東方空雲華【完結】   作:船長は活動停止

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どうも、お久し振りです。それと更新遅くなってすみません。

今回は途中から神奈目線です。……かなり本編とは違いますが……。

ではではどうぞ。




第二話

 

 神奈の手を引きながら橙矢は森の中を歩いていた。

「一応もう遅いから俺の家に泊まっていけ。今考えればここから里までは遠すぎる。その前に腹減ったな。確かこの辺に移動式の酒屋………じゃなくて屋台があるはずなんだが……」

 忙しなく首を動かしていると途端に止まる。橙矢の視線の先にはぼやけた光が見えた。

「………あれでしょうか」

「そうだな」

 橙矢が断言した。距離的にはかなり離れているのに断言した。余程の自信家なのだろうか迷わずそちらに歩を進める。

「分かるんですか?」

「ん?あぁ、この距離くらいならな」

「くらいって……私は目は良いですけどここからじゃぼやけてしか見えません。東雲さんはどれくらいの視力なんですか?」

「そういえば言ってなかったな。俺はちょっとした能力持ちでな」

「能力?」

「そ、能力。まぁそれが何かは考えてな」

 そう言って橙矢は意地悪そうな笑みを浮かべる。自分で考えろ、ということか。

「分かりました。考えるつもりもないですけど」

「賢明な判断だな。さて、こんなところで突っ立ってたって意味がない。早く行こう。金なら一応持ってきているから大丈夫だ」

 歩を進めているうちに橙矢の顔がハッキリと見えてくる。今の今まで辺りが暗くてよくは見えなかった。

「……何見てるんだよ」

 いつの間にかずっと橙矢を見ていたのか訝しげな視線を向けてくる。

「あっ、す、すみません。東雲さんの顔がハッキリと見えたものですから………」

「…………なんだ、そんなことか」

「っ…………」

「確かに俺も新郷の顔をちゃんと見たのは初めてだな」

 橙矢がまじまじと神奈の顔を見る。綺麗な金髪で左右で眼の色が違うオッドアイを隠すように伸ばした神奈を。左目は普通の黒目なのだが右目は血のような緋色。それのせいで幼少時代は苛められていた。………その時から神奈は髪を伸ばして右目を隠すようになった。

(多分東雲さんも見たら………)

「………………」

「………おい新郷?どうかしたのか」

「……ごめんなさい。何でもないです」

「何でもないなら謝る必要がどこにあるんだ?」

 行くぞ、と屋台の方へ足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 東雲さんが暖簾を潜って中に入っていきました。するとすぐに出てくる。そして私に財布を押し付けてきました。

「あの……東雲さん?」

「悪いな新郷。俺はそこらでぶらぶらしてくるから勝手に食っててくれ」

 私が止める隙なく東雲さんは歩いていこうとしました。しかしすぐに暖簾から一人の女性が出てきて東雲さんの手を取りました。大正時代の女性が履くようなもんぺを履いた女性でした。しかもかなりの美人さん………むぅ。

「おいおい橙矢。何処に行こうとしてんだ?」

「放せよ妹紅。俺はあんたらと今会いたくないんだ」

 東雲さんと名前を呼び会う仲でしたか…。

「それは里が関係していたからだろ?今の私達はそんなの気にしてないさ。素の東雲橙矢と話したいんだ。そうだろ?慧音」

 妹紅、と呼ばれた女性は今出てきた暖簾の方を見る。そこには一目で大人の女性、と分かるほどの雰囲気を醸し出している女性が座っていた。

「そうだな。妹紅の言う通りだ東雲。ここは腹を割って話そうじゃないか」

「先生。俺は里を潰しかけた人間だぞ。あんたらとは対立する本来なら立場だ」

「だーかーらー、今はそんなこと関係ないって言ってるだろ?」

 東雲さんを引っ張って椅子に座らせる。

「…………仕方ないな」

 諦めたように東雲さんは座ると私の手を取って席につかせた。

「悪いな新郷。やっぱり一緒させてもらう」

「あ、は、はい」

 東雲さんが一緒にいてくださる……。そう思ったことで私の中で何故か安心感が生まれました。

「ん、東雲。その人は?」

「あぁそういえば紹介がまだだったな。新郷神奈、俺と同じ外の世界から迷い込んだきた外来人だ」

「外来人?頻度が多すぎないか?橙矢が来てまだ日が経ってないが?」

「そういうものか?俺としては外来人はヒョイヒョイこっちに来るものだと」

「来ると言ってもな………年に二、三人来るぐらいだな」

「以外と少ないんだな」

「そりゃあポンポンこっちに来られては私達が困る。それに里の守護者として外来人の対応もあるからな。住むところを手配するのにも一苦労だ。それに加えただでさえ少ない食料を分けなければならない」

「まぁそりゃそうだろうな。………それで、新郷はどうするんだ?」

「………今日はさすがに無理だな……。すまない東雲。今日だけはこの子を頼んでくれないか?」

「……俺としてはすぐに霊夢に頼んで外の世界に帰したいんだが?」

「今行ったとしても霊夢が嫌がるだけだろうし今夜は大人しく待つしかないな」

「やっぱりそうなるよな………霊夢だし」

「霊夢だからな」

 名前は聞くところ女性のようですが……また女性ですか。どれだけ女性の知り合いがいるんですか、ちょっと複雑な心境です。い、いえ別に東雲さんが誰と仲良くしようと私には関係ないのですが……。

「あの東雲さん。霊夢さんというのは……」

 けどそれでも気になって聞いてしまいました。

「ん?あぁ、博麗の巫女である博麗霊夢。この幻想郷においていなくてはならない存在。そいつはなんつーの……この世界は特別な結界で覆われていてな。それを開けることが出来る」

「つまりそれで……」

「察しがいいな。そういうことだ」

「………そうですか。……ところで、その……」

 二人の女性の方に目線を向けるとそれに気付いたのかあぁ、と声をあげた。

「そういえば私達のことを何も言ってなかったな。私は藤原妹紅。それと」

「上白沢慧音だ。よろしく頼む」

 藤原さんと上白沢さん二人ともかなりの美人さん。………幻想郷には美人で溢れかえってるのでしょうか。同じ女としてちょっと悔しいです。

「こ、こちらこそお願いします」

「そんな畏まらなくていい。同じ釜を共にするんだ。気を抜いてくれ」

 上白沢さんがそう言ってくださり、私の中にある緊張も少し和らぎます。

「確かに先生の言う通りだな。一応里の守護者だから頼りになるぞ」

「おい東雲。一応ってなんだ、些か失礼じゃないか?」

「おっとそれはすまんかったな」

「はぁ……お前、もう少しその性格どうにかしたほうがいいぞ」

「あいにくと無理ですよ。もう染み付いてますから」

「尚更だ。自重しろ」

「頭の隅にでも置いときます」

 あ、あれ。東雲さんが悪い人に見えてきました。助けてもらって言える立場じゃないことは分かっているのですがさっきの妖怪よりも東雲さんが危険な気がしてきました。

「まぁそこは橙矢だからな。仕方無い」

「お、なんだ妹紅。東雲と親しいアピールか?」

 上白沢さんが意地悪そうな笑みを作ると肘で突っつく。

「え、あぁいやそんなんじゃないさ」

「ほんとか?最近は特にそうだからなお前は」

「おいおい、あんま妹紅を苛めないでやってくれよ先生。それに俺と妹紅はただの友人だ。それ以上は何でもねぇよ」

「……そこまで全否定されると……それはそれでなんか………」

「あ?なんか言ったか?」

「何でもない」

 不機嫌そうに藤原さんがそっぽを向いてしまいました。………まさか藤原さん。

「……………ミスティア、も一本追加で」

「はいはーい」

 ふと藤原さんが注文すると可愛らしい女の子の声が………ってえ、?

「女の子?」

 疑問に思ってつい口に出してしまった。

「貴方よりかは長く生きてますけどねー。はじめまして。私はミスティア・ローラレイ。この店を経営してます」

「すごいですね……一人でですか?」

「えぇそうですよ。まぁ大変な時もありますけどそこは色々とやりくりしてますから」

 その時隣から呻き声が聞こえた。何かと見てみると後ろから羽交い絞めにされた東雲さんと羽交い絞めにしている上白沢さんと酒瓶を手にして東雲さんに迫る藤原さん。

「ここはひとつ、酒を体験するのもありかもだぞ」

 酒って確か二十歳からでしたよね?東雲さんまだ高校生のはずじゃ……。

「ま、待てよ!体験ならしたことある!」

 東雲さん、あるんですか……。

「あの時はすぐに吐いちまって……もうトラウマなんだよ!」

「レッツ、飲酒」

 構わず口に酒瓶を突っ込まれ………あぁ大変そうですね。……私が割り込んだらもっと被害が出そう……。

 私にしては賢明な判断をしたと思います。もっとも、飛び火がこちらに来ない限りですが。

「お前ら……!いい加減………に………」

 限界が来たのか上白沢さんに絞められながら気絶しちゃいました。

「あれ、墜ちた?慧音」

「ん?………あぁ、これは墜ちたな」

 上白沢さんが放すと東雲さんはそのまま後ろに倒れちゃいました。

「……………んー、どうしよっか」

「とりあえず置いておけばいいだろ、そのうちに起きる」

「それもそうだな。それじゃあお次は」

「え?」

藤原さんと上白沢さんの目が光りながらこっちを見てきて……あれ、これって……まずいパターンじゃ……。

「ま、冗談だけどさ。会って早々の人に酒なんて突っ込むほど馬鹿じゃないさ私達は」

「…………それならいいんですけどね」

「そんなことしないさ。……っとそれで」

 藤原さんが私の傍によってきてそっと耳打ちしてきました。

「あんた、橙矢とどんな仲なんだ?」

「へ?」

 突拍子な質問に思わずすっとんきょんな声が出る。

「あぁその別に橙矢がどうこうは関係ないんだけどな、友として知っておくべきことだとさ、思うんだけど……」

「は、はぁ……」

 反応に困って上白沢さんの方を見るが上白沢さんは苦笑いしているだけでした。助け船は出してくれないんですね………。

「私がお世話になってるだけであって特に深い関係ではないんですが」

「なんだ、そうなのか。……で、会ったところは何処なんだ?」

「東雲さんと、ですよね。でしたら東雲さんの家の前です」

「なるほどね………ん?だとしたらおかしいな。ここから橙矢の家までかなり離れているぞ……何かあったのか?」

「え………まぁないといえば嘘になりますが」

「訳ありか。……だとしたらすまないな。思い返させることしてしまって」

「い、いえ別にそんな特に気にしてませんので」

「そうか?……なら助かる」

「あー、いってぇ……頭がガンガンする……」

 その時東雲さんが頭を押さえながらゆっくりと立ち上がってきました。回復早いですね。

「東雲さん、大丈夫なんですか?」

「大丈夫なわけあるか。そいつらのせいで思考がまともに働かねぇ」

「そんなこと言って随分余裕そうだな。もう一本空けるか?」

「マジでやめろ」

「冗談だって」

 東雲さんはため息を吐いてケラケラと笑う藤原さんを睨みつけました。中々怖いです。いやほんとに。

「妹紅、そろそろだ」

「あれ、もうそんな時間?……仕方無いな。橙矢、私達はもう行く。代金は……迷惑かけたからこっち持ちでいい」

 藤原さんと上白沢さんがそれぞれ金を出す。……大半は二人が飲んだ酒代ですが。

「んー…………俺らそこまで食ってないんだけどな」

「なに、これから食べるかもしれないだろ?その金額も入ってる」

「そりゃどーも」

「じゃあ私達はこれで失礼するよ。東雲……また寺子屋にでも顔を出してくれよ」

「暇だったらな」

「迷いの竹林に迷い込んでもいいからな」

「それはごめんだな」

 じゃあなー、と手を振って去っていく二人を東雲さんは苦笑いで片手を軽くあげて応えました。私も少し手をあげて応えます。

「さて、俺らもそろそろ食うか。せっかく先生と妹紅が出してくれるんだから、言葉に甘えさせてもらおう」

「そうですね。それじゃあ―――――」

 

 

 

 

「鶏肉ぅ!!」

 

 

 

 

「「………は?」」

 突然ピンク色の何かが翔んできた。

 

 




はい、もう少し妹紅と神奈ちゃんのくだりを書いておけばよかったかしら………

感想、評価お待ちしております。

では次回までバイバイです。


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