東方空雲華【完結】   作:船長は活動停止

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投稿遅れてすみません。色々とやることがありまして………。
ここから約二ヶ月間投稿が遅くなるかもしれません。すみませんがご了承くださいますよう。


そういえば前回分岐点がなんやら言いましたがそしたら最終話の前の話で椛の告白云々全部なしということ……ですよね。ドンマイ椛。


後半から色々と暴走してます。気を付けてください。あ、いつものことか。

ではではどうぞ。




永遠の罪 ~Commination To Another Crime~

 

 

 

 

スキマを潜ると神社の境内に立っていた。だがそこは見慣れないところだった。月明かりが照らして辛うじて視界が掴める。

「…………」

辺りを見渡してみるが幻想郷にある神社ではない。どこか博麗神社に似ている気がするが………。

「まずはここが何処か、だよな」

鳥居を潜って神社の外に出た。すると愕然とした。

橙矢の目には

 

 

 

 

 

 

広い森の向こうに大きな街が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「……………外の………世界?」

どういうことか理解出来なかった。ここがもし外の世界だとしたらこの世界に東雲橙矢という存在が認められたということになる。

「…………」

振り返って鳥居にかけられた額縁を見る。そこには『博麗神社』と書かれていた。

「どういうことだ?」

「あれ、こんなところに人が?ちょっとメリー!メリー!」

「何よ……。人見て指差さないの」

長い階段下に二人の女性がこちらに向かって来ていた。

「……………」

何も言わずに待ち続けていた。

「………何だ、ここに用か?」

二人が橙矢の前に来たところで口を開く。一人が茶髪にもう一人が金髪。何故だろうか、二人は何処かで見たような気がしてならない。

「…………って腰のもの……か、刀!?」

茶髪の女性が刀に気付いたのか金髪の女性の後ろに隠れる。

「じゅ、銃刀法違反よ!」

「………あー、そういえばそうだったな。向こうでは携帯してたからそのまま持ってきちまった」

「あら、訳ありそうね」

「…………」

「見たところ貴方高校生でしょ?学校はどうしたのよ」

「あんたらもどうなんだよ。見たところ高校生だろ?」

「…………って言ってるけど?蓮子」

背後に隠れている女性、蓮子に言うと恐る恐る出てきた。

「失礼ね……私達は大学生よ!」

「さいですか」

「さて、質問を戻すわ。貴方はどうしてこんなところに?」

「そっくりそのまま返すよ」

「強情ね。まぁいいわ。この博麗神社にはね、この世界と境界が異なるの」

「それで?」

「まだ聞くの?つまりここは境界が不安定で何が起こってもおかしくはないの」

「それの調査、的なものか?」

「ま、そんなところよ。秘封倶楽部って言ってね。まぁ……オカルト倶楽部みたいなもんよ。主に蓮子が面倒事を持ってくるの。今回は別だけど」

博麗神社は別?つまりここが地上の中でも群を抜いておかしいことに気が付いている。

「その、何て言うの?信じてもらえないのかもしれないのだけれど……下手したらこことは違った博麗神社に飛ばされる可能性があるの」

金髪の女性の言葉に橙矢はハッと顔を上げた。

「もしかして………幻想郷、か?」

すると二人は目を見開いて顔を合わせた。

「……ねぇメリー」

「……分かってるわ。貴方が言いたいこと」

「な、何だよ……」

二人して笑うと蓮子が口を開く。

「実は私達一回幻想郷に行ったことあるのよ」

「………自分の言ってること分かってるのか?」

「えぇもちろん分かってるわ。その都度は霊夢さんやらに世話になったし」

霊夢の名前が出たことによって信頼性が増す。

「………ここから幻想郷に戻れるのか?」

「何?貴方幻想郷の住人?」

「一応はそうなってる。元々はこっちの世界出身だがな」

「珍しいわね。家族の人が心配するでしょう」

「…………………いいんだよ」

「そ、なら聞かないわ」

「………助かる」

「え、何かあったの?」

蓮子が橙矢に食って掛かるがメリーがそれを止める。

「プライバシーのない人は黙ってなさい」

「……………」

冷たい一言に蓮子が黙りこむ。

「……それで、貴方は幻想郷に帰りたいの?」

「…………出来るならな」

「いずれにせよ今は無理そうね。一旦戻りましょう。今回はハズレだったわ」

「…………そうか」

「なぁんだ今日はもう終わりかー。まぁ確かにくらいからねー」

蓮子がつまらなさそうに口を尖らせるが素直に階段を下りていく。

「もういいのか?」

「今日は下見だけだからね。ちょっとした調査は明日からよ」

「へー、本格的だな」

「そういうこと。貴方も早く帰っちゃいなさい。……元々住んでいたところに」

そう言うメリーも蓮子に続いて階段を下りていく。

「……………」

一人残された橙矢は神社の境内へと歩み寄り、本殿の前に立つ。

「………今度は幻想郷に弾かれたのか?俺は」

いつもなら妖怪やらが集まって騒いでいる神社、それが今は静かになっている。

「当たり前か、ここは幻想郷じゃないもんな…………」

ふと目を閉じる。

 

 

 

 

 

 

すると瞼越しにも分かるほどの光に包まれる。

 

 

「え………」

目を開くが強すぎる光のせいでそれを妨害される。

「な、何が――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が弱くなって目を開く。そこには変わらない博麗神社が。

………しかしそこは暗くなく、明るかった。だが静かだった。

「……………」

辺りを見渡すと盃を片手に橙矢を唖然と見ている見覚えのある人妖達が。

「…………あれ、戻ってきたか?」

目線を前に向けるとこちらを見て口を開いたままになっている霊夢とその霊夢に酌をしている紫がいた。

「し、東雲…………さん?」

「あぁ紫さん。無事だったんだな」

「と、橙矢……。どうして………」

「………ん、あぁそういえば俺死んでることになってたんだな」

「死んでること……?ど、どういうことよ紫…………」

霊夢が紫に視線を向ける。紫は気まずそうにしながらも口を開いた。

「それは………」

言いかけた言葉を止めて微笑んだ。

「そんなことは後で良いでしょう。今は東雲さんが生きていた、それだけで」

すると急に二つの人影が飛び出てきた。

「橙矢!」

「橙矢さん!」

見覚えのある白狼天狗と地縛霊が橙矢の前に出てくる。

「橙矢、橙矢だよね!本物の橙矢だよね!」

「橙矢さん………」

「あぁ俺だよ」

涙目になりながら橙矢の腕を掴む二人に笑んで頭を撫でる。

「あらあら出遅れたわね霊夢」

「何が!?」

「まぁいいわ。それよりも東雲さん。貴方どうやってあの場から?」

「あの場?…あー、何か助けてもらった後に地上に帰された。そしたら外の世界の博麗神社にいたもんで少し惚けていたらいつの間にか幻想郷に飛ばされていたってこと」

「そう、元の世界に戻っていたの……」

「けれど貴方が住む世界はこっちなのでしょう?」

紫とは違う方から同じしゃべり口調に人物が傘をさして橙矢に近付いてくる。

「幽香、久し振りだな」

「……えぇ、本当にね」

すると幽香は不意に橙矢を真っ正面から抱き締めた。

「え、え………え?ちょっ、幽香!?」

「何よ、一ヶ月も………私達に寂しい思いをさせたのよ?このくらいいいじゃない」

より一層強く抱き締める。

「貴方がいなくなった幻想郷はほんとに……ほんとにつまらなかったわ」

「………そりゃあ悪かったな」

「あ、こら花妖怪!何やってるのよ!」

幽香を追うように天人が人混みを掻き分けて出てくる。

「………チッ、邪魔が入ったわね」

「何が邪魔ですって!?」

「はいはいちゃんと相手してやるわよ。じゃあね橙矢、また後で」

ため息を吐いて幽香は橙矢から離れる。

「なんだ、天子もいたのか」

「そりゃあこの宴会は貴方が起こした異変が解決した祝いとしてのもの。だからその関係者は出席することになってるのよ」

「…………そうか」

「ほんとは異変を起こした東雲がいなくなったからやらないって言ってたんだけど急にやるって言って。まぁ事が事だから普段宴会には出ない者達も来てるんだけど」

そう言う天子が指差す先には命蓮寺の面々と神霊廟の面々が。

「………あの異変で失った物は大きいわ。だけどそれは全て取り戻せる物。とりあえず妥協点、と言ったところかしら」

急に背後から別の声が聞こえたかと思うと橙矢は苦笑いして振り返る。

「急に背後に現れないでくださいよ咲夜さん」

「それは無理な話よ。貴方の不意を突くのはこの方法じゃないと」

「咲夜さんの手品ならなんでも不意を突かれますよ」

「嫌味も相変わらずね」

「変わりませんよ俺は」

「何がともあれ、久しいわね」

「えぇ、そうですね。お嬢様は?」

「数日前に貴方の懐中時計が渡された時から気力というかそんなものが感じられなくなったわ」

「…………そうですか」

「今までは、だけど」

「今までは?ど―――」

いうこと、とは続かなかった。言いかけた途中で横から主人であるレミリアとフランに突撃されたからだ。後なんか追加にもう一人。

「東雲お兄ちゃん!」

「お嬢様にフラン……!?それにこい……」

三妖怪に突撃されて耐えられる忍耐力を持ち合わせていない橙矢はいとも簡単に勢いに負けて仰向けに倒れる。

「……………」

「橙矢!橙矢なのよね!」

「お嬢様……。えぇ、そうですよ」

「お兄様………」

「こらこら、橙矢が困ってるだろ。離れたらどうだ」

新たな人影が三人の首根っこを掴んで離れさせる。

「あー!放せー!私まだお兄様に触れていたいー!」

「橙矢が困ってるんだからやめてやれよ」

顔を上げるともんぺが特徴的な妹紅が立っていた。

「………助かったよ」

「どういたしまして」

妹紅は笑みを浮かべてお三方を放す。

「ま、久し振りに橙矢に会えたからテンションが上がるのは分からなくないけど少し抑えようか」

「うぅ………」

「何がともあれ貴方が帰ってきたのは事実のようね」

混乱から抜け出したのか霊夢が橙矢の前に歩み寄ると手を掴んで宴会の中心へと引っ張っていく。

「え、ちょっ、霊夢!?」

目立つのが苦手な橙矢は必死に抵抗するが、

「そんな嫌がらずにさ」

「宴会は主役がいないと始まりませんしね」

村紗と椛がその背を押す。

「お前ら……グルかよ!?」

「いいから、せっかく貴方がいるもの。貴方以外に誰が音頭を取るのよ」

「……………」

じゃあよろしくね、と言って橙矢を軽く押す。

「あんた達!注目なさい!!」

霊夢が声を上げるとそれまでの騒がしさはピタッと止まり、視線が橙矢の方へと向く。

「後は頑張りなさい」

全てを橙矢に丸投げした霊夢は元の場所へと戻っていく。

「………………」

村紗と椛の方を見るが同じ反応だった。

ひとつため息をつくと腹をくくって口開いた。

「えー、まだ幻想郷では新参者の俺が音頭なんてとっていいのか分からねぇけど……。まあそれは置いといてだ。この宴会は俺が起こした異変が解決したから行われているもんで……かなり居づらいがとにかく集まってくれたことには感謝する。……と同時に悪かったな、色々と迷惑をかけて。俺がこっちに来てから異変がかなりの頻度で起こって、その度に俺がでしゃばって………それで今回はこの様だ。結局は解決する側から解決される側へと人事異動だ。………ほんとにすまない」

橙矢が頭を下げるとざわめきが起こる。そういえばそうだった。橙矢は今までで素直に謝り、頭を下げたことはなかった。

「………宴会だから言えることだ。もう二度と聞けないと思え。……と言ってもお前らはそんなの気にするタイプじゃないよな。今か今かと音頭しろって分かる」

苦笑して空の盃を手にする。

「今日は無礼講だ。いつも通り好き勝手騒ぎやがれ」

橙矢がそう言うと地響きのような鬨の声を上げて再び騒ぎだす。

「ハッ、相変わらずな連中だな」

「まぁ今回は事が事だから仕方ないわ」

「…………そうか」

近くに来た霊夢は持っている盃を傾けて口に流す。

「…………橙矢は飲まなくていいの?」

「前の宴会でも言ったように俺は飲まねぇよ」

「でしょうね」

「おアツいところ悪いわね。失礼するわよ」

青と赤を基調とした服を着た医者が前に現れた。

「あぁ医者、その節は世話になったな」

「どうも、元気そうで良かったわ。…世話になったのはこっちもだけれど」

「………………」

首を捻るがすぐに数日前のことを思い出す。

「あのことか。なんだもう連絡が来たのか?」

「えぇ来たわ。野蛮な殿方が都を襲撃してきたって」

「………あの野郎」

「けど助かったわ。ありがとう」

「ほんとだ、あのまま放置してたら本気でやりかねないからな」

「………豊姫はあの扇子で地上の全てを浄化させようとした。それが何故だか分かる?」

「……………いや、それは分からないな。あいつを止めるだけで精一杯だったからな、その時は」

「恐らく月から地上に逃げ、穢れた者達を再び浄化しようとしたのでしょう」

「ちょっと待てよ。穢れた者達って………」

「そう、私と鈴仙、それに輝夜よ」

「……そうか」

「確かに地上は穢れて混沌としているわ。けど住めば都。悪くないわ」

「俺には月の都が穢れて見えるけどな」

「それは地上の人の意見ね。私も少なからずだけどそう思い始めてきたわ」

「ん、月の者は違うんじゃないのか?」

「もうすでに私達は地上の人間よ。貴方達と同じね」

「…………そうか」

「地上に落ちた私達は永遠に罪を購わなければならないわ」

「…………永遠の罪、ね」

「そう、貴方達人間は死ぬことでその罪から解放される。だけど私達は死ぬことはない。だから地上で、生きることでその罪を積み重ね、そして購っていく」

ふと顔を上げると満月の月が。

「………だけどその運命に抗ってみせる。私は蓬莱の薬の作った。だからそれとは対になるものを作る義務がある」

「……………」

「蓬莱の薬を輝夜が飲んで私は地獄を見せてしまっている。………必ず、必ず呪いは解けさす」

立ち上がると笑みを作って宴会の中へと戻っていく。

「暗い話ごめんなさいね」

「いや、話してあんたの気が楽になったんだったらそれでいい」

「……………そう言ってくれると嬉しいわ」

「……ねぇ橙矢?今の話………」

「おっとそれまでだ霊夢。プライバシーの侵害だ」

開きかけた口を閉ざさせると霊夢は拗ねたように口を尖らせる。

「何よ。私には話せないっての?」

「そういうことだ。残念だったな」

「…………腹立つわね。もういいわ。貴方なんか酒に溺れれば良いのよ!」

霊夢が橙矢の腕を掴むと宴会の中心へと引っ張っていく。

「おいおい、マジかよ……」

「うるさい馬鹿!どんな思いでこの一ヶ月過ごしてきたと思ってるのよ!」

急に放すと霊夢は不機嫌そうな表情を一変、嬉しそうな笑みへと変わる。

「けどまぁ……貴方が無事で良かったわ、橙矢」

「…………」

「これからも、よろしく頼むわ」

差し伸べられる手を少し見た後やれやれと苦笑いしたてその手を取った。

「………あぁ、俺からも頼むよ」

 

 

 

 

 

一度、楽園を救って命を落とした少年は再び楽園を救った。まぁ月人の気紛れもあるかもしれないが。だがそれでも少年は救った。

 

 

 

 

生まれたときから永遠の罪を人間は、妖怪は、神は、背負っている。それは逃れられない運命だ。だが一度死んだ者はどうなるのだろうか。それは誰にも分からない。

だからこそ少年は生まれ変わり、再び罪を被る。一人の人間であるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これから東雲橙矢の第二の人生が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






色鉛筆ってかなり高いんですね………。
そしていつも通り最後が雑という……。
それと今回は特に誰ルートとかありません。最後少し霊夢が出てきましたが宴会場所が神社、ということで霊夢にしただけです。
ほんとは外の世界で終わるつもりでしたが一回くらいはhappyendやろうぜと思ってそうしました。

さてさて、それはどうでもいいとして。今回のifstoryのリクエストをくださったのは

tikyu-giさん
山崎まささん

とお二人でした。本当にありがとうございます。そして誠に勝手ながら二つのリクエストをひとつにまとめてしまいました。すみません。話が作れなかったため、合併させてしまいました。

次回もリクエストの話を投稿していきます。

では次回までバイバイです。

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