今回はストーリーの本筋に関わるお話……なのですが、これまでのお話とはかなり
というのも、『とあるキャラ』の視点の
結果、かなり短くもなっています。今作の初期なみかも。書くのにかかった時間は普段とさほど変わらなかったというのに……言葉選びやぼかし方などという方面で書き無しが多かったからだと思います。
……正直なところ、必要な話ではあるものの、実は読み飛ばしてもそんなに問題無かったりします。内容も「面白いか?」と聞かれたら「人を選ぶ上に、自信を持って頷けない」と答えるレベルのものです。
『ロロナのアトリエ編』を書きはじめた時から考えていたお話なのに、短い上に「面白い」と言えないって……ドウイウコトナノ……。
『カレ』は、ただあてもなく歩いていた。
もとより、そこら一帯には何か目印になるようなものも無いため、そんな状況で自身が何処へと行っているのかが分かるのであれば大したものであろう。
白く、白く……どこまでも続いているのではないかというくらい「白に囲まれた空間」。前も後ろも、右も左も、ついでに上も下も白く染まっている。
そんな空間なのだ。『カレ』自身、自分がどちらのほうから来たかなど憶えているはずがない。
……いや、『カレ』は憶えようとするだけ無駄だということを知っていたのだ。
そもそも、『カレ』はこれまでにも似たような場所で似たような経験をしたことがあったのだ。
日常の
望もうとも望まずとも「
そう、初めてじゃない
どれだけ歩き続けただろうか。
ほんの数分間だったかもしれない。だがしかし、『カレ』にとっては一日中歩き続けた気さえした。
『カレ』は未だ『穴』を見つけることができずにいた。
正確には見るけることはできていた。それも複数個密集したものを。
その『穴』たちは、まるで大きな何かが通った後、徐々に閉じて行き複数個に分裂してしまったかのようで……事実、よくよく見てみれば本当にゆーっくりとした速度で縮まっていっているのがわかる。
見つけたにもかかわらず、『カレ』はその『穴』からは出ようとはしなかった。
『カレ』の感覚器官が「大きな水」を感じ取り、本能が「その『穴』には入ってはいけない」と警鐘を鳴らしたからだ。
故に、『カレ』は他の『穴』を探すべく歩き続けたのだ。
しかし、歩けど歩けど『穴』は中々見つからない。以前迷い込んだ時には逆に「どれにしよう?」と悩んでしまうくらい沢山あったと『カレ』は記憶していたにもかかわらず見当たらないのだ。
何かが違う。
『カレ』はそう感じていた。
『
『
ふと『カレ』は思い出した。
「違う」といえば『
しかし、『カレ』には「何かが違う」ということはわかっても「何が違うのか」というところまではわからずじまい。結局『カレ』はその違いを理解する前に『白の空間』へと迷い込んでしまい、考えようが無くなったのだ……。
何故? どうして? 何が? どういうこと?
疑問が尽きることはなかった……だが、『カレ』はそう思い詰めたりすることは無かった。
立ち止まり呆然としていても何も進展しないこともわかりきっていることだ。故に『カレ』は歩き続けていくだけ……。
そうして歩き続けた『カレ』は新たな『穴』を見つける。
先程見つけた『穴』のような危険性は特には感じられず『カレ』はその『穴』に入ることにした。
その先で何が待っているのか、それは当然『カレ』にもわからないが……だからといって一歩踏み出さないわけにはいかなかった。
ただただ一生懸命生きてその命の限りを尽くすことが自分たちに許されたことなのだ、と『カレ』は理解していたから……。
『カレ』は知っているつもりだった。
世界は
獣は力を弄び、欲には抗えず、己の領域に固執するものなのだということを。
人は未知を嫌い、真を見ようとせず、異分子を廃するものなのだということを。
だから恐れ、恐れられるのだと。
『カレ』がそれをどこまで理解していたのかはわからない。だが、痛みと寒さの中で自分を傷つけたモノタチに「未知からくる恐れ」ではなく「体験を持っての恐れ」を抱いたことは間違い無かった。
あたたかい……。
覚醒しきれない薄ボンヤリとした意識の中で、『カレ』は様々なモノを感じ取っていた。
触れられ、握られ、抱き抱えられた感触を。ガタガタゴトゴトと揺れる音と振動を。
そして、『カレ』のそばにいる『誰か』の匂いが二、三度変わったころだろうか?
『カレ』はまるで
だからこそ、『カレ』はまた深い眠りに入ることが出来たのであった……。
『カレ』が目覚めたのは、果たして『カレ』がココに連れてこられてからどれほどの時間が経ってからだっただろうか?
目覚めた『カレ』の目に真っ先に入って来たのは、自分が知っているのとは少し違う
しかし、見た目での問題だが、記憶的にはごく最近に襲ってきたモノタチとよく似た存在。どうしても『カレ』は
そして……目覚めてから少ししたころ、一人の人が『カレ』の前に現れた。
相手は人である。『カレ』は周囲の
そう……
その人は困ったような……それでいてどこか苦しそうな顔をして、その場から去っていった。
その数分後。『カレ』の前に『カレ』と同族のモノが現れた。
だが『カレ』はそれを喜んだりはしなかった。喜べなかった……というよりは、喜ぶ前に混乱してしまった、と行ったほうが正しいのかもしれない。
『カレ』は感じ取っていた。その同族の匂いが、先程来た
それからというものの、同じ匂いのする人と同族は、『カレ』の療養している場所によく顔を出すようになっていき……『カレ』の怯えも段々と弱まっていった。
恐怖心が拭えきったたわけではない。だがしかし、ココには自分を襲ったモノタチや人と同じ種族はいるが、襲ってくる奴らはいないということを『彼』はりかいしだしていたのだ。
そして、それとほぼ同時期に『カレ』はあることに気がつくこととなった。
その人が『カレ』の前に現れたあの時、『カレ』が感じていた
懐かしい。
あぁそうだ。これは、この匂いは……
『RF3』をプレイしたことのある方なら「もしかして、○○のイベントに出てきた○○?」とか色々察せそうなお話。
知らない方も大丈夫です!
ストーリーの本筋に関わる重要な点ですので、今ここに書くとネタバレになってしまうので語れませんが、本編中でしっかりと説明多めで描写します。ですので少々お待ちください。
原作的にも、この作品的にも、いろんな意味でネタバレになりそうで……でも、このあたりで触れとかないと、後々意味不明になってしまう……そんな扱いが難しいお話でもありました。
……どう考えても、とあるキャラの精神面がヤバいことになってそうなのは言わないお約束です。