るーちゃんの出番は最後にちょっとだけ。
そのころの3-C
「オーイ、日直ダレダー?」
そんな彼の問いに答えるものはクラスにいない。黒板に書かれた日直の名はここしばらく丈槍から変わっていないからだ。誰もが、黒板を見ろ黒板を、っといった様子で彼を放置しているというわけだ。
どうも、ポニテです。誰に対する挨拶なのかはよくわからないけど、何故だか必要な気がしたのだから仕方ない。やっぱり疲れが取れていないのかもしれないが。
最近、私の友人達は教室に来なくなった。カチューシャも、ネコ帽子(黒板を凝視していたら彼女が丈槍だったような気がしてきたが、はっきりしない)も、あの夜遭遇したチョーカーも。
あの日、雨で帰れなくなった私達は、なんとなく感じた非日常感から誰ともなしに3階を強襲しようという空気になり、なんとなく上に上がっていった(今覚えば極めて馬鹿馬鹿しい騒動である。受験生が集団で学校で暴れるような高校があってたまるか)。
何故か積み重なっていた机は、どうせ二年生の悪戯だろうという話になって蹴散らされ、私達は三階へ進んでいった。自分達のことは棚に上げていたわけである。
そうしたら、いたのだ。何故か3階をうろついている不審なチョーカーが。・・・・・・まあ、我が友人なのだが。チョーカーは私を見るなり逃げ出し、二年生の教室に飛び込んだ。あの逃げっぷりはよっぽど後ろめたいことがあるに違いないと追いかけていったら、あの大馬鹿者はあろうことか窓を越え、3階から飛び降りるという冗談では済まない方法で私から逃げていった。慌てて下を見てみたら、平然と校舎に駆け込んでいって唖然としたものである。心配をかけてくれやがって、まったく。
しかし、それ以来学校でも、街中でも、チョーカーを見かけることは全く無くなった。
考えてみれば、しばらくカチューシャも見かけていないし、ネコ帽子もたまに声がするが授業にはまったく出てこない。みんな教室にやってこなくなってしまったのだ。
理由はわからない。逃げ隠れしているチョーカーと何か関係あるのだろうか。・・・わからない。寂しいわけではないが、なんとなくもやもやするのだ。
「日直ダr
黒板消しで殴って黙らせたが、煩くて自習の邪魔だからであって八つ当たりではない。
断じて、友人達からハブられて怒っているわけではないのだ。
そのころのクラウドさん
「待ってくれ、助けて、ギャアアアアッ!!」
また一人、彼らの仲間へと加えてやった。彼もまた、共有され拡散された意識総体に加わり、人類の天国への足がかりとなるだろう。これで彼の救済は約束された。呻き声をあげてふらふらと立ち上がった男を見て私は確信する。
私の見立てでは、彼らとなることは自己の拡散であり、他者との合一であり、人類の進化であり、そして救済である。彼は羨むべき新時代のネットワークに接続され、天国へと至る資格を得たのだ。
私も、すぐにでも彼らに加わりたいという衝動に駆られる。だが、まだいけない。私にはこの人類の新たな在り様の為に成すべきことがまだ残っている。それを成し遂げられなければ、天国へ至る雲とて地に漂うあやふやな霧にすぎない存在に成り果ててしまう。
神との合一、それこそがクラウドの最終目的であり、彼らの、いや我らの到達するべき姿。全ての人類があの
神の、幼くも力強い、可愛らしくも畏ろしい、可憐ながらも苛烈な、あの姿が思い起こされる。ああ、彼女と交わることは、どれだけの幸福を人々に齎すだろうか。彼女と一つになることで、人々はどれだけの不幸から解放されることだろうか。
神もまた、人類と交わり全てを救うことを望んでいるに違いない。私にはその手助けができるはずだ。クラウドの、彼らの本質に気付いた私でなければならないはずだ。今はその準備を進めよう。人類に至高の幸福を。
そのころのモヒカンズ、そのいち
巡ヶ丘駅前のビル、そこはモヒカン達の巣窟となっていた。彼らは気ままに騒ぎ、気ままに破壊し、気ままに殺す幸福な生活を謳歌し、この破滅的な状況を喜んでいた。彼らは真なる自由をお題目に群れ集まり、暴れまわっていた。だが、同時にその方針に限界を感じているものもいないわけではなかった。ルール無用で暴れまわりたいという欲求と現実的に集団を維持する責任の板ばさみにされた群れの頭目がいたりしていたのである。彼は、ふとより強大な統治者を欲している自分に気付いて愕然とした。より強大な統治者、それこそが自分達が不要と断じた国家であり、政府であり、為政者であったのではないかと・・・。
周囲にわらわらいる仲間のモヒカン共のように心からヒャッハーと人生を楽しむことができない苦しみ、それから逃れることは最早彼の悲願であった。
今日も彼は表面上に仲間と変わらぬ狂喜を貼り付け、己の矛盾した欲を満たしてくれる英傑を探している・・・・・・。
そのころのモール組
「私は、やっぱり外に出たい!」
「私は、圭に出て行ってほしくない!どうしても外に行くなら、私を倒していってっ!」
「・・・わかった。私は、美紀を倒してでも・・・・・・!」
「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが」
「モンスターとともに地を蹴り、宙を舞い」
「フィールド内を駆け巡る!」
「見よ、これぞデュエルの最強進化形」
「アクショ~ン」
「「デュエル!!」」
MIKI LP4000 VS K LP4000
「くぅん・・・(なんぞこれ・・・)」
そのころのアルノー
くるっぽー。
そのころのモヒカンズ、そのに
駅周辺のモヒカンたちとは別の集団もまたモヒカン大増量中の巡ヶ丘では生き残っているようだった。しかしその数は駅近辺のものと比べると随分と小規模であり、士気も低いことが容易に見て取れる有様であった。
元々彼らはこの騒動の初日時点である人物に金で雇われてあのバケモノ共から依頼人を守るべく戦っていた暴走族であり、途中で発狂したのかすっかりヒャッハーになってしまった依頼人と共に各地を暴走しながら転戦していたものであった。しかしどこかの店かなにかで休憩していたところバケモノの襲撃を受け、迎撃していたところに高速で飛び回る謎の幼女が襲来。少なからぬ被害を受けることとなった。
謎幼女への報復のために出撃した一団も皆殺しにあったようで誰一人として戻らず、結果的にその勢力を大きく減らして現在へ至るというわけである。頭目さんにいたってはこの謎の幼女に強く執着しており、確実に殺すべしとその首に懸賞金までかけている始末。
そんなことしてるからか単にいかれているからか、他の生存者集団とも一切連携の取れなくなった元暴走族な一団。無駄に強大な謎幼女をぶち転がすための仲間は常に募集中、感染してなければ誰でも大歓迎の素敵な一団だとは構成員の談。彼らははたして仲間の仇を討てるのだろうか。そもそも生き残ることができるのだろうか・・・・・・。
そのころの高校地下区画
私は佐倉慈。私立巡ヶ丘学院高校の国語教師だった。・・・いや、まだ教師だ。あの子達はきっと生きているはずだし、少なくとも目の前には足を怪我しているはずなのにやたら元気に鉄パイプを振り回す私の教え子が――
「何してるの!?」
「いや、今度ポニテに会ったらあいつの足も折ってやろうと思って、練習だよレンシュー」
「確か自分で飛び降りて折ったんじゃ・・・」
「いーんだよ、あいつ去年クレープ落としたときに全員に八つ当たりしてやがったから、お互い様ってやつだよ」
思ったより元気な教え子に絶句。考えてみれば彼女達は実にアグレッシブというか、なんというか、非常に元気な個性派集団で有名だった記憶がある。こんな非常事態になってなお、そのノリと勢いは健在であるらしい(しかも、少なくとも一人は感染しているというのにだ!)。教師としては暴力性を咎めるべきか、元気で大変よろしいと安堵するべきかは悩むところである。
こんな調子で上に残してきてしまった子達も無事に生き延びていてくれればいいのだが・・・。確認を急がないと。
「貴依さん、・・・近いうちに上の様子を見てこようと思うんだけど」
「OKOK、というか様子見じゃなくて上に帰ろう。地下ってだけで何となく息苦しい気分になるというか、気が滅入るというか」
滅入ってあれかという呆れが半分。怪我している足をどうするつもりなんだろうかという疑問が半分。そうして足を見ていたからか。貴依さんは振り回していた鉄パイプを杖代わりに、器用に動き回ってみせた。
「案外片足と杖でなんとでもなるぞ。最悪両手と片足で走れるし」
お願いだから人間やめないでね。そんな意味不明な動きで突撃したらみんなが絶対びっくりするから。
大きく溜息。いろいろな意味で前前途多難だわ・・・。
そのころのご当地ヒーロー
とある病院の駐車場に、死体の山が築かれていた。それを構成している者たちは生存者感染者の区別は為されていないようで、この場所で行われた殲滅が徹底的なものであったことを静かに物語っている。もはや、この病院には動くものなど何一つとしてなかった。
・・・・・・いや、一つ、死体の山の傍らに佇む人影があった。注射器のシルエットを模したかのような特異で歪な形状の奇妙な武器を手に立っているそれは、まるで子供向けの特撮ヒーローのような姿をしていた。いや、事実ヒーローだ。ランダルコーポレーションの出資によって実現した巡ヶ丘のご当地ヒーロー、それがこの人影の正体であった。
とある地元小学生(社内では『R』と呼ばれているとかいないとか)がデザインを手がけたものであるらしいその姿はわかりやすく正義の味方であるはずなのだが、周囲の残骸の山と全身に浴びた返り血で紅く染まった姿はどこか邪悪な印象を見るものに与えるだろう。
ヒーローはしばらくその場に佇み、周囲の様子を窺っていたが、そのうち通信機を取り出すと、誰かと話し始めたようだった。通話を終えたヒーローは、最早その機能を停止した病院を一瞥すると、バイクに跨り病院を去っていった。
「引き続き感染者・・・ならびに生存者の処理を遂行する・・・・・・」
そんな奴の呟きを聞いていたものは、死体の他には何もいなかった。
そのころのるーちゃん
何故かインペリアル・マーチを垂れ流しながら、巡ヶ丘の空を漂うるーちゃん。うまいこと風を受け、いったいどこまで飛んでいくのでしょうか・・・。
るーるーるーるーるるーるーるるー、るーるーるーるーるるーるーるるー♪
ボケ連中とそれ以外で温度差がありすぎる・・・。
着々と遠足の難易度を上げていくモヒカン&やばそうな人たち。安全地帯のピアノも砕け散っているし・・・みーくん、ノリノリでデュエルしてる場合じゃないぞ!
なお結末のほど
「レヴォリューション・ファルコンで、テムジン、シーザー、アレクサンダーの三体を攻撃、レヴォリューショナル・エアレイドーッ!」
「おのれ美紀っ、・・・だがここで私を倒しても、すぐに第2第3の祠堂圭が外に出たいって言い出すであろうーッ!!」
K LP4000→2000→0→-2000
「わうっ(勝者、直樹美紀)」