※2019年工事内容※
誤字脱字修正、細かい描写の追加、句読点、行間……
***王宮受付***
「お疲れ様! いつもありがとうね、マイス君」
エスティさんは達成した依頼の用紙と納品物をしまうと、新しく入った依頼書の束を僕に渡してくれた。
「それじゃあ、受けたい依頼がないか見てちょうだい。 で、見ながらでいいから ちょーっと私の相談を聞いてくれないかしら?」
「どうかしたんですか?」
依頼書の束をめくろうとした手を止めて、エスティさんを見る。
相談といえば、以前のようにフィリーさんに関することだろうか?
「私自身のことじゃないんだけどね……今日はもう雑貨屋さんに寄った?」
「いえ、まだですけど」
「なら知らないか……。あのね、ティファナが体調崩しちゃって 今日は雑貨屋さんはお休みなのよ」
「そうなんですか!?」
ティファナさんが身体が弱くて時折体調を崩すことは知っていたが、だからといって心配にならないわけではない。
「ティファナって今ひとり暮らしなのよね。だから、いつも体調を崩した時は私が様子を見に行ったりするんだけど、今日は運悪く仕事を抜けられそうになくってね……。それで、マイス君にちょっとティファナのこと頼みたいのよ」
「僕がですか?」
「ロロナちゃんあたりに頼もうかとも思ったけど、ここのところ依頼の期限に追われてるみたいで……お見舞いと軽い看病くらいでいいからお願いできないかしら?」
先日、ホムちゃんから「少し働き詰めになりそうですから2,3日こなーは連れて来なくていいです」とお達しを受けていたけど、依頼の期限のせいだったのか……。
おかげで、というわけではないけど今日は特に予定が無いので、エスティさんからのお願いを聞けそうだ。
「はい! 任せてください!」
「ありがとう! はい、コレがティファナのとこの合鍵。落としたりしないようにね」
エスティさんが合鍵を持っていることに驚きかけたが、時折体調を崩すティファナさんのところに行くって言っていたから ティファナさんから受け取っていてもそれほどおかしくないことに気がつく。
「それじゃあ、ひととおり終えたら合鍵を返しにきますね」
「うん、よろしくね。その時も鍵の閉め忘れに気をつけてちょうだいね」
「はい!」
返事をし、王宮受付を後にし外へと出る。自分のカゴの中に何が入っているかを確認した後、雑貨屋さんへと歩を進める。
その様子を見送るエスティはひとり呟く。
「まあ大丈夫よね、マイス君ならティファナに変なことしたりしないだろうし」
――――――――――――
***職人通り***
「今持ってる花の中で一番良いのをお見舞いの品として花瓶にいれて、あとそれと、食欲がありそうだったら軽いゴハンを作ってあげて……他に何かあるかな?」
そんなことを考えながら、雑貨屋さんまでの道のりを歩いていく。
すると、少し先に 人だかり―――とは言っても3人ほどの塊なのだが―――があり、雑貨屋さんの入り口は その先だった。
……まあ 通れないほどでもないから 特に問題はないんだけど。
「すみません、ちょっと通りますね」
エスティさんから預かった合鍵を取り出しながら、3人のそばを通り過ぎる。
「「「ああ、これは失敬」」」
三人はそう言いながら 少し避けてくれた。
僕は 合鍵で雑貨屋の扉の鍵を開け、店内に入り、そして内側から鍵をかけなおした。
「さて、ティファナさんはいつもレジカウンター奥の扉から出てきてたから……あの先にティファナさんがいるのかな?」
いちおうはエスティさんの許可があるとはいえ、あまり勝手にウロウロするのは さすがに失礼だと思うので、なるべく早く見つけ出したいところ
まずはティファナさんのいる部屋。それとキッチンもわかるといいんだけど……
―――――――――
奥の扉に入った後は、思っていたよりも簡単にティファナさんがいる部屋を見つけ出せた。けど、ちょうどティファナさんはベッドで寝ていた。
なので、今は部屋のすぐそばにあったキッチンを勝手ながら借りて料理を作っている。
作っているのは『おかゆ』、体調が悪い時の定番……だと思っている。
もし、ティファナさんが食べられそうになかったら 持って帰って自分で食べるなり何なりすれば良いだろう。
「よし、できた!」
あれから少し時間が経ったことだし、ティファナさんの様子を見に行くとしよう。
できた『おかゆ』はティファナさんが起きていて 食欲がありそうだったときに持っていくとして、今は花だけでも持っていこうか……。
―――――――――
ガチャ
「ん……エスティ?」
寝室のドアを開けると、ティファナさんがちょうど起きた――というよりも、起こしちゃったみたいかな?
「お邪魔してます、マイスです」
「あら? え、マイスくん……?」
「えっと、エスティさんが仕事が忙しいみたいで、けど「心配だから」と僕に頼んで……」
大まかな話の流れを説明すると、ティファナさんはわかってくれたようで「そうだったのー」と言ってくれた。
「ごめんなさいね、気を使わせちゃって……」
「誰だって体調が悪くなる時はあります……それに、僕もティファナさんが元気が無くなったら心配になります。僕がこうしたかっただけですよ」
「……ありがとうね、マイスくん」
「いえいえ……それで、お腹とかすいてませんか?」
「あら、もしかして何か用意してくれるのかしら?」
「はい! 体調が悪い時でも食べやすいものを――」
…………………………
………………
それからティファナさんは用意していた『おかゆ』をゆっくりと食べた。食欲はちゃんとあるようで、一人前を全部食べていた。このぶんなら回復も早いと思う。
そして、ティファナさんが再び眠るまでの間、本人からの要望で「僕が最近何をしているのか」「どんなことがあったか」をお話しした。
……気づけば小さな寝息が聞こえてきたので、そこで僕は静かに片づけをし、ひとつ簡単な薬を置き、その場を後にした……。
――――――
〈おまけ〉
(マイスが雑貨屋に入った後の雑貨屋前)
「どどっど、どういうことだ!?」
「私も普通に避けて場所を譲ってしまったが、何故っ! あの少年がっ! ティファナちゃんの店の鍵をぉぉおぉぉぉ!?」
「つまり、そういうことか! どういうことだ!? ぬわぁー……」
3人…………言わずともわかるかもしれないが、普段毎日のように雑貨屋に入り浸っている グレン、ヒューイ、バーニィ のいい歳した大人三人組である。
体調を崩して休んだティファナを心配しながらも、「病弱なところも……」という発言から不謹慎うんぬん お見舞いに行ってみたいなどと談話をしていたが、マイスの登場&カギをあけて入っていったことにより、色んな意味で大変なことになっていた。
そのうち落ち着いた3人は、紳士的な思考で「ここで騒いでいたら、ティファナちゃんの身体に障ってしまう」と理解し、3人で昼間っから飲みに行った。
正直 無くても問題無い話でしたけど、最後の部分を書きたかったがために作ったお話