東方空雲華【完結】   作:船長は活動停止

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いやー、ついに百話まで辿り着きました。ここまでこれたのは読んでくださる皆さんのお陰です。本当にありがとうございます。
どうぞこれからもよろしくお願いしますm(_ _)m

ではではどうぞ。



第百話 襲撃

 

燃え盛る太陽の花畑から出てきた橙矢はおぼつかない足取りで一歩一歩歩いていた。

「……………………ッ」

顔を歪めながらも歩みは止めない。

「ハァ……ハァ………」

大きく息を取り乱しているが未だに表情は崩していなかった。

「…………」

幽香は斬ったは斬ったが恐らく死んではいないだろう。急所を狙ったつもりだが上手く外された。

それどころかカウンター気味に腹を殴り付けられて痣となっていた。さすがは最強の妖怪というべきか。まぁその幽香を下した橙矢はもっと異常だと思うが。

「………………来る」

一言ボソリと呟いた瞬間、幽香には劣るがそれでも威力が高い光の奔流が飛んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斬、と刀を振り下ろすと空間が裂けて空に冥界への道が出来る。

「………さ、行くか」

そこには今太陽の花畑にいるはずの東雲橙矢がいた。

橙矢は自身の身体を浮かせるとその亀裂の中へと突っ込んでいく。

少し飛んでいくと何処か長過ぎる階段に辿り着く。

「…………あれ、ここ何処だ?」

後ろを振り向くがそこに道は無かった。不信に思いつつも階段を一段一段登っていく。

「しかし高いな………」

ここを登りきったら死ぬんかな、なんて緊張感無く思うと足を強化させて十段ずつ飛び越えていく。

そんなことを何回か繰り返していくうちに階段を登りきった。

「よ………っと、着いたか?」

結局死ななかった。なんて思ってると前方に一人の少女が降り立った。

「あれ、お前確か………」

「久し振りですね東雲橙矢」

長刀を構えた魂魄妖夢が油断無く橙矢を睨み付ける。

「ここは魂だけが辿り着く冥界。命あるものは立ち去りなさい」

「それは無理な話だ」

即答すると妖夢は目を鋭くする。

「では排除させて頂きます」

「どうぞどうぞ」

「………では」

そこで妖夢は一旦言葉を区切ると一瞬で目の前に現れた。

「早急に」

「速い………!」

驚愕するがすぐに冷静になると刀を振り上げて振り下ろされた刀を弾き飛ばす。

「………ッ!」

後ろに跳躍しながら体勢を整えた妖夢は着地すると同時に橙矢へと駆け出す。常人だったら反応すら出来ない速さだ。

だが相手は神殺しただの人間なわけない。

予想通り首を傾げただけで避けると空いた胴に刀を突き出す。

「嘗めないで、ください……ッ!」

宙で腰を捻り、刀を足の爪先で蹴り上げた。

「これを返すか……!」

蹴り上げた方向に回転してバック転をすると距離を取る。

「………やりますね。この間とは大違いです」

「そうか?あの時は後ろに新郷神奈がいたからな」

「それだと新郷神奈がお荷物だったって言ってるようなものですけど」

「だとしたらお前の耳はただの飾りだな」

「そうですか…………まぁ私には関係のない話です。貴方がここから先に行くと言うのならここで始末させて頂きます」

「どうぞどうぞ」

「行きます―――――!」

刀が空気を斬る音がして橙矢は頭を下げて避ける。妖夢の腕を掴むとそのまま下から刀を振り上げる。

その前に妖夢が刀の柄で橙矢の手を殴り付けた。

「ッ!」

思わず手を離し、その間に離れられた。しかし橙矢はすぐさま接近すると刀を腹に突き刺した。

「ガ………ッ!」

「まだ行くぞ!」

引き抜こうとする、が抜けなかった。

「何………?」

「まだまだですね私も………。ですが貴方だけは今、討ち取らせて頂きます!!」

筋肉を凝縮させて刀を留めていた。

「この…ッ!」

「ツメが甘かったですね……!東雲橙矢!」

刀を振り上げて握り締めると橙矢へと振り下ろした。

「覚悟――――!」

 

 

 

 

「…なーんちって」

 

 

 

 

 

「………ッ!」

橙矢の姿が霞のように消える。

「え……?」

刀が橙矢の首もとを通り過ぎた。

「まずは刀を返してもらおうか」

不意に横から刀を掴む手が伸びてきた。

「――――――!」

一気に引き抜いて蹴り飛ばした。

「グ…ァ…………!」

血を撒き散らしながら吹っ飛んでいく妖夢に一瞬で追い付くと首を掴んで地に叩き付ける。

「………ッ!」

「ツメが甘いのはどっちだ?」

刀の先を浅く首に刺す。

「ッァ…!アアァァァ!」

「…………………あばよ」

刀を振り上げて構える。

「最後の相手が俺で間違いだったな」

その一言で妖夢の顔が焦燥に染まる。

妖夢の首目掛けて振り下ろした。

が、妖夢の首に刀が突き刺さる寸前橙矢の背後にスキマが開き、その中から手が伸びてきて橙矢の首を掴み、スキマに引きずりこんだ。

「な……ッ!くそ、スキマ野郎……ッ!」

妖夢を掴んでいた手を離して刀を両手で真後ろに突き刺した。

「そんな事しても無駄よ」

「………ッ離しやがれ!」

「嫌よ。貴方はこっちに来なさい!」

「ゆ、紫様……?」

「妖夢、貴方はよくやったわ。後は任せなさい」

スキマの向こうに妖怪の賢者が現れる。その時スキマが閉じられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

橙矢の視界に光が射し込んだのはスキマに引きずりこまれて一分後の事だった。

「ッ!」

スキマから吐き出されて着地した。

「何処だ………」

辺りを見渡すと広い楼が建っていた。さらに所々に妖夢の近くに浮いている魂魄が飛び回っていた。

「………ここは?」

「白玉楼よ」

橙矢の問いに答えたのは先程スキマへと引きずりこんだ本人、八雲紫。

すぐさま刀の先を突き付ける。しかし橙矢の背後に何者かの気配を感じた。

足を強化させて真横に跳ぶ。

「あらあら情けないわね。すぐ逃げるなんて」

橙矢の背後にいたのはいつかの亡霊の西行寺幽々子だった。

「……亡霊。やっぱりここはお前の住み処だったのか」

「そうよ、ここは冥界だから亡霊の私が管理しなくちゃ現世へ亡霊が出ちゃうのよ」

近くを漂う魂を掴んで手玉のように遊ぶ。

「………お前はこの前現世へ出ていたが」

「それは良いのよ。緊急事態だから」

「……………………」

「私からも1つ聞くわ。………どうして貴方がこんなところにいるの?」

「……………………」

「答える気は無いようね。けどここに来た理由は分かるわ。ねぇそうでしょう東雲橙矢、………いえ、東雲橙矢に化けた誰かさん?」

「――――――――」

紫の言葉で橙矢の顔から表情が消えた。

「………里で会ったときとはかなり雰囲気が違う。東雲さんは目的があって初めて行動をする人よ………だけど貴方からは行動の目的というものが感じられない」

「…………………ハッ、何を言うかと思えば。……ハッタリも良いところだ。目的無しで俺が行動している?馬鹿言え。俺にはちゃんとした目的がある。それはこの幻想郷の破壊。シヴァの意思を継いで俺は破壊させる」

「………ふふっ………馬鹿ね。私を誰と思ってるのかしら」

紫が橙矢に歩み寄りながら周りにスキマを展開していく。

「………貴方が幻想郷を破壊?笑わせないで頂戴。貴方風情が壊せるほどこの幻想郷は容易くないわ」

言うと同時に弾幕を放ってきた。

「急にかよ……!」

手を翳すと全て弾き返す。

「面倒ね……魔力の壁?それとも妖力、あるいは――――」

「何ブツブツ呟いてんだ!」

弾幕に紛れて接近すると懐の中に飛び込む。

「――――かかったわね」

橙矢の目の前にスキマが開いてその中から弾幕が橙矢目掛けて飛んできた。

「ッ!」

反応することが出来ずにまともに喰らう。

吹っ飛んだ橙矢の上に幽々子が現れる。その手には一枚のカードが。

「華霊〈ゴーストバタフライ〉」

無数の蝶が舞うと橙矢に直撃した。

 

 




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では次回までバイバイです!

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