マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 『ロロナのアトリエ』で一番好きなBGMは「Devil's Tango」。
 別に今回の内容とは関係ありません。






※2019年工事内容※
 誤字脱字修正、細かい描写の追加、特殊タグ追加、句読点、行間……


リオネラ「再会はお昼どき」

***中央通り***

 

 

 

 

 

 人形劇の大道芸を終え、今からどうしようかと『中央通り』を歩いていると、脇道から見た顔が歩いてきたのがわかった。

 向こうもこっちに気がついたみたいで、歩み寄ってきた。

 

「リオネラさん、こんにちは!」

 

「こ、こんにちは……マイスくん」

 

「いつぞやぶりだな」

「あの時は本当お世話になっちゃったわ」

 

 私に続いてホロホロとアラーニャもマイスくんに話しかける。

 

 マイス君は一瞬「あれ?」と疑問をもったような顔をしたけど、すぐに何か思いあたったみたいで何やら納得したように一人頷いている。

 それが気にはなったけど、まずその前に以前から用意していたものを取り出しマイスくんに渡すことにした。

 

「あの……これ、このあいだ貸してくれてた分のお金……ちゃんと返しておきたくて」

 

「そんなわざわざ……うん、ありがたくもらっておきます」

 

「それと、その、あのパンおいしかったよ」

 

 すると、マイスくんは本当に嬉しそうに笑った。

 

「本当ですか! 口に合うか不安だったけど、おいしいって言ってもらえて凄く嬉しいです!」

 

 

「リオネラったら、ほんとにおいしそうに頬張って口周りにジャムつけちゃってたのよ」

「ありゃ、ちょっとマヌケ面だったなぁ」

 

 

「も、もう! アラーニャもホロホロもわざわざ言わなくても……!!」

 

「あははは……、そんなに気に入ってもらえたならまた何かおすそわけするよ」

 

「うっ、ありがとう……」

 

 

 

「そういや今日は何しに街まで来てるんだ?」

 

 そうホロホロがマイスくんに聞く。

 たしかに マイスくんは街の外に住んでるから、何か用があってここにきてるんだと思う。もし、急ぎの用の足止めをしてしまったなら申し訳ないから、できれば用が済んだ後だといいな と思いながらマイスくんの返答を待つ。

 

「アトリエにおすそわけに行くところなんだ。ほら、そろそろお昼にちょうどいい時間になるからね」

 

「アトリエって、ロロナちゃんの?」

 

「そうだよ。……そうだ! よかったら一緒に来ない?」

 

「えっ!? そんないきなり行っても邪魔に……」

 

「大丈夫だよ、僕も特に約束とかしてるわけじゃないから!」

 

「……前にも思ったけど、オマエって結構行き当たりばったりだよな」

 

 ホロホロの言葉にマイスくんは「そうかな?」と苦笑いをする。それを見たホロホロとアラーニャは少し呆れながらも「まあ、そんな悪いことなわけじゃないからいいか」といった様子でヤレヤレといったジェスチャーをした。

 

 

「まあ、色々思うところもあるけど、せっかくのお誘いだし行ってみたらどう?」

 

「うん、それじゃ……一緒に行ってもいい?」

 

「もちろん!」

 

 ドンと来いというかのように胸を張るマイスくん。

 

 それから、ロロナちゃんにサイフを拾ってもらったことや、ロロナちゃんがマイスくんと面識があることを知り、あの時聞けていなかった名前等 色々話しをしたことを話しながらアトリエへと向かった。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

「にしてもリオネラのやつ、マイスとは問題無く話せるみてぇだな」

 

「そうね。凄く優しいからか、自分よりちっちゃくて元気で子供みたいだからか、表裏が無さそうだからか……よくはわからないけど、良い兆しじゃないかしら?」

 

「だな。まあ もうちょい様子見かな」

 

「そうね」

 

 そんなホロホロとアラーニャの、ふたりの会話は誰に聞かれるでもなく、ふたりのなかで交わされるのであった。

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

***ロロナのアトリエ***

 

 

 

 

コンコンコンッ

 

「はぁい、どうぞ~」

 

 マイスくんがアトリエのドアをノックすると、聞いたことのない声で返事が返ってきた。

 私も不思議に思ったけど、マイスくんも同じみたいだったけど「あれ? また誰か増えたのかな?」と言ってドアを開けた。「また」ってことは前に誰か増えたのかな?

 

 

「こんにちはー」

 

「お、おじゃまします……」

 

 マイスくんの後ろをついて行ってアトリエに入ると、見たことの無い女の人が浮いていた。…………浮いて……? えっ?

 

「はじめまして、僕はマイスっていいます! すみませんがロロナはいますか?」

 

「あら~、ロロナはちょっと前に雑貨屋さんに行っちゃったのよ。でも、そろそろ帰ってくる頃だと思うわ~。あたしはパメラっていうの~幽霊やってまーす」

 

 えっ、あれ…? マイスくんは何で普通に話してるの? とういうか、幽霊!? どどどうしたら…! えっと ああっと!?

 

「リオネラさん? どうかしました?」

 

「あっ……ゆゆうれ……!? 浮いて……!」

 

「…? ホロホロやアラーニャも浮いてるけど?」

 

 そ、そうだけど、そういうことじゃないよマイスくん!?

 ……あれ? マイスくんは何も動じてないから、私がおかしいの……かな?

 マイスくんは何事もないみたいに幽霊さんと話しだした……

 

 

「ただいまー! あ、りおちゃんにマイス君 いらっしゃい!」

 

 アトリエのドアが開いて、ロロナちゃんが帰ってきた。

 このよくわからない状況から助けてほしくて振り返る……前にホロホロが口を開いた。

 

「おいおい、オレたちもいることを忘れてもらっちゃ困るぜ」

 

「あうっ……ごめんねー。()()()()()()()()()()もいらっしゃい!」

 

「こっちこそごめんなさいね、いきなりお邪魔しちゃって」

 

「いいよー、むしろ歓迎しちゃうよ! ……って、りおちゃん、どうしたの!? どこか痛いの?」

 

 ロロナちゃんが、私が涙を溜めてしまっていることに気がついてくれたみたいで、心配そうに顔を覗きこんできた。私はうまく動かせない口を精一杯動かしてロロナちゃんに助けを求める。

 

「ゆ……ゆゆぅれいが……!!?」

 

「ふぇ? ……あ!」

 

 そんな少しの言葉でもわかってくれたみたいで、ロロナちゃんは幽霊さんの方を向いて非難の声をあげた。

 

 

「もー! パメラったら、りおちゃんをおどかすなんてダメだよ!」

 

「え~? あたし、別に驚かせたりしてないわよ~?」

 

 叱っているロロナちゃんに対して幽霊さんはのんびりと心外そうに返す。

 

「そんなこと言っても、幽霊が浮いてるだけでも、初めて見た人は心臓が飛び出ちゃうくらいなんだっからね!!」

 

「そんなことないわ、ねぇ~マイス君?」

 

 そう言いながらマイスくんのそばまで降りてきて、マイスくんの首に後ろから腕をまわす幽霊さん。マイスくんはといえば、ちょっと首をかしげたりはしてたけど、特に抵抗したりはしてなくてそれを受け入れている。

 

「……ああ、そういえば あたしって幽霊だから触れないんだったわ~。これじゃマイスくんを抱っこできなーい」

 

 マイスくんのことを随分気に入ったようで、残念そうに言う幽霊さん。その言葉にマイスくんは「へぇ、そうなんですかー」と微妙なところで驚いていて、ロロナちゃんはといえばとても慌てていた。

 

「まっ、マイス君! すぐ離れて! 憑りつかれちゃうよ!?」

 

「えっ、そんなことができるんですか?」

 

「できなくはないけど~……人形とかならともかく、人はちょっと難しいわ~」

 

「なるほど」

 

 

 あわてるロロナちゃんと のんびり幽霊さん、そして いつもどおりのマイスくん。そんな状況を見ていると なんだか怖くなくなり、いつの間にか不思議と落ち着けていた。

 

「マイスのヤツ、変に神経が太いっていうかマイペースっていうか……」

 

「まぁ、モンスターと仲良しになっちゃうような子だから、幽霊なんかも許容範囲内なんじゃないかしら?」

 

「それもそうか」

 

 そんなホロホロとアラーニャの会話を聞きながら、私は三人の賑やかなやりとりを 見ていた。結局それはロロナちゃんのお腹が鳴り、マイスくんのおすそわけの『サンドウィッチ』をみんなで食べはじめるまで続いた。

 

 マイスくんは幽霊さんがごはんを食べられないことや、ホムちゃんって子が用事で出ていたことを最後まで残念そうにしていた。


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