久しぶりに、まさかの本編中上・下構成となっています
今回、次回であの一件がやっと収拾がつく……予定です
***マイスの家***
「うーん……なにをしようかな?」
日課の畑仕事や朝ゴハンを取り終えた僕は、ひとり、今日の予定について考えを
僕がそう悩んでしまうのには理由がある
ひとつは、来週に迫っている今月のお祭り。その企画・準備等については他の人に全部任せてあり、単純にヒマがあるからだ
そうなったのは、先月、先々月……そのまた前などのお祭りの準備の際に僕がいなかったことが何度かあったから
たびたび発見報告が来た『ゲート』、その調査・破壊のために僕がでかけていた。だから、そういうことがあっても問題がないように今月は関わらない……というのが、コオルをはじめとした村の人たちの言い分だ
……ただ、どうにも何かがおかしい気がする
というのも、『ゲート』についての調査は、僕が出来る範囲でのことは最近に全て終えている。さらに、おおよその性質・傾向も『シアレンス』に発生していたものとほぼ同じだとわかっている。なので、この前、クーデリアを通して『冒険者ギルド』には「『ゲート』は見つけ次第破壊することを推奨する」ということを伝えた
なので、僕がまたいきなりでかけていくことは無い…と、コオルたちに言ったんだけど、それでも準備に参加させてくれなかった……
……そういえば、普段なら街のお店やギルドなんかにお祭りの宣伝広告が張り出されたりしているはずなんだけど、今回は見当たらなかった
でも、来週開催されるって話は聞いてるんだけど……?
ええっと、話を戻そう
今日の予定について悩んでいるもう一つの理由は、先日家に来たクーデリアから今日は「何処にもでかけないように!」と強く言われているからだ
ステルクさんがウチに来て、家にいたリオネラさんとフィリーさんが怖がってしまった時。その時にクーデリアは家に来た。そして、クーデリアは僕のこれから数日間の予定を聞いてきた
最初は、ちょっと前までしていた冒険者免許のポイント見直しのための冒険…その護衛のための日程を考えているのだと思ったんだけど、そうじゃなかった
……そこから何故か「でかけないように!」という話になった
あのとき、勢いに押されて「わかったよ」と言ってしまった。だから、その約束を破るわけにもいかないから、今日は極力外出するわけにはいかないのだ
「つまり、今日できるのは『作業場』での調合とか鍛冶とかになるかな?」
とは言っても、今は必要なモノとか試したいモノは特に無い。武器、防具、装飾品、農具はもう有り余るほどあるし、薬なんかも、各種備蓄分まで十分に補完している
あえて挙げるなら、『魔法』についてはしたいことが色々とあるにはあるんだけど……
魔法使用の補助のための『杖』については、『ゲート』を破壊した時に採れた結晶系アイテムによる属性の調整もすでにしているため、もうやり切ってしまった感じがある
あとは『杖』を使わずに行う魔法使用の実践くらいだけど、それを出来る人が今はいない
僕はすでに使えるから、当然だけど実験にならない
候補に挙げることができるのは、『杖』での実験などこれまでにも協力してくれているフィリーさん。もしくは、僕の使う『魔法』とは一味違うものの『魔法』を使えるリオネラさんあたりだろうか
リオネラさんはちょうどここ最近『
「でも、リオネラさんってホロホロとアラーニャと一緒に、今朝フィリーさんに会いに街に出かけちゃったからなぁ……」
おそらく、リオネラさんがこれまで『青の農村』まで来ても『アーランドの街』に行かなかったため、フィリーさんが連れ出してロロナやクーデリアあたりの知り合いたちに会わせにいったんだろう
先日、クーデリアは僕と話した後に
何はともあれ、つまりのところ『魔法』の実験もできそうにない状況というわけだ
「でも、色々してみたいことがありそうなのは『魔法』くらいだし……そうだ! 『魔法』には魔法のことが書かれている本…『魔導書』なんかがあったほうが良いんじゃないかな?」
どういうことでも形から入るというのは、少なからず効果もあると思う
なら杖…というのも悪くないけど、『
『シアレンス』でも『魔法』を覚える際に本を読んだりしたけど……あんな感じのものを作ってみるのもいいかも
「うんっ! それじゃあ早速作って……いや、この場合は「書く」って言ったほうが良いのかな……? と、とりあえずやってみよう!!なんだかやる気が出てきたぞー!」
……でも、もとになる書く本みたいなのは日記用のものの買い溜めくらいだから、そこから作らないとかな?
――――――――――――
なんとかもととなる本を作ることができ、中身を書き始めることが出来た
……それにしても、『錬金術』ってほんと何でも作れるなぁ
植物から紙へ、紙から本へ……
大元の素材が必要だけど、逆に言えば大元の素材さえあれば何とかなってしまうというのがスゴいところだ。それに、いろんな道具が必要なわけじゃなく釜ひとつでできるのも
ただ、今僕の手元にあるできた本は元の素材の割には質が悪い。これは調合時間を極力最短にしようとしたからなのか、そもそも作ったのが錬金術士じゃない僕だったからなのか……どちらにせよ、立派なものにしようと思うのなら、他の人に頼んだ方が良いのかもしれない
とりあえずは、『魔法』の基礎の基礎から書きはじめることにしたんだけど……
「『ルーン』の説明から書いた方がいいのかな? それなら、絵も描き加えて『青の農村』の畑なんかで見られる『ルーニー』たちのことも……」
そう考えてみると、本当にいろんなことを書かないといけなくなりそうだ。これはこの一冊だけじゃあ全ての『魔法』について書き収まらないだろう
……いや、それに『ルーン』の扱い方について読者に伝わるように……でも、あれってなんとなくの感覚でやるって感じだから、どう書けばいいんだろう? ……そもそも、『
コンコンコンッ
悩みだした思考につられてペンが迷子になりだしたその時、玄関のほうからノックの音が聞こえてきた
「はーい! ちょっと待ってくださーい」
手に持っていたペンを一旦テーブルに置き、僕はソファーから立ち上がった。そして玄関へと駆けて行き、扉を開けてお客さんの顔を見た
「……えっ」
そこにいたのは……
「…………と、トトリちゃん……!?」
そう、玄関の先にいたのはトトリちゃんだった。ここ最近、避けられていてロクに会えていないからと言って、こんな特徴的な格好をした子を見間違えたりするはずは無い
ただ、うつむき気味なうえ、視線が泳いでいるため目も会わず、表情は読み取りずらかった
「あ……あのー…………じ、実は、少しお話したいことがあって……」
「えっ、あ、うん。……何かな?」
「その……私の、お母さんのことで」
トトリちゃんのお母さん……ということは、ギゼラさんのこと?
でも、なんで今いきなり?
……………………?
…………はっ!まさか!?
僕はギゼラさんが何処に行ったのかを知っている
↓
でもそれをトトリちゃんに隠して「探すのを手伝ってあげる」という立場でお手伝いをしたりしている
↓
トトリちゃんがそれを知る
↓
「良い人のふりして、嘘をついていたんですね……。マイスさん、最低ですっ……!」
↓
僕を避けるように(今、このあたり)
……あれ?
もしかして避けられてたのって『サンライズ食堂』でのアレが原因じゃなくて、根本的に僕のせいだった……?
なんだか、急に口の中が乾いた気がした……