マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 相変わらずサブタイトルはテキトウです






※2019年工事内容※
 途中…………


マイス「街の人たちと僕と」

***王宮受付***

 

 

「今日持ってきた依頼品です」

 

 僕が複数の木箱に入れて分けていた納品用の品々をエスティさんに渡す。するとエスティさんは、依頼書の内容を照らし合わせながら 確認を始めた

 

「えっと、コッチがコレだから これでよし!…で、次に コレはアッチだから……」

 

「それで こっちは王宮受付への分です」

 

「あら!それももう持ってきてくれたの?ありがとうね」

 

 

 一つ一つが結構な重さがある上に 量が量だったので、依頼品の整理は僕も手伝って終えた

 

「はいっ これで全部ね、お疲れ様。 それと、新しくマイス君名指しの依頼が二つ入ってるわよ」

 

 エスティさんが渡してきた二枚の依頼書を受け取って 内容を確認する。……うん、そう問題無くこなせそうな納品依頼だ、両方受けても余裕があるくらいだろう

 

「えっと、それじゃあ この二つは受けます。…それと 他の依頼も見せてください」

 

「依頼をこなしてくれるのは こっちとしてはありがたいけど……大丈夫?『王国祭』以降マイス君名指しの依頼が随分増えて 大変じゃない?」

 

 心配そうな顔をしたエスティさんが 僕にたずねてきた

 

「大丈夫ですよ!……というか、畑を広げて 新しい作物を育ててみようかって検討しているくらいには時間に余裕があります」

 

「そうなの? かなりの数の依頼をいっぺんに受けてるから色々心配だったんだけど……私がよく知らないだけで、農業ってそういうものだったりする?」

 

「相応の体力と筋力があって、それと知識と慣れ次第で農作業の時間は ある程度は短縮されますから。あとは、このあたりの気候が比較的安定しているから 世話の手間が増えないっていうのもありますね」

 

 あと少しで ここにきてから二年になるが、嵐のような目立った荒れ模様は無く 安定した栽培を行うことができている

 おかげで コンテナにある程度の作物のストックがあったりもする。というか、その豊作過ぎストックがドンドン増えてきて、そろそろ専用の保管庫をつくることを考え始めてる

 

 

 受け取った依頼書の束から 数枚を選んでエスティさんに提出する

 

「さっきの二つと この四つを受けるのね、わかったわ。…はいっ、がんばってね!」

 

「それじゃあ、失礼しました」

 

 依頼を受ける 正式な手続きを終えて、僕は『王宮受付』をあとにした

 

 

 

 

――――――――――――

***広場***

 

 

 僕は『王宮受付』から家へと帰る際に、お店やアトリエに用があれば『職人通り』を、特に用が無ければ『広場』を 通る道を選んで帰る

 そして、今日はお店に用はなかったので『広場』を通る道を選んだ

 

 

 『職人通り』でお店を利用して帰る時は、当然 お店にいる知り合いとよく話すことになる

 

 だが、最近では『広場』を通る道を利用して帰る時に 街の人によく声をかけられるようになった。さっき エスティさんが言っていたように『王国祭』で目立ったのが要因だろう

 そんなこともあって、新しく知り合いになった人たちと挨拶を交わしたり、世間話をしたりしながら帰るのが、最近の『広場』を通る帰りの日常だ

 

 

――――――

 

 

「それじゃあ、またな マイスー!」

「またねー」

「じゃあね…マイス」

 

「気をつけて遊ぶんだよー」

 

 思い切り手を振る子、少し恥ずかしそうに控えめに手を振る子……この街にもいろんな性格の子がいる

 僕がたまたま知り合った あの三人も、一人一人全然違う性格なのだが いつも一緒に楽しそうに遊んでいる。それが 少し羨ましく思えたりする

 

 

「…意外ね。マイスがあの子たちとあんな仲が良かったなんて」

 

 よそへと遊びに行く子供三人組を見送っていた僕に、後ろからそんな声がかけられた。振り返ってみると、見知った顔がそこにはあった

 

「こんにちは!クーデリア。ロロナとは仲直りできたって?」

 

「ええ、おかげさまで」

 

 その回答は 声こそそっけない感じだったけど、クーデリアの口元が緩んでいることから 本人の喜びようが見て取れた

 

 

「クーデリアもあの子たちのこと 知ってるの?」

 

「まあ 知っているといえば知ってるけど……別にあんたみたいに親しいわけじゃなくて、一方的に知ってるだけよ」

 

 となると、どういった関係だろうか?一方的に知ってるってことは 別に友達ってわけでもないんだろう。歳もそんなに離れてはいないが 近くも無い。 あとは何かあるだろうか……

 

「親の繋がりかな? 確か あの子たちも『貴族』らしいし」

 

「正解よ。…とは言っても別にアーランドの『貴族』同士って繋がりが強いわけじゃないから、本当にたまたま あの三人の中の一人の親と わたしの親に交友があったってだけなんだけどね」

 

 『貴族』、アーランド王国にある階級らしいけど、実際はたいしたものではないらしく お金で買えるそうだ。……とは言っても、そもそも僕が あまり階級とか貴族とかいうものを知らないので、それが良いことなのかどうかすら わかっていないんだけどね…

 

「そういうあんたは 何処でどうやって知り合ったの?」

 

「えっと、話すと長くなっちゃうから端的に言うけど……この間の『王国祭』がきっかけかな」

 

「あぁ…」

 

 納得した、と言わんばかりに頷くクーデリア。でも、その顔は…なんというか呆れ半分というか……

 

 

 

「確かに 良くも悪くも目立っていたね。話しかけてくる人も増えるだろう、特に 好奇心の強い子供なんかはね」

 

 僕とクーデリアの会話に、別の声が入り込んできた

 

「あっ タントさん、お久しぶりです!」

 

「そういえば 久しぶりかな?」

 

 そこにいたのは、黒のつば広帽に黒のコートを身に着けた いつも通りの格好のタントさんだった

 

 

「今日は ちょっとキミに用があってきたんだけど……その前に、なんで そちらのお嬢さんはそんなに僕を睨むのかな…?」

 

 困ったように言うタントさんにつられて、タントさんの言うお嬢さん…クーデリアのほうへと目を向けた。 そこには不機嫌さを隠そうともしないで タントさんを睨みつけているクーデリアがいた

 

「困ったな…僕はキミに嫌われるようなことをしたおぼえは無いんだけど……もしかして」

 

「おぼえが無いも何も、ロロナにたかる悪い虫を 私が嫌わないはずがないじゃない」

 

 ビシッと指差しながら言うクーデリア。対して タントさんは首をすくめながら「やれやれ」といったように首を振った

 

「悪い虫って…随分な言われようだね。それに、僕はてっきり マイス君と二人っきりの時間を邪魔されて怒ってるのかと思ったんだけど」

 

「はぁ?なんでそんなことで怒らなきゃなんないのよ」

 

「…真顔で即答か」

 

 よくわからないけど、クーデリアとタントさんは あんまり仲が良くはないみたいだ…。というか、クーデリアが一方的に嫌っているのかな?

 そして、タントさんは 僕の方へと向きなおった

 

「残念だったね、どうやら脈なしみたいだよ」

 

「……?えっと、どういうことですか…?」

 

「こっちもこっちで そういう意識はしてなかったか……それも凄いことだと思うけど」

 

 うーん、本当に何のことだろう?

 

 

 

 

「おっと、話がそれたね。それでマイス君、キミに用があったんだけど…」

 

「なんでしょう?」

 

「近々、僕と親父で キミの農場の視察に行きたいんだけど、大丈夫かな?」

 

「はい、かまいませんよ……って」

 

 特に問題無いので すぐに答えたけど、ふと疑問が湧いてきて 口からでてきた

 

「視察?」

 

「親父?」

 

 僕の疑問と ほぼ同時にクーデリアからも疑問の声が上がった。そして それらを聞いたタントさんはといえば、軽く頷いただけだった

 

「そういえばキミたちには まだ言ってなかったっけ?僕の親父がこの国の大臣やってること」

 

「はぁ!?何それ!初耳よ!!」

 

 クーデリアが驚いているから きっとすごいことなのだろう。……でも、やっぱり『貴族』の話と同じで 僕にはいまいちピンとこなかった

 

「それじゃあ、大臣さんとタントさんがくるんですね?しっかりと用意しておきます」

 

「いや、そこまで(かしこ)まらなくてもいいから。…それに、よっぽどの大事をしない限り 別に怒られもしないよ。親父(あのひと) なんでかキミのことを随分気に入っているみたいだし」

 

「大臣さんが…?」

 

「へぇ…マイス、何か心当たりはある?」

 

 クーデリアに聞かれたけど、特には思いつかない。…あえてあげるなら いつかエスティさんが言っていた「マイス君が王宮に卸してくれてる茶葉、結構好評よ」っていう話くらいだろうか……?

 

 まあ、よくわからないけど とにかく誰かが来ることは別に問題は無い

 それに実際に大臣さんに会えばわかることだろう




 金曜日に増刊号的扱いの更新をします!なんとなくです

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