完全復活には程遠いですが、少しずつ書いていたりします。ぷち復活というやつです。
前半はみーくん、目覚めた際に居合わせたのはなんだか奇妙な女の子のようで・・・・・・
「・・・・・・・・・んぅ」
目が覚めたら目の前には一人の女の子、たぶん制服からして同じ学校の生徒・・・だと思う。「まだ調子悪い?」と心配そうにこちらを覗き込んでいた。かれらではないらしい、ちゃんと生きている人だ。
《とりあえず、お水でもあげたら?ずっと寝てたんだし、何も飲んでないし》
「うん、そうだね・・・お水飲む?」
何か、微妙に違和感のある会話だけど、実際喉は渇いていた。お願いすることにする。
「おっけー!」と水を取りにぱたぱた走っていく。それをなんとなく目で追いながら、ようやく周りの状況をゆっくりと見る余裕ができた。
「・・・ここは・・・がっこう?」
見慣れた・・・部分ではないけれど、とにかく自分の通っていた高校であるらしい、ということくらいはわかった。
「はい、どーぞ」
と、周囲を見渡しているうちにあの子が戻ってきたらしい。その手に持ったコップを差し出してくる。落ち着いて水を飲むのは随分と久しぶりのような気がする。おいしい。
「ありがとう・・・えっと、同じ学校の・・・巡ヶ丘の人?」
考えてみれば、まだ自己紹介もしていない。この学校にいてこの制服ならまあそういうことなんだろうけど、なんかこの子はこう、幼い感じがするというか、もっと小さい子が避難してきたここの服を着てるだけなんじゃないかなって気もしている。
《あ、そういえば自己紹介がまだだよゆきさん。さあれっつ自己紹介》
「そうだね・・・そのとーり!」
びしっとポーズを決める女の子。その通りとは言っているが、高校生には・・・見えないかな、うん。
「巡ヶ丘高校3年C組、丈槍ゆきだよっ!」
《そして私は小沢みくです、鞣河小学校の――
え・・・?さん・・・ねん・・・?
「うそ・・・あなた・・・三年生、なんですか・・・?」
中学3年生というオチではなくてですか?という言葉はギリギリで飲み込んだ。雰囲気というか、なんというか、なんとなく漂う子供っぽさを考えれば、正直背格好を除けば小学3年生だと言われても違和感はない。
「うん、そーだよ!」
三年生、らしい。自称ではあるけれど、この子は私の先輩・・・ということになるようだ。
《うぉぉ、さっそくこちらを見事にスルー。これはまたえらい新人が入ってきましたねゆきさん》
「あなたは?」
おっと、私も名乗っていなかった。
「2-Bの、直樹美紀・・・です」
とりあえず先輩(?)と同じようにクラスと名前を伝えてみた。すると、ゆき先輩の目が「キュピーン!」とでも音が聞こえてきそうなほど漫画チックに光り輝いた。電池式のおもちゃか何かなんだろうか、この人。ほどなくして「じゃあ、私が先輩だねっ!」とか言い出した頃には全身が光り輝いていた、よっぽど自分が先輩なのが嬉しかったらしい。この子ホントに年上・・・?
まあ、本当に年上ですか?なんて確認してもこの子の機嫌を損ねるだけなのは明白なので、今は状況を把握するために聞けるだけのことを聞いてしまうのが優先かな。この子に関しては他に人がいればその時に聞けばいいし。
「・・・ここは、どこですか?」
「学園生活部の部室だよ」
学園生活部?部室?・・・どういうことだろうか。部室というからには部活動なんだろうけど、そんな部活に聞き覚えはない。造りは似ているけど、実はここは巡ヶ丘高校ではない、とか?いや、だったら彼女は何?
一つ確認しようとしたら疑問が数倍に増えてしまった。
《いや、ゆきさん・・・それで通じるのはここの住人達だけだから。見なよこの『やばい、わけがわからないー』みたいな顔。ちゃんと学校だって言わないと》
「うん、そうだね。さすがみくちゃん」
《ふふん、もっと褒めるがいーですよ》
そしていきなり誰かと話し始めるゆき先輩。みくちゃんって誰だろう?というかどこにいるんだろう。私には誰もいないようにしか見えないし、独り言にしか聞こえないけど。
「ご褒美にこれあげるー」と言ってゆき先輩がペットボトルを差し出したから電話してるわけではないらしい。とはいえペットボトルはそのまま見事に落下して床を転がっていたからそこに誰かがいる、というわけでもないらしい。
《これ、飲みかけのペットボトルじゃねーですか!》
やがて話の整理はついたらしい(結局誰と話しているのかや、その内容は一切わからなかった)ゆき先輩が、ここが私達の学校だと教えてくれた。やはり巡ヶ丘高校であっていたらしい。あの日からモールに閉じ込められた生活が延々続いていたから、こうしていつも通っていた校舎にいるというのはちょっと感慨深い。
そのまま話を続けようとしたゆき先輩の足元から、ふと聞こえてきた鳴き声に二人で視線を降ろす。そこにいたのはすっかり見慣れた犬だった。すっかり先輩に懐いたようで、その足に擦り寄っていた。
「ああ、お前もいたね~」
「太郎丸!」
太郎丸だ!この子も無事だったんだ!結局モールで出会ったあの子に振り回されっぱなしで合流できなかったけど、こうして学校にいるということはあの子かゆき先輩が保護してくれていたらしい。
思わず手を伸ばすも、そっぽを向かれた上に逃げられてしまった。嫌われてしまったみたいだ・・・ちょっと悲しい。
「あわわわわ・・・」
《あちゃー・・・・・・そ、そうだゆきさん、この人も久々のがっこうってわけですし、ちょっくら校内の案内でもしてあげたらいいんじゃないですかね》
私が露骨に気落ちしているのがわかったのか慌てるゆき先輩。そのうち「う、うん!そうだね、みくちゃん!」とか言い出したからまた誰かと喋っていたらしい。やっぱり私には誰も見えないけれど。
そうこう騒いでいたゆき先輩だけど、やがて何の脈絡も無く私の手を取ると、「さあ!行こーう、みーくん!」と私を部室(らしい)から連れ出した。どうやらそのまま移動するらしい。
・・・・・・というか、みーくんってなんですか?
《ドアくらい閉めていきましょーよー・・・・・・って聞いてないし・・・》
「まずはここがね、音楽室!」
どうやらゆき先輩は私に校内を案内してくれるつもりらしい。とはいえ、音楽室の場所くらいは流石に私も知ってますよ先輩。私ここの生徒ですからね。
「軽音部の人いるかなー?」
部活!?学校では何も起こってないの?・・・言われてみれば、なんだか音楽室からは音楽が聞こえているような気も――
ゆき先輩が音楽室の扉を開けると、とたんにとんでもない爆音が耳を打った。
凄まじい重音とシャウト、学校の音楽室では縁のなさそうな音楽性。中を見ればまるでかれらのような姿の女生徒(リボンなどから察するにおそらく先輩だろう。やけに精巧かつ不謹慎なメイクだ)やどこぞのデーモンの仲間のような化粧を施した男性、そしてモールで私を助けた(後に散々に振り回してくれたが)女の子が見事な演奏を披露していた。・・・どうやら音楽室ではデスメタルなライブの真っ最中だったようだ。
「すごーい、るーちゃん達ギター弾けるんだ」
「・・・・・・・・・ホント、すごいですね、はい・・・」
ゾン子さんとリーダーさんを(強制的に)巻き込んで重音楽部を楽しんでいたるーちゃん、お客さんが来たためパフォーマンスにも力が入ります。外でどこぞの野球部が「オイイイイイイ!馬鹿共ウルセエゾオオオオオッ!!」とかキレてますけど気にしません。普段はあいつらの呻き声のほうがはるかに煩いわけですし、たまには騒音を味わえば少しは静かにするんじゃないかとるーちゃん思うのです。
そもそも演奏、歌唱ともにカンスト(255)のるーちゃんのそれは騒音呼ばわりで片付けるには勿体無いクオリティです、呻き声シリーズとは実用性が違います。と己を正当化するるーちゃんですが、学園生活部の面々からの評価はあまりよろしいものではなかったようで、爆音を聞きつけて廊下を突っ走ってきたきーさんやらくるみさんやらに強制停止させられた挙句に観客の生存者さんともども強制連行されてしまいました。「じゃあ、私は授業に行くからねー!」《るーちゃん、後は任せますよー》というゆきの言葉を背に引き摺られていきながら、これはお説教コースかなとか考えて言い訳の構想を練っていきます。いかに万能最強生命体のるーちゃんといえどもまだまだ子供、お説教は嫌なのです。
屋上へと連行されたるーちゃんと生存者さん。農作業をしていたらしいりーねーとくるみさんが生存者さんとお話をしている間、るーちゃんはきーさんからお説教のようです。意味もなく大音量の騒音を立てるなそこら中からあいつらやってくるだろうが、ときーさんたいそうご立腹です。とはいえるーちゃん話聞いてるっぽく振舞いつつ他のことをするのは大得意です。お説教を右から左へ聞き流しながらりーねー達の会話に耳を傾けます。るーちゃんは255人くらいの会話なら全部同時に聞き取れます。
「一応確認するけど、ちゃんと私の話聞いてるか?」
ばっちり聞いてますよー、たぶん。今は学園生活部(で合っていただろうか?)とは何かについて生存者さんに話しているようです、るーちゃんばっちり聞いてます。
「そっちじゃないっての・・・」
きーさんがだんだん呆れ顔になってきているのでもうちょっとでお説教はうやむやです。もうちょっと何か誤魔化す手段はないかと周囲の様子を窺うるーちゃん。向こうは何やらめぐみのお話をしていますが、便乗して何かしでかそうにもめぐみ本人は授業で不在です。授業といえばきーさんは授業はいいのでしょうか、とつついてみますが、「誤魔化すな」の一言で片付けられました。後でめぐみに授業を蔑ろにしていたと言いつけてやろうと心に誓うるーちゃんでした。
一方のりーねー達は今度はゆきの話をしているようです。なにやらゆきの取り扱い方に関して意見が割れつつある様子。りーねーと生存者さんの間に不穏な空気が漂いだしたためくるみさんもきーさんもそちらを落ち着けにかかったようです。るーちゃんは幸運をも味方につけてお説教を見事に回避です。あとはきーさんの意識がるーちゃんへのお説教へと戻ってくる前にこの場を離脱してしまえば完璧です。るーちゃんはさっそく生存者さんへと飛びつくと、その手を握ってぐいぐいと引っ張り屋上からの離脱を図ります。
「え、ちょっと、どうしたの?」
ゆきに代わって校内をご案内ですよー、と強引に生存者さんを引っ立てていきます。背後の「ああっ、早くもるーちゃんに飛びつかれるなんて、くっつかれるなんて!しかも手繋いでる!ずるい!ずるい!お姉ちゃん悔しい・・・ッ!」とか言ってる
るーちゃんはさっそく生存者さんを連れて校内を歩き回ります。在校生相手でも案内を欠かさないやさしさ255の所業です。
「・・・・・・えーっと・・・きみは、確か・・・るーちゃんだっけ?」
正解ですよという意味を込めて、るーちゃんですよーと改めてご挨拶です。考えてみればこちらは名乗ったけど、生存者さんの名前を聞いた覚えはありません。るーちゃんはさっそく名前を聞き出します。
「あ・・・私の名前? みきだよ、直樹美紀」
つまりはみっきーですね、るーちゃん覚えましたし。唐突に発生した世界的何某感とか千葉の国感をくるりと回って吹き消すと、るーちゃんの校内案内の始まりです。
ここがお手洗い。
「うん、知ってる・・・」
ここが職員室。
「知ってる・・・」
ここが校長室。
「知ってるよ・・・」
そしてここが夜戦鎮守府。
「・・・どこ!?ねえこれどこ!?今何通ってここに来たの!!?」
淡白なリアクションが続いていましたが、いきなり場所を移動すると流石のみっきーも驚くようです。次からは気をつけようと決めたるーちゃん、見知らぬ人影を見つけて寄ってきた見知らぬ夜戦仮面を白いのめがけて投げ飛ばすと引き続き学校案内を再会します。怨嗟の声などるーちゃんの耳には届きません。
この辺が教室。
「・・・そうだね、私の教室もこの辺だったからよく知ってる」
ここからバリケード、安全地帯はここまで。
「なるほど、ようやくちょっとためになったかも」
で、ここがるーちゃんの畑。今朝開墾したのだ、にへ。
「だから何で一瞬で場面が切り替わるの!?さっきまで校舎の中にいたんじゃないの!?」
スピード255のるーちゃんにとってはみっきーを連れて畑にいくまでに常人が認識できるほどの時間はかかりません。みっきーの脳が移動を認識する前にその移動は終わっています。そもそも両者の神経の伝達速度からして255倍ほど違います。
みっきーが大騒ぎしている間にトラップの成果を確認します。焚き火につられたあいつらが掘に転落して臨終なされているようで、トラップはしっかり機能したようです。るーちゃんの作品は単純なつくりでもしっかりと成果をあげます。ついでに残り物がみっきーの騒ぎで集まってきていたのでその辺に転がっていたロープで束ねてハンマー投げの練習です。ぽーんと放り出してしまいましたが周辺住民には被害はないでしょう。どうせ誰もいませんし。
トラップの穴も埋め立てて中の犠牲者を土葬し、これで畑の安全確保は完了です。満足したるーちゃんはみっきーに好きに走り回ってていいよと伝えます。ちょっと運動不足っぽい雰囲気を感じたので畑の周りで遊ばせてあげようというわけです。あまり離れなければあいつらもいないでしょうし、ちょっとくらい飛んだり跳ねたりしてても何も問題ありません。
「いや、飛んだり跳ねたりはしないけど。太郎丸じゃないんだから」
言われてみれば犬って散歩させなきゃいけないのではと思い至ったるーちゃん。太郎丸を連れてこなかったのは失敗だったかもしれません、もともとみっきーとは一緒に住んでたみたいですし。次に外に出るときは太郎丸を連れ出すことにしようとひっそり決定です。
そうと決まれば散歩用のリードなどを確保するのは必須事項、るーちゃんはさっそく近所のペット用品店めがけて出発するのでした。「え、ちょっと・・・置いてかないでよ」なんて言いながらみっきーが追ってきますが、そこはゾン子さんを見習って思い立ったら即行動即追従を覚えてほしいところです。課題はたくさんだなぁと考えを巡らせながらとことこと街中へと歩いていくるーちゃんなのでした。
現時点では変な奴しかいませんが、はたしてみーくんはこんな学園生活部に入部するのでしょうか。
そういえば、『軽音部』を変換しようとしたら『圭おんぶ』になってて笑いました。こんなところでいつぞやのOイナリーを回収しようとしてくるとは侮れない変換ですね。
おまけ共
巡ヶ丘駅は今
「ヒャッハー、外回り軍団が戻りましたぜ親分!」
「・・・・・・おい、誰もいないぞ」
「バリケードも吹っ飛んでるな。どうなってやがる・・・?」
「おやびーん、どこ行ったんですかおやびーん!」
ハンマー投げの着弾点
「・・・・・・なんだか向こうは騒がしいね、武闘派は何を騒いでるんだか」
「ぐるぐる巻きにされた感染者の塊が降ってきたからみんなで投げて遊んでるんだってさ」
「いいよねーあいつら人生フリーダムで・・・あれ?」
「立場が・・・逆転している?」
夜戦鎮守府
「夜戦夜戦夜戦夜戦夜戦夜戦夜戦夜戦!!」
「グオオオオオオオッ!!(夜戦夜戦夜戦夜戦!!)」
「なんでそれ連れてきちゃったの!?」
「だって、身代わりがいないと私が夜戦に巻き込まれるじゃないか」