***マイスの家***
本日は快晴。畑の作物たちが 葉に
1年の終わりが間近まで近づいて ここ最近 空気が冷たくなったけど、日差しのおかげで
僕が座っているイスから見て テーブルを挟んで反対側にあるソファーに座っているのはフィリーさん
フィリーさんの表情は、普段『冒険者ギルド』で働いている時の 依頼を見にきた冒険者に対して怯えている
「マイス君。例のモノは…?」
「ここにあるよ」
「ふふっ…、ふふふふふ!」
「やったー!新しい『金モコ
「えっ、なにその名前!初耳なんだけど!?」
僕の驚きの声に耳をかたむける様子も無しに、ソファーから立ち上がり
―――――――――
僕がフィリーさんに渡した『枕』……フィリーさんがつけた謎の名称から判る通り、
ことの発端は…と言いたいところだけど、明確な始まりというのはわからない。いつの間にやらフィリーさんが「モフモフ大好き!」ってなったことが ある意味での始まりだったのかもしれない
金モコの正体が僕だと知った後にも「一日中モフモフしてたい」などといってたけど、フィリーさんの そのモフモフ欲は なんだか時間が経つにつれて大きくなっていっているように感じられた
そして、数年前のある日のこと……
「ま、前に「持って帰る?」って聞いたよね…?その…今、もらいたいんだけど…」
その言葉を聞いた時の僕は「えっ、なんのこと?」って状態だったけど、話を詳しく聞いていくにつれて フィリーさんの言いたいことは理解できた
僕の『モコ毛』をあげるって話は、僕自身はあまり覚えてないし、あんまり気は進まなかった。…けど、目を
―――――――――
それが数年前の話。そして、数週間前に「何年も使い続けて、しぼんで潰れてきちゃったから…」とフィリーさんが新しい枕を頼んできたのだ
「何年も使い続けて、また欲しいって……そんなに使い心地が良かったのかな?」
自分のものだから っていうのもあるかもしれないけど、そこまで特別凄いって印象はない……
いやまあ 確かに『シアレンス』周辺にいた『モコモコ』の毛はモフモフしてて気持ちよかった記憶がある…。でも、それが金色になったってだけで 品質に差は……あったのかな?
っと、そんなことをひとりで考えていたら、いつの間にかフィリーさんが 僕のことをジイーッと見つめてきていた
「どうかした?…もしかして、枕に何か ダメなところがあった?」
「別にそういうわけじゃないんだけど……ふと
「ほら、リオネラちゃんのところの ホロホロ君とアラーニャちゃんみたいな感じで」と付け足して 自身の中のイメージを伝えてくるフィリーさん
でも……
「いや、何が悲しくて 自分の毛で自分の人形を作らなきゃならないのさ…」
「ええ~っ?結構 需要があると思うよ?」
「そもそも、需要とかの前に 根本的に毛が足りなくなるから」
ただでさえ、枕ひとつでも数週間の時間が必要だったっていうのに。それに精神的にもきついよ……色んな意味で無理がある
「……そういえば、今、モコちゃんの姿になったら どうなるの?」
「…聞かないで」
「ま、まるはだ…」
「言わないで!」
「こここ!今度 毛ぇ
「ううぇ!?何で!?」
―――――――――――――――
「落ち着いた?」
「…うん。ご、ゴメンね?」
「とりあえず、お茶淹れたから 飲もうか」
よくわからないテンションの上げ方をしてしまったフィリーさんを ひとまず落ち着かせて、淹れたお茶をすすめる
ここですすめたお茶は『リラックスティー』、 『シアレンス』にいたころ 作り方を憶えたお茶だ。材料の関係で何年もかかってしまったけど、今ではほぼ完璧に再現することが出来るようになり こうして人に出せるまでになった
「ふぅ~…とりあえず、マイス君の毛刈りのことは また今度でいいやぁ…」
『リラックスティー』の効果もあってか、いい感じにリラックスし ノンビリとした感じになったフィリーさん。これで とりあえずは大丈夫だろう
…できれば、このまま忘れて 二度と思い出してほしく無いなぁ……
コンコンッ
そんな中、玄関の扉がノックされる音が聞こえた。そして、僕が返事をする前に扉は開かれて ノックをした張本人であろう来客が家に入ってきた
「おーい、にいちゃん いるかー?」
そう言いながら入ってきたのは 行商人のコオルだった。コオルは僕を見つけると「よお」と手をあげながら軽く挨拶をしてきた
「いらっしゃい、コオル。今日はどうしたの?もしかして、『アレ』の事で何かあった?」
「いや、ソッチは別に問題無いぜ。連絡と打ち合わせは 明日『集会場』でするから心配するなって。…で、今回来たのは これだよ」
僕はコオルが差し出してきた物を受け取り 確認する。それは封筒に入った一通の手紙だった
「
「うん、わざわざ ありがとう!」
「いいって いいって!まあ 気が向いた時に返信書いて『集会場』の受付に持っていきなよ。んじゃあな、客がいる時に邪魔して悪かったな」
そう言うとコオルは ソファーに座っているフィリーさんに軽く頭を下げた後、玄関から出ていった
テーブルそばのイスへと戻り あらためてイスに座った僕は、受け取った手紙の送り主の名前を確認した
……うん。コオルが言っていたように、いつもの手紙みたいだ
封筒を開けようとした時、向かいのソファー座っているフィリーさんと たまたま目が合った。そして、それを良いタイミングだと思ったように フィリーさんは僕にオズオズとたずねてきた
「そのー…その手紙って、誰か友達からの手紙なの?」
「ええっと、友達っていうより…。いや、フィリーさんも知ってる人だよ?」
「えっ、そうなの?」
「というか、エスティさん」
「へぇ……って、ええっ!?おっおお、お姉ちゃん!?」
そんなに驚くほどのことだろうか?大きく口を開けて 手でそれを隠すような仕草は、ちょっとオーバーアクションな気もするんだけど…
「「いつもの」って言ってた気がするんだけど……お姉ちゃんからの手紙って、よく送られてくるの…?」
「そんなに頻繁にじゃないけど……そうだなぁ…少なくとも1ヶ月に1回はくるかな」
「ウソォ!?
「えっ!?そうなの?」
それで あんなに驚いてたんだ…。それにしても、エスティさんも家に全然連絡してないだなんて……いったい何を考えてるんだろう
「それで…、お姉ちゃんからの手紙って どんなこと書いてるの?」
「まぁ、「最近どう?」とか「こっちは
そう答えながら 僕は封筒を開け 中から便せんを取り出してひろげる。そして、手紙の内容に目を通しながら 言葉を続ける
「他には「フィリーは元気にしてる?」とか「フィリーはちゃんと仕事してる?」とか…」
「もうっ!お姉ちゃんもマイス君にわざわざ聞いたりして…!そんなに心配されなくても、私だってそれなりには…」
「あと、「今月はどれくらいクーデリアちゃんに怒られてた?」「依頼受けに来た冒険者に怯えたり気絶したりしてなかった?」「仕事やめるとか言って、泣いたりは何回してた?」、ええっと…他にも……」
「ふぇえぇ!?も、もうやめて~!!」
フィリーさんは、泣き声まじりの叫び声をあげながら 家の外へと走り出してしまった…
あの方向は街のある方向……あのまま帰ってしまうつもりだろうか?街と『青の農村』の間の街道では モンスターはまず出てこないから多分大丈夫だろうとはおもうけど…
「それにしても……」
僕が目をやるのは、エスティさんからの手紙。その内容の最後のほうは、他の内容が変わっても 毎回ほぼ同じ文が書かれているのだ。そして その内容というのが…
『もしも!フィリーに仲
……「折りに」って、いったい 何をだろう?
……まあ「フラグ」をですね