【挿絵表示】
今回は東雲橙矢のメイド服Ver.を描かせて頂きました。うーん、予想よりかは上手くかけたつもりでしたが………
ではではどうぞ。
図書館の整理をし終えた橙矢は図書館で本を読み漁っていた。
「はーすげぇな。読みたい物が全て揃ってますね」
「その声で男口調だとかなり違和感があるわね」
「………ですね」
すでに日は傾いていた。もう少し読んでいたいところだが……食事の用意をしなければいけないだろう。
椅子から立ち上がって身体を伸ばすとパチュリーに向き直る。
「パチュリー様、本日は読ませて頂きありがとうございました」
「何言ってるのよ。貴方が手伝ってくれたからそのお礼よ。それに、言ってくれればいつでも読みに来ていいのよ?」
「ほんとですか?」
「えぇ、何だか貴方とは気が合いそうだもの」
「それは嬉しい限りです。では今夜……というか仕事が終わり次第来てもよろしいですか?」
「良いわよ。どうせ私はこの図書館から出ることなんて滅多にないから」
「それって世に言う引き篭もりというやつでは」
「断じて違うわ」
「………左様ですか。では俺は夕食の支度をして参ります」
「行ってらっしゃい」
「パチュリー様もそろそろ移動なさってはどうです?」
「もう少し読んでいたいところだけれど……仕方無いわね」
「……………では失礼します」
頭を下げてから踵を返して図書館を出ていく。
パチュリーはそれを見届けると持っていた本をパタンと閉じた。
「………………さて、小悪魔。行くわよ」
背後に控えている女性に声をかけた。
「あー……色んな意味で疲れた」
食事を済ましてレミリアが風呂を済ませた後、橙矢は許可を得て大浴場の湯船に浸かっていた。
「………ほんとに女になったんだな」
バスタオルを巻いた身体を見下ろす。
実際はバスタオルを巻いたまま湯船に浸かるのはマナー違反だがこの際は仕方無い。
「……………………」
目蓋を閉じてこれまでの事を思い出す。
急に幻想郷という訳のわからないところに迷い込んでそして求人として紅魔館に来たら急に殺されかけてそしたら魔理沙に助けられて、その後レミリアから明日も来いと言われ……そして今に至る。
「ロクな事がねぇ………」
艶やかで長い髪をいじりながら視線を身体に落とした。
「………まさか異世界に迷い込んで早々に性が反転するとは思わなんだ」
なんでそんなに落ち着いていられるかと自分自身で思ってが………簡単にいえば諦めがついた、というべきだろうか。
「まぁ反転したのは本当だしな………」
とその時大浴場の扉がカラカラと軽い音を立てて開かれた。
「いやー今日も疲れましたよー」
「美鈴、貴方寝てただけじゃない」
「寝てないですよ!」
「…………………………まさか」
振り向いて確認しようとしたが寸前で止めた。恐らく声からして美鈴と咲夜だろう。それに大浴場の中だ。バスタオルを巻いているかもしれないがある程度の輪郭は見えてしまう。
慌てて風呂の奥に下がると壁に向き直る。
橙矢は特にそういうことにはあまり興味はないが限度というものがある。咲夜も美鈴もかなりスタイルがいい方だ。外の世界のモデルにも負けないだろう。さすがにそれを身近に元々男だった橙矢が見てしまうのはマズい。
「あれ、誰かいますね」
「あらほんと、誰かしら。何やら綺麗な黒髪で…………」
「妖精メイドでしょうか?」
「おかしいわね。まだあの娘達が入る時間ではないのだけれど………」
「…咲夜さん。あの人………橙矢さんでは?」
(バレた……!)
より深く湯船に浸かるが最早無意味だった。
「…………橙矢じゃない。貴方どうし………って」
咲夜も今の状況を把握したように身体を隠すように湯船に浸かる。
「どうして貴方がここにいるのよ……!」
「え、あ、いや、その………お嬢様に先程許可を貰いまして……それで入っていたのですが」
「お嬢様に?そうだったんですか。けどどうして橙矢さんはそんなに隠れているんです?」
「いやいや、さすがに二人の裸体を見るわけにはいかないから」
「あぁそういえば橙矢さん男でしたね。忘れてました」
いや忘れるって何なんだよ美鈴。お前の脳みそは鳥以下か。
「…………………意外と酷いんだな」
「い、いえそういう訳ではなくて……!」
「―――美鈴、さすがに今のは無いわよ」
新たな声が聞こえてくるが橙矢は振り向かない。
「パチュリー様、ですか」
「あら東雲もいたの。……けど丁度良かったわ」
「?俺に何か御用で?」
「ちょっとね、貴方が見ていた本を見ていたのだけれど」
「あぁ神話に関することですよね。ですがどうして俺の読んだ本を読んでいたのですか?」
「興味があったからよ。貴方がどんな本を読んでいるか気になって」
「なるほど。それで?」
「少し貴方に私から口授してあげようと思ってね」
「はぁ………」
パチュリーが湯船に浸かる音がすると口を開いた。
「さて、橙矢。まずだけれどこの幻想郷に神がいることは知ってる?」
「ゑ、妖怪だけじゃなく神もいるんですか?初耳です………あ、そういえば霖之助から聞いてました」
「ならいいわ。それでどんな神かは?」
「それまでは教えてもらってないです」
「えぇと……妖怪の山の中腹にある守矢神社ってところに二柱の神がいるのよ。確か一人が山の神であり、風雨の神であり、農業の神。そしてもう一人が祟り神」
「最初の神様はまだいいですけど……祟り神、ですか……。かなり質が悪いですね」
「細かくいえばあと一人、人間の姿をした神がいる。その神の事を現人神と呼ぶ」
「現人神………」
「そう、前の二柱の神に比べれば力はまだ幼い方よ。……それと厄病神もいるわ」
「疫病神?」
「違うわよ。厄病神。……厄病神というのは文字通り厄をその身に下ろした神」
「………」
「あまりにも厄が強すぎるせいでそんじょそこらの野良神では太刀打ち出来ないからよ。……近付いただけで厄がその者に移り、不幸にさせる。可哀想にね」
「…………………………」
「っと、さて話が逸れたわね。戻すわよ。まぁ他にも幻想郷に神はいるのだけれど代表的なものはこれで………」
「あ、パチュリー様、豊穣の神と紅葉の神のことは………」
咲夜が口を挟むとパチュリーは気付いたかのようにあ、と声をあげる。
「いたわねその神様。忘れてたわ」
忘れられてる神様って………。
「その神様はあまり信仰が無くてね」
「あぁ…………」
「まぁその神の事はいい。貴方が調べていたものは日本の神話だけじゃなくて他の国の神話のことも調べていたでしょう?」
「え、えぇまぁ……」
「特に見ていた項目はヒンドゥー教の神である破壊神または創造神のシヴァのところ」
「………ご名答です」
「珍しいわね。今時ヒンドゥー教の神様なんて調べる人がいるなんて」
「……………暇潰しにですよ」
「………分かってると思うけれどシヴァはまたの名を破壊神、創造神よ。シヴァはその二つ名の通り、世界を破壊出来る力を持っている。さらに壊した世界を創造して作り替える力も兼ね備えている。神群の中でもかなり上位に位置してる、けれど彼が属しているヒンドゥー教はそれほど高くないみたいだけれど」
「そんな神様の上にまだ神様がいるんですよね……」
「そうね。代表的なものだと絶対神ゼウスを筆頭に冥府の神オシリス、天空神アイテール太陽神アポロンなどがいるわ」
「そんなにも………」
「だけどシヴァはそれに劣らないほど戦闘技術に富んでいる。……恐らくこの幻想郷で敵うものはいないほどに」
少しパチュリーの声が低くなった。それほど真剣なことなのだろう。
「それにシヴァはね、四人の妃がいてね。サティー、パールヴァティー、ドゥルガー、カーリー。そしてその中でも最初の妃であるサティーと彼は命を繋げた」
「繋げた……?それってつまり……」
「そうよ、シヴァはあまりにも愛しすぎたためサティーと命を繋げた。そして彼は死ぬときはいつも同じだと。そう言い訳して」
「…………………」
「……………サティーは何も言わずそれに従ってそして………………その数百年後にサティーはシヴァとの命を千切り、その命を自ら断った。……何故そんな事をしたかは知らないけど。悲しみに暮れたシヴァはサティーの骸に抱き寄せて世界を破壊して回った。……それは絶対神ゼウスによって止められたけど」
「……………」
「シヴァは力が強すぎた。それ故にそれからは力を封じた。………皮肉なものよね」
「パチュリー様………。貴重なお話ありがとうございました」
「あら、誰ももう終わりとは言ってないわよ」
「え?」
「私はね、サティーがシヴァの拘束をどう解いたのか、それが気になって調べて……そしてついに私なりの解き方を編み出したのよ」
「………マジですか?」
「大マジよ。………まぁそれは図書館のいつもの私の席の近くの本に書き記してあるから暇だったら見に来なさい」
「……ありがとうございます」
「気にしなくてもいいのよ。……ま、さすがにこれ以上の事を調べすぎると身体に悪影響が出そうね」
「悪影響、ですか?」
「そう。………いい?確かに強大な力を付けることは悪いことではないわ。けれどつける力は強大であれば強大であるほどその代償は大きくなるわ。………東雲、貴方はそうならないようにね」
「…………肝に銘じときます」
「ならいいわ。………それよりも東雲」
「なんでしょうか?」
「貴方いつまで壁と睨めっこしてるつもりなの?」
「…………………………」
それ今言うときじゃないだろ。
………結局女性人全員が出るまで橙矢は壁と睨めっこを続けた。
次回は本編を投稿させて頂きます。
そういえばアクセス数が10,000件越えました!ありがとうございます!
では次回までバイバイです!