マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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2年目:トトリ「いのーのてんさいかがくしゃ」

 

***ロロナのアトリエ***

 

 

 『アーランドの街』にある先生のアトリエ…『ロロナのアトリエ』を(かり)の拠点として使わせてもらい、『錬金術』で調合をしていく日々。マイスさんに 色々と教わったこともあって 調合はこれまで以上に上手く出来た

 

 

 ……と、わたしの仕事に関しては 何の問題もなかったんだけど…

 

 

―――――――――

 

 

「お嬢さんが有名になった 今、僕はここにライバル宣言をさせてもらう!」

 

 

 私に向かって そう言ってきたのは、リュックサックを背負ったモジャモジャ頭の眼鏡の人……前にマイスさんと一緒に冒険した時に出会った『異能の天才科学者 プロフェッサー・マクブライン』マークさんだった

 ふらっとアトリエに来たかと思えば、いきなり この発言。正直 わたしの理解が追い付いていない状態だ

 

「ライバル宣言!?」

 

「そうとも。今 この瞬間から、僕とお嬢さんは敵同士だ!」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!なんで敵同士にならないといけないんですか?」

 

「おかしなことを聞くなぁ。科学者と魔法使いが敵同士なんて、はるか昔からの決まりごとじゃないか」

 

 マークさんが言っている 決まり事なんてものは、一度も聞いたことが無いから 当然信じられないし、それが敵になる理由になりうるとも思えなかった

 だいいち……

 

「『魔法使い』じゃないです!『錬金術士』です!」

 

「似たようなものだろう?ひょっとして違うのかい?」

 

「全然違います!『錬金術』っていうのは…」

 

 

 そこから マークさんに『錬金術』の基礎の基礎…というか、まず先のとっかかりの部分を中心に説明する

 …とは言っても、それは わたしが最初にロロナ先生に『錬金術』を教えてもらった時に、先生が教えてくれたものの ほぼそのまま…受け売りだったりしたんだけど……

 

 とにかく、わたしのできる限り精一杯の説明をマークさんにしたのだった

 

 

 

「…ふむ。つまり『錬金術』は学問で、学べば誰にでも扱える代物(しろもの)だと」

 

「そうです。先生がそう言ってました」

 

 一度は納得したように頷いてくれたマークさんだったけど、その表情から察するに いまだに頭の中の疑問符が消えてしまっていないようだった。そして、それを証拠付けるように マークさんが新しい疑問を投げかけてきた

 

 

「では、何故この国に『錬金術士』と呼べる人物は、お嬢さんと、先生と その師匠の2人しかいないんだい?」

 

「そ、それは…先生の教え方が下手だから、かなぁ…?」

 

 

 この前、マイスさんに教えてもらった後にした話の最後に、マイスさんがわたしに話したことがあった

 

 マイスさん(いわ)く「ロロナの擬音語たっぷりの教え方は、性格がそのまま出てるんじゃないかな? アストリッドさん…ロロナの師匠は 特別何もロロナに()()って教えたりしなかったから、教え方のお手本が無かったわけだし……」

 

 つまりのところ、ロロナ先生から『錬金術』を教わるためには、先生の感性を理解できないとダメってことらしい

 ついでと言ったらなんだけど、わたしの前に 何人かロロナ先生から『錬金術』を教わろうとした人もいたらしいけど、全然ダメだったらしい

 

 

「ああ、なるほど。指導者不足はどの分野でも深刻だからね。……しかし、そうかぁ。てっきり『魔法使い』の(たぐい)かと思っていたが、実際はこの国の自称科学者たちと、そう変わらないのか」

 

 マークさんは今度こそ納得してくれたみたいでだった

 …「自称科学者」っていうのが少し気になったけど、前に マイスさんがしてくれた「街にある機械は 遺跡から発掘されたものをそのまま使っている」や「機械のパーツなんかは そういう専門の人じゃないと価値が無い」みたいな話を思い出して、なんとなくわかったような気がして、深く聞かなかった

 

 

 

 

「とにかく、全ては僕の誤解だったというわけだ。すまない、この通りだ」

 

「そんな、別に謝らなくても…。わたし、全然 気にしてませんし……あっ、でも」

 

「ん?どうかしたかい?」

 

 ふと疑問が湧いてきて、わたしがそのことを言おうか迷っていると、マークさんはわたしの顔を覗きこむようにしながら 言葉の続きを(うなが)してきた。なので、ちょっと迷ったけど 疑問をマークさんに言ってみることにした

 

「あの、マイスさんとはお友達なんですよね?『錬金術』のことは聞いたりしなかったんですか?」

 

「いや、彼とは友達ではないってあの時……って、そういえば あの時はモンスターが追い付いてきて 言いそびれてしまったんだったか」

 

 「やれやれ」といった感じで首を振るマークさん。その顔は眉毛が垂れて 口がへの字に歪んでた

 

「僕がパーツの制作を彼に依頼したりしてるっていう…あくまで仕事上付き合いがあるだけの仲だよ。彼の依頼への忠実さと速さは他とは比べられないからね。…じゃなきゃ 彼にわざわざ頼みたくはないよ」

 

 その言葉の端々(はしばし)には なんだかトゲがあって、なんだか マイスさんのことを嫌っているように感じられた……でも、なんでだろう?

 

 

 

「その…マークさんはマイスさんのことが嫌いなんですか?」

 

「うん、そうだよ」

 

「うわぁ…即答だ。でも、なんで…?」

 

「……お嬢さんは、彼の家の前の畑のそばにいる()()を見たことはあるよね?」

 

 マイスさんの畑のそばのアレ…?アレって何だろう?

 

 

 マイスさんの家の周りを思い浮かべて、マークさんの言うアレっていうのが何なのか考えてみる…

 すると、思い当たるものがあった。胴に足と腕と頭がついた 人間と変わらないくらいの大きさの 土の塊。頭のてっぺんから大きな葉っぱ生えているて、それがピコピコ動いているのが凄く気になったのをおぼえている

 

「あの 頭に葉っぱが生えた土の人形ですか?あれが何か…?」

 

「そう!アレだよ!彼は言ったんだよ「これは『プラントゴーレム』です」って!」

 

「ぷらんとごーれむ?」

 

 ええっと…『ゴーレム』っていうのは、遺跡なんかに稀にいる 昔 人に作られたとされる機械の兵士だ…というのを 何かの本で読んだおぼえがある……けど、『プラントゴーレム』という言葉は聞いたことがなかった

 で、なんでソレに対して マークさんは怒っているんだろう?

 

「彼は言ったんだよ、あんなよくわからないものを「『ゴーレム』だ」って!僕はアレを『ゴーレム』とは認めないよ!!」

 

「えっ、『プラントゴーレム』っていうのは『ゴーレム』じゃないんですか?」

 

「さあ?わからない」

 

 さっきまでの怒り様は何処へ行ってしまったのか…。マークさんはいきなり真顔になって「何を言ってるんだキミは」と言わんばかりに首をかしげてきた

 

 

「あの…マークさん、何か悪いものでも食べちゃいましたか?」

 

「なんだい、そのいいようは。 しかたないだろう?アレを解体(バラ)してみてもいいか聞いたら「元に戻してもらえそうにないからダメです」って断られたんだから、内部構造がどうなっているか、そもそも内部構造なんてあるのか、とか調べることも出来なかったんだから」

 

「マイスさんに『プラントゴーレム』のことを詳しく聞いてみたりはしなかったんですか?マイスさんなら 頼めば教えてくれそうですけど…」

 

 わたしがそう言うと、マークさんは動きをピタリと止めて……そしてポンッと手を叩いた

 

「それだ!そんな簡単なことにも気がつかなかったなんて。いやぁ、盲点だったよ。今度 聞きに行ってみるとしよう!」

 

 小躍りしだしそうなほど喜びだしたマークさん。だけど、すぐにまた真顔に戻ってわたしを見てきた

 

 

 

「……で、彼は『錬金術』と関わりがあるのかい?もしかして アレも『錬金術』の産物だったりするのかな?」

 

「えっ、それは知りませんけど…実は、マイスさんも『錬金術』を扱えるんです……そうだ、マイスさんを知ってるのに『錬金術』のことを聞いてなかったのか、って話だったんだった(ボソリ」

 

 

 わたし自身が最初にした質問を忘れてしまっていたことを少し恥ずかしく思いながらも、マークさんの言うように『プラントゴーレム』というものが『錬金術』と関係があるのか考えてみた

 

「…もしかして、前にマイスさんが見せてくれた『アクティブシード』っていうのと、似たようなものだったりするのかな?」

 

 そう思ってけど、確信があるわけじゃなく なんとなくだ。……というか、『アクティブシード』っていう動く植物のほうも ほとんど知らないわけで、結局のところ マイスさんに直接聞いてみるしかなさそうだ

 

 

 

 わたしが そんなふうにひとりで考えているのと同じく、マークさんも 何やらひとりで考えているようだった

 

「ふぅん…『錬金術士』と呼ばれる人物以外にも『錬金術』を扱える人がいたとは…。それも 彼がそうなのか。色々と聞いてみることが増えたね」

 

 そう呟いた後、マークさんは 私のほうへ向きなおって、軽く礼をしてきた

 

「善は急げ、だ。さっそく彼のところへ行ってみるとするよ。お騒がせしたね」

 

「あっ、えっと……って、もう行っちゃった」

 

 

 今しがた マークさんが出ていった扉をジッと見つめて……いても、どうしようもなかったから、調合の作業にもどることにした…

 






 前々から 出したいと思っていた『プラントゴーレム』。「青の農村での出会い」でちょっと顔見せしてからの、久々の登場です


 登場しているのが『RFオーシャンズ』のみで、作中でもレアモノだと言われてましたが……マイスくん、『アクティブシード』に続いて『錬金術』で作ってしまいました(ナンテコッタ
 ただ、デカくなる要因が無いため、『RFオーシャンズ』のユミルのような大きさではなく、人並みの大きさとなっています


 その他にも、ちょっと前に マイスくんがホムちゃんにわたした アストリッドさん用の「面白いもの」が『プラントゴーレム』の元である『ゴーレム草の種』だった…なんて話もあったり…

 …裏話でいえば、ユミルみたいにでっかくしてしまう…って案があった時期もあったのですけど、イージーモードになるうえ ある人の活躍の場がなくなってしまうので断念しました


 今後、活躍の場はあるのでしょうか…?

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