合流するまではこんな調子かと思われます。
学校を出発した学園生活部遠足班。るーちゃんは元気に運転をエンジョイしています。改良されたるーちゃんカーの耐久性は相当なものですし、運転するるーちゃんの耐衝撃性は貫禄の255です。こうなるともう進み方は一つ、ゴリ押しです。
事故現場だろうが通行止めだろうが関係ありません、次から次へとぶち破っていきます。
「すっごい迫力だね、るーちゃん。スリル満点~」
ゆきはこのパワースタイルが大層気に入ったようです。アトラクションか何かと勘違いされているような気もしないでもないですが、るーちゃん的には楽しんでくれてるならまあ良しといったところです。
問題は残りの連中です。きーさんもりーねーもこの世の終わりを目の当たりにしたかのような表情で絶叫をあげています。いや、ある意味この世の終わりはいつも見ているのですが。
「やっちゃえ、るーちゃん!」
「ゆき、煽るなー!死んじまうぞおおおっ!!」
「ひいいいいいっ、るーちゃん、前!前ぇ!」
先ほど窓から車外へ脱出していった鳥がいましたが、大正解だったようです。こんな運転では常人は命がいくつあっても足りません。リーダーさんがこちらに乗っていたら車酔いではすまなかったでしょう。
「るーちゃん、ストップ!止まって!お姉ちゃん死んじゃうから!」
「そうだ、止まれ。休憩しよう・・・な!」
仕方がないので手頃な公園に突っ込んで停車します。大して広くもない車内ではのんびりできないのでみんな停車するが早いか次々と車から飛び出していきます。るーちゃんもせっかくなのでお外で遊ぶことにしました。やたら元気なゆきに飛び乗りれっつごーです。合流してきた鳥の呆れたような目なんて見えません。
一方の遠征班は安全運転です。あちこちの通行止めで引き返したりルートを再確認したりとゆっくり慎重に進んでいきます。
「くるみさん、疲れてない?先生が運転変わろうか?」
「まだまだだいじょーぶ、めぐねえはいざって時に温存だよ」
実際あたしはまだまだ問題ない。緊張からくる疲れとかが全く無いといったら嘘になるけど、いざというときに備えて今のうちから運転の練習をしておくのもいいと思ってるし、まだまだやってみることにする。
「グオオオオオ・・・」
「うごごごごお・・・」
「うるせーですよ両隣・・・」
後ろの連中はリーダー達が車酔いしていること以外は特に問題なさそうだ。みくが若干キレかけてる気もするが、配置的に仕方なかったので勘弁して欲しい。荒っぽい運転になったら放り出してしまいそうだからめぐねえの膝上に乗せるわけにもいかないし。
「ここも道塞がってるし」
ずっと学校にいたからそこから見える範囲の状況しか知らなかったが、こうして街の中を走ってみると思っていた以上にひどい。右側、死体。左側、廃墟。正面、事故現場、焼死体っぽいのが見える。当時の大混乱がよくわかる惨劇のオンパレードだ。学校の状況が生温いとは絶対に言わないが、外がとんでもない地獄であったことは確かだ。こんなところで生き残っている人たちが本当にいるんだろうか?それとも、駅のあたりはまだマシなんだろうか?
正直そんなわけはないと思う。人が多ければ多いほど、あの日は酷いことになっていたはずだ。人の集まる駅のあたりがまともな状態なわけがない。るーちゃんによると遭遇した連中は物資の調達のためにうろついていたということだった。きっと相当追い込まれている状態なのだろう。はやいとこ合流しないと・・・。
「ちょっと急ぐぞ、思ったより時間かかってる」
「安全運転でお願いね・・・」
休憩中の遠足班は公園でだらだら過ごしていました。柔軟255のるーちゃんがべちゃっと地べたに転がっていたり、美術255のるーちゃんがその辺のもので謎のアートを創りだしたりしています。
「そろそろ出発しないとめぐねえ達が先にいっちゃうんじゃないか?」
「大丈夫よ。向こうはあの惨状じゃペースが遅いはずだもの。るーちゃんの運転を考えたら丁度いいと思うわ」
「安全運転で進むって選択肢はないんですかねぇ・・・」
るーちゃん的にはしっかり安全運転です。何も問題ありません。その証拠にゆきはぜんぜん問題なさそうに元気にしています。
「むしろゆきはなんで大丈夫なんだ・・・?」
「たぶんだけど、ジェットコースターみたいな感覚なのよ・・・安全は確保された上でのスリルだと思ってるのね」
「思い込みって凄いんだな・・・」
「そうね・・・・・・」
りーねー達は休憩してても精神が休まってないような気がしてきたるーちゃん。もう出発でいいやと判断し、自称現代アートの作成を終了して車に乗り込み、みんなにさっさとのりこめーと手招きします。しっかり三人が乗り込み、ラ・ネージュが先にモール目指して飛んでいったことを確認したるーちゃんは再びアクセル全開で出発です。あっという間にすごい速度を出して曲がり角のコンビニを一軒突き破り、そのまま大暴走を再開するのでした。
みんなが立ち去った公園にはるーちゃんお手製の意味不明なエフィジーが大量に残され、他の住民達の恐怖を煽ることとなるのですがそれはまた別のお話です。
そのころの遠征班は住宅街を進行中、恵飛須沢家を通りかかったことで運転手のくるみさんが一時帰宅。のこりのメンバーはその辺で休憩していました。ゾン子さんとリーダーさんはしばらく前、まだチームるーちゃんとして放浪していた頃にこの辺一帯を三人で(ほぼるーちゃん単独で)掃除して雨宿りをしていたことがあるため万全ではないにしろある程度は安全だろうと余裕ぶって車の外でだらけています。車酔いをごまかそうとする必死の空元気なのは明らかでしたが、めぐみは特にそれを指摘するようなことはせず車内で待機していることにしたようでした。
手持ち無沙汰になったみくちゃんは周囲に使い物になるものはないかを見てみることにしました。万が一あいつらがいたとき用に植木鉢を抱えてうろちょろしています。
しばらくそうしていると、突如猛烈なスピードで突っこんでくる車が一台、みくちゃんの前までやってくると急停車です。盛大に鳴り響いたブレーキ音に慌てた様子でくるみさんが自宅を飛び出してきます。
そしてくるみさんが飛び出すのとほぼ同じくして車からも世紀末なヴィジュアルな方々が次々と飛び出してきます。彼らの血走った目は全てみくちゃんに向いているようです。
「ヒャッハァーッ!見つけたぜ幼女ーッ!」
「今日こそぶっ殺してやるぜェーッ!!」
車に取り付けられた旗に気がついたみくちゃん。でかでかと『打倒幼女』と書かれています。この場にいる幼女は自分だけです。みくちゃんは恐らくこの事態の元凶と思われる
「・・・今日は厄日だわ」
現実でこんな台詞を言うことになろうとは・・・、そう思いながら逃走するべく足に力を込めていくみくちゃんなのでした。
基本的にるーちゃんは対モヒカンでは高速移動しているか相手を一撃で始末してしまうかなので幼女打倒し隊の面々が見た目でみくちゃんとの違いを判断するのは実は中々困難だったりします。こいつら幼女で憶えてますし。
一方のモール
「太郎丸ー、ごはんだよー。太郎丸ー」
・・・・・・寂しい。まさかあいつらすら来ないなんて。