東方空雲華【完結】   作:船長は活動停止

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どうも、お久しぶりです。犬走夜桜です。

いやー、今回の考査かなり苦戦しまして。……赤点ないといいね夜桜君……。

ではではどうぞ。



第百四話 戻れない関係

 

斬撃が美鈴と咲夜に迫る。が、二人は冷静に左右に跳んで避ける。

その事を想定していた橙矢は美鈴に狙いをつけて一気に接近して刀を振り下ろす。

しかしそれは咲夜のナイフによって止められた。

「チッ………!」

舌打ちすると下から蹴りあげて弾く。刀を振り上げると腕を強化して刀を投げ付けた。

「え――――」

突然の反撃に反応出来なかったのか美鈴の肩に刀が突き刺さった。

「………ッ!」

「気を逸らすな」

いつの間にか橙矢が目の前にまで迫っていた。慌てて蹴りあげるが避けると美鈴の肩に刺さっている刀を掴んで引き抜く。

「グ……!」

「一瞬たりとも気を抜くな。じゃないと……お前らを彼岸送りにするぞ」

「……執事風情が……大口を叩けるようになったのね」

「……………大口、ですか。しかし咲夜さん。俺はあんたらに敗ける要素が何処にもない。……はっきり言えば勝つより敗ける方が難しいと思いますよ」

「……ふん、勝手に言ってなさい」

「そうですか……では行かせて頂きますよ」

足を強化すると地がめり込むほど踏み込むと斜め前に跳ぶ。そして紅魔館の壁に着地すると咲夜目掛けて跳ぶ。

その前に美鈴が割って入ると橙矢の顔面に蹴りを放った。

「くそ……ッ」

地に手を着くとバック転して距離を取り、刀を振り上げて斬撃を放つ。

「ハァッ!」

美鈴が拳を斬撃目掛けて叩き付ける。

斬撃が晴れると同時に橙矢が飛び込んできて美鈴の肩を蹴りつけた。

「…………ッ!」

上体が仰け反って隙だらけになる。

「しま―――――」

「吹っ飛べ」

腕を限界まで強化させると腹を突き上げるように殴り付けて吹き飛ばした。

美鈴は勢いよく吹っ飛んで紅魔館の壁に激突して……起き上がる事はなかった。

「ぐ………」

「敵から目を逸らすな」

美鈴の方へ駆け出そうとしていた咲夜の背に一瞬で迫ると刀を構える。

「結局咲夜さんも相手じゃありませんでしたね」

引き絞った刀が咲夜の背に迫る。

そして突き刺さる。―――――寸前

橙矢の足元に魔方陣が展開して橙矢の動きを封じた。

「―――――ッ」

「こ、これは………」

「咲夜!美鈴を連れて退きなさい!」

館の奥からパチュリーの声が聞こえてから姿を現す。

「図書館から出てきても良いので――――」

「いいから早く退きなさい!もう長く持たないわ……ッ!」

「ッ!」

魔方陣の方を見ると皹が所々入っていて辛うじて橙矢の動きを止めている、といった感じだ。

すぐに美鈴を抱えるとその場から姿を消す。

それと同時に魔方陣が破壊された。

「私ほどの魔法使いの魔方陣を破壊するなんて………人間辞めてるわね」

冷や汗が一筋背を伝う。今発動させた魔方陣はパチュリーが有する中でもかなり強力な方だった。それ故に簡単にこうも破壊されるとは思わなかった。

「……………………マズいわね」

「何がですか?」

屈み込ませると一気に跳躍して刀を振り下ろす。

「――――ッ!」

すぐさま魔力の壁を造ると防ぐ。が、勢いは殺せず大きく後退する。

「ッゥ!火符〈アグニシャイン〉!」

崩れ始める壁の陰からスペルカードを放つ。

しかし橙矢も不可視な壁を築いて防ぐ。

「何なのよそれ……ッ!」

「………さぁ。俺もよく分かりませんね」

だがまぁ……、と一旦言葉を区切って刀を振り上げた。

「パチュリー様に一人くらいならわけないですよ」

壁に刀を叩き付けると皹が入って砕け散る。

「……………仕方無いわね」

大きく後退して橙矢との距離を離すと手を地に置くと魔方陣が描かれて二つの人影がその中から出てくる。

「……………………」

「……二人とも、頼むわ」

パチュリーがそう言うと二つの人影は橙矢に飛んでくる。

「おっけーい任しときな!行くよお空!」

「分かってる!」

一人はゴスロリっぽい服装に猫耳を生やした少女。もう一人のお空と呼ばれた少女は背に黒い翼を生やしたいる。さらにその右手には……なんであろうか。制御棒みたいなものが着いていた。

「お前らは地霊殿の………ッ!」

「爆符〈メガフレア〉」

制御棒が橙矢に向くと容赦なく巨大な弾幕が放たれる。

「チィ………ッ!」

真横に跳んで避けるがいつの間にか猫耳の少女―――火焔猫燐が先回りしていた。

「甘いよお兄さん!」

「……ッ」

蹴りを咄嗟に腕で受け止める。

「金符〈シルバードラゴン〉」

二人の背後から銀色に輝く竜が翔んできた。

「冗談だろ……ッ!」

燐を押し返して刀で受け止める。しかし押し負けて壁に叩き付けられる。

「っの野郎が……!」

腕を強化して輝く竜を力任せに斬り裂いた。

「私のスペルが……」

「嘗めるなよ……魔法使い風情が―――!」

 

 

 

 

 

「―――神槍〈スピア・ザ・グングニル〉」

 

 

 

「―――禁忌〈レーヴァテイン〉」

 

 

 

 

 

神の槍が飛翔して橙矢に突き刺さると同時に焔を撒き散らす剣を振りかざして橙矢に叩き付けた。

「――――――ッ」

血を口から大量に吹き出しながらその場に崩れ落ちる。

なんとかして顔を上げると無邪気な笑顔をこちらに向けているフランドールがいた。

「あ、お兄様まだ生きていたんだ。しぶといわね」

「………………フランドール」

「気安く私の名前を言わないで」

腹を蹴りあげられてさらに血を吹き出す。

「ゲホッ!カハッ!?」

「美鈴や咲夜、パチュリーに手を出しておいてよくもまぁこんなところにいれるわよね。……ねぇお姉様?」

「――――えぇそうね。私の大切な家族を傷付けるものは何人たりとも許しはしないわ……たとえそれが貴方、だとしてもね」

フランの問いにレミリアの声が答えてレミリアが橙矢の前に降り立つ。

「……ッ……お嬢様」

なんとか隙を見付けて反撃しようと試みる。

足を強化して紅魔館の天井へと跳ぶ。そして天井に足を着けるとパチュリー目掛けて落下を始めた。

「―――パチュリーさん、上から来ます」

「分かったわ」

刀でパチュリーを斬り裂く寸前、後ろに後退して避けられる。

「ッ!」

(攻撃が読まれた……!?いや、それよりは―――)

「―――心が読まれている、ですね」

「さとり…どうしてここにいる…!」

「橙矢さんを止めるためですよ。それ以外に理由がいりますか?」

「……………」

「橙矢さん。貴方が今しでかそうとしている事の大きさが分かってないようですね」

「………分かってるさ」

「でしたら尚更質が悪いですね」

「……お前にいくら言われようが今更退く気はねぇよ」

「……貴方の心を読めれば一番手っ取り早いのですけど………やっぱり閉ざしてますね」

「逆に開くと思うか?」

「………ですね」

「………………………」

頭を冷やして辺りを見渡す。丁度壁際に追い詰めた橙矢を囲うように陣形を張っていた。

「禁忌〈レーヴァテイン〉」

「ッ!」

振り抜かれたレーヴァテインを上に跳んで壁に張り付いて避ける。続けて神の槍が飛翔して壁に張り付いている橙矢に放たれる。

「チッ!」

刀を硬化させて無理矢理弾く。その際肩が外れそうになるほどの威力に腕が痺れる。

「やっぱりこのスペルを受け止めるのは辛すぎる……!」

「なら大人しく殺られなさい」

「それは御免被りますね!」

腕を強化して天井を殴って突き破る。

「一旦退却―――――」

「こいし!」

「はいはーい」

不意に上から気の抜けた声がする。しかしそれに似合わないほどの力で押し戻された。

「え――――」

突然のことで受け身も取れず真っ赤な床に背を打ち付けた。

「ッ……………くそ……」

「逃げようなんて思わないことね橙矢。貴方はここで私達に殺られる運命なのよ」

「たかが逃げ道を防いだくらいで勝った気にならないでくださ―――――」

瞬間橙矢の脇腹と太股にナイフが突き刺さった。

「グ………!?」

脚の力が抜けて膝を着く。この攻撃が誰からなのか言わずとも分かる。

「咲夜さん……!」

「…………」

咲夜は何も言わずにナイフを投擲する。

「ッ!」

腕を振り上げて刀で弾く。と、次いで翔んできたナイフが腕を貫通した。

「ッゥ………!」

咲夜を睨み付けると少し悲しげな瞳で見つめ返してきていた。

「………………咲夜さん」

「………何故こんな馬鹿な真似したの?」

「咲夜、今橙矢にそんなこと言ったって無駄よ」

レミリアが咲夜を庇うように前へ出る。その隣に燐が並んだ。

「さてさてお兄さん。今のこの状況。あんたでも分かるだろ?」

「………」

「間違っても抵抗しないように。……完璧に今のあんたは――――詰み、だからね」

 

 




感想、評価お待ちしております。

では次回までバイバイです!

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