いつもながらif storyの続きです。
ではではどうぞ。
俺はその人に二度と寂しい思いはさせないと初めて会った日にそう誓った。
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「さて、これで今日の授業は終わりだ。とっとと帰んな」
寺子屋のある一室。まとめられた紙束を整理しながら教師代理であり里の自警団に属している東雲橙矢は子供を突き放すように言った。だが子供達は授業が終わるなり橙矢に群がってくる。
「東雲せんせーの久し振りの授業面白かったよー!」
「ねーせんせーまた来たってことはこれからもせんせーやるの?」
「あーうるせぇうるせぇ………。ったくなんで俺がガキのお守りなんざ……」
「お疲れさん橙矢。けど仕方ないだろ?お前の授業をまた受けたいって子供達が言うんだ。それに受けてくれただろ?」
もんぺが特徴的な蓬莱人が意地悪げな笑みを浮かべて近付いていく。その背後にはこの寺子屋の教師が。
「私の授業でもこんなに真剣にやってもらえないぞ」
「それは俺が外の世界のことについて話をしてるからですよ先生」
「ふむ……そうだな。だったらここはひとつ私にも教えてくれないか?」
「あいにくとお断りですよ。この世には知らなくていいこともあります」
「相変わらずな皮肉だなー。死にかけても変わりないな」
「あったり前だ。俺は俺だからな。変わるわけねぇよ」
「ま、それは後で話すとしてだ。ほら皆、東雲が困ってるだろ。東雲には私と妹紅が話しておくから」
慧音がそう言うと子供達は渋々しながらも言うことを聞いて帰っていった。
「じゃあなお前ら。……気を付けて帰れよ」
橙矢がそう言って手を振ると子供達が元気に手を振り返してきた。
「……ハッ、元気な奴等だな」
「なに他人事みたいに言ってるんだよ。お前がいてくれたからあんなに元気なんだよ」
「そうは言ってもなぁ………」
「これからも教師代理を請け負ってくれるか東雲?」
「………俺でいいのならやらせて頂きますけども……俺なんかでいいんですか?」
「なに、心配いらないさ。もしもの時は妹紅もつけてやるからな」
「ハァ!?なんで私もやる羽目になるんだよ!」
「お、それはいいことを提案してくれたな」
「橙矢まで!」
「まぁ待て待て。なにも私は考えなしでこんなこと言ってない」
「………それは新しい言い訳か先生?」
「まさか。本当のことさ」
「それじゃあ聞かせてもらおうか」
「あぁ、里の自警団に属している身であるならばまずは第一に里の安全を確保することが前提だ」
「……………それで?」
「だったら次代の子供達を護ることが必要だ。だからもし万が一のためにお前には教師になってほしいんだ」
「…………なるほどね。それなら納得いく。だが俺がなったところで里の奴等は納得いくか?」
「安心しろ。里長が変わってからお前への反発する奴がいなくなってな。逆に東雲に賛成する奴が多いぞ」
「………あっそ」
「それで、やってくれるか?」
「そこまで言われたらな。しょうがないから手伝ってやるよ」
「そうか。………助かるよ東雲」
「…………………もう二度とごめんだからな。この里が火に包まれるのが」
「あぁ、そうだな」
「っつー訳だ。それと今日の仕事はもう終わったからな。帰らせてもらうぞ」
じゃあな、と片手をあげて慧音の脇を通り過ぎる。
「あ、橙矢」
その時妹紅が橙矢の腕を掴んで引き寄せるとそっと耳打ちした。
「ん?何か用か妹紅」
「あの………ちょっと今から付き合ってくれるか?」
「…………何処行くんだよ。まぁお前のことだから分かるけど」
「………頼む」
「どうせ帰っても暇だからな。少しだけだぞ」
「………ありがとう」
「…………じゃあ先生。俺は帰りますんで。お疲れ様でした」
「ん、あぁ。お疲れ様。また用があれば呼ぶからな」
「はいはい分かってますよ」
「……慧音、私もそろそろ帰るとするよ」
「妹紅もか?そうか、ならお疲れ様。また頼んだぞ」
「慧音の頼みだったらいくらでも」
フッ、と笑みを浮かべて橙矢と妹紅は寺子屋から出ていった。
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案の定妹紅が向かった先は迷いの竹林だった。
「………なぁ妹紅。こんなところ連れ出して……何のつもりだ?」
「…………悪いね。……………橙矢」
「はいはい」
「………これから私は奴と殺し合う」
途端に妹紅が纏う雰囲気が一気に変わる。その視線の先には蓬莱山輝夜。
「………私があいつに今日勝ったら………お願いがあるんだ。………聞いてくれるか?」
「………なんだよお前の願いってのは」
「それは今は言えないな。………今はな」
「………ふん、勝手にしやがれ。俺は観戦させてもらうからな」
「………それだけでもありがたいよ」
口の端を吊り上げると妹紅の身体から炎が舞い上がる。
「あらあら、今日は東雲を連れてきたのね妹紅」
「あぁ、ちょっとした訳ありでな」
「まぁいいわ。いつもとやることは変わりないでしょ」
「当たり前だ。……お前を殺す」
「ふふ、簡単には終わらないでちょうだいね」
「当たり前だ。………輝夜ァ!!」
炎が渦を巻いて辺りを焼き付くし、それが開戦の合図となった。
橙矢は前方で行われている殺し合いを見ていた。
「よくもまぁこんなにつづけられるもんだな」
そう言う橙矢の隣には青と赤をベースとした服を着た人物。
「えぇ……けどあの子達はこうでもしないと生き甲斐を感じられないのよ」
「………医者、アンタはどうなんだ」
「……私?……生き甲斐、はないけれど使命ならあるわ」
「それがこの前の宴会で言っていた蓬莱の呪いを解く薬を作るってやつか」
「そうよ。……あの子達は互いに憎み合っているけれど本当に恨まれるのは私なのよ。蓬莱の薬を作った、ね」
「………………」
「それよりも貴方、何でここにいるの?」
「俺?……あいつの付き添いだよ」
「………そう、それは大変ね」
「なぁに、アンタの方がよっぽど大変そうだよ」
「あら、バレちゃったかしら」
「とにかく………気長に待ってやるさ。この決着をな」
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舞う弾幕の中を飛び回って一気に輝夜に接近してその体に手を伸ばす。しかしその前に輝夜が妹紅を蹴り飛ばした。
「ッ……………!くそったれ!!」
炎を操って輝夜を渦の中に閉じ込める。
「不死〈火の鳥‐鳳翼天翔‐〉!!」
閉じ込めた輝夜に火の鳥を放つ。
「甘いわ妹紅!」
七色に輝く玉のついた枝を取り出すと振るう。
「神宝〈サラマンダーシールド〉」
火には火を。輝夜の前に炎で生成された盾が顕現し、妹紅のスペルを防いだ。
「ッ!だったら……!」
髪にくくりつけてある札を解くと輝夜目掛けて投げ付ける。
「そんなの無駄よ!」
全て輝夜が放つ弾幕に撃ち落とされた。その間を縫って接近し、頭突きをして怯んだところに蹴りあげた。
「………!相変わらず可憐さがないわね妹紅!」
「お前に言われちゃお仕舞いだな!」
落ちるところを予期して弾幕を放つが輝夜は途中で立て直して一枚のカードを抜く。それに対して妹紅もカードを突き付ける。
「神宝〈ブリリアントドラゴンバレッタ〉」
「滅罪〈正直者の死〉!」
ふたつのスペルが激突して閃光が辺りを包む。
「こんな程度で……!」
牽制程度に全方位に向けて炎を放つ。しかしその中を輝夜が突っ切って妹紅に迫り、超至近距離で妹紅に向けて弾幕を張る。
「ッ!」
上半身を仰け反らせて何とか避けるがその間にも輝夜の接近を許してしまい殴られて地に落ちる。受け身を取りながら着地して立ち上がると前方に輝夜が降り立つ。
「もうお仕舞いかしら妹紅。まだまだこれからよね?」
「当たり前だ!……そう簡単にやられてたまるかよ!」
「空中戦は飽きたわ。こっから先は地上戦といきましょう!」
「後悔すんなよ輝夜ァァ!!」
駆け出すと炎を纏った腕を振り下ろして地に叩き付けて炎を巻き上がらせる。
「ッオラァァ!」
地盤を盛り上げる勢いで地を輝夜に飛ばした。その隙に懐に潜り込むと炎を纏った拳で殴り付けた。
「ッ…………ゥ!」
血を吐きながら後退する輝夜に追い討ちをとかけて回し蹴りを腹に入れる。
「調子に乗らないでちょうだい……!」
輝夜が脚を掴むと引き寄せて顔を掴むと近くの竹に叩き付け、しかし竹が折れて妹紅が吹き飛んだ。
息を荒げながらも睨み付け、構える。その先にも似たように息を途切れさせながらも立ち上がる妹紅が。
「いいわね、初めて殺り合った日を思い出すわ!もっとよ、もっと殺り合いましょう!」
「言ってろくそ野郎がァ!パゼストバイフェニックス!」
自らを炎で生成されたフェニックスと化し、輝夜に突撃していく。
「神宝〈ライフスプリングインフィニティ〉!」
突撃してくる妹紅にスペルを放ち、激突させると相殺し、煙幕が巻き起こる。
「チッ……相殺……!」
「永夜返し‐明けの明星‐」
「グ……!?」
煙を貫いて再度スペルが飛んでくる。
「このスペル……殆ど決め手のやつじゃないか……!もう決めるつもりか!?」
「あいにくと今日は早めに終わらせてもらうわ!もちろん貴方の敗けでね!!」
「ほざけ輝夜!」
地を蹴ると回転しながら避けて上から踵落としを入れる。
「黙って殺られなさい!」
輝夜も足を振り上げて妹紅の足とかち合い、拮抗する。
「「……………………!」」
互いに全力で力を込めて押し合う。僅かに妹紅が押し切った。
「不死〈凱風快晴飛翔蹴〉!」
炎で燃え上がる脚で蹴り抜くと続くようにカードを引き抜いた。
「まだ行くぞ!不死〈フェニックスの尾〉」
全体に弾幕が張り、逃げ場がなくなる。
「面白いわね……!閉じ込めるなんて……けどだったら尚更!前にしか道がないのならそこを一転突破するだけよ!!蓬莱の樹海!」
妹紅のスペルに対するように輝夜も全体に弾幕を放つ。そして妹紅のスペルをかき消すと広範囲に放っていた弾幕を妹紅に狙いを定めて放つ。
「貴方の力はこんなものかしら妹紅!弱くなってるわよ!」
「当たり前だ!そのスペルにはそこまで力は込めてないからな!蓬莱〈凱風快晴‐フジヤマヴォルケイノ‐〉」
辺り一面に爆発が起きてその合間を縫うように弾幕が放たれる。
「クッ、これじゃ妹紅が何処にいるか……!」
輝夜が元いる場所を見てみるが爆発に乗じて姿を消していた。
――――瞬間
「フェニックス再ッ誕!!」
妹紅が再びフェニックスを模し、輝夜に迫る。慌てて避けようとするがすでに避けられない位置にあった。
「終わりだ輝夜……!私の勝ちでな!!!」
妹紅のスペルが輝夜を貫いて、その時に妹紅の勝利が決した。
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「ハァ……ッハァ……ッ」
地に降り立つと同時に妹紅の身体が崩れ落ちる。それをその戦いを見ていた橙矢が支える。
「……お疲れさん妹紅。………勝ったな」
「へ………。このくらい……平気……さ」
妹紅もさすがに戦いで疲弊していたのかそのまま気を失ってしまった。
「……………おい医者」
再生をし始めている輝夜に近付く永琳に声をかける。
「……心配しなくて結構よ。この子にはいい薬だわ」
「まぁそれもあるけど……。いつもこんな感じか?」
「まさか。いつもはこんなに…………いえ、稀にあるわね。こんなに激しい殺し合い」
「……稀に、か」
「……仕方ないわ。………永遠は人類の夢、だけどそれは虚像にしか過ぎないわ。本当の永遠は…………何もないわ」
「妹紅を見てれば嫌でも分かる」
「なら貴方がその子の宿り木にでもなってあげなさい。……里の守護者みたくね」
「んなこと百も承知だ」
「……さ、殺し合いも無事に済んだことだしここら辺りで引き際としましょ」
「あぁそうだな。こいつの手当ても早くやらねぇと」
「あら、蓬莱人に手当ては不要よ」
「一応だ。……いつまでも傷を残させるわけにはいかねぇからな」
「……そう、なら早く帰りなさい」
「そうさせてもらうよ医者様」
妹紅の身体を背負うとそのまま橙矢は近くの妹紅の家へ歩んでいった。
▼
「う……ん………」
妹紅の家へ向かっている最中、妹紅が目を覚ました。
「よう妹紅、起きたか」
「あれ、何で橙矢が……」
「覚えてないのかよ。お前永遠亭のお姫さまと殺り合って勝ったじゃねぇか」
「………あぁそういえばそうだったな」
「まったく……しっかりしてくれよ記憶までどうかしちまったのかよ」
「……そう信じたいね。……にしてもこの運びかたは……」
「あ?俺なりに最大の配慮をしたつもりだったんだが……なんだ、他のやり方が良かったか?」
「い、いや別に……いいんだけどさ」
「なら文句言うんじゃねぇよ。………安静にしていろ」
「………悪い」
「謝る必要なんざ何処にある。気にすんなよ。功労者を労ってるだけだ」
「そういうことにしておくよ」
一息ついて落ち着いたのか橙矢の背に身体を預ける。
「………今さらだけどさ……。橙矢の背中、大きいんだな」
「ハッ、何だよ急に。そりゃあ俺だって男だ。歳を重ねるにつれてでかくなるもんさ」
「………そうだな。歳を重ねるに、か」
「…………………悪い、何か変なこと言って」
「気になさんなよ。………もう慣れたから」
「…………馬鹿言え。我慢してるのが丸見えだ。辛いなら辛いってなんで言わない」
「………ッ」
妹紅の顔を見ずに、一切声音を変えずに自然と言った。それが余計に妹紅の心を抉った。
「…………言ったところでどうなるんだよ。何かしてくれるのか?同情でもしてくれるのか?……所詮人間なんて偽善の正義を振り撒いて勝手に自己満足してる奴等ばかりなんだ。口では良いことを言ったって結局はそれはただの綺麗事。心から私を心配してくれる奴なんざいないんだ」
「………………………………」
「何で黙るんだよ……。何か言ってくれよ橙矢……。お前は何をしてくれるんだ……?」
「……………………………」
すると妹紅が後ろから橙矢の身体を抱き締める。
「頼むよ橙矢……。お前言ったよな?私が今日輝夜に勝ったらひとつ私の願いを聞いてくれるって………。だったら………だったら頼む……いや、お願いだ……私をもう一人にしないで……。もう一人は嫌なんだよ……誰もいなくなって私だけ残されるのは……!」
抱き締める力が徐々に強くなっていく。だが橙矢は何も言わずに歩き続ける。
「一人は怖いんだ……。今はまだ慧音がいる。だけど慧音は生き物だ。いずれ私の前からも消える。そうなったら……本当に私は一人になる……。橙矢…………」
「…………………………孤独……か」
急に橙矢が空を見上げてそう呟いた。まるで何かを思うように。
「馬鹿を承知で言う。……お前は不死を手に入れて後悔したか?」
「…………当たり前だ」
「…………そうか。………そうだろうな。変なこと聞いて悪い」
「…………………」
「お陰で腹をくくることが出来たよ」
「…………橙矢…………?」
その一言を最後に妹紅の家に着くまで一言も話さなかった。
「…………」
妹紅を家に送り届けた後に橙矢はある場所を目指して歩いていた。
「…………………もう一人にはさせないからな」
▼
朝日に照らされて妹紅はゆっくりと身体を起こす。
「…………昨日は………。そうか、橙矢に送ってきてもらったんだった」
何があったか思い出すとあまりにも馬鹿らしく何も言えなくなった。
「………橙矢には悪いことしたな……今度謝っとかないと」
昨日は色々とあったせいか自らの願望を橙矢に押し付けてしまった。馬鹿な話だ。自らと同じ蓬莱人になれなんて………。
すると急に家の戸が叩かれた。
「……?誰だよこんな時間に……」
戸を開けると件の少年が立っていた。
「橙矢………?どうしたんだよこんな時間に」
「……悪いな妹紅、今までやることがあったからな」
「いや別にいいんだ………。それよりも昨日はごめん。……その、あの時は私も気が動転してて……だからあの事は………」
「…………………………」
「忘れて…………橙矢?」
何を思ったか橙矢が黙り込んで妹紅を見つめる。
「なぁ妹紅」
「な、なんだよ……」
「安心しろ」
――――瞬間橙矢は刀を引き抜いて自らの首を撥ね飛ばした。
「え……………?」
あまりのことに妹紅の思考が止まり、噴水のように吹き出る生暖かい血が妹紅にかかる。一通り血が出終えると橙矢の首なし死体が後ろに倒れた。
「…………………ッ橙矢!?」
ようやくそこで思考が追い付いて橙矢が自殺したと察する。
「橙矢!橙矢!何……してるんだよ!せっかく生きていたのに……!また橙矢と馬鹿していけると思っていたのに……!何なんだよ橙矢!何で死んだんだよ!!」
もはや痙攣もしていない橙矢の遺体を抱く。その身体は血のせいか生暖かかった。
「なんで…………何でだよ橙矢…………私は………私は慧音と…………お前だけが心の頼りだったのに……。そのお前がいなくなるなんて………嫌だ…………」
「…………………だから安心しろって言っただろうが」
橙矢の声が聞こえた。いや、普通は聞こえてこないはずだ。いや、聞こえてなるものか。だって橙矢は、橙矢は自殺したはずじゃ。
顔をあげるといつも通りの橙矢の顔があった。
「なんで…………。お前は死んだんじゃ……」
「死んださ。一度はな。けど不死にはそんなの効かないってね」
「橙矢…………まさかお前………蓬莱の薬を………!」
「あぁそうだ。お前を家に送り届けた後に永遠亭に戻ってな。頭を下げてようやくもらったよ。初めは全否定されたけどな」
「けど何で…………」
「ハァ?お前自分で言ったこと覚えてないのかよ。一人にしないでってな。………約束はしたんだ。それを破るなんざするわけないだろ」
「橙矢……………………」
「何呆けた顔してんだよ。少しは嬉しそうな顔をしろよ」
「橙矢!」
妹紅が急に橙矢を抱き締める。
「……急にどうしたよ」
「馬鹿……!ほんとに馬鹿だよお前……!何で私だけのために不死になるんだよ……!」
涙を流しながら橙矢の胸に顔を埋めながら叫ぶ。それは橙矢を責めているようで。だけど何処か自分を責めているようで。
「…………泣くんじゃねぇよみっともない。俺は俺の意思でやったんだ。自分を責めるな」
「けど……けど……!」
「………良いんだよ。元々誓っていたからな。お前と初めて会ったときから。お前を二度と寂しい思いはさせないって。……だから良いんだ」
「橙矢……………」
「安心しろ。もう俺は何処にもいかねぇ。一人にさせはしない。………永遠だ。永遠にお前の隣にいることを約束する」
「………ァ………」
「………………だからさ、もう泣き止めよ」
指で妹紅の涙を拭き取る。
「…………笑ってくれ妹紅。俺がいる限りお前を泣かせたりはしない」
「………何だよそれ……。だったらちゃんと護ってよ私を。そしてもう放さないでね」
「あぁ、任せろ」
二人して顔を見合わせて笑う。その時妹紅の心からの笑顔を初めて見た気がした。
それから数百年後、月の頭脳である医者が蓬莱の呪いを解く薬を作った。それと同年、竹林の中で二人の遺体が発見された。それは死なない身体を持つと有名な男女だった。
その二人の名は―――――東雲橙矢、そして藤原妹紅。
長かったですね。二つに分けようとしたのですが久々にこんな長いのもありかも、と思い。
結果蓬莱人になった橙矢君でしたが数百年後に永琳が呪いを解く薬を作ってそれを飲んで普通の人間に戻った、という物語です。久々に戦闘シーン書けて中々楽しかったです。
それにしても最近モンハンをやってるんですけど……あ、私は3rdで初めて3rdで終わりました。久々にやると面白いものですね。もうかなり昔に全てのクエストを終えて飽きたからやめてたんですけどいやはや、またもやハマりかけてきました。
っと無駄話が過ぎましたね。すみません。
次回は幽香ルートです。
感想、評価お待ちしております。
では次回までバイバイです。