今回もif storyの続きです。
ではではどうぞ。
一人の少年が起こした異変の解決を祝った宴会が終わった頃、東雲橙矢は神社の縁側に腰掛けながら呆れた顔でそこら中で寝ている人妖等々を見ていた。
「よくもまぁこんなに騒げたもんだ……俺が音頭上げてから何時間経ってると思ってる。とっくに深夜だぞ」
「それだけ貴方が帰ってきたことが嬉しかったのよ橙矢」
神社の中から巫女服を着た少女が出てくる。
「お前もかなり呑んでたな。もう大丈夫なのか?」
「まだ頭がガンガンするわ。けどそれほど酷くないわ」
「そうか。………とりあえずこれらどうする?」
神社の境内を指差す。
「後で自分達で適当に起きるからいいわ。アンタのご主人様とその妹は日が出てきても起きなかったら日陰にでも連れてあげなさい」
「起きなかったら、ね。あいあい。まぁ咲夜さんがいるから大丈夫だろ」
「………ふーん、余程信頼してるのね」
「一応上司に値する人だからな。……一応な」
「なんでそこを強調するのよ」
「何でだろうな」
肩を竦めて苦笑いする。今だ家族と思っている信頼からなのか、それとも個人的な咲夜との関係なのか。自身でも分からなかった。
「愚問を承知で聞くわ。アンタは帰らなくていいの?」
「良いんだよ別に。家に帰ったって暇なだけだからな。あくまで暇潰しだ」
「暇潰し、ねぇ。……なら橙矢、少し片付けを手伝ってくれないかしら?勿論断らないわよね」
「拒否権なしかよ。………はいはい、分かりましたよ手伝えばいいんだろ手伝えば」
「楽園の素敵な巫女の手伝いなのよ。少しは嬉しそうにしなさい」
「わーい嬉しいな。……………チッ」
「オイコラ舌打ち」
「すいやせーん。やりますよ」
飲みかけの杯やら空になった樽などに目を向ける。……山ほどあるが。
「なぁ霊夢」
「?何よ」
「いつも宴会の時お前が片付けやってるのか?」
「急に何よ。………毎回私って訳じゃないんだけど、ほとんどは私よ」
「これほどやるのって辛くないか?」
「別に、はじめのうちは来た奴等全員ぶっ飛ばしてやろうとしたわ。けどいいのよ好き勝手やってくれて勝手に満足してくれて帰れば。そんな奴等の集まりなんだから仕方無いわ」
「中々苦労してんだな。少し見直した」
「少しだけ?」
「かなり見直した。まぁだからといっちゃあなんだが………。あー、俺がこれから手伝ってやろうか?」
「…………は?アンタ何言ってんの。頭でも打った?」
「…………お前……!」
本気で心配してくる霊夢に憤りが込み上げてくるが抑え込んだ。
「だからその……ほらあれだ、お前がいつもこんな遅くまで起きてて翌日体調崩してもらっちゃあ困るんだよ」
「…………え、何それ世に言うツンデレってやつ?やだ橙矢いつからそんな気持ち悪いキャラになったのかしら近付くな、半径三メートルは近付くな」
早口に呪詛みたいに痛いところをつつかれまくる。
「……………………落ち着けよ霊夢」
「キモいキモいキモいキモいキモいキモい」
「あ、あの霊夢さ」
「キモいキモいキモいキモいキモいキモい」
「話を聞いて」
「キモいキモいキモいキモいキモいキモい」
「お願いだから」
「キモいキモいキモいキモいキモいキモい」
「ごめんなさい、俺が悪かったです」
「キモい」
「グッ………。だから落ち着けよ、頼むから」
「アンタが急に変なこと言い出すからでしょう?」
「いや変なことって………俺はただお前のことを思ってだな――――」
「解ってるわよそんなこと」
「言って………。あ?何だって?」
「だから解ってるわよって」
「………まさかお前、今の今までおちょくってたのか」
「さぁどうかしらねー」
先程まで橙矢が座り込んでいる隣に霊夢が腰かける。
「よしてくれよな。弄るのは得意だが弄られるのは苦手なんだよ」
「攻めに強く押しに弱いってことね」
「ハッキリ言うとそうだな」
「…………けど手伝ってくれるなら嬉しいわ。是非ともお願いしたいわ」
不意に霊夢が微笑んでくる。気恥ずかしくなったのか橙矢は顔を赤らめてそっぽを向いた。
「?どうしたの橙矢」
「……何でもねぇよ」
「…………あ、もしかして恥ずかしくなった?」
「……あぁそうだよ。恥ずかしいよ。こんな近距離でまさかお前が笑うとは思わなかったからな」
「何よそれ。まるで私が普段から仏頂面してるみたいじゃない」
「してるじゃないか。いつもいつも」
「ハァ?アンタ馬鹿なの?これだから橙矢は嫌なのよ」
「おい聞き捨てならないぞ今の。何が嫌だって?」
「ふん、いつもいつも仏頂面してるなんてそれはアンタじゃない橙矢!」
「それこそ違うだろ霊夢。さっきの宴会の時も楽しくなさそうにしながらも楽しみやがって。少しくらいは表情に出したらどうなんだよ」
「心から楽しんでないアンタには言われたくないわよ」
「馬鹿言え。楽しんでるよ。こんなにも俺のことで盛り上がってくれるんだからな。まぁこいつらの場合ただ呑めればいいだけかもしれんがな」
「えぇまったくよ。呼んでもないのに勝手に集まってきて、迷惑ったらありゃしないわ。……今回の場合違うけれどね」
「違うのか?じゃあ誰が収集をかけたんだよ」
「提案をしたのが魔理沙で収集をかけたのが私」
「珍しいな。……理由は?」
「貴方に決まってるじゃない」
「…………俺?」
「……貴方が異変から消えて……それから幻想郷から活気という活気が感じられなくなったわ。……けどそんなの嫌じゃない。いつまでも終わったことを引き摺って。……そう魔理沙が言ってくれたのよ」
「……………………………そうか、あいつも言うときは言うんだな」
「………実行したのは私よ」
「……霊夢も」
「……………少し眠いわ。準備が忙しかったから」
「なら神社の中で寝てろ。後始末は俺がやっとくからさ」
「ん………」
ふと霊夢が橙矢にもたれてくる。
「………霊夢?」
わざとやっているのかと思ったが霊夢はそんなことをする質ではないことは橙矢は重々理解している。
「…………………眠くて動けないわ」
「………なんだ、起きていたのか。だったら起きてるうちに布団を用意して早く寝ろ」
「……言ったはずよ。眠くて動けないって」
「…………おい、まさか」
すると霊夢がニヤッと笑みを作る。
「布団を用意してそこに私を寝かせるかこのまま私といるか、二つにひとつよ」
「…………選ばせてやる。お前がどっちかを選べ」
「あらそう。ならそうねぇ…………動かされるのも面倒だしこのままでもいいかしら」
「………別にいいけどさ」
「じゃあ遠慮なく」
そのまま頭を膝まで落とすと瞳を閉じる。
「私はこのまま寝させてもらうわ」
「……………………勝手にしろ」
「じゃあ遠慮しないことにする」
それだけ言うとすぐに寝息をたて始めた。どうやら本当に眠かったらしい。
「………………お疲れさま、霊夢」
髪質を傷付けないように優しく頭を撫でると気持ち良さそうに身動ぎした。
「………………今回も迷惑かけたな」
どの異変の時もこの少女には迷惑をかけてしまった。それもこれも全部霊夢が『博麗の巫女』であるためなのだろう。常に人妖共に平等に見なければならない。幻想郷においての絶対的なシステムそのもの。そんなものを課かせられて辛くないわけがない。誰よりも傷付いて、さらに異変を解決したとしても誰からも礼を言われずに。それを初めの友である魔理沙と会うまでは辛かったのだろう。
そんな少女を再び血塗れの戦場へ引きずりこんだのは他でもない橙矢であろう。だからその罪を一生かけて購わなければならない。その義務が橙矢にはある。
「…………………これからは俺がお前を支えてやるからな霊夢」
どれほど嫌われようが拒絶されようが構わない。礼なんか言われなくったっていい。こんな幼い少女一人に背負わされている重いものを少しでも軽くすることが出来るのなら。
「……何があろうと今度は俺がお前を助けてやる。だから安心しろよ」
すでに夢のなかに入っている霊夢だがどこか嬉しそうに笑みを浮かべた。
今回は霊夢ルートですた。よくありますツンデ霊夢はいったい何処へ。私はそういうところをあまり書けないので……。文才は皆無。
感想、評価お待ちしております。
次回は………妹紅ルートですかね。
では次回までバイバイです。