東方空雲華【完結】   作:船長は活動停止

143 / 159

どうも、お久し振りです、夜桜です。

久々の投稿


ではではどうぞ。



第六話

 

 

 

 

 

 刀で橙の鉤爪を受け止めながら森の奥へと吹き飛ばされる。

「ッ!っんの馬鹿力が!」

 三度迫る爪を受け止める。それと同時に腕を強化させて押し返す。だが橙はそれを良いことに木を足場に自在に駆け回る。

「ちょこまかと鬱陶しい!」

「それは貴様もだ退治屋!」

 怒号一喝、橙矢は素早く反応して頭を下げるとその上をレーザーが通り過ぎる。

「あんたも大概だぞ……」

「橙、今だ!」

「行っくよお兄さん!」

「ッ!」

 懐から聞こえた声に慌てて腕を強化して胸の前で交差させた。直後、腕に橙の拳が入り、それは勢いは衰えずに橙ごと吹き飛ぶ。

「ッ!邪魔だっつってんだろうが!」

 転がりながら橙を引き剥がすと広いところに出たことに気付いた。

「東雲さん……!?また厄介な……」

「………あ?その声は八雲さんか……」

「申し訳ありません紫様!退治屋が思った以上にすばしっこく……」

 藍が紫の隣に降り立ちながら謝罪する。しかし紫は口を三日月に歪めた。

「…いえ、寧ろ好都合よ。よくやったわ藍」

「は?」

「私がシヴァ、貴方が東雲さんを抑える。その隙に橙に新郷神奈を殺らせるわ」

「……なるほど、分かりました。では、橙!」

「はい藍様!」

 木々を飛び回って神奈に接近する。がその前に橙矢が橙に追い付いて足を掴むと近くの木に叩き付けた。

「ちぇぇぇぇぇぇぇぇん!」

「藍、今すぐ新郷神奈を!」

「ッ……!分かりました!」

 紫が開いたスキマに藍が飛び込むと神奈の背後に出た。

「させっかよ!」

 シヴァが素早く反応して剣が撃ち出される。

「これは……!」

 全力で後退すると神々しい剣が通り過ぎ、遥か彼方にある山に着弾するとその山は吹き飛んだ。しばらくして暴風が四肢を叩く。

「おいおい……何だよあの威力。洒落にならねぇぞ」

「洒落にならないほどの威力があるからな」

 シヴァが手を伸ばすと山を崩した剣が手に収まる。

「あの威力のくせに連射可能とか……チートだな」

「今更だな。チートは神の特権だ」

「うわぁ……チート野郎はゲームに参加しちゃ駄目だって親に習わなかったか?」

「問題ない。この世界の許容範囲内だ」

「心が広いな幻想郷は」

「お前が考えているよりもこの世界は広いんだよ。勉強しろ」

「おーおー言ってくれるぜ。こちとら高二から勉学した覚えがないぞ」

「馬鹿以前の問題だったな」

「ま、そういうことだ」

 軽く後ろへ跳んで神奈の隣に並ぶ。

「一人にして悪かったな。丁度混戦になってくるからその時にズラかるぞ」

「させないわ!藍、橙!貴方達は二人を狙いなさい!」

「おいおい、俺ちゃんをいないもの扱いはやめてくれるかな」

「相手してほしかったら取り扱い説明書作ってきな駄神!」

「面倒だ」

「……………」

「このまま皮肉を言い合ってもいいが……邪魔者がいるようだからな」

 不意にシヴァが剣を振り上げて背後に斬撃を放つ。それと同時に見覚えのある巫女と魔法使いが叢から飛び出てきた。

 狙ったかのように、一寸の狂いなく放たれていた。

「え―――――」

「シヴァかく――――」

 二人を直撃して吹き飛ばした。

「ビンゴォ。いやぁ、良いところに来てくれたな。感謝するよ」

 吹き飛んだ二人に歩み寄って剣を突き付ける。

「お陰で二人同時に殺れるんだからよ」

「やめなさい!藍、橙!二人をシヴァから離しなさい!」

 紫がスキマを開いてシヴァに接近すると弾幕を放つ。

「次はテメェかスキマァ!!」

 素早く振り向くと剣を振り抜いた。

 

 

 

 

 

 

 その光景を見ていた神奈はハッとして橙矢に視線を向けた。

 その顔は焦燥と怒気が混じった複雑な表情だった。

「し、東雲さん!助けないと……!」

 シヴァはこの場を蹂躙するかのように襲いかかる者共を蹴散らす。

「…………ッ。今は……新郷……。君が最優先だ」

 自らに言いかけるように橙矢は重々しく語る。

「私のことは大丈夫ですから!それよりも皆さんを……!」

「あいつらは新郷を殺そうとしてきたんだ……!当然の報いだ……!」

 力強く握る手からは血が垂れる。そうでもしないとすぐ神奈を放して行ってしまうという不安を消すように。

「東雲さん!」

「ッ!」

 神奈にしては珍しい大きな声を出すと橙矢は目を見開いた。

「東雲さん……。そう言ってくださるのは嬉しいです……。けど……自分の心には嘘はつかないでください。皆さんを助けたいのでしょう?私は大丈夫ですから」

「新郷………」

「私はこの道をまっすぐに行きますから。ですから……終わったらすぐに迎えに来てくださいね」

 安心させるように笑顔を見せると橙矢は少し考えた後に神奈の頭を軽コツン、と軽く叩く。

「足が震えてんぞ。説得力ねぇよ馬鹿。ま、けどそれほど俺を信頼してるなら応えないわけにはいかねぇよな」

 刀を抜くとシヴァに向ける。

「なら俺も新郷を信じてみようか。……必ず行くからな。待ってろよ」

「……えぇ、待ってます」

「じゃあ行け。ここにいちゃあ危険だからな」

「はい、お気をつけて」

 そう言うと神奈が駆け出した。

「…………気を付けるのはお前の方だろうが………」

 呆れたようにため息をひとつすると上空向けて跳んだ。そしてそこから落下の勢いを兼ねてシヴァに迫った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遠くで金属音が鳴り響いて次いで衝撃波が背後から流れる。

 恐怖で足が止まりそうになる。だが止めるわけにはいかなかった。

「東雲さん………」

 息が荒くなってすぐに肺が痛くなる。普段は田舎育ちなのでよく森を駆け回った覚えがあり、慣れている筈なのだが場合が場合だ。

「とにかくあそこから離れないと……!」

 それと同時に背後から先程とは比べ物にならないほどの地響きが伝わってくる。

「な、何が………」

「鬱陶しいんだよ貴様等……!身の程を弁えろ!!」

 シヴァの声が聞こえると神奈のすぐ背後の地が沈む。次いで閃光が走り、危うく直撃するところだった。

「ッ!危なかった……」

 安堵しながら進んでいく。

 

 

 

 

 逃げ始めて二十分近く経つ頃であろうか、神奈は道に出てきていた。

「ここは………」

 そう言う神奈の前には少し敷地大きそうな寺が建っていた。

「こんなところにあったんだ……。にしても東雲さん遅いですね……」

 頭の中に最悪の結果が浮かぶがすぐに頭を振って否定する。

「東雲さんに限ってそんなこと……」

 瞬間、神奈が出てきた森の中から何かが飛び出てきて寺の囲いに激突した。

「こ、今度は何なんですか……」

 半分泣きながらそちらに視線を向ける。

 何かを認識すると目を見開いた。

 そこには自分を護ると誓った少年が折れた刀を片手に血まみれで倒れていたからである。

 

 

 





次回の投稿は金曜日か土曜日にしようと思います。

感想、評価お待ちしております。

では次回までバイバイです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。