マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 投稿遅れてしまい、本当に、本当に申し訳ありませんでした!
 そして今回、諸事情により第三者視点です


 ミミちゃん関係は今回でまとめるはずが、次回に続くことに……
 どれもこれも、ここ最近の一話あたりの文字数が想定よりも多くなりがちだからです。良い事と言えば良い事なんですが……


4年目:自分の気持ちと他人への想い

 

 

 『古の修道院』での一件で、一時的に(はな)(ばな)れになってしまったミミとリオネラたちだったが、飛び出していったミミを追いかける形でリオネラが合流したことで事なきを得た

 

 だが、何事も無く……とはいかなかった

 合流してすぐ、リオネラたちが「勝手なことを言ってごめんなさい」といった主旨(しゅし)でミミに謝罪をしたのだが、ミミがそっぽを向いて「別に……」と返した。そのまま(みょう)な沈黙の中、何とも言えない空気のまま『青の農村』まで帰る事になったのだ

 そのせいもあって、ミミは達成した依頼の報告をしに行くことも無く、そのまま『青の農村』まで帰ってしまったのだが……幸いなことに、期限が近い依頼ではなかったので、大事には至らないだろう

 

 

 そんなミミとリオネラたちが帰ってきて、一番心配したのは他でもないマイス

 もとから和気藹々(わきあいあい)といった様子ではなかったが、出発時よりもあからさまに不機嫌&落ち込んでるような空気をふりまく二人を見たら、マイスは何かあったのかと心配で心配で気が気でないわけだ

 

 だが、当のミミはロクに会話をしてくれる様子も無く、リオネラもリオネラで、ミミを不機嫌にさせてしまったであろう話の内容が「ミミは、マイスのことが好きか否か」というものなので話すに話せずにいた。結局、マイスが知ることができたのはリオネラから聞いた「私たちがミミちゃんのこと、怒らせちゃったの」というごく端的(たんてき)な内容だけだった

 

 

 そんな事もあってその日の晩御飯は、何とも言えない気まずさのようなものがあった

 

 そんな晩御飯があった日の夜のこと……

 

 

 

――――――――――――

 

***マイスの家・離れ***

 

 

 マイスの家の裏手にある、昔、マイスが来客用に作った『離れ』。そこを今はリオネラが借りて使っているのだが……

 

 そのリオネラは、『離れ』の中……角に置かれているベッドの上に座って、アラーニャとホロホロを()(かか)えていた。ふたりを抱えているその右手には『古の修道院』で入手した『闇の結晶』が握られている

 寝る準備をしているというわけでもなさそうなリオネラ。だが、その表情はやはりというべきか悲しそうに歪ませており、彼女と交友の深い人物……例えばロロナやマイス、フィリーあたりが見れば「あっ、泣き出す寸前だ」とわかってしまうことだろう

 

 そんなリオネラのそばで、いつもよりも気まずそうな様子でホロホロとアラーニャはリオネラに話しかけていた

 

「あー……悪かったって。オレもミミがあんなふうになるとは思わなくってよ。……それに、やっぱりこれまでのアイツの様子を見てたらそうなんじゃねーかとしか思えなくてだな」

「ちょっと! 反省してすぐに何言ってるのよ! あのくらいの子って色々デリケートだから、そういうこと思っても言わないほうがいいのよ」

 

 ……謝るにしても微妙で、リオネラを(なぐさ)める気があるのかもわからないふたりの会話だが、なんにせよ計画を考えたのはリオネラたち(さんにん)であり、内輪(ここ)で誰が誰に謝ろうが結局はミミとの問題なので何の解決にもならないのだが……

 

 

 そんな中、不意にノックの音がリオネラの耳に聞こえてきた。発信源は『離れ』の出入り口……その先には『マイスの家』の裏手と繋がっている簡易的な渡り廊下がある

 

 「もうこんな夜だけど、マイスくんが心配して来たのかな?」……と思ったリオネラは特に疑問にも思わず立ち上がり、鍵をかけてあった出入り口の戸を開けに行った

 

 

 

 

「……こんばんは」

 

「えっ……? み、ミミちゃん!?」

 

 そう、そこにいたのはマイスではなく、ミミ・ウリエ・フォン・シュヴァルツラングだったのだ

 リオネラにとって、ミミの来訪は予想外だった。それも当然。『青の農村』に帰るまで……帰ってからもまともに話もしてくれなかったし、完全に怒らせてしまったと思っていたから

 

 そのミミがむこうから来て、自分の目の前にいる……リオネラはこの機会を逃さないようにと、さっきまで思っていた申し訳無い気持ちを言葉にして改めて謝罪をしようとしたが……残念なことに、リオネラはそこまで器用ではない……むしろ不器用な部類なので、言う事がいまいちまとまらなかった

 

「あっあの! あの時、余計なことで、ほ、ホロホロも悪いと思ってて……!!」

 

「えっと、そのそんなに慌てなくても……それに、もうリオネラさんには謝っていただいてますから、これ以上謝られると……ちょっとどうしたらいいかわからなくなります」

 

 「それに……」と、ミミは言葉を続けた

 

「私はその……お礼を、言いに来たというか……その……」

 

「お、おれい?」

 

 ミミの言葉に何のことかわからず首をかしげるリオネラ。対して、ミミのほうはといえば、何やら煮え切らない様子で少し躊躇(ためら)うように言葉を詰まらせていた

 だが、意を決したように一度大きく息を吸ったかと思うと、ミミは正面からリオネラを見た

 

 

「あなたたちに言われて、よくわからない気持ちになって自分の中の気持ちもグチャグチャになって……それで、改めて自分で考えてみたんです。自分がマイスさんのことをどう思ってるか……どうしてそう思うのか。おかげで色々気づくことができて、気持ちに整理もつきました……ありがとうございます」

 

「私、何もしてない気が」

 

 そう言って、よくわからないといった様子で未だに首をかしげているリオネラだったが、ふと何かを思いついたようで手に持っていた『闇の結晶』をミミにさし出した

 

「これ、あの時、渡し損ねたから良かったら……」

 

 リオネラの言葉は、言葉足らず気味ではあったもののミミには伝わったようで……しかし、その上でミミは『闇の結晶』を受け取らずに首を振ってみせた

 

「私がしないといけないのは()()ですから、それは私が渡すべきではありません。リオネラさん、あなたがマイスさんにプレゼントしてあげてください」

 

 そう言うと「では」と一言(ひとこと)言い残して、ミミは『離れ』から出ていき『マイスの家』のほうへと行ってしまった……

 

 

 

 歩いて行くミミの後ろ姿を、『マイスの家』の裏口の戸が閉まるまで見ていたリオネラだったが、少し考え込むような仕草をした後、『離れ』の出入り口の戸を閉めた

 

「えーっと、つまりどういうことだ?」

「わかんないわ。ただ、もう怒ってるって感じでは無かったわね」

 

「うん……けど、なんで()()なんだろう?」

 

 そう、リオネラの中でひっかかっていたのはミミが言っていた「謝罪」という言葉だった

 

「だよな。相手がトトリだってんなら、フィリーから聞いたケンカのことでってわかるんだけど……なんでマイスになんだ?」

「さぁ……? ワタシたちが言ったことでそういう風な内容は無かったし……惚れてるかいないかなんていうのはもっと関係無いだろうし……聞きに行ってみる?」

 

 アラーニャの問いかけにリオネラは数秒考え込んだが、静かに首を振ってそれを否定した

 

「たぶんだけど……ミミちゃん、マイスくんのところにそのまま行ってると思うの。お話を邪魔したらいけないから、ね?」

 

「……そうね。今日はもう休みましょう」

「まぁ、明日の朝にでも様子を見りゃいいか」

 

 

 

――――――――――――

 

***マイスの家・作業場***

 

 鍛冶をするための『()』、装飾品等の加工をするための『装飾台』、薬品を調合するための『薬学台』、そして『錬金術』を行うための『錬金釜』と、様々なものが配置されている『作業場』。そこにマイスはいた

 

 マイスの寝室は『マイスの家』の二階なのだが、今はミミに貸しているためリビングダイニングのソファーで寝ている

 だが、今日はミミとリオネラのことが心配になって仕方なかったこともあって、妙に目がさえている。そのため、眠気がくるまで『作業場』で何かしらしようと考えていたのだ

 

 

 今現在、マイスは『装飾台』で装飾品を作っているのだが……普段の彼の作業風景とは少々異なっていた。というのも……

 

「うーん……やっぱり、ふたりには仲直りしてほしいけど、僕じゃあどうしようもできないのかなぁ? 原因はリオネラさんのほうだったらしいけど詳しくは教えてくれなかったし……それに、なんとかしようにも、僕の話を聞いてくれるかどうか……」

 

 そう。マイスは小声で心配事を呟きながら、目を瞑って首をひねったりしながら装飾品を作っていたのだ。それでも失敗をせずに『銀の腕輪』を作っていけているのは彼のこれまでの経験の賜物(たまもの)だろう

 

「他に僕にできそうなことといったら、空気を(やわ)らげる……とか? 美味しいものを食べると自然に笑顔になれるし、そこから会話が(はず)めば二人が話しやすくなって関係改善に……!」

 

 「良い事思いついた!」といった様子で少し元気に呟きだしたマイスだったが、不意に手を止めて……腕を組んだ

 

「でも、今日の夜ゴハンでもそんな様子は無かったし……もっと頑張らないとダメなのかな? それとも、何か嫌いなものでも入れちゃってたのかな? 他には……ただ単純に美味しくなかった、とか?」

 

 段々と不安になっていき、「あれ? もしかして、僕の料理の腕落ちてる?」と震えだしたマイス

 

「そういえば最近、リオネラさんに「おいしい」って言われてない気が……ミミちゃんには小さい頃以降は一度も言われてない…………もしかして、嫌々食べてるとか……!?」

 

 

 

 

 

「心配しなくても、今日の料理も美味しかったですよ。それはもう真似(まね)できないくらい」

 

「そっか! 良かったー! もしかしてリオネラさんが気をつかってて、実は僕がリオネラさんに渡した自家製携帯食が美味しくなかったのが、二人の仲が悪くなった原因じゃないかなって考え始めてたんだけど……って、あれ?」

 

 嬉しそうにそう言いだしたマイスだったが、ついさっきまで自分ひとりだった事を思い出して、声がしたほうへと振り向いた

 

「こんな時間でも作業したりするんですね、マイスさん」

 

「う、うん。なんというか、こう……まだやる気が有り余ってる時なんかは時々夜でもやってるんだ」

 

 そう、そこにいたのは、ミミだった

 ミミのほうから話しかけてきたことに、久々過ぎて驚いたマイスだったが、すぐにいつも通りの調子で返答してみせた

 

「それで、ミミちゃんは何か用があって会いに来てくれたの?」

 

「はい。少しお話しをしたくて……大丈夫ですか?」

 

「もちろん大丈夫だよ! でも、ここじゃあなんだからあっちに行く?」

 

「いえ、ここでかまいません」

 

 そう言うとミミは、マイスが使っていない『薬学台』のほうからイスを引っ張ってきて「お借りします」と一言言ってから座った

 

 

 

「それで、お話っていうのは……?」

 

「……マイスさんに、言いたいことがあったんです」

 

 さっきまでマイスの顔をしっかりと見ていたミミだったが、ここにきてマイスから視線をそらした

 マイスはその事が気になりつつも、「もしかしたら、()()知らないうちにミミちゃんに悪い事しちゃってた!?」と、緊張し始めてしまっていてそこまであまり気がまわらずにいた

 

 

「謝りたいんです。マイスさんに初めて会った時のこと……それと、マイスさんを追い出すように別れたあの日の事を……」

 

「……え?」

 

「っ……憶えてません……か? そう、ですよね。忘れてしまうほど嫌な思いをさせてしまって……」

 

 そう言ってうつむいてしまうミミを見て、マイスは首と手を必死に横に振って、それを否定する

 

「いやいやいや! 憶えてる、憶えてるよ! 憶えてるけど……もしかして、そのことで僕が怒ってるって思ってたの?」

 

「それは……って、何で知ってるの……知っているんですか?」

 

 そう言われて、マイスは「まずい!」と思った。というのも、マイスが金モコ状態の時に聞いた話から考えて言ったことで、本来ならマイスが知らないはずの内容で……

 

「……でも、マイスさんはモンスターの言葉がわかるから、あの子に「秘密にして」と言ったところで効果は薄いに決まってますよね……」

 

 ……どうやら、ミミが勝手に自己完結したようで、マイスも騙したようで申し訳なく思いながらも、一安心して小さく息を吐いていた

 

 

 そして、マイスは考えた。初めて会った時と最後に会った時……確かに、ミミから色々言われたりしたことは憶えてはいるが……なんというか、怒りたくなるようなことだったかと言われたら首をかしげてしまう

 なので、マイスは思ったままのことをミミに伝えることにした

 

「とにかく、僕はあの時のことは気にしてないよ。だから……」

 

「お医者様でも無理な病気を「治してください」って無理矢理頼んだ上に、出来ないって知ったら、その……泣きながら叩いたりヒドイこと言ったのに、ですか?」

 

「それは、まだミミちゃんも小さかったし仕方のないことだと思うよ? それに……あの時は僕が最初からちゃんと断らなかったのがいけなかったんだから」

 

 そう言うマイスに対し、ミミはというと(いま)だに納得していない様子だった

 

「何の理由も言わずに、叩き出すみたいにいきなり絶対に家に来ないように言ったのは……」

 

「それは……確かに、ショックだったかな。でも、僕って前から知らないうちに人を怒らせちゃったりするから、ミミちゃんにも何か悪い事しちゃったんじゃないかなーって」

 

 申し訳なさそうに言うマイスを見て、ミミは再びマイスから目をそらした。そして自分の唇をかみしめた後、ポツリ、ポツリと声をもらしていく……

 

「謝る必要なんて…………()()()は何も、悪い事なんて……してないから」

 

「でも、あのミミちゃんがそう言ったんだもの。何か理由があってのことだろうし、僕は……」

 

 

 

 

 

「無いわよ! そんな理由なんて!」

 

 突然の大声。そして、その口調もさっきまでとは……マイスが知っているミミの口調とは違うものになっていた

 

「…………」

 

 しかし、マイスはただただ優しい目で、うつむいたままのミミを見ていた

 

 ……もし、ミミが高笑いをしながら同じセリフを言ったとしたら、マイスは大変ショックを受けたことだろう

 だが、マイスには見えていた。うつむいているミミの顔のあたりからいくつかの(しずく)が、ミミの膝の上に置かれている手のあたりに落ちていくのを……だから、マイスはミミの言葉を聞き入れていた

 

 

「理由なんて……あれはただの意地っ張り、私の我儘(わがまま)で……マイスのことが、邪魔になるからって……!」

 

「……我儘だって立派な理由だよ? 子供は……ううん、大人だって自分の我儘を押し通したいことなんていくらでもある。だってそれが「自分がしたいこと」なんだから、それを諦めて押し留めてるなんてそんなの辛いばっかりだよ……僕なんてよく我儘を押し通して村のみんなに迷惑かけてるから」

 

 そこでマイスは一旦息をつき、「それに……」と言葉を続ける

 

「僕はミミちゃんがやりたいことを、頑張りたいことを応援したいんだ。それでミミちゃんと会えなくなるのは……やっぱり寂しいけど、それでも僕は()()を応援するよ」

 

「…………っ!」

 

「だから、あの時の事は気にしないで。……それでも、どうしても気になるって言うなら、代わりにミミちゃんの言う我儘のこと、僕に相談してくれないかな? 僕にできることなんて限られてるから力になれるかはわからないけど、友達(ミミちゃん)の手助けをしてあげたい……それが僕の我儘だよ」

 

 

 マイスはそこまで言うと、静かに立ち上がった。そして『装飾台』の脇に置いておいたポーチからハンカチを取り出した。そしてミミのそばまで行き、そのうつむいた顔に流れている涙を(ぬぐ)って……

 

「自分で……できるから」

 

「そっか。じゃあ、これ使って」

 

 ミミに言われて一旦手を引いたマイスは、その手に持つハンカチをミミに手渡し、それから自分のイスへと戻っていく

 ハンカチを受け取ったミミは、少し泣き顔を隠すように意識しながら涙を拭きとっていっていた

 

 

 

 ……ひととおり拭い終わったミミは、まだ目元あたりなどが赤かったが、それ以外は普段通りになっていた

 ハンカチはまだ手元に持ったままだったが、それはそのままに、ミミは口を開いた

 

「ごめんなさい。少し時間を取らせて……」

 

「いいよいいよ、気にしないで。僕としては、ミミちゃんとまたこうして話せてるだけで嬉しいから、全然気にならないよ」

 

「昔から、欲が有るのか無いのかわからなかったけど……あいかわらずよね」

 

 そう苦笑いをしたミミ

 だが、一つ息を吐いたかと思うと、その表情は真剣な……でも、どこか柔らかさのあるものに変わった。それを見て、マイスもまた先程までの聞く姿勢に戻る

 

 

「……()()()

 

「…………」

 

「私、あなたのことが…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()

 

 

「…………」

 

「でも、あなたは()()()()()

 

 普段なら、マイスが「僕、ミミちゃんとほとんど身長変わらないんだけど……」などとツッコんでいただろうが、マイスは静かにミミの事を見続けていた

 

「私だってずっと頑張ってきた……けど、今でもあなたは()()()()()。一緒にいた頃も、会わなくなってからも……」

 

 そう言うミミは、あたりのもの……『作業場』にあるマイスのある意味の仕事道具を一通り眺め……そして、最後にはやはりマイスに目をとめた

 

 

「優しくて、有名で、いろんなことに精通してて、信用があって、老若男女関わらず(した)われていて、尊敬されてて、それでいて(おご)らず、人の役に立ち、沢山の人を笑顔にする…………私の……『貴族』の()()よ、『貴族』でないってこと以外は、これ以上ないくらいに、ね」

 

「……そう言われると、なんだかむず(かゆ)いかな」

 

 そうつい()らしてしまったマイスに、ミミは「私としては、胸を張って欲しいところだけど……」と呟き、肩をすくめてみせていた

 そして、ゆっくりと首を横に振った後、また話しだした

 

「でも、だからこそ、マイスの凄さがわかっていくにつれて、私は小さい(ころ)みたいに「()()」なだけじゃいられなくて……他にも(ねた)みや(ひが)み、色々混ざってきているってわかってきてた。だからそばにいたくなくなった、優しいあなたに暗い感情を持つ自分が嫌で……でも、それを(おさ)えても、そばにいたらずっと甘えてしまいそうで……そうしたら、私がシュバルツラング家に相応(ふさわ)しくない存在になってしまいそうで……」

 

「それが「我儘」……」

 

「ええ。嫌だからって理由だけで、それまでの恩……あなたが私とお母様にしてくれたことも、お母様が亡くなってから私が当主になるためのあれこれを手伝ってくれたことも……そうまでしてくれるあなたの気持ちも、全部投げ捨てた。そんなことしても、本当の成長に繋がるわけないのに」

 

「そんなこと無いと思うな。今までの話だけでも、ミミちゃんには立派な目標があるってわかるし……こうして今では一流の冒険者にまでなったんだから、無駄なんてことは絶対に無いよ!」

 

 

 

 そう断言してにこやかに笑うマイスを見て、ミミは自然と微笑んでしまっていた

 

「マイスにそこまで言われると、余計なくらい自信がついちゃうわよ。あと……色々言えて、やっとマイスの顔をちゃんと見れるようになった気がするわ」

 

「それじゃあ、「はじめまして」なのかな?」

 

 いつもの調子に戻ったマイスがそんな冗談を言ったことで、ミミは少し呆れ気味ではあるものの、その冗談に乗ってみせた

 

「それはいき過ぎ……でも……そうね、新規一転ってことで名乗らせてもらおうかしら?」

 

 ミミは一度軽く咳ばらいをし、今日一番の微笑みをマイスに向けて言った……

 

 

「シュバルツラング家当主、ミミ・ウリエ・フォン・シュヴァルツラング。「シュバルツラング家」の名を、あなたの名にも負けない立派な名にしてみせます。そして……これから()よろしくお願いしますね、マイス」





 ブツ切りな感じはありますが、一応、次回に続くということで……
 でも、今後、手直しを加える可能性は大です

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