機械戦争戦記・レンの歌声が聞こえる   作:咲尾春華

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プロローグ・献辞・題・目次

   

―― 一ファンの描く 『機械戦争』 の世界 ――  

 

 

 今から千年ほど前のことだ。

 正確な年次は知る方法がない。

 スピラ世界は真っ二つに割れ激しく争った。

 その、ある年の晩秋。 場所はザナルカンド。

 この街にたいそうな人気を誇った歌姫がいて、後年 『レンの遺言状(ゆいごんじょう)』 の名で知られる有名なコンサートを開いた後ガガゼトに出征し、帰って来なかった――という事件があった。

 当時 『ザナルカンドの双璧(そうへき)』 を(うた)われた最強召喚士のユウナレスカとレンは、ともに大戦最末期まで健在で、相手方のベヴェル兵を大いに恐れさせた。

 ちなみにこの頃の召喚獣はみな、召喚士が幻光虫の(よろい)を身にまとい、祈り子の力を借りて実体化する――ユウナたちが言うところの 『究極召喚獣』 である。 であればこそ、この双璧の両名の繰り出す召喚獣(それ)の “凄さ” がどれほどであったか想像もされよう。

 事実、ベヴェルの飛空艇艦隊をもってしても、これら召喚獣軍を打ち負かすのは決して容易なことではなかった。

 後世、スピラの人々はこの戦争を指してベヴェルの圧勝、ザナルカンドには最初から勝ち目のなかった戦いと説明するが、それは多分にこの勝敗のゆくえを知っているからであって、必ずしも正しい見方とは言えない。 おおよそ世界が二つに割れたことの意味を考察すべきである。

 現にザナルカンドの召喚獣を恐れたベヴェル陣営では、機械でできた召喚獣ともいうべき超兵器 『MAX-1』 (マキナ・エイアン・エックス−ワン=言わずと知れた 『ヴェグナガン』 である) の開発に血道を上げていた。

 国力の面では(すで)にベヴェルがザナルカンドを上回っていたのは誰しも認める事実であるが、ザナルカンドはなおスピラ全世界の首都として君臨しており、その威光は彼らの力の象徴である召喚獣軍団ともども、決して輝きを失ってはいなかった。

 一つだけ、興味深い事実について述べておこう。

 同時代に生き、当然交友もあり、ともに戦った二人の真に偉大な召喚士のうち、ユウナレスカはその夫ゼイオンとともに 『シン』 を倒し、スピラ世界を救い、後々まで神のごとくに称えられたのに対し、レンと彼女を支えた一人の青年の記録は後世に残ることがなかった。

 「歴史」 とは、事実が伝わることであり、事実が伝わらないことでもある。

 千年の時を経て、スピラが再び二つに分かれて相争うの(あやま)ちを繰り返そうとしたところ、突如としてレンとその青年が(よみがえ)ったのは、決して(ゆえ)なきことではなかったのかもしれない。

 彼女たちの願いは時を超える。

 歌うべき歌を歌い、伝えるべき言葉を伝える。

 今度こそ――。

 今度こそ、守らなければならないものを守るために。

 

 「ユ・リ・パ」 の三人娘の努力により奇跡的に埋もれていた真実が再発見され、広く世に知られるようになった。

 また歴史の一ページが修復され、レンたちの想いも千年後の私たちは確かに受け取った。

 「ありがとう」

 という言葉は、消え去ってゆくあの人の口から出てきたものだけれど、本当は私たちから千年前のあの人たちに向けて送られるべきものだったかもしれない――とユウナは思うのだ。

 滅んでゆく人たちの物語にも、想いはある――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      『ザナルカンドのレン』 こと倖田來未さまへ

 

 

 

      すべてのF.F.ファンの皆さまへ

 

 

 

 

      一ファンから 「スクウェア・エニックス社」 の皆さまへ

 

         ――この想いと、祈りと、エールを込めて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一ファンによる

 ファイナルファンタジーⅩ-2外伝

 

 

 

  「レンの歌声が聞こえる」

 

 

    ――千年の想いと、千の言葉を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◎目 次

 

 

 

 

 第1章 ザナルカンド襲撃隊(マッド・レイダース)

 

 

 第2章 あの人のいる街で

 

 

 第3章 スフィア波検索装置の見たもの

 

 

 第4章 『南紀行(なんきこう)

 

 

 第5章 泣きそうなほど愛くるしい笑顔を

 

 

 第6章 レンの遺言状(いごんじょう)

 

 

 第7章 “ホーリー” と “ダーク” の狭間(はざま)

 

 

 第8章 「ねぇ、シューイン……」

 

 

 

 

 ※ただし 『第7章』 の章タイトルは 「仮見出し」 であり、本来のタイトルは

  本編中の内容に関わるため現時点では公表できない。

  この章の開始時に、「袖見出し」 の形で掲載される予定である。

 

 

 

 


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