マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 「なんだか最近、説明的過ぎる文章が増えてしまったなぁー」って思いなんとかしたいと考えていたのですが、いざ書こうとすると、中々うまくいかなくてちょっと困ってしまっている作者です。

 それと読み返してみると文章の感じや言い回しに傾向があるというか、ボキャブラリーが偏ってるというか、似たような表現が何回もあって、自分の非力さを痛感している今日この頃……。



5年目:マイス「トトリちゃんとのおしゃべり」

***マイスの家***

 

 

「マイスさん、聞いてくださいよ! 先生がヒドイんですっ!!」

 

 そうちょっと怒った様子で僕に言ってきたのは、僕がギルドから資料を借りてきて()()()調()()()をしていたところに、ついさっき(ウチ)に駆け込むようにして来たトトリちゃん。

 僕は、用意して来た『香茶』をソファーに座っているトトリちゃんの前に出しながら、トトリちゃんの言う「先生」……つまりはロロナの事を思い出した。

 

 ロロナが「ヒドイ」って言われても、僕はなんだかしっくりこない。いつものんびりほわほわなロロナだし、何か失敗なんかはしても「ヒドイ」って人に言われたりするようなことをやったりはしないはずだ。このあいだ『アップルパイ』を持って行って様子を見に行った際も、勝手な行動をした僕を(しか)ってきたりはしたけどそれ以外はいつも通りのロロナだったから、何か変なことになったりはしていないと思う。

 

 他に考えられるとすれば……

 そういえば、前にロロナのことでトトリちゃんに相談されたことがあったような……? 確か、あの時はロロナに貰った『錬金術』の参考書が『パイ』のレシピだったとかで……

 

「あはははっ。もしかして、何か変な『パイ』のレシピでも渡された? 『エリクパイ』とか『金パイ』とか」

 

「えっ! なんですか、それ」

 

「ううん。違うんならそれでいいよ」

 

「はあ……?」

 

 何のことかさっぱりの様子で首をかしげるトトリちゃん。

 

 それでいいと思う。『エリクパイ』も『金パイ』も、僕は話でしか知らないんだけど、それだけでもおかしなものだというのは嫌というほどわかっていた。だから、そんなのをトトリちゃんに作らせるのは、さすがに気が引ける。

 ……そういえば、空から星や『うに』を降らせるアイテム『メテオール』をぶち込んだという謎のパイ『パイメテオール』っていうのもあったらしいけど……パイを降らせるという意味不明の効果があるとかどうとか……。

 

 

 まぁ、とりあえず気を取り直して、僕はトトリちゃんに改めて何があったのかを聞くことにした。

 

「そうじゃないとしたら……ロロナは何をしたの?」

 

「先生、自分のお友達なのにパメラさんを()(にえ)にしようって言うんですよ!? ヒドイと思いませんか!?」

 

「へぇ、パメラさんを生け贄に……生け贄!?」

 

 生け贄って、()()生け贄だよね? それって、死んでいるパメラさんに(つと)まるものなのかな?

 

「そうですよねっ! やっぱりマイスさんでもヒドイって思いますよね!? お願いです、先生を止めるのに協力してください!!」

 

 いやいや、色々と驚きなのは確かだけど、なんて言うか「ヒドイ」とはちょっと違う感想っていうか……どうしてこんなことになっているんだろう?

 

 でも、その疑問はすぐに解けた。

 そういえば、『アランヤ村』で過ごしているパメラさんは、幽霊じゃなくてちゃんとした身体を持っていた。僕は詳しくは知らないんだけど、確かアストリッドさんが作ってあげたんだっけ? それにロロナも関わっていたらしく、僕は前にそのロロナから話をちょっとだけ聞いたことがあったから思い出せた。

 ……でも、トトリちゃんはそのパメラさんが幽霊だってことを知らないみたい。この様子だと『アランヤ村』の人たちはみんなそうなのかも?

 

「……となると、止めるかどうかは置いといても、ロロナに説明不足だってことも含めて一回三人で話したほうが良さそうかな? でも、その前に……」

 

 色々考えていて、少し首をかしげながらうつむき気味になっていた僕は、顔を上げてトトリちゃんのほうを見た。

 

 

 

「えっと、それで…………()()()()()()()()()?」

 

 

 

 僕がそう言ったところで、僕とトトリちゃんがいるこの場の時間が止まった……。そう思えるほどの静けさが部屋を満たしていた。

 

 そんな沈黙が一分満たないくらいの時間があった後、先に動いたのはトトリちゃんだった。

 

「……そういえば、前回ここに来た時にマイスさんが留守でいなかったから、()()()話せてなかったんだった……」

 

「あの事?」

 

 僕が聞き返すと、トトリちゃんは「はい」と言って頷き、話し始めた。

 

「実は、ピアニャちゃんがわたしたちに付いてきちゃった理由に関わってくるんですけど……」

 

 

――――――――――――

 

 

「……なるほど。そういうことだったんだね」

 

 トトリちゃんから説明を聞き終えた僕は、納得して一人頷いた。

 

「『最果ての村(あの村)』から見えた『塔』に『悪魔』が封じ込められてて、何十年かに一度出てきてしまう『悪魔』に食べられたくないからピアニャちゃんはこっちに来て……。それで、ピアニャちゃんや村の人たちのために『悪魔』を倒したいけど、外から『塔』に入るには生け贄を一人差し出さないと扉が開かない……かぁ」

 

「はい。でも、村の人たちを助けるためとはいえ、誰かを犠牲にするなんて絶対したくないすし……それで先生に相談してみたら、パメラさんを生け贄にするって言いだしちゃって……」

 

「それで最初の話に戻るわけだね」

 

 ようやく、僕の頭の中で今回の話の一本の道筋ができた。

 

 それにしても、ギゼラさんを探す冒険で『最果ての村(あの村)』にたどり着いた時、マークさんが『塔』に行ったって言ってたけど、その時言ってた「しっかりと閉ざされていた扉」のカギがまさか生け贄だったとは。危険な『悪魔』を封印しているだけに、製作者側からしては簡単には開けさせたくなかったんだろう。

 でも、いつ出てくるかわからない『悪魔』を倒すには、こっちから扉を開けないといけないわけで……それで生け贄が必要になって……

 

「でも、もう死んでるのに、生け贄になるのかなぁ?」

 

「へっ? もう死んでる……って、どういう?」

 

「うん。それは今度パメラさんに会った時に本人に聞いてみて。僕が説明してもいいんだけど……やっぱり実際に見てみないと信じられないと思うから」

 

 今のパメラさんは何をどうしたのかはわからないけど、普通に生きている人とかわらないから、僕の口から「実は幽霊なんだー」って言ったところで信じられないだろう。前みたいに浮いたり、()けたり、すり抜けたりしてれば、すぐに信じられると思うけど……。

 でも、よくよく考えてみれば、そのあたり以外は普通に陽気なお姉さんって感じなんだよねぇ。

 

 

 

「ということは、この前(ウチ)に来たのは、生け贄の事を相談するためだったのかな?」

 

「あっ、はい。それと、できれば『悪魔』を倒しに行くのに、一緒に来てもらえないかなーって……」

 

「もちろん、トトリちゃんからの頼みであれば手伝うよ! ……まぁ、ちょっと今後の予定と相談しなきゃいけないんだけどね。だから、大体の日にちを教えてくれれば問題無いよ」

 

「ありがとうございます! えっと、予定ではもうすぐ……だったんですけど、こないだの『スカーレット』のことでお姉ちゃんを不安にさせちゃったから、少し『アランヤ村』にいようかなって」

 

 そこまで言ってトトリちゃんは「それに……」と言葉を続けた。

 

 

「今度、村でお祭りがあって、そのお手伝いをしないといけないから……『塔』に行くのはその後になると思います」

 

「お祭り? 『アランヤ村』ってお祭りがあるの?」

 

 『アランヤ村』にはそこまで頻繁に行っているわけじゃない。だから、これまでにお祭りをしているような様子に出くわしていない可能性もある。……けど、トトリちゃんたちはもちろん、前に(うち)に来ていたギゼラさんからもお祭りについては全く聞いたことが無いのはさすがにちょっと不思議だ。

 だから、そういった疑問もこめてトトリちゃんに問いかけてみた。

 

「あっ、はい。わたしも知らなかったんですけど、昔はやってたみたいですよ。それが復活して開催するってペーターさんが言ってました」

 

 トトリちゃんが言う「ペーターさん」っていうのは、『アランヤ村』で馬車の御者をしている男性だ。トトリちゃんのお姉さんのツェツィさんやメルヴィアと同年代で幼馴染……だったはず。

 

 「はず」だとか、全体的に情報が少ないのは、ただ単純に僕がペーターくんと関わりが少なかったから知らないだけだったりする。

 というのも、僕が初めて『アランヤ村』に来た時はツェツィさんとメルヴィアの後ろについて行く……というより、メルヴィアに引っ張られてる子ってイメージだった。そして、トトリちゃんが冒険者になってから僕が『アランヤ村』に時々立ち寄るようになってからはといえば、僕が行きは人or金モコ状態の徒歩で、帰りは『リターン』の魔法で移動していたため、馬車を使う機会が無くてやっぱり関わりが無かった。

 

 ……いや、いちおう滞在している時に挨拶くらいは交わしたりしたけど、何故かペーターくんが僕を避けている気がするんだよね……。何故か嫌われてるっていう意味では、マークさんが似たような感じだったけど、マークさんと違ってペーターくんから避けられる理由が全く見当がつかない。

 

 まぁ、そんなこんなでペーターくんのことはあんまり知らないのだ。

 

 

「それにしても、『アランヤ村』でお祭りかぁ……ねぇねぇ、どんなことするの?」

 

「それが、ペーターさんが教えてくれなくて……名前は『豊漁祭』で、あと……あっ、そうだ!」

 

 トトリちゃんが何かを(ひらめ)いた様子で手を叩く。

 

「実はペーターさんに頼まれたことがあって……人を集めてくれって」

 

「人を?」

 

「はい。祭りで何かするみたいで、そのために「若くて美人の女の人を八人集めてくれ」って言われてて……それで、そのことで相談が……」

 

 そうトトリちゃんは、ちょっと申し訳なさそうに僕にその相談を打ち明けてきた。

 

 

「若くて美人の女の人……心当たり、ありませんか?」

 

「ええっと…………参考までに聞くけど、これまでに集まったのは?」

 

「おねえちゃんとメルお姉ちゃん、パメラさん。あと、ロロナ先生、ミミちゃん、クーデリアさん、フィリーさん……です」

 

「七人ってことは、あと一人足りないんだね。……にしても、見事に僕の知ってる面々だなぁ」

 

 『アランヤ村』のお祭りなのに、半数以上が村の外の人って……大丈夫なんだろうか? 記憶にある限りじゃあ、『アランヤ村』には普通にツェツィさんたち以外にも女の人はいたと思うんだけど……他の準備とかで忙しいから外からも人を集めようとしてたりするんだろうか?

 

 若くて美人の女の人、か……

 

「『青の農村(うちの村)』には結婚してる子してない子、どっちの女の子もいるけど……さすがに行ったことも無い、知り合いもいない村のお祭りに出てくれる人はいそうにないかなぁ」

 

「わたしだけじゃなくって、マイスさんも一緒にお願いしてくれたら……」

 

「せめて何をするのかがわかってたら、僕も誰かに勧めたりできるんだけど……そこがわからないんじゃ、ちょっとね」

 

「あははは……ですよねー」

 

 がっくりと肩を落とすトトリちゃん。だけど、言ってることからすると、この僕の返答はなんとなくは予想していたみたいだ。

 

 トトリちゃんには悪いけど、さっきも言った通り、何もわからないお祭りに無理矢理参加してもらうっていうのはさすがにできない。

 そう考えると、やっぱりトトリちゃんの知り合いで、なおかつ『アランヤ村』に行った事のある人がベストだろう。せめて、後者はともかく前者の方……トトリちゃんの知り合いだとうことはほとんど必須条件になるんじゃ? となると……

 

「あっ、リオネラさんには声をかけてみた? 人混みはまだちょっと苦手みたいだけど、『青の農村(ウチ)』のお祭りには何度も来てくれてるし、お祭り自体はほとんど問題無いと思うよ。それに、ロロナやフィリーさんが行くってなってるんなら、たぶん断らないんじゃないかな?」

 

 それに、何をするかはわからないけど、リオネラさんにはホロホロとアラーニャとの人形劇があってお祭りを盛り上げることもできるから、いたら心強いんじゃないかなーって思ったんだけど……。

 

「えっと、実はリオネラさんにはもう声はかけてみてたんです」

 

「あれ? そうだったの?」

 

「マイスさんの言う通り、先生とフィリーさんの名前を出したら行きたそうにしてくれたんですけど……その、お祭りの日の午前中に続き物の人形劇の公演の予告をもう出しちゃってて、今からそれを取り下げるのは心待ちにしてくれているお客さんたちに申し訳ないから予定は変えられない……って」

 

「なるほど。それは仕方ないね」

 

 きっかけはともあれ、長い間ホロホロやアラーニャとやってきている人形劇だからこそ、真剣にしっかりと向き合ってやっていきたいって気持ちがリオネラさんにはあるんだろう。

 

 でも、聞いたところでは『豊漁祭』自体には興味があるみたいだ。きっと人形劇の予定さえなければ、トトリちゃんの頼みの対し頷きお誘いに乗っていたんじゃないかな? だとすれば、『豊漁祭』にはお客さん側でも参加できたほうがいいと思う。

 

「なら、僕は人形劇を終えたリオネラさんと一緒に、『トラベルゲート』を使って『豊漁祭』に行ってみようかな? 個人的にも興味があるし」

 

 

 

「それでも、いつになるかわからないから、リオネラさんを人数に(かぞ)えられませんよね……。ああっ、あと一人どうしよう」

 

 悩ましそうに大きなため息をつくトトリちゃん。

 

 僕としても、何とかしてあげたいところだけど……やっぱり何をするのかがわからないっていうのがネックになってしまう。

 

「じー……」

 

「ん? どうかした?」

 

「美人かどうかは微妙だけど、カッコイイっていうよりはカワイイ感じで整ってて、目もパッチリしてて、まつげも長くて……腕とかもそんなに太くないし……」

 

 な、なんだかわからないけど、トトリちゃんが僕の事をジロジロ見ながら、何かブツブツと言い始めた。

 そして……

 

 

「マイスさんって、若くて美人さんですよね?」

 

 

「それって、女の人って話だったよね!? 僕は男だよ!?」

 

「でも、服を変えて、ちょっとお化粧したら行けると思いますよ? マイスさん、童顔ですし」

 

「でもも何も、そこはどうしようもないよ……」

 

 女装とかそんな話に持っていかれるのはさすがに遠慮したいから、困っているトトリちゃんには悪いけど、僕はこの話題はもう切り上げてもらうことにしよう。

 

 ……未だに「えー……」と残念そうにしているトトリちゃんに嫌な寒気を感じつつ、僕は逃げるようにして新たな『香茶』を淹れにキッチンへと向かうのだった……。

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「あっ、マイスさんにもう一つ聞いておかなきゃいけないことがあったんだ!」

 

「……なんだか今日は、いろんなことを聞かれるね」

 

 まぁ、そういう日があってもおかしくはない。それに、頼られたりすること自体は僕はむしろ嬉しいことで大好きだ……無理難題じゃなければね?

 

 そう思いながら、トトリちゃんの口から出てくる次の言葉を待ってたんだけど……

 

 

「この前わたしたちを助けてくれたモコちゃんに、近々(ちかぢか)会いに行こうって話になってて……モコちゃんって、『アランヤ村』の近くとか『アーランドの街』でも見かけますけど、普段どこにいるんですか?」

 

「えっ!? ……ええっと何かお礼とかなら、僕が伝えたり渡したりするよ」

 

「いえ、おねえちゃんたちがち直接お礼が言いたいって言ってるんで……それに、やっぱりわたしもモコちゃんにちゃんとお礼をしたいですからっ!」

 

 そうイイ笑顔で言うトトリちゃん。

 

 ……これは観念するしかないだろう。

 

 大丈夫、昔、フィリーさんやリオネラさんが遊びに来たときにやっていた要領で、トトリちゃんたちを家で待たせて僕が外のどこかで変身してくればいい。それでなんとかなるはずだ。

 あとは、僕がボロを出さないように注意すればいいだけだからね。うん、問題無い、問題無い……問題無い、よね?

 

 

 少し不安に思いながらも、「いつツェツィさんたちが来てもいいように準備しておこう」と心の中で決めた僕だった。

 




 ついにあのイベントが目前に! 『塔の悪魔』を倒しに行く前にイベントが発生して、パメラさんのところで「???」となった『トトリのアトリエ』から始めたプレイヤーも結構いたのでは?
 そして、そのためだけに紹介され、登場することとなる某御者。出番丸々カットじゃないだけマシだと思います。


 そして、()()()()を未だに知らないマイス君と、うっかり()()()()を伝え損ねたというか「知ってるもの」と思いこんでて気付いていないトトリちゃん。

マイス「村の人を食べちゃう『塔の悪魔』か……うん、それは倒さないと!」

トトリ「はい! 倒しに行きましょう!」

 ……それが今後の展開に影響を与えるかどうかは不明ですが……見方によってはマイス君が少しかわいそうだったりします。

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