そうして、一色いろはは本物を知る   作:達吉

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■3話 オツムの足りない犬

「えええええぇっ! さっきのがストーカーだったの!?」

 

 はい、そうです。

 なので、あんまり大声で言わないで下さいね、結衣先輩。ものっそい外まで聞こえてますから。

 

「キモいキモい! まじキモすぎ! ヒッキーの100倍キモい! うわーんいろはちゃんかわいそーっ!!」

 

「ねぇ、俺をキモさの基準にすんのやめてくんない? 100ハチマンてことなの? キモさ108万とかすげえな」

 

「駄目よ由比ヶ浜さん。基準にするならマイナスではなくゼロを用いないと」

 

「曲がりなりにも活躍した直後ですらこの扱いってどうよ」

 

「貴方の評価ならさっきの件で確かに上がったわ。ただ時間と共に常に低下しているから、元に戻っただけで」

 

「何それ無理ゲー過ぎるだろ。ちょっと人生返品してくるわ」

 

 小芝居を始めた二人を尻目に、ようやく事情を理解した結衣先輩があつーいハグで慰めてくれた。

 

「おーよしよし。いろはちゃん、もう大丈夫だよー」

 

 ゆ、結衣先輩の、おっきいからちょっと苦し…むぎゅ。

 うーん、これが女の包容力…。

 

「いえ、せんぱ…むぐ、わたしはちゃんと…むぎゅ、感謝、してまっ…むぎゅう」

 

 あっ、先輩が赤くなった。

 意外とキモかわいいな、ちゃっかり照れて――るワケじゃなさそうですね、これは。

 

 わたしのことを圧迫しながら自在に形を変える、結衣先輩のバストが目に入っただけでした。ハシビロコウ並みに動きたがらないあの腐った目ですら引きつけるなんて…巨乳のチカラ恐るべし。

 まったく、大きければいいってもんじゃないんですよー、これは。大事なのは形──もいいじゃん結衣先輩。チッ。

 

「でもヒッキー、なんで追っかけて捕まえなかったの?」

 

 潰れてやさぐれていたわたしを解放し、かわいい握りこぶしをかざす結衣先輩。そんな彼女に対して、ちょっとオツムの足りない犬を相手にするような口調で

 

「いいか、よく聞け由比ヶ浜。まず、さっき逃げたヤツが一色の話に出てきた相手だという証拠が無い。そして、ヤツが俺たちの話を立ち聞きしていたという証拠、これも無いよな? 通りすがりだと言い張られたらそれまでだ。んで最後に、もしも首尾良くそれらを証明できたとして、けれども立ち聞きしていた程度では犯罪として扱われない。分かるか?」

 

 と、先輩は説いて聞かせた。

 

「えぇー!? 100パー盗み聞きしてたじゃん! いろはちゃんのストーカー以外ありえなくない?」

 

 今の話を聞いていたとは思えない、じつに小学生のような素直なご意見。でも、わたしもどっちかって言うと、彼女寄りの頭の構造だったりする。

 ただ、この感情論では大人を説得出来ないってことくらいは、わたしでも分かってるのだ。

 

「由比ヶ浜さん、残念ながら彼の言う通りよ。仮にそれらの証拠があったとしても、全て状況証拠に過ぎない。どれも一色さんのストーカーであるという直接証拠にはならないわ」

 

「…そ、そっかぁ。そーだよね」

 

 へらっ、と愛想笑いを浮かべて引き下がる結衣先輩。

 ぜったい分かってないなぁ。わたしも良く分かんないもん。

 

「そういうことだ。そしてアイツを見逃した一番の理由だが――」

 

 先輩は、びしりと人差し指を立て、そしてキメ顔でこう言った。

 

「間違って肉弾戦にでもなってみろ。絶対に俺に勝ち目は無い。ゆえに、最初からこの場での捕縛は不可能だったわけだ。以上、証明終了( Q . E . D . )

 

「ヒッキーかっこわるい…」

 

「予想を裏切らない頼りなさね」

 

「先輩ちょーダサいです」

 

 安定のクオリティだった。

 

 そりゃそうですよねー。

 葉山先輩ならともかく、先輩が悪者をボコボコにして追い払うとかね…。そんなの、ミスキャストにもほどがある。このひとのやり口って、犯人を逆に脅迫して動けなくするような、絡め手のタイプだし。

 

 なんて、みんな口では散々先輩を罵っていたけど、一難去ったことにホッとしていたみたい。部室に広がる空気から、それが伝わってきた。

 

 

* * *

 

 

「さっきは言いそびれたけれど──やはり担任には報告するべきじゃないかしら」

 

 長机を囲んで一息つくと、背筋をすらりと伸ばした雪ノ下先輩が言った。

 

「私達が考えているよりずっと、事態は切迫していると思う。まず彼女の担任教師に相談して、その後で警察にも連絡するかを検討すべきだわ」

 

 遅れて恐怖感が襲ってきたのか、かなり事態を重く扱っているようだ。色白の顔が、さっきよりも少し強張っている。

 当然だろう、わたしなんてさっきから怖がりすぎて少し麻痺してきてしまった。事の深刻さを考えると、笑っていたさっきまでの方が異常かもれない。

 

 もちろん、彼女の言うようにすべきなのは確かなんですけど──。

 

「それはそう、なんですけどね? ええと…あの…何といいますか…」

 

 さっき教室から逃げ出したとき、実は一瞬だけ、わたしの頭には二つ目の選択肢がチラついた。

 

 一つ目はもちろんここ、奉仕部。

 そしてもう一つは──えっ? グラウンド? いや何でそんなトコ行かなきゃいけないの? 職員室に決まってるでしょ。

 

 けれどその二つ目の候補は、逃げ込んだその先を想像した瞬間に、すぐさま却下されてしまったのだ。

 

「待って、ゆきのん」

 

 気がつくと、結衣先輩が心配そうにわたしの顔を覗き込んでいた。その表情は、わたしの考えを見越した上での気遣いに溢れている。

 このひとホントよく気がつくなぁ、なんかママみたい。きゅっとわたしの手を握って、彼女は雪ノ下先輩に向き直る。

 

「ストーカーに遭ってるとか、そんなの簡単に言えないよ。確かいろはちゃんの担任って男の人だし」

 

「なら別の女性教諭か、養護教諭にすればいいでしょう」

 

「それも一緒だよ。先生に言うって事は学校に言うってことでしょ? そんなんすぐ噂になっちゃうに決まってるし」

 

「それは…実際に問題行為なのだから、校内に広く認知されるのは当然でしょう?」

 

「や、だからさ。先生に言ったら結局、みんなにバレるじゃん? そしたらホラ、女子的にさ、周りの目がさ…いろいろアレなかんじ? 絶対そんなんになるじゃん。そしたらさ、ストーカーを退治できても、いろはちゃんが後で大変かもって…」

 

 そう、それが怖かった。

 

 教室であれだけ騒いだのだ。わたしにストーカーがついたという認識は、既にされている。重要なのはそっちではない。()()()()()()()()()()という認識の方だった。

 

 女子のネットワークは強固で複雑で、何より陰湿な面が強い。安定したグループに属さないわたしが一年生女子というカーストにおいて既に若干危うい立場に居ること──これは選挙の件を通じて、先輩方も良くご存知のところだと思う。

 それでも何とか上位グループ所属の子とも対等でいられるのはなぜかと言えば、先輩に推してもらった生徒会長という強力な役職と、同性のやっかみにも動じない図々しいキャラクターという仮面のおかげ。

 

 さてさて、そんなわたしに"ストーカー被害者"というオプションが付いたりしたら、一体どうなるだろう。そんなの「降りかかる火の粉を払いのける力がありませんよ」と公言するようなものだ。好意的でない人間にとって、おそらくこの情報はわたしの弱点として認識される。

 ちなみにこの場合、わたしが実際に弱い人間かどうかはあんまり重要じゃない。周囲がそう思う事──バランスが崩れる事が問題なのだ。目障りだったわたしに弱点が出来れば、その後どうなるかはもう想像に難くない。

 

 そんなわけで、おおっぴらにするのはわたし的にNG、という次第なのだった。

 

「…被害者扱いされるのが屈辱的という意味かしら。確かに、その気持ちは分からないでもないわ。だけど、取り返しの付かない事態になってからでは遅いでしょう?」

 

 せっかく気持ちを汲んでくれた結衣先輩だったけど、表現がフワフワすぎて、雪ノ下先輩には伝わらなかったみたい。いやいや、援護射撃としては充分です、あとは自分できちんと伝えますね。

 

「それもなくはないんですけど、もうちょっと違う事情もありまして。ぶっちゃけわたし、すでに敵だらけの身分じゃないですか。だから。そんな弱みを見せると、たぶんあっという間にやられてしまうかなー、と」

 

 テヘヘ、と苦笑いして見せると、この部屋唯一の男性が小さく「怖ぇ…」と漏らしていた。

 女子の世界は花園なんかじゃありません。毎日が戦場なんですよー、先輩?

 

「下種な連中に怯えて、目前の犯罪行為に口を噤むのはいかがなものかしら。ましてや、差し迫った身の危険があるかも知れないというのに」

 

「それ、ゆきのんが強いから言えるんだよ…。そゆとこ、すごい尊敬するけどさ、みんながみんな、出来ないよ…。それが難しかったから、あたし達のとこに来たんじゃないかな?」

 

「……」

 

 切々とした訴えがわたしの気持ちを代弁し、雪ノ下先輩の正論が止まった。結衣先輩、なんでわたしがここに来たのか、ちゃんと分かってくれてたんだ…。

 

 それにしてもこの、子犬が雌豹を止めるような番狂わせはどういうわけだろう。さっきまで明らかにダメな子扱いされていた結衣先輩なのに、今の彼女は雪ノ下先輩にも負けないくらい、目にチカラが篭っている。

 

 この世にも奇妙な光景を同じように目の当たりにして、しかし先輩は、それほど驚いていないように見えた。やっぱり、結衣先輩も奉仕部にいるだけのことはある、ということなのかな。

 

「…ならこのまま、私達だけで何とかすべきだと?」

 

 こわっ!

 雪ノ下先輩、こわっ!

 

 海浜との会議でも目にした、雪ノ下先輩の真剣な顔。

 真面目に心配してくれてるからこそのこの表情なんだろうけど、整いすぎた顔が浮かべる本気顔は、控えめに見ても完全にキレているようにしか見えなかった。

 

「ううん、あたしも、ちゃんと大人に言っておいた方がいいと思う」

 

「それだと貴女の主張と矛盾していないかしら?」

 

「っと、えっと…うぅ~んと」

 

 徐々に鋭くなり、もはや射殺すような視線が刺さっていることに気付いているのかいないのか、文字どおり頭を両手で抱えて可愛らしくウンウンとうなる結衣先輩。

 

「あーもぉ、あたしバカだからいいアイディア出てこない! でも、何とかなるような気がするっ! ね、何とかなんないかな?」

 

 結衣先輩の請うような視線は、ひっそりと壁際に避難している先輩を捕らえていた。いつの間にこんな所に…ほんっと幽霊みたいなひとですね。

 

 自然、雪ノ下先輩もそちらへ鋭い視線を送る。その目は甘やかすべきではない、と己の強い意志を語っているように見えた。

 

 雪ノ下先輩の正論と、結衣先輩の感情論。

 

 矛と盾から射すくめられた先輩は、どちらとも目を合わさずにそのまま閉じた。

 

「ヒッキー…」

 

「これは私達で対策を練る、それ以前の問題だと思うけれど」

 

 何も言わない先輩に向けられた視線から、徐々に期待の色が薄れていく。

 

 あー、なんかこれ、妙案が出せない先輩が悪いみたいな流れに…。

 いくら何でも申し訳なさすぎる空気ですね。

 

 さっき雪ノ下先輩も言ったじゃん、矛盾してるって。やっぱりわたしがちょっと我慢すれば済むことなんだよ。それこそ、恥ずかしい目に遭ってからじゃ遅いんだし。

 

「あの! いいんです、わがまま言ってごめんなさいでした。わたしやっぱり、職員室に──」

 

「折衷案ならどうだ」

 

 先輩がぼそりと、しかし明らかにわたしを遮って発した言葉は、重い空気に低く響いた。

 

「…具体的には?」

 

 雪ノ下先輩が先を促す。

 

 なんだかんだで期待しているのだろう。

 先輩に向けられる視線は99%が氷ような冷徹さ。

 しかしその奥には、僅かながら確かな熱を感じる。

 

「女子に対する気配りが出来て、権力に通じていて、こちらの事情を酌んでくれる 可能性がある──」

 

 にやりと、悪の親玉のように、先輩は笑った。

 

「そんなの、あの人しかいないだろ」

 

 

* * *

 

 

「──で、教師をわざわざ呼びつけたお偉いさんは、どこの比企谷かね」

 

 10分後、部室には白衣を颯爽とたなびかせ、眉間にしわを寄せた格好の良い女性の姿があった。生徒会でわたしもよくお世話になっている、平塚先生だ。

 

「最初から俺を決め打ちして疑うってのは、些か平等さに欠けませんかね」

 

「見たまえ」

 

 いきなりのお説教ムードに反論する先輩に対してついっと差し出されたのは、シックなワインレッドが大人っぽい、スマートフォン。

 顔を寄せてみれば、先ほどこの部屋から発信されたメールの文面が表示されていた。

 

 

──────────────────────

From  : 由比ヶ浜 結衣

Subject: 緊急事態です(>o<)/

 

 ヒッキー先生が呼んでます( ̄^ ̄)

 すぐ奉仕部までおいで下さいε=┌(; >∀<)┘ダッシュ!!

 

   。.:*・゚ ゆい゚・*:.。

──────────────────────

 

 

「知らない間に随分出世したようだな比企谷先生。私も鼻が高いというものだ」

 

「なにこれ俺様マジ何様ですよねすんませんってか由比ヶ浜ぁ!」

 

 先輩の胸元をねじり上げ、いい笑顔でねめつける平塚先生。

 白衣が無ければぜったい元ヤンにしか見えないと思う。

 

「あーなんかね、最近あたしのスマホ、タッチの調子悪いんだー。ちなみに正解は、ヒッキーが先生を呼んでまーす。でしたっ!」

 

 でも通じたから結果オーライ! と結衣先輩。

 

「てかダッシュで来いってのも、なかなかいい根性してますよね…」

 

 すぐ来て欲しくて気を利かせたつもりなんだろうけど、おかげで完全にパシりへのメールと化していた。

 

「そもそも生徒が呼んでいるから教師が来いという態度こそが、根本的に問題なのだけれど…」

 

 雪ノ下先輩が追加の椅子を用意しながら、苦笑いを浮かべていた。

 

「それで、どういう話かね」

 

 足を組んで椅子に座り、ため息混じりに覚悟を決めた様子の平塚先生。

三人の先輩の目線が私に集まり、わたしは促されるようにして口を開いた。

 

「実はちょっと困ったことになっていまして…」

 

 

* * *

 

 

「──難しいな」

 

 わたし達の話を聞いた上で平塚先生が出した答えは、落胆せずにはいられないものだった。けれど同時に、やっぱり、という気持ちもあった。

 

「一色への配慮を前提にした場合、私が教師であるが故のアドバンテージが働かなくなる。それらは学校という組織の経由なくしては成立しないからな。個人という枠であれば、存分に協力してやりたいところではあるが…」

 

 コキリ、と片手のこぶしを鳴らす平塚先生。

 結衣先輩のそれと比べると、纏った迫力があまりにも違う。

 

「責任ある社会人としては、腕力に訴えると職を失う可能性もあってだな…」

 

 君たちの同級生だったのなら悩む必要もなかったのだが、と苦笑する。未成年の特権さえあれば、悩む必要も無くそのこぶしが振るわれるらしかった。

 

「前科なんぞついたらただでさえ低い結婚の可能せ──」

 

 深くみぞおちに刺さった平塚先生のこぶしが、先輩の言葉を強引に飲み込ませる。

 

「とは言えこうして話を聞いてしまった以上、然るべき報告をしないというのは、それだけで私には大きなリスクなんだが…」

 

「いや、その方が真剣に考えてくれるかと思いまして」

 

「いい度胸だな比企谷…」

 

 冗談も言うけれど、根っこの部分では尊重しあっている──この二人の関係は、教師と生徒というより、先輩後輩と言われた方がしっくりくるかも知れない。

 同じ事を感じたのか、雪ノ下先輩の顔にも笑みが浮かんでいた。

 

「酷い人ね、それも含めて計算ずくというわけ?」

 

「任せろ、他人を不幸に巻き込むのには自信がある」

 

「本当に酷い顔ね…失礼、酷い人ね」

 

「最初んとき思いつかなかったネタならやめてくんない?」

 

 パンパン、と平塚先生が手を打って場を律する。

 

「大事にはしたくない、という君達の意思は理解した。何らかの対策が必要だという状況も把握した」

 

 胸元を探ってタバコを取り出す。いきなり室内で何をしているのかと思ったが、火をつける様子は無い。咥えたタバコをルージュの映える唇で弄びながら、先生は言った。

 

「それで、君達はどう動くつもりかね?」

 

 いま気付いたけれど──色々あったせいで、具体的な話は全く出来てなかったんだっけ。

 

 この問いにすぐさま答えを返せるひとはいないだろうと思ったけれど、美しい姿勢で挙げられた一本の手が、場に広がった沈黙を引き裂いた。

 知性の塊こと、我らが雪ノ下先輩である。

 

「これだけ状況証拠が揃っているのだから、有無を言わさず制裁を加えるというのも一つの選択だと思うけれど」

 

 まさかの力づくだった。

 

「どーゆーこと?」

 

「閣下は今すぐ中原とかいう一年を処刑しろ、と仰せられた」

 

 逆らったら消されるぞ、とこちらに小声で呟く先輩と、それを軽く睨む、雪ノ下将軍閣下。

 

「別にそこまでしろとは言っていないわ。二度と馬鹿な気が起きなくなる程度で充分よ」

 

「ゆきのん怖い…」

 

「マジでパないですね…」

 

 確か似たような経験があると言っていたけれど、その時どうやって解決したのか、聞いてもあまり参考にならないに違いない。でも少しだけ、制約のない自由なキャラクターを羨ましく思った。

 

「個人的にはいいアイディアだと思うが、一応、教師の立場として止めざるを得んな」

 

「まあそっすよね」

 

 正攻法…というか力押しは最後の手段にしよう、と先輩が諌める。

 

「由比ヶ浜、なんかないか」

 

「ほえっ?」

 

 期待されていないと思っていたのか聞き専に徹していた結衣先輩。急に意見を聞かれ、お団子髪をつんつんしながら頭をひねる。

 

「比企谷くんはどうかしら。この場でパーソナリティが最も犯人像に近いのだし、期待してしまうわ」

 

「その期待の仕方には悪意しか感じられないんだが」

 

「…あっ、いいアイディア閃いちゃったかも!」

 

 はいはーい! と当ててアピールをする彼女を「どうぞ」と雪ノ下先輩が促す。結衣先輩とおつむの程度が似通っているわたしは、なんとなくだけど、彼女が発表しようとしている内容に想像がつくような気がした。

 

 自信満々にたわわな胸を張って、元気に立ち上がった彼女の意見は──

 

「もう彼氏がいるってラブラブアピール! これでしょ!」

 

 聞くだけで恥ずかしくなるような、恋愛脳全開の王道作戦だった。

 




ちょっと地文を増やしてみましたが、語り部がいまいち安定しませんね。

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