住宅街を滅ぼしたり道中で食料でジェンガしたり散々周辺に被害を齎しながらも、ついにるーちゃん一行は私立巡ヶ丘学院高等学校へと到着しました。相変わらずたくさんの元生徒や職員がうろついており、登校するのは容易なことではなさそうです。跳躍力255のるーちゃんは最悪校庭から屋上まで跳び上がればそれで済むのですが、他の二人はそうもいきません。るーちゃんはまず十数人ほどに分身すると、それらを囮にしてあいつらをひきつけ始めました。
分身によって作り出されたるーちゃんの群れは騒音を立てて騒ぎながらグラウンドを練り歩き、外や入り口にいたあいつらの大半を引きつけます。おびき出されたあいつらがグラウンドに並ぶと、いつの間にか体操着に着替えたるーちゃん11体が迎え撃つようにずらりと整列していました。着替え255のるーちゃんにサービスシーンはありません。一瞬でお着替え完了です。審判の格好をしたるーちゃんがどこからか取り出したホイッスルを鳴らすと、るーちゃん軍団は校庭に転がっていたボールであいつら相手にサッカーを始めました。無論るーちゃんのサッカーがただのサッカーで済むはずもなく、ボールを奪いにかかったあいつらは蹴散らされ、吹き飛ばされ、ボールごとゴールに叩き込まれていきます。るーちゃんはサッカーや少林寺も255のスポーツ万能少女なのです。香港映画みたいなとんでもアクションなどお手のもの、やりたい放題です。あっという間にゴールはあいつらで埋まってしまいました。
手早く校庭の邪魔者を処理したるーちゃんは校舎の中で唖然としているツインテシャベルを一瞥すると、同じく唖然としている仲間達にさっさと行けと通達します。あくまで今の分身は囮であり、殲滅戦をするつもりなんてるーちゃんにはありません。
校舎に入った一行は、るーちゃんの案内でバリケードの方へと進んでいきます。生存者がいることは先行偵察のときに先輩さんから聞いていたので、ゾン子さんは現在謎のホッケーマスク仕様です。不審者感を軽減するために今回はコートはオミットしています。
迫り来る元生徒のみなさんを見事なCQCで無力化したるーちゃんは、仲間たちを先導して階段を上がっていきます。と、突っ走って来たらしい何者かと出会い頭に衝突してしまいます。
るーちゃんと衝突したのは先ほどの唖然ツインテシャベルさんです。かなりの勢いで突っこんできたようで、衝突の勢いそのままで後方へとぶっ飛んでいきます。無論るーちゃんは小揺るぎもしません。グリップ力が違います。255の貫禄です。
しばらく廊下をごろごろごろーっと転がっていった唖然衝突ツインテシャベルさんは、がばっと起き上がると再びこちらへ走ってきます。二度もぶつかられては堪ったものではないと、るーちゃん迎撃体制です。これは唖然衝突ツインテシャベルさんもただではすまないでしょう。
案の定迎撃の一撃代わりにるーちゃんに投げ飛ばされたリーダーさんが直撃し、再び廊下をごろごろごろごろーっと転がっていきます。打ち所が悪かったらしく、リーダーさんは起き上がってきません。とばっちりで可哀想に。
唖然衝突ツインテシャベルさんもしばらく悶絶していましたが、どうにか起き上がりまた突撃してきました。表情を見るにもう意地になって突っこんできてるようです。
対するるーちゃんはグラウンドで拾っていたバットを構えます。打ち返す気満々です。
流石に気の毒に思ったのか、唖然衝突ツインテシャベルさんを救うべくるーちゃんに襲いかかったゾン子さんは鳩尾にバットの一撃を受けて即座に退場です。るーちゃんはホッケーマスクに落書きをする余裕すらあります。『ジョージ・ケツメル』と書かれていますが、別にゾン子さんは審判ではありませんし、このエクストリームスポーツは野球ではありません。
そうこう言っているうちに唖然衝突ツインテシャベルさんは見事にホームランされ、廊下の向こうに消えていきます。「なんでええええええええっ!?」という彼女の悲鳴だけがむなしく響き渡りました。
廊下でのエクストリームスポーツを堪能したるーちゃんはそろそろ先に進もうと、自ら撃破した三人を叩き起こしていきます。とりあえずここの生存者であるらしいツインテシャベルさんにお話をしてみることにしたのでした。
「とりあえず、なんなんだお前らは? ・・・ああ、変人集団なのは言われなくてもわかるからそれ以外で頼む」
開幕から辛辣でした。
とりあえずるーちゃんはるーちゃんですよーと恒例の何も伝わらない挨拶をした後、自分がこの学校の若狭悠里という生徒(一瞬生物と言いそうになったのはるーちゃんの秘密だ)の妹であること、残る二人は荷物持ち担当の変人たちであることを簡潔に伝えます。荷物持ち共の猛抗議など聞こえません。あーあー。
るーちゃんがりーさんの妹であると知ったツインテシャベルさんは5秒ほど硬直すると、慌ててるーちゃんを抱えて屋上目指して猛ダッシュです。まだ自分は名乗っていないことも、荷物持ち二人の存在も頭から抜け落ちてしまったようでした。猛抗議なんて私は聞いてないぞ、あーあー・・・ってな。
「りーさん!」
勢いよく屋上の扉を開け放ったツインテシャベルさんは勢いそのまま菜園の手入れをしていたりーねーめがけて突撃します。当のりーねーは何してんだこいつはみたいな顔してますがそんなのお構いなしです。
「そんなに慌ててどうしたのよ・・・?」
「りーさん!るーちゃんだ!るーちゃんがいたぞ!!」
ツインテシャベルが抱えたるーちゃんをりーさんに差し出します。るーちゃんもるーちゃんですよー、とご挨拶です。久々に見たりーねーはちょっとだけ痩せた気もしますが、一応元気そうに見えます。
しかしりーねー、るーちゃんを見てもノーリアクションです。挙句のはてにしばらくるーちゃんを見つめてから一言。
「くるみ・・・この子だれ?」
それを聞いたるーちゃん、一瞬だけ硬直すると同じく固まったくるみの手を振りほどき、ゆっくりとりーねーに近づいていきます。にこにこと可愛らしい笑顔を浮かべてはいますが、その笑みには陰が差し、額には青筋が浮かび、いつの間にかその手にはロープや釘が握られています。
どうやらりーねーの寿命が尽きるときが来たようです・・・・・・。
到着早々るーちゃんがキレました。まあ苦労して再会した姉にすっかり忘れ去られてたら誰でも怒ります。
本日のあいつら、ゴールネットに絡みながら
「・・・・・・・・・・・・・・・(我々をここまで苛める必要はあったのだろうか)」