るーちゃん無双   作:るーちゃんLv255

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遠征班のそのころ。働かざるものが多すぎてくるみさんの負担がとんでもないことに。


ぼつねた ばれんたいん
バレンタインシーズンだと気付いたるーちゃん。今年はちょっと派手なことをやろうと夜中にこっそりと校舎を抜け出していきました。校庭に残っていた連中を有無を言わさず叩き出すと、猛烈な勢いで作業を進めていきます。
早朝、早めに菜園の様子を見ていたりーねー。ふと校庭の方を見ると、そこにはチョコレートで完全再現された鞣河小学校が建築されていました。建築255のるーちゃんにかかれば一夜城ならぬ一夜校舎など造作もありません。小物類も充実し、チョコレート製ということに目を瞑ればいますぐにでも全学年授業を行えそうな状態です。登校してきた元高校生の皆さんが増殖した校舎にドン引きしており、ある意味最高のバリケードと化しています。
木下藤吉郎が存命でない以上犯人は明白です。りーねーは大声でるーちゃんを呼びつけます。食べ物で遊んではいけません!りーねーはすっかりお説教モードです。
しかしそこで素直に怒られるるーちゃんではありません。チョコ小学校に立て篭もり防戦の構えです。昇降口にはその辺うろついているうちにるーちゃんに拉致されたあいつらが無理矢理防衛体制に組み込まれています。
「るーちゃーん、戻って来ないと朝ごはんが食べられないわよー!」
りーねーは兵糧攻めをするつもりのようですが、こちらは拠点全てが食料です。兵糧攻めなど無駄無駄無駄とるーちゃんはふんぞり返っていました。あの姉の考えることなどお見通しなのです。チョコを齧りながら勝利宣言です。

なおこの15分後、学園生活部作戦会議の結果チョコを食べ過ぎると虫歯になっちゃうぞとるーちゃんに脅しをかけ、見事降伏させたのだとか。(るーちゃんはいろいろ頑丈過ぎて虫歯とは縁が無かったので、なんとなくやばいものとしか認識していなかったらしい)



第29話 えんそく とうそう編

「また道が塞がってるっ!」

「くるみさん右ー!」

「ギギィーッ!」

「うごごーっ!」

「私の車~っ!」

「後半煩い!」

こうして追い回されて逃走してみると、どうにも今回の外出は戦力のバランスが悪すぎるんじゃないかと思う。きーはこっちで良かっただろどう考えても。あたし一人でこいつら全員守りきれと言われると、流石に厳しい気がしてきたぞ。相手はあいつらじゃないし。そもそもこいつらはシャベルでぶっ叩いてもいいのだろうか。アウトな気がするぞ・・・。

「危ないっ、前前!!」

そうこう考えてるうちにも前方から車が飛び出して道を塞いでくる。ほんとにどんどん増えてくるなこのモヒカン集団。どこにこんなに隠れてたんだよ。今まで学校からだとぜんぜん見えなかったぞ、ちくしょう。

「どーすりゃいいんだこれ、そのうち追い込まれちまうぞ」

「・・・・・・私にいい考えがある」

みく、それは死亡フラグってやつじゃないかと思うんだが・・・。

「で、考えって?」

「えーとですね―」

みくの考えとは、駅側の生存者と合流して窮地を凌ぐというものだった。確かに人数が増せばモヒカン共も無茶はできないだろうし、なにより時間がたてばりーさんあたりがあたし達が追いついてこない事に気付いて駅に来てくれるかもしれない。というわけでその案を採用してみたのだが、考えてみれば駅側に敵を引き連れていくようなもので、実に迷惑な話だよなとは思う。手段を選べる状況でもないから実行するけど。問題は・・・・・・

「こいつらいつまで追ってくるんですかね・・・あ、また右から来ます」

「流れ作業になってきたっ!」

既にめぐねえの愛車はあちこちぶつけられすぎて若干動作がおかしくなっている。廃車にするしかないと思うけど、やっぱり私が怒られるんだろうか?最早魂が抜け切っているのかわたしの車~っとすら騒がなくなってきた蒼白めぐねえに聞く勇気はない。

「駅ってそろそろだよな?というかそろそろだということにしてくれ、流石に集中力切れそうだっ・・・」

「この通りだと・・・もうしばらくですかね。あとここにきて後ろから3台くらい来てます」

「ふざけんなぁっ!!」

あたしは一つ心に決めたことがある。今後遠足とつく行事には一切参加しない。少なくとも、世の中がまともになるまでは絶対にごめんだ。こんな秒単位で追突され続けるような遠足は二度とやるもんか!

「ああもうっ、りーさーん、早く来てくれーっ!」

 

 

一方のりーさんは一面のお花畑にいました。なんだか明るく、ふわふわとした雰囲気のそこをぼーっと歩き回っています。なんでこんなとこにいるのかなどは深く考えていないようです。

しばらく進んでいくと、眼前には川が流れていました。向こう岸にはもう懐かしさすら覚える園芸部のみんなが手を振っています。どうやらりーさんを呼んでいるようです。一人だけ陸上部が、というかくるみの先輩が混ざっていて、こっちに来てはいけないと言わんばかりのジェスチャーを懸命に続けていますが、全体で見るとりーさんを呼ぶのが多数派のようです。

部員が呼んでいるなら部長として行かない理由は無いわ、とりーさんは川へと入っていきます。先輩さんの必死のジェスチャーはスルーするようです。

しかし、川に入ったあたりで後ろのほうからも誰かがりーさんを呼ぶ声が聞こえてきます。ところどころ犬の鳴き声とか混じってますが、後方からも呼ばれているようです。困りました。

「もう、どっちに行ったらいいのよ」

だからこっちには来るなとずっと言ってるだろうがと言いたげな先輩がいたりしますが、りーさんは先輩を考慮に入れていないのでいまだにどっちに行くか悩んでいるようです。

しかし長々と悩むりーさんに焦れたのか、後方から唐突にどこかで見たような小柄な人影が飛来すると抱えた棚(缶詰とお菓子が満載だった)をりーさんに叩きつけ、そのまま倒れるりーさんを持ち上げると元来た道を駆け戻っていきました。一瞬の出来事に対岸の園芸部員はツッコミすらできず呆然としているのみでした。

 

「りーさん!りーさん!」

「・・・・・・ゆきちゃん?」

ようやくりーねーが目を覚ましたようです。一時期生死の境を彷徨っていましたがるーちゃんがひっそりどうにかしました。これで何も問題ありません。

「いや問題大有りだろ。とりあえず二度とやるなよあれ」

きーさんが棚を睨み付けながら文句言ってますが、少なくともきーさんを投擲するよりは事態は穏便に片付いたとるーちゃんは思うのです。るーちゃんは余計なことはしません、世界の真理です。

「で、立てそうか?」

「大丈夫・・・だと思う」

多少ふらついてますが、まだまだるーちゃんがフォローできるレベルなので大丈夫です。最悪脳だけ残ってればボディはどうにかします。戦後のロボブレインみたいなので良ければの話ですが。

「とりあえず一旦食料を車に積んで休憩にしよう。買い物はその後ってことで。ゆき、それでいいよな?」

「うん。さ、りーさん行こ?」

どうやら一旦モールを脱出するようです。そろそろ遠征班が追いついてきてもいい時間だけど何やってんだろうか、とか、鳥はどこ行きやがったんだろうか、なんて考えながらるーちゃんも棚を抱えて移動を開始するのでした。

 

 

遠征班はようやく駅前までやってきました、4台ほどモヒカン達の車両も引き連れていますし現在進行形で攻撃されまくってますが、到着は到着です。

「おい、駅前がなんかバリケードだらけになってるぞ。どこから入るんだこれ?」

「ぶち破りましょう」

「いや、それじゃ先住民まで敵に回すだろ・・・」

「そんなこと言ってる場合じゃ、・・・ってああーっ!?」

揉めてる間に後方から次々と追突され、その勢いのままバリケードをぶち破って駅前へと突入です。くるみさんが大声で「やったのあたしじゃないぞー!」と叫んでますが多分誰も聞いていません。

「今ので車が動かなくなった!」

「嘘でしょ!?これからどうするのさ!?」

ここにきていよいよ追い詰められたか、と思えば突撃を敢行したモヒカン達も全く勢いを落とせないままあちこちへ突っ込み存分に拠点を破壊しながら勝手に壊滅していたようでした。後先のことは全く考えていない、所詮はモヒカンです。ここに保管されていたらしい車両やら資材が壊滅状態に陥っていますが、だいたいモヒカンの仕業です。決してくるみさんが焦れて突っ込んだわけではありません。あくまで無罪を主張します。

「なんか知らんが助かったのか・・・?」

ようやく一息つけたらしいくるみさん。ハンドルにぐでっともたれかかります。長々と続いたカーチェイスで魂が抜け切った人が3人くらいいるようですが、みくちゃんが確認したところとりあえず死んではいないようなので一安心です。

「・・・さて、じゃあバリケードを盛大にぶっ壊した謝罪の練習から始めようか、くるみさん」

「こいつらがやりました、じゃダメかねぇ・・・」

幸い責任を被せる相手は周囲にいくらでも転がっています。というかだいたいこいつらのせいなので、くるみさんは正直にそう言おうと決めました。こちらも大迷惑被った上に迎えが無ければ学校に戻る手段すらないという追い詰められっぷりなので容赦など欠片もありません。

「まあ、とりあえず車から出て、現地の人に事情を説明してバリケードを直さないと。そのうちあいつらが入ってきちゃうよ」

「そうだなー。ちょっと外の空気を・・・」

とまさに車から出ようとしたそのとき、何やらガラガラと音を立て、あちこちに突っこんだ車両を蹴散らしながら重機が一台飛び出してきます。特徴的な二つのアームで車やらバリケードの残骸やらを蹴散らしつつ、こちらへ向かってきます。

「おぉ!何かすごいの出てきましたよくるみさん」

「バリケード直すのに使うのかもなー」

「・・・こっちにむかって一目散なんですけど」

「この車もバリケードにされるんじゃないか?どうせ壊れてるし」

「・・・・・・明らかにモヒカンが乗ってるんですけどっ!」

「あーあー聞こえなーい。打倒幼女の旗なんて全く見えねー」

「現実逃避してる場合かっ!!」

大慌てのみくちゃん、魂抜けーズの三人を車から叩き出すと、くるみさんを引き摺るように車から飛び出します。現実逃避してると車ごと潰されてしまいそうな感じなのでぼーっとしてられません。

「ヒャッハー!こいつのアームの前ではいかに幼女とて潰されるしかあるめぇ!ぶっ潰してやる!」

「流石にオーバーキルだろそれは!」

左腕のカッターをぐるぐると回しながらアスタコNEOが迫ってきます。さすがのくるみさんでもシャベルで重機は倒せません。魂抜けーズを置いて逃げ去るわけにもいかない以上、くるみさんではここで詰みです。

「ははっ・・・この末路は読めなかったわ。もうあいつら関係ないじゃないか」

「何諦めてんですか!」

とはいえ打開策も思いつかないくるみさん。だったらみくはどうにかできるのかと聞いてみます。

「・・・・・・私にいい考えがある」

「それ聞いたらこうなったんですがねぇ!」

とはいえ、みくちゃんの中では既に打開策は出来上がっていました。あとは実行するだけです。

「というわけでくるみさん、みんなのことは頼みます」

言うが早いか、みくちゃんは駆け出していきました。

 

「潰せるもんなら潰してみろバーカ!」

こちらに注意が向くように挑発して走り出す。あいつらの最優先目標は幼女、つまり私なのだから(流石にバリケードの修復より優先してこちらを狙ってきたのは少々驚いたが)こうして単独で動けば残りの面々に攻撃が向くことはないはずだ。案の定奴はこちらを追ってきた。これで体力が尽きなければ勝てるはず・・・尽きなければ。

溜め込んである資材やバリケード用に積まれたものの、崩れやすそうなところを探しながら走り続ける。当然追いつかれたら即死である。使える障害物はどんどん使っていく。後方から障害物たちが次々蹴散らされる音に混じってくるみさんの怒鳴り声も聞こえてくるが、反応する余裕は無い。一歩間違えるだけでアームで潰されたり轢き殺されたり何か投げつけられたりしてお陀仏なのだ。なるべく短期決戦といきたい、そろそろ走れなくなりそうだし・・・息が続かないっての。

と、痺れを切らしたか多少乱暴にでもこちらを始末しにかかったようで、無理矢理にアームごと車体を旋回させて薙ぎ払ってきた。倒れこむようにして逃れる。・・・勝った。

こんな状態でそんなに派手に資材の山を崩せば、当然派手に崩落を起こす。その辺でバリケードになってる大型バスの直撃を受けるがいい!

「よ、幼女がバスを投げてきたァ!?」

いや、るーちゃんなら投げたと思うけど、アンタが勝手に当たりにいっただけだからねそれ。盛大に横転した重機。多少勿体無かった気もするが、無傷で鹵獲なんてるーちゃんでもやるまい(できるのだろうけど)。とにかく、これで危機は脱した・・・。案外なんとかなるものだね。

・・・なんて油断をしていたからか、最後のあがきにと連中が放った投げナイフが私の左肩へと突き刺さった。

「痛っ・・・つぅぅぅーっ!・・・うわっ、このナイフ柄までべったり血だらけじゃないですか、こんなもん投げるなっての・・・いでででー!」

今回はるーちゃん代わりに悪党(多分)を倒してみたけども、本質的には私はただの幼女でしかないわけで。冷静を装っているけどこの一撃は割と致命的だった。緊張が解けたのとか痛みとかで私はくるみさん達のもとへ戻ることもできずに崩れ落ちた。流石にもう動く気も起きない。くるみさんかリーダーさんあたりが回収に来てくれるのを待つことにしよう。幸い敵は沈黙したようだし、ちょっとくらい寝ていても問題はないはずだ。くるみさんの声は聞こえてるし、すぐに来るでしょ。

「流石に疲れた・・・限界だよ・・・・・・のど、かわいたなぁ・・・・・・」

 

 

「お頭ー!大変です!緊急事態ですッ!!」

「・・・・・・何?」

やかましい奴だ。今私はモール突入後の生活プランを考えるので忙しいのだ。バカ騒ぎは後にしていただきたい。これで報告の内容が猪捕まえたとかだったら太平洋まで投擲してやる、と思考が危険な方向に流れていく。うーん、どうにもちょっと落ち着きが足りない。気が逸っているようだ、深呼吸深呼吸・・・。

で、そうだよ報告だった。何が起きたの?

「モール突入用の資材、車両集積所が崩壊した模様です!」

「ゑ?」

意味がわからない。馬鹿共が獲物見つけて暴れてはいたけど、その辺りのものには手をつけないように日頃からよ~く言い聞かせてるはずなんだけど。

「何がどうなってそんなことになったの?」

「それが・・・追い回していたターゲットがこの拠点に突っこんできたようでして・・・」

もう呆れて物も言えない。やっぱりこの馬鹿共を戦力としてあてにしたこと自体が根本的に間違いだった。自分の目的は自分の手で果たさないといけないのだ。

「というわけでちょっとモールに行ってくるので、後は勝手にしてればいいよ」

「ちょっと待ってくださいよ!まだあいつらここで暴れてるんですよ!」

バケモノが暴れてるんじゃないんだから、生きてる人間くらいは自分達でどうにかしていただきたいものである。とはいえ、感染してない確証があるわけではないのか。となると先に始末するべきか・・・モールから救助してきたあの子に危険が及ぶ事態は避けておくべきだ。

「仕方ないか・・・私の剣を持ってこい」

「は、はいッ!」

私の邪魔をする者は皆死ねばいい。私にはあの子がいればいい。犠牲になってもらうぞ、生存者っ。




遠征組がほぼくるみとみくしか喋ってなかったり、王様がだんだんメッキ剥がれてたりするのは仕様です。

視点があっち行ったりこっち行ったりでややこしいので、そろそろ合流したいところですが・・・。

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