東方空雲華【完結】   作:船長は活動停止

111 / 159


ではではどうぞ。



第百十一話 異変の解決策

 

端からみて有利に進めていたような橙矢はかなり息を取り乱していた。その理由は残りの霊力、妖力、神力の力だった。

今は何とかして残り少ない力を駆使し、有利に見せているだけだ。

「……あら、橙矢。貴方息が上がってきてるわよ」

「………気のせいだ」

幽香の言葉に重たい身体を動かす。

「………そういえばさっき貴方、この異変を止めたきゃ自分を殺せ、なんて言ってたけどそんなことしたって別に幻想郷の崩壊が止まる、なんてことではないのでしょう?」

「確かにそうだ。だが俺を殺さない限り幻想郷の崩壊を止められる霊夢を止めている。つまり霊夢がこの場にいる時点でお前らの劣勢に変わりはしねぇんだよ!!」

嗤いながら跳んで木に掴まるとへし折って霊夢に投げ付ける。

「きゃ……!」

間一髪で避けると目の前に突き刺さる。立て続けに投げつけて霊夢を囲うように突き刺すとひとつの木に刀を刺して結界が張られて霊夢を取り囲む。

「な……何よこれ!」

祓い棒を叩き付けるが結果は弾かれるだけであった。

「お前らがそれぞれの力で結界を張れると同じように俺も結界を張ることが出来る。それだけだ。あぁけど破ろうとしたって無駄だ。お前が持つ霊力や破れる妖力と違い今のは神力を使ってるからな」

「……!」

「霊夢!今破るわ!」

「お前は少し黙ってろ!」

霊夢を囲む結界に幽香が駆け出すとその間に橙矢が割って入り、懐に潜り込むと幽香の勢いをそのまま殺さずに手首を掴んで返すと地に叩き付けた。

「しばらく大人しく――――」

傘の先端が橙矢を首もとに突き付けられる。

(しまっ―――)

避けられないと判断すると防御壁を素早く展開し、それを分解させて幽香を吹き飛ばそうとする。しかしその前に光が集束し、橙矢の首に閃光が奔る。強化させて威力を減らそうとするが無意味だった。橙矢が勢い良く吹っ飛び、地を転がる。それと同時に幽香も防御壁によって吹き飛んだ。

「ゲホッ!ゴホッ!………カ……ァ……」

相当効いたのだろう大きく咳き込みながら立ち上がろうとする。

「……今のを喰らって生きてるなんて……」

呆れながら幽香は橙矢の目の前に来ると髪の毛を掴んで顔を上げさせる。

「ハァ……ァ………ハァ……」

息も途切れ途切れになりながらも不屈の瞳を幽香に向ける。

「まだやるつもりかしら」

殴り付けられて橙矢が木に激突する。

「グ…………」

再び立ち上がろうとする。

「しつこいわね……」

「それだけが取り柄なもんでね………」

肩で息をしながら刀を構える。

そんな橙矢にナイフが突き刺さった。

「…………!」

足の力が抜けて膝が折れる。そこに錨が翔んできて橙矢に激突して血を吹き出す。

「橙矢、止めさせてもらうよ!」

「…………」

血を拭って足を強化させると一気に跳んで天子に迫る。

「こっちに来たわね……!」

刀と緋想の剣が火花を散らして拮抗する。

しかし相当疲弊していたのか橙矢が押し返されると天子が真っ直ぐ橙矢に緋想の剣を向ける。

(この構えは―――――)

「全人類の緋想天―――――!!」

緋色のレーザーが超至近距離から放たれ、橙矢を貫いた。

「……ァァアアアア!!」

残りの霊力を刀に込めて弾いた。

「やるわね!」

緋想の剣で下から斬り上げられ、上空に打ち上げられる。

「フェニックス再誕!!」

身動きが取れない橙矢にスペルを宣言すると妹紅は自身に焔を纏わせ不死鳥と化する。

手を翳すと橙矢目掛けて弾幕がばら撒かれる。それを腕を強化させて振り抜くと逸らさせる。

「まだ終わらせる訳にはいかねぇんだよ!」

「しつこい奴め……!」

「それはこっちの台詞だ!!」

落下する勢いで刀を振り下ろし、対する妹紅は焔を凝縮させて受け止めた。

「何だそれ……」

「ただ単に焔を凝縮させただけだ」

「そんな程度で防げると思ってるのか!」

刀を硬化して振り抜くと焔ごと妹紅を斬り裂く。

「もちろん思ってなんかいないさ……」

「何……?」

「それは囮だ!!」

「ッ!」

ナイフが首に突き刺さり、動きを止める。その隙に天子と幽香が左右に散った。

「お前ら…………!」

「覚悟することね橙矢」

「諦めなさい東雲!」

閃光とレーザーが橙矢に向けて放たれる。

「――――――!!」

左右からの挟撃に対応出来ずにまともに幻想郷の中でも最大威力を持つ二つのスペルを喰らった。

「…………―――――」

橙矢の身体が宙を舞い、地に堕ちた。

「橙矢さん!」

「橙矢!」

椛と村紗が橙矢に駆け寄る。

「………終わったわね」

それを横目に幽香が傘を下ろして息を吐いて霊夢の方へ視線を寄越す。

丁度結界を解除させたところだった。

「…………それで彼、どうするつもり?」

顎だけで橙矢を示す。

霊夢は目を伏せると首を横に振った。

「…………彼はもう終わりよ。……私の勘では自分の力ではもう動けないはずよ。あんな力業のスペルを何度も受けたのだもの。普通なら一回で重傷なのに……。動いたらそれこそ人間辞めてるわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

橙矢が目を覚ますと何処か分からない花畑にいた。

身体を起こすと花が舞う。

(あれ、……ここ何処だ?)

確か妖怪の山で幽香と天子のスペルを喰らって………喰らって…………そこから思い出せない。

「………花畑…か。太陽の向日葵畑、ではなさそうだな」

確かにあそこでは一年中花が咲いているがどうも雰囲気が違う。生命が感じられないのだ。ただひとつも。

花が咲いているくせに花の存在が疎かになるほどに生命が感じられない。

「何なんだよここ………」

ある意味恐怖を感じながら辺りを見渡すが永遠と花畑が続いているだけだ。

 

 

 

 

 

「――――――東雲さん」

 

 

 

 

 

不意に後方から声がかけられた。そしてその声を聞くと同時に橙矢は目を見開いた。

その声に聞き覚えがあったからだ。しかもそれは絶対に橙矢の耳に入らないはずの声。

勢い良く振り返る。

そこには――――――――

 

 

 

 

 

 

「お久し振りですね東雲さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

微笑んでいる新郷神奈の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 




感想、評価お待ちしております。

では次回までバイバイです!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。