告知の追記修正よりもいつの間にか遅くなってるだなんて、ヒドイありさまです
今回いつもよりセリフの比率が大きくなっています。
そして今現在「小実」のページの活動報告にてアンケートを行っています。
内容は……
①、②子供について
③『メルアト編』のマイスの行動基準
④キャラ、アイテム、その他絡み等結構アバウトなリクエスト募集
(例:「エスティさんとラブ飲みドリンク」、「ロロナ争奪戦」)
となっています。
締め切りは次回の本編更新までです。
お暇があればお気軽に参加ください。
【*10-5*】
***サンライズ食堂***
いつもはお客さんでにぎわっている『サンライズ食堂』の店内。
だけど今はお昼からは少しズレた時間で、ちょうどお客さんは僕たち以外は見当たらなかった。
そんな中、僕はロロナと並んでカウンター席に座ってたんだけど……
「マイス君……わたし、気付いちゃったの」
「気付いたって……何に?」
食事が一段落して食後の『香茶』を飲んでいたら、不意に隣にいるロロナが深刻そうな様子で話しだした。
一体、何がどうしたっていうんだろう?
「あれからそろそろ一ヶ月くらい経つけど……わたしたち、恋人っぽいことして無い気がするっ!」
「いやいや、そんなこと……」
だって、ロロナのご両親とお話してから正式にお付き合いして…………して……?
「た、確かにそうかも……!?」
「何言ってんだよ、お前ら」
僕が驚きながらそう呟くと、カウンター向こうにいるイクセルさんは呆れた様子でそう言ってきた……。
――――――
改めて、僕とロロナに加え、店員であるイクセルさんが新たに参加することとなった会話は、少し申し訳なさそうなロロナの言葉から再開された。
「えっとね、実は今日こうしてイクセくんの所に来たのは、そのことをマイス君と一緒に相談するためだったんだー」
「ウチで料理食ってくのはついでかよ!? それに、なんでお前まで驚いてるんだよ、マイス!」
ロロナに勢い良くツッコミを入れて……その勢いのまま僕のほうへと振ってきたイクセルさん。
「あははっ……てっきりロロナがイクセルさんの作った料理が食べたくなったのかなーて思って。それに、『学校』のことで忙しくなってからは来れる機会も減っちゃてたから僕も来たかったし……」
「お、おう。あーっと、まぁそう言われると嬉しくないわけじゃねぇけど、こないだの騒動の元凶だって思うと何とも言えない気持ちが」
「えっ」
「あ、いや、こっちの話だ。マイスやロロナに悪気が無いのは分かってるから。……自覚も無いのは厄介だけどよ」
最後にボソッと言ったイクセルさんの言葉は僕にはギリギリ聞こえてきた……けど、自覚って一体何のだろう?
僕がその疑問を投げかけるよりも先に、イクセルさんが再び口を開いた。
「とにかく、だ。何で俺に? 自慢じゃねぇけど恋愛事とかわかんねぇぞ? もっと他に相手はいなかったのかよ?」
「わたしも色々考えたんだよ? でも、身近な人でお付き合いとか結婚とかしてる人ってあんまりいなくって……」
ロロナの言う通り、『青の農村』の人たちを除けば僕らの身近な人はあんまり結婚していない。むしろ、近しい人ほど結婚して無いような……?
あと、僕はまだしも、ロロナは『青の農村』の人たちに相談するのはハードルが高かった…………いや、僕でも相談しないかも。この間の噂の騒動で気付かされたけど、あの人たち恋愛関係の話への執着心が強くって……もし仮に今回の事を相談しようものなら、あの時のようにまた尾ひれがついて変な噂になって広まりかねない。
それは流石に嫌だからね。
ただ、ロロナの周囲の状況を知ってか知らずかは分からないけど、納得してない様子のイクセルさんが指摘しようとしてきて……
「いないって、親が……って、そういうことは親に相談しにくいか」
「うん、さすがにね。というか、もうこりごり。根掘り葉掘り聞いてくるし、お母さんは凄くパワフルで、お父さんは一々話の腰を折ってきて……」
「うん、アレは僕もちょっと遠慮したいかな」
「……もう何かあったんだな」
何かある度に「ダメだ」「認めない」って言ってきたライアンさんには驚かされたなぁ。でも、それ以上にロウラさんのコッチを追い詰めてくるような質問攻めのほうがもっと手ごわかったけど。
「でも、他に誰かいないか考えたんだよ!」って言ったロロナは、指をあごに当てて少し首を傾げる、何かを考えるような仕草をしながら言葉を続けた。
「他にはティファナさんなら、って思ったりもしたんだけど、色々思いださせちゃったら悪いかなーって」
「その気遣いを一割でもいいからコッチに向けてほしいところだな」
「?」
……? 何の話だろう?
イクセルさんの言葉に、同じように疑問を持ったのかロロナも不思議そうにし……僕のほうを向いてから……偶然にも僕と同じタイミングで首をコテンと傾げた。
僕はどう言うことなのかをイクセルさんに聞こうかとも思ったけど、ロロナは僕ほどは気にしてないみたいで、そのまま相談相手を考えた時の話を続けた。
「それで、結婚したことのある人以外って考えたら、
「おい、やめろ」
「え? あ、うん。帰ってきてるのは知ってたけど、どこにいるかは全然わかんなかったからやめたよ? あとは……美人さんなトトリちゃんのおねえさんや、かわいいメルちゃんもそういうことに詳しいかなーって思わなくも無かったんだけど……」
喋ってる途中でいきなり割って入られたロロナだったけど、いきなりのことに驚きながらも普通にお喋りを続けることが出来ていた。
……「メルちゃん」っていうのがメルヴィアのことだっていうのがすぐにわからなかったのは秘密だ。
「それで、経験豊富そうな人以外だったら、こういうぷらいべーとなことを相談しやすい相手っていうのが優先かなーって思って、まずフィリーちゃんに――」
「ばか、やめろ」
「今度はバカっ!? わたしバカじゃないよ!? と、とにかく、フィリーちゃんなら相談しやすいし、いい答えが出てこなくってももしかしたらエスティさんのこと知ってるかもって……でも、フィリーちゃんも「ダメだ、ダメだ!」っていうお父さんとは別方向に脱線してしまいそうな気がしてやめたんだ」
「理由は間違ってるが、その判断は正しいぞ」
またもや話の途中で割って入ってきたイクセルさんだけど、最後にはウンウンと頷いていた。
「他に誰かって考えて、りおちゃんなら――」
「やめろ。わざとか? わざとなのか?」
「ええっ? な、なにが……? 何言ってるかわかんないけど、りおちゃんならきっと親身に聞いてくれる……って思ったんだけど、逆に気負い過ぎちゃって真剣に悩み過ぎて他のこと考えられなくなっちゃいそうな気もしたからやめたの」
「また絶妙な回避を……つーか、ロロナのあいつへのイメージってそんなのなんだな」
……? さっきからイクセルさんは、何をわかるようでわからないようなことを言ってるんだろう?
まぁ、それは置いとくとして、ロロナが言ってることはよくわかる。人をよく気遣ってくれるリオネラさんだけど、その真面目さと真っ直ぐさは視野を狭めてしまうものでもあるからなぁ……。真剣に考え過ぎて頭から湯気を出し「きゅ~」と目を回してしまう様子がすぐに目に浮かぶ。
……実際にそんな光景を見たことがあるわけじゃないのに、どうしてだろう?
「それで、結局くーちゃんに相談してみようって思って……」
「まあ、妥当だろうな。あいつなら経験云々はともかくとしてロロナからの相談を蔑ろにはしないだろうし」
イクセルさんの言葉に、僕はついつい頷いてしまっていた。
むしろ、ロロナはもっと早くにクーデリアに相談することを思いついていいんじゃないかな?
「朝起きてからすぐに相談しに行ったら怒られた」
「そりゃお前が悪いわ」
「うん、朝早くにいきなり行くのは迷惑になっちゃうかもしれないんだから、ね?」
「うう……冷静に考えればそうなんだけど、わたしも必死に考えたりしてて、ちょっと……」
まぁ、そんな事をしてしまうくらいには「恋人っぽさ」のことをそれほどまでに考え悩んでたってことなんだろう。
「でもね、でもね! その後くーちゃん「で? なんなのよ?」って、いちおうお話し聞いてくれたんだよ!?」
「自分で「いちおう」とか言うのは悲しくないかな?」って思いながらも、黙ったままロロナの言葉を聞き続ける。
「だから、最近マイス君とあったこととか話して、恋人っぽくないって話をして、どうしたらいいのかなって聞いたら……!」
「「聞いたら?」」
「「
「えっ、なんでそんなことに!?」
「いや、マイス。ここ最近のお前ら見たやつ全員がクーデリアが言った事と同じこと思ってるからな?」
「「ええっ!?」」
予想外の情報に、僕とロロナは一緒になって驚き声をあげてしまってた。
そ、そんな風に思われてたの!? いや、でも第一、見ただけで「惚気てる」って……!?
「えーっと……そんなわけで、そのままマイス君がアトリエに来る約束の時間になって、あと相談できそうなのってイクセくんくらいだし、そのままマイス君と一緒に行こうかなーって思って」
「んで、こうなった、と。話は把握できたが……つまりは消去法で俺だったんだな?」
「まあ、そうなっちゃうかなぁ」
驚きから回復したロロナの言葉に、イクセルさんはため息混じりに言い……ロロナがまた申し訳なさそうにしながら言葉を返した。
それにしたって、どうしてだろう?
「あれ? マイス君、どうかした?」
「あっ、ちょっと気になることがあって……」
ちょっと考え込んでしまっていたのに気がついたらしいロロナが、僕の顔を覗きこむようにしてきて……僕は素直に答えた。
「こういう話ならトリスタンさんが真っ先に思い浮かぶんだけど……お仕事忙しかったりして相談できそうにないかな?」
僕がそう言うと、イクセルさんがピシッと固まった。
そして、ゆっくりと首を振りながらちょっと震え気味の声で言ってくる。
「いや、マイス、それは流石に……って、もしかしてこいつ、あの事を知らねぇってことは――」
「その手があった……!」
「おいいっ!? ロロナっ!? お前がそこでGOサイン出すのかよ!?」
「えっ、何かダメなことあった……?」
「ダメも何も……俺も又聞きでよくは知らねえけど、アイツと色々あったんじゃないのか!?」
よくわからないけど、ロロナが何かまずいことを言ったのかな?
いや、でもそれにしたってイクセルさんの様子が必死……というほどでもないけど、何故かやけに勢いがあった。それほどまでのことがあったのかなぁ?
ちょっとの間、イクセルさんが言っていることがわからない様子のロロナだったけど、不意にロロナはポンッと手を叩いた。どうやらロロナは何か心当たりがあったみたいだ。
そんなロロナは……
「「冗談」って言ってたし……これまで通りじゃダメなのかな?」
「ダメだろ……」
ここまで「一体何の話なんだろう?」って思ってた僕だけど、ロロナの言った「冗談」っていう言葉にどこか聞き覚えがあって……そして思い出した。
そうか。なら、あの時の話の……
「ロロナに告白したのって、トリスタンさんだったんだ。言われば納得できちゃうなー」
「お前はお前で、何冷静に受け入れてるんだよ……。もっとこう、思うことでもあったりしないのか?」
「ロロナは人気者なんだなー……くらい?」
僕がそういうと、イクセルさんは肩をガクッと落とし、大きな大きなため息を吐くのだった……。
「ひとつ分かった。お前ら放っておいたら、こん前のアレほど酷くはねぇけどロクなことになりそうもないってことが。キレイに結論出せる気は全くしねぇが、簡単な意見くらいはできるだろうし……それでいいな?」
「うんっ、ありがとうイクセくん!」
「あはははっ、よろしくお願いします」
二人揃って軽く頭を下げたロロナと僕。
そして、イクセルは一つ咳ばらいをしてから離しだそうとし……寸前ではたと手を止めた。
「つーか、そもそも最初は自分と相手……つまりはカップル同士で話し合ったりしてみるもんなんじゃねぇのか? マイスはロロナが悩んでた
「それはそうかもだけど……自分で言うのも変かもしれないけど、わたしこういう話に全然縁が無くって、なんにもわからないの」
「まあ、そうじゃなきゃ悩んだりはしないだろうしな。だからこそ、相手とちゃんとコミュニケーションを取って……」
そんなことを言うイクセルが腕組みをしてロロナに説教じみた事を言っていたんだけど、それを不意に止めた。そして、ロロナの隣のカウンター席に座っている
僕のほうをじっーと見てきて……
「……わりぃ。相手がマイスじゃあ無理だよな」
「ええっ!? それってどういう意味!?」
「いや、お前くらいだと思うぜ? 俺ら世代でロロナよりも恋愛事を経験・理解してなさそうなヤツは」
そ、そうなのかなぁ?
いやまぁ、僕自身、そんな経験は無いから色々とズレてしまってるのは否定できない。でも、仕方ない気もするし……。それに、理解が出来てないって扱いは流石に心外だ。
そんなことを考えていたのがイクセルさんに通じてしまったのか、イクセルさん
は僕に向かって少しニヤリと笑った。
「なら、ロロナの悩みを解消してやれよ。恋人っぽいこと、何か思いつくだろ?」
恋人っぽいこと?
恋人っぽいこと……
恋人……
「ぶ……文通?」
「マイス君、それ、たぶん遠距離……」
「やっぱダメそうじゃねぇか」
うっ! なんとなくダメな気もしたけど、イクセルさんだけでなくロロナにまでダメだしされるなんて……!
「よく聞いとけ。俺の意見を言わせてもらうとだな、まぁ真っ先に思い浮かぶのは『デート』だろ。つっても、それはもうしてるようなもんだし……」
「してる?」
「してるの?」
「今だって俺が会話に入っちまってはいるが、カップルで店で食事は十分に『デート』の範疇だと思うぜ?」
「「ほー」」
なんとなくそんな気がすることを言われて、ロロナと僕はついつい感心の声を漏らしてしまっていた。
「他にも、一緒に
「それじゃあ、二人で街や村の外に行ったりするのも『デート』になるんですか?」
「なら、わたしたち結構『デート』してたのかな?」
僕とロロナの疑問に、イクセルさんは「いいや」と首を横に振ってから首をすくめてきた。
「お前らが街の外に出るって、採取だろ? アレは仕事の一環じゃねえか。それに大抵他にも誰かついてきてただろうし……いや、でも案外そういう方向性は悪くないかもしれねぇな」
何かを思いついた様子でいきなりハッとしたイクセルさん。
「あーっと、どう言ったらいいんだろうな……」と少しの間悩んだ末に、イクセルさんは改めて僕らの方へと向き直って語り始めた。
「ほら、ロロナんところの両親って旅行が趣味だろ? いろんな所に行っていろんな物を二人で見て……『デート』って言葉は的確じゃねえかも知れないけどあれはあれで悪くは無いとは思うんだ」
「うーん……そう言われれば、そうなのかも?」
「んで、そのお前ら版ってわけじゃないけど「採取に行く」じゃなくてもっと別の目的を持って二人で街の外に行ってみたら『デート』として十分なもんになるんじゃねぇか?」
「なるほど」
納得して頷いた僕がなんとなく「ロロナはどう思ってるんだろう?」って思って、隣に座るロロナのほうを見てみれば……なんだか少し目を輝かせ始めてた。
「ほらっ、昔俺も行ってたことから思ってはいたけど、普段はスルーしがちだが採取地の中にはいろいろ綺麗な景色とか物とか……もっと抽象的に言えば「雰囲気が良い」場所って結構あるだろ? そういうのを目的に行ってみたら、普段の採取目的の冒険とのギャップもあって特別感も出てくるんじゃないか?」
「わぁー……! なんだか楽しそうかも!」
なお目の輝きを増しているロロナ。イクセルさんもイクセルさんで王国時代にロロナの手伝いで冒険してたころ見た
……問題は、他でもない僕。少し引っかかることがあった。
「ねぇねぇ、マイス君! 今から予定たてようよ! 『お祭り』とか『学校』の事もあるけど、調整すれば……って、マイス君? また何か……」
「なんていうか、どう言ったらいいのか……」
勘違いかもしれないし、気のせいかもしれない。
でも、聞かずにはいれなかった。……いろんな意味で。
「男女で街の外の綺麗な景色を見に行ったら、それって『デート』になるの?」
「まぁ、意識の差はあるかもしれねぇけど、一対一でだったら
「マイス君、誰かと『デート』したことあるの!?」
「基本依頼で行ってたんだから『デート』じゃない……とは思うんだけど……いや、でも『デート』だったのかなぁ?」
そもそも『デート』の定義がわからないから判断しようが無いんだよね。
あとは……うん。今さっきイクセルさんが「意識の差」なんて言葉を使ったけど、僕がそう思ってなくってももしかしたら相手のほは『デート』って思ってたりしたらどうしたらいいんだろう?
いや、まあ今更どうしようもないのはわかってるんだけどね?
そんなことを考えているうちに、思った以上にロロナが声を荒げてしまっていた。
「もしかして、くーちゃん!? それとも、りおちゃん!? フィリーちゃん!? ……ハッ! まさか、なんだか意外と仲がいいミミちゃんだったり!?」
「違うよ!? 十何年も前の話で『シアレンス』にいたころのことで……」
「『シアレンス』ってマイスが昔にいたっていう……まさかマイス、お前そこに彼女がいたのか!?」
「いやいや、誰ともお付き合いはしてなかったし彼女はいないよ」
暴走しそうなロロナの言葉を否定しておき、イクセルさんの言葉についても否定と訂正をつけておく。
『デート』云々はともかくとして……彼女・彼氏といった間柄じゃなかったのは確かだ。……あっちじゃあ、まだ誰にも『ハーフ』だってことは明かせてなかったし。
「でも、誰かと行ったんだよね!? どんな
「どんな娘って……まず、倒れてた僕を助けてくれた花屋の子に、宿屋の――」
「「複数人!?」」
驚きの声に少し耳がキンキンしつつもなんとか持ちこたえ、困ったように笑って見せる。
なんとなく、これから質問攻めされそうなことはわかったけど……僕は少しうきうきしていた。
ロロナはどういう表情をするんだろう?
あの綺麗な景色の数々のことを、見た目はもちろんその他のことも事細かに……熱から、音から、匂いから……僕が伝えられる全ての手段を持ってあの景色の事を伝えられたら、ロロナはどんな反応をするんだろう?
そのことを楽しみにしつつ……「さて、どうしよう?」と心の中で呟いた。
『シアレンス』の綺麗な景色はいいんだけど……今まさにロロナが気にしている「デート(?)の相手」のことはどこまで言っていいんだろう?
「ふーん……ふーーん?」
理由はよくわかんないけど、ロロナちょっと怒ってるっていうかすねてる感じがするし……そのせいかはわからないけど、モコモコとしての野生の勘がビンビン反応している……気がする。
……何故だかわかんないけど、不思議なことに僕の頭の中には、笑顔で親指を立てたライアンさんの顔が重い浮かんでいた。
…………本当になんでだろう?
―――――――――
「マイスのやつ、中身がアレなだけで、実は経験豊富なのか……?」
衝撃の事実を知ってしまったイクセルは、カウンター席で向かい合って話しているマイスとロロナの事を他所に、ひとり呟いていた。
元々元気なタイプの二人だとはいえ、付き合い始めてからは二人揃うと本当に騒がしくなるようになったものだ……とイクセルは思いつつ、つい大きなため息を吐いてしまっていた。
「つーか、話に聞く限りじゃあお泊まりデートしてる時点でもう十分「恋人っぽい」と思うんだけどなぁ?」
以前に又聞きしていたことを思い出しながらそう言い、イクセルは当のマイスたちのほうを見て、少しだけ目を見開いた。
ついさっきまで不機嫌だったはずのロロナがいつの間にか心底楽しそうに笑ていて、マイスは相変わらずの笑顔でロロナに何やら「凍った花」の話をしていた。
その光景を見てイクセルは何を思ったのか……静かにカウンターそばから離れて厨房の方へと向かった。
「……コーヒー、淹れてくるか」
……ただ単に、苦い物が飲みたかっただけだった。