撃波だけで多分吹き飛ばされてる。普通ならね。それより東雲君、こっちに来て。怪我の手当てをするから」
「手当て?あれ、メディ、お前の能力は確か……」
「うん、〈毒を操る程度の能力〉。けど毒ってのは時に薬になったりするのよ」
「へぇ……それじゃ頼むよ」
近くの椅子に腰かけると一番損傷が激しい腕を出した。
「それじゃあ私はお昼ご飯の用意をしてくるわね」
そう言うと幽香は家の奥へと入っていった。
「うわ……結構酷いね」
「風見幽香に言っておいてくれよ。手加減してやれって」
するとメランコリーは少し目を附せた。
「………それはちょっと無理なお願いね。だって今の幽香はなんというか……楽しそうだもの」
「………あ?」
「貴方は知らないと思うけど幽香はあれでも結構な寂しがり屋でね。貴方と会うまではほんと毎日が退屈で仕方無いって感じだったのよ」
「あの風見幽香がか?」
「………少し昔の話、幽香がまだ幻想郷に入って間もない時にね……妖怪の賢者と殺し合いをしてたの」
「紫とか?」
「えぇ………けどね、ある日を境に賢者は幽香との殺し合いを止めたのよ」
「………で?」
「殺し合う事にしか能が無い幽香にとってはこれ以上にないほど退屈に感じる事はなかったでしょうね」
「それからどうしたんだよ」
「…………花の異変の時に少し博麗の巫女と弾幕ごっこをしてたらしいけど所詮は遊び、幽香が求めている殺し合いとは違ったわ」
そう言いながら傷口に止血作用と即効性の治癒力のある毒を染み込ませた。
「ッ。………で、そこで俺が出たと」
「そういうこと。貴方が幽香の前に出てきてくれてほんと助かったわ」
「………………俺は何もしてねぇよ」
「そんなことないわよ。……にしても最近の幽香が貴方の事を話すたびに恋する乙女みたいな表情しちゃってねぇ」
「…………想像するだけで寒気が走るな」
「もちろん冗談よ。けど楽しそうにしてるってのは本当よ」
「俺からしてみれば迷惑極まりないけど」
「そんなに邪険にならないで。幽香からしてみれば東雲君だけが本当の自分を出せる人なんだから」
「いや、ちょっと待てよ。だとしても今は何で幽香は紫と戦ってないんだ?幽香の方から行けばいい話だろ?」
「言ったでしょう。賢者の方から戦いを止めたと。仮にもし東雲君がいってる風になってたら現に幽香はあんなに退屈そうにしないわよ。………けどなんでそうしないのかは私も知らないけど」
「……………なるほど、ね」
徐々に痛みが引いていく腕を軽く振るう。
「もう大丈夫だ。ありがとなメディ」
「どういたしまして」
丁度その時に皿を持ってきた幽香が現れる。
「あら、終わったの?」
「あぁ、たった今な」
「それならタイミングが良かったわ。丁度お昼ご飯が出来たから」
微笑みながら皿を机に並べていく。
それを横目に見ながらついさっきの話を思い出していた。
数時間後、ようやく解放された橙矢はその足である場所へと来ていた。
博麗神社だ。
実際は昨日いくはずだったのだが幽香に一昨日拉致されて行けなかった。
しかも昨日行くと行っておいたので尚更だ。
「怒ってるだろうな………」
「怒ってるわよ」
境内に着いたところで鳥居に凭れている霊夢を見付けた。
明らかに不機嫌そうである。
「随分と遅かったじゃない。……もう来ないかと思ってたわよ。何処で油売ってたのよ」
「悪い悪い、少し二日間くらい花妖怪に拉致されててさ」
「幽香に?…………大丈夫だったの?」
「ん、心配してくれるのか?」
「当たり前よ。あんな化け物に襲われて心配しない方がおかしいわ」
「あー……確かに」
そうかもな、と苦笑いすると手にしていた箒で頭を叩かれる。
「あだっ」
「少しは自重しなさい。貴方はもう………ただの人間じゃないんだか…………あ」
霊夢が慌てて口を閉ざす。
「あ?なんでお前が俺が半妖だって知ってるんだ?」
「……………え?し、知ってたの?」
「あぁ、豊聡耳って聖人が言ってきてな。……それにこの目を見れば嫌でも分かる」
自身の左目を指しながらため息をついた。
「そ、そう………」
「なに、そっちの方は心配する必要はねぇよ。ちゃんと自我を保ってられてるしな」
「……………」
「それにこれでようやく里とは縁を切れたからな。清々した」
「………橙矢。貴方後悔とかしてないの」
「は?後悔?……するわけないだろ」
「本当に?」
「本当に。…………って言えば嘘になるが」
「…………それより貴方これから予定とか無いんでしょ?少し寄ってかない?」
「あぁ……元からそのつもりだったんだがな……。そういえば昨日俺を呼んだ用件とかって何だったんだ?」
「宴会の片付けの手伝い」
「……………………」
行かなくて良かったと内心で呟いた。
その頃旧地獄街道―――
爆発音が鳴り響くと同時に煙幕が伊吹萃香の視界を覆った。
「急になんだってんだい……!」
煙幕の凝縮させて視界を晴れさせると前方には吸血鬼がこちらを見下ろしていた。
「まったく……どういうことかなフランドール・スカーレット」
「萃香!大丈夫かい!?」
萃香の隣にもう一人の鬼が並ぶ。
「あぁ勇義……見ての通りだよ」
周りを見渡すと妖怪の中でもかなり上位を占める鬼達がやられていた。
「……やってくれるねぇ」
すでに戦闘準備は済ませてあるのかいつでも戦える体勢を取る。
「…………一応殺さないでやってくれよ。あれでも見た目子供なんだから」
「分かってるよ。………それじゃ、行くよ!」
萃香と勇義は同時に地を蹴った。
今回は少し短めになってしまいましたがお許しください。そこまで頭が回らずものの見事に数十分で書くという異形を達成してしまいました。
それでは次回までバイバイです!