オーバーロード~割と日常で桃色な日常の結末~   作:へっぽこ鉛筆

11 / 14
やったね。愛も友情も出てこないエロとグロの始まりだ。

※今回はエントマさんとインベルンが酷い目に合いますファンの人は読まないでください。




外伝・オーバーロード~割と日常で狂気な日常~(後編)

 鍵開けも、やってみたら簡単だった。

 

 ピッキングツールを操り、金具が組み合うような音がする。月明かりのない夜に、そんなことができるのが不思議だが、吸血鬼の暗視能力があるので、暗闇は彼女にとって味方でしかない。

 

(しかし、こんな防犯対策で、やはり、あのビッチ(アルベリア)にはモモン殿は任せられないな。)

 

 イビルアイは蝶番に油をさし、音を立てずに部屋の中に侵入する。綺麗に片付けられた部屋に、洗い物の水滴の音だけが響く妙に簡素に感じる室内だ。わずかに違和感を感じる。

 

(普通は、朝食の下準備などをするものだが・・・外で食べさせるつもりなのか?お可哀想なモモン殿、妻ならば普通は家庭で温かい食事を用意するだろう。あの女悪魔(アルベリア)め)

 

 普通、盗賊としてのスキルがあるならば、ここで違和感に気づいただろうが、彼女は魔法詠唱者、しかも、かなり嫉妬と妄想で周りが見えなくなっている。悪趣味な全身鎧の置物を通り過ぎれば、おそらく二人のベッドルームだろう。少し薄明かりの漏れた部屋を探る。

 

 まだ、宵の口を過ぎたばかり、普通なら男女の営みが聴こえてくるのだが、それがない。もしかして、夜の相性は悪いのか・・・それならば、と、わずかに期待を込める。扉に耳を立てるが、何も聞こえない。吐息すらも聞こえてこない。使い魔のネズミかコウモリを召喚しようと思ったが、中には入れるような隙間はなかった。

 

(少しくらいなら、構わないか・・・)

 

 わずかに音を立てて扉が開く、青白い魔力の光が照らす部屋の中、寝室だと思ったそこはまったく違うものだった。様々な魔力防御、情報防御の魔力を感じながら中央にある魔法陣には、見覚えがあった。

 

「魔神たちの使う・・・魔法装置か?」

 

 なぜ、そんなものがここに、そして、よく考えもせずに部屋の中に入ってしまう。そして、青白い光に触れた瞬間――視界がぼやけた。転移魔法、そう思ったときには遅い。イビルアイが最後に見た光景は、薄暗い石造りの壁だった。

 

 

 

 

 第十階層、玉座の間、守護者全員に緊急招集をかけ、アインズはメインコンソールを開く、そこには、氷結牢獄に敵勢ユニットを現す赤いポイントが点滅している。

 

「まさか、転移装置を使って侵入されるとはな。」

 

「申し訳ございません、アインズさま・・・この、私めの失態、いかようにも・・・」

 

 膝をつき頭を下げるアルベドだが、それを押しとどめた。アインズ自体、転移結界には万全の対策をしたつもりだったが、やはり甘かったか・・・いや、外部に固定転移装置を設置すること自体を考えないといけないかもしれない。

 

(便利な拠点だと思ったんだけどなぁ・・・やっぱり、失敗だったか)

 

 さらに、転移してきた人間が問題だった。盗賊や空き巣の類なら、殺してしまえば済むのだろうが、コンソールに映る氷漬けの人物を見る。しかし、どうやって侵入したんだ?あの、忍者の二人ならいざ知らず。はめ殺しの鎧戸にはアラートを三重に仕掛け、さらには壁や床にも魔法防壁を施した。さらに、あのバキュラ・リビングアーマーはどのような攻撃でも、かならず256発攻撃しなければ破壊できない特殊なゴーレムだ。まさか、なにかのタレントかスキル・・・この世界特有の魔法があるのか?

 

「アルベドよ、あのリビングアーマには、確かに侵入者を攻撃する命令を出したのだな。」

 

「はい、アインズさま。部屋に侵入する“下等生物”を攻撃するように厳命いたしました。」

 

 アインズは首をひねった。とりあえず、イビルアイを同処分するかだ。殺せば、蒼の薔薇、ひいては王国にモモンの存在を疑われてしまう可能性がある。

 

 とりあえず、明日、蒼の薔薇に会い探りを入れてみるか・・・いや、イビルアイを尋問し聞き出すか、とりあえず、イビルアイの様子を見ないことには、何もできない。

 

「コキュートス、氷結牢獄の《タイム・フリーズ/時間凍結》の魔法はどれくらい持つ」

 

「レベルニヨリマスガ、彼ノモノノレベルデハ、半日ホドカト思ワレマス」

 

 そんなものか、時間を止めての拘束は完全に意識と時間感覚を奪えると同時に、こちらの攻撃も一切通じない。何かをするには、一度、術を解く必要があるのだが、まぁ、あの程度のレベルなら抵抗されることもないだろう。が、用心を重ねるに越したことはない。

 

「まずは、探知魔法と付与魔法の探知だ。その他、調べられることは徹底的に調べろ。あと、尋問には世界級アイテムを装備した守護者が必ず立ち会うように、やれやれ、とんでもない女に好かれたものだ。」

 

 心底思ったことなのだが、何故か、守護者女性陣の視線が冷たかった。

 

 

 

 

 暗い塔の中、キーノ・ファスリス・インベルンは両手を拘束され、囚われの身になっていた。

 

 復活した魔神ヤルダバオトに攫われ、邪悪な儀式に生贄にされる少女、数々の騎士・・・かつての仲間も魔神に挑むが、ことごとく返り討ちにされ、いま、魔神の魔の手がイビルアイに迫る。

 

 しかし、そこの颯爽と現れる真紅のマントを羽織った漆黒の騎士、人類の救世主、そして、彼女の愛する勇者の姿

 

「さすがですねモモンさん、私の配下、邪悪なメイド悪魔を倒して、よくぞここまでたどり着きました。」

 

「黙れ、悪魔め、私の妻を返してもらうぞ」

 

 そして、魔神の爪と、勇者モモンの剣、しかし、確実に勇者の剣はヤルダバオトを追い詰めていく

 

「モモンさん、やはり、私の配下、ユリ・アルファを倒しただけはある。」

 

「ああ、お前も、あのメイドと同じく、首を落としてくれる。」

 

「なに、首を落とした・・・たったそれだけですか?」

 

 しかし、悪魔の狡猾さ故か、メガネをかけたメイドが復活し襲いかかる。首を落とした程度では死なない。最強のアンデッドと悪魔、何度も傷つき倒れるモモン殿、しかし、正義が、そして愛が勇者を奮い立たせる。

 

 そしてついに、モモン殿の剣が魔神の心臓を貫く、鎖に繋がれ彼の勝利を信じ、祈り続けた少女の頬を歓喜の涙が流れる。

 

「大丈夫ですか、我が、愛する妻よ。」

 

 はい、モモン殿・・・私のために、こんなに、傷ついて・・・

 

「大丈夫ですか、イビルアイ・・・いや、我が愛する妻よ。」

 

「はい、大丈夫です。モモン殿・・・ッ」

 

 フルプレートを脱ぎ微笑み、私の小さな身体を抱きしめるモモンどの、そして、頬に、首筋に唇で口づけをする。

 

「あ、ダメ・・・モモン殿、そういうことは、結婚して・・・ひゃぁ、でも・・・モモン殿が、望むなら・・・ぁ・・・」

 

 さらに、太ももや、薄い胸、背中にも唇が這わされる。でも、モモン殿になら、と、イビルアイは抵抗もせずに、そのまま二人は――

 

 

 

 

「――モモン殿、ああ、マリアさまがみてる・・・ぅ」

 

「やっと、起きたぁ」

 

 聞き覚えのない声だった。しかし、姿には見覚えがあった。

 

 さらには、先程までいた部屋と似てはいたが全く違う場所だった。氷柱のような格子をはめられた牢屋というところか、ものすごい冷気を肌で感じ、自分の装備が全て奪われていたことに気づく、さらには、両手を魔法封じの刻印のある枷で拘束され、吊るされているのにまでわかった。

 

 わずかに体に違和感があり、夢の中でのことを思い出す。それでも、今は確認できない。薄い身体を浮き上がらせるような貫頭衣だけを着せられた姿にわずかに羞恥を感じる。

 

 何故、モモン殿の家にいたはずなのに・・・いや、転移の魔法でここに飛ばされたのか?いや、ではな何故、この場所に

 

「久しぶりぃ、私のこと、覚えてるかなぁ」

 

「貴様のような化物、忘れるはずないだろう。蟲のメイド」

 

 苦虫を噛み潰すような声、さらに、イビルアイにかつての怒りがこみ上げる。仲間をいたぶり、さらに、こいつを使役する魔神に殺された仲間のことを思い出したのだ。しかし、当のメイドはまったく表情を変えない。いや、あの顔に張りついているものも蟲なのだ、証拠に喋る時に一切口が動いていない。

 

「うん、あの時言われたこと、すごく、怒ってるのぉ、だからお願いして、あなたの拷問をさせてもらうのぉ」

 

「はっ、拷問・・・さすが、悪趣味な主人の悪趣味なメイドだな。なんなら、この鎖を解いてみろ。あの時のように、ひどい目に合わせてや・・・ひゃう・・・ッ」

 

 何かが首筋を這う感触に思わず声が上がる。いや、それだけではない。服の中、胸や太もも、さらには、おしりや背中にも、同時に滑りとした何かが肌を這ったのだ。嫌悪感に虫唾が走りそうになるが、すぐに、夢の中のようなじれったいよう痒みが肌を襲う。

 

 思わず身じろぎをすれば、蟲のメイドがカチカチと音を立てた。どうやらわらっているのだろう。思わずイビルアイは燃えるような紅い瞳で睨み返し

 

「何をした。答えろ、蟲のメイド」

 

「うんんとね。気持ちよさそうに寝てたから、もーっと気持ちよくなる子達で身体を、気持ちよーくなるようにしてあげたのぉ・・・それとぉ、蟲のメイドというのは、やめてほしいなぁ、私は、エントマ・ヴァシリッサ・ゼータ・・・至高の方々に与えてもらった名前があるのぉ」

 

 エントマ、と名乗るメイドが、イビルアイの頬に顔を近づける。口にあたる部分が縦に割れ、舌のようなモノで肌を舐めた。いや、舌などではない。紫色の気持ち悪いナメクジと蛭を足して巨大にしたような蟲、それがイビルアイの首筋を這い、襟元から胸に、粘液を擦り付け移動したのだ。

 

「い、や・・・ぁ、いやぁあぁぁっ、やめ、気持ち悪、い・・・ッ・・・」

 

 声を出せば、このエントマが喜ぶだけだ。それはわかるがそれでも悲鳴のような弱々しい声を上げてしまう。身をよじり、どうにか蟲を払い落とせないか試すが、にかわで張り付いたように離れない虫は、肌を犯しながら、体を這い回る。いや、明らかに目的を持って貼っているように感じる。イビルアイは、虫の動きに寒気を感じた。

 

 彼女も、性的なことに興味がないわけではない。酒場で下らない男女の与太話を聞けば、双子に教え込まれた知識もある。さらには、モモン殿にあってからは、一人で、ごにょごにょ・・・幼い体でも乙女なのだ。そして、蟲が小さな突起に触れれば、敏感な部分に針で刺されたようなかゆみが走る。

 

「いっ、ぐぅぅうっ・・・くっ、卑怯だぞッ、こんな・・・こと・・・ッ」

 

「何が卑怯なのかぁ、よくわからないけど、まだ、拷問は始まったばかりなのぉ・・・クーデ、ウレイ、ペットを連れてきてぇー」

 

 痒さと、それに伴う何かに耐えるイビルアイが闇に目を凝らす。いや、最初からそこにいたのだろうか、小さな足跡とともに、二人の少女が現れた。イビルアイより幼い容姿だが、看護婦の着るような服は血で汚れ、さらには、お互い左右違いに眼帯をした双子の少女だった。

 

 さらに、その少女が持つ鎖に引かれ、何かが足を引きずるように連れてこられる。人間のようだった。

 

「はーい、お姉さま・・・No105を連れてきたよー」

 

「お姉さま、No105、臭いからきらーい」

 

 双子に惹かれて現れたNo105は、どことなく双子に似ていなくもなかった。しかし、多少なりとも身なりの整った双子に比べ、革の目隠しをされた少女は、異様すぎた。

 

 歳は16歳位、イビルアイと同じ貫頭衣は血と汚物で汚れ、髪は洗っていれば美しいのだろう、モップのようにボサボサに汚れている。さらには、口からはヨダレと意味を成さない喘ぎを漏らすだけだった。見れば、自傷したのか喉には引っかき傷があった。

 

 そして、何より目を引いたのは、短いスカートからはみ出した・・・その、股間から生えているであろうアレであった。最初は気の狂った男かと思ったが、あまりにも形状が違いすぎる。ピンク色のそれは、うなぎとイソギンチャクを足したような形状をしていた。さらに、獲物を求めているのかNo105の意思に関係なく、時折、うねっているようだった。

 

「あ、あれは・・・なん、だ・・・っ・・・」

 

「すぐにわかると思うよぉ、大丈夫、産卵の仕方は、人間の交尾とにてるからぁ」

 

 エントマの甘ったるい感情のこもらない言葉に、本能的にイビルアイは太ももを閉じ腰を引く、太ももを這う蟲が暴れまわり気持ち悪さと猛烈なかゆみ足を開きそうになるが、それでも、危機感からか足を閉じる。

 

 しかし、エントマに指示された双子が、足を持ち無理やり開かされる。No105の喉から、エントマと同じ声が漏れたような気がする。一瞬聞こえた「・・・ごめんなさい」という声に、瞳を閉じ絶望を感じた。太ももを這う触手のようなもの、それが、イビルアイ・・・いや、キーノ・ファスリス・インベルンが守り通したもの、愛する人に捧げることを夢見たモノを蹂躙する。

 

 眼を限界まで見開く、No105と呼ばれるモノの生臭い息が首筋にかかり、イヤイヤと首を左右に振る。肉が擦れ、そして、僅かな抵抗・・・肉を裂く音が激痛とともに聞こえたような気がした。 

 

 絶叫とともに、頬に涙が溢れた。最後に少女の口から「モモンさん・・・」と言う言葉が漏れた。

 

 

 

 

「まさか、イビルアイが吸血鬼だったとは、な」

 

 それで、ゴーレムが命令を聞かなかったことに合点がいった、アルベドは“下等生物”を攻撃しろと命じたのだ。当然、アンデッドである吸血鬼は素通りできる。あと、普通に扉から侵入したものにはアラートも侵入阻害の魔法も発動しないようにしていた。完全なミスだ。

 

そして、理由が分かりさらに問題が増えてしまった。アンデッドには、大抵は精神支配の完全防御が備わっている。記憶をいじるにしても、もはや時間が経ちすぎている上に、どこから記憶を改変すればいいのかわからない。下手をすると、また、同じことを繰り返しかねない。

 

 一層、殺してしまうか、そこまで考えたときに意外な場所から意見が出た。

 

「アインズさま、アンデッドの支配ですが、僭越ながら私にお任せいただけないでしょうか?」

 

 玉座の前、優雅に一礼をして意見を述べたのはエントマだった。

 

「どうしたエントマ、まさか、符術でアンデッドを支配する方法でもあるのか?」

 

 なにか記憶にないスキルがあったのか?しかし、エントマから出た言葉は意外な言葉だった。

 

「いいえ、蟲を寄生させ操るのです。蟲自体、わたしが支配できますので、それを操れば可能かと思われます。」

 

 確かに、ユグドラシルのモンスターの中に、蟲を死体に寄生させる禁呪があったはずだ。さらにはアンデッドモンスター自体“蛭を吐き出す死体(リーチ・ゾンビ)”や“死体に寄生するもの(パラサイト・シンク)”がいたが、あれってそういう類のものだったのか・・・

 

 仮面の美しい顔で表情を見るのが難しいが、一抹の不安を覚えながらも、エントマの意見以外良い考えが浮かばないのも事実出会った。とりあえずはダメ元でだがエントマの意見を採用したが、具体的にはどのような方法で支配するのか確認はしなかった。

 

 100年ほど前の、コミックで確か頭に何かが寄生して、人間を襲う話があったが、そんな感じだろうか?まさか、ペロロンチーノさんっと話をしたことがある寄生虫か、いや、あれはいくらなんでも現実味がなさすぎる。

 

 心配なのと、そして、少しの好奇心で氷結牢獄へ訪れたアインズ、牢の凍てつくような冷気の中、妙に生々しい粘着質な音が響いている。

 

 

「ふっ、ううっ・・・い、いやぁあぁぁぁっ・・・生まれる。蟲の赤ちゃん、産んで、しま・・・うぅ、うわぁあぁぁぁーッ」

 

 

 やっぱり、ペロロンチーノさんの方だったか・・・

 

 聞いたことのないようなイビルアイの絶叫がこだまする。早足で牢の前まで来ると、鎖に繋がれ吊らされたイビルアイが意識がないのか白目を剥き、子供とは思えない程腹部が膨らみ粗末な衣服の下で脈打っている。時折、意味のない喘ぎを漏らせば、床に拳ほどの大きさの、気持ちわるい卵を産み落とした。

 

「エントマよ、あれは、何をしているのだ?」

 

「はいアインズさま・・・卵を産ませています。」

 

 いや、それはわかるんだが・・・一度、咳払いをし、痙攣を繰り返すイビルアイを指差す。それに気づいたのか、エントマが言葉を付け足す。

 

「子宮に卵巣寄生蟲を寄生させました。生まれる子供はLV01~05と低いのですが、意識と抵抗値を低くする快楽麻酔を常に宿主に与え続けます。」

 

 ゾンビやグールも快楽を感じるのか、と言う疑問もあったがイビルアイの症状を見る限り、信じるしかなかった。時折痙攣を起こし、歓喜に染まった顔で産卵を繰り返す彼女を見れば嫌でも納得してしまう。

 

 粘液と羊水・・・なのかに濡れた卵を食い破り、現れた蟲は、蜘蛛と蝗を足したような生き物だった。威嚇するように牙を鳴らし宿主の足に食いつく、「ひぎぃ」という悲鳴を上げるが、その痛みすらも快楽に感じるのか、わずかに痙攣し、甘い声と下半身から蜜を垂らし快楽に喘ぐ、が、エントマの甲高い口笛のような音を聞くと、虫は、彼女の足元に集まる。

 

 宿主を食べるということは、ヒメバチのような昆虫なのだろうか?確か、捕食寄生という行為で、死なない程度に宿主を食べ、最後には・・・そこで考えるのをやめた。あまりにもグロ過ぎる。しかし、もう一つ疑問が沸く

 

「エントマよ。このような蟲、ナザリックの中にいた記憶がないのだが、召喚したのか?それと、もし、この蟲が無差別に寄生し、卵を植え付けるのであれば昆虫災害《インセクト・ハザード》が起きたりしないのか?」

 

「それは心配ありません。あの女の生んだ蟲は全てオスです。」

 

 一瞬、意味がわからなかった。それでは生物的に繁殖しないではないか?しかし、エントマはさらに言葉を続けた。

 

「あの女の子宮に寄生している蟲は、蟲本体ではなく、寄り代なのです。文字通り産卵器官だけを植え付け、宿主がショック死しないように、快楽物質を流し続ける。生殖触手蟲は、シャルティアさまの持ち物で、確かペロロンチーノさまの“ふせいでーた”で制作したものだと聞いています。」

 

 それで納得した。確か、そんな話をペロロンチーノさんから聞いたことがあった。触手系のバッチを不正改造して、女の子モンスターにあーんなことやこーんなことをして運営に垢BANされたプレイヤーのことも思い出す。

 

 なんだ、やっぱり、ペロロンチーノさんが悪いんじゃん。

 

 最終的には、そこにたどり着いたのだが、確かに、アンデッドにこのような効果があるのは驚きだが、これはアインズの望んだ効果ではない。この状態で蒼の薔薇に送り返せば、別の意味でモモンが疑われてしまう。

 

「そろそろ頃合なので、仕上げをしたいと思います。アインズさま、しばらくお待ちを――」

 

 もはや、意思を感じないイビルアイの瞳が、ボンヤリと開かれる。口からは意味のない言葉とよだれ、さらに、時折痙攣する身体が吊るされた魚のように跳ねる。その金髪の髪を掴み、無理やり顔を上げさせる。

 

 

 

 

 鎖に繋がれた手首の痛みで目を覚ましてしまった。

 

 あれから、どれほど時間が経ったのか、日の差さない石牢の中ではわからないが、3日ほどであると思いたかった。なぜなら、イビルアイの時間間隔ではその程度の時間だと感じているからだ。感覚がおかしくなる、体調の変化があるとは思いたくなかったのだ。

 

 きっと、今頃は蒼の薔薇が探してくれているはずだ。何よりも、モモン殿が、探して・・・

 

(いや、そもそも、モモン殿の部屋から転移したのだから・・・いや、そもそもここはどこなのだ?)

 

 考えれば考えるほどわからない。あの、蟲のメイドが居たということは・・・まさか、あのアルベリアが本物の悪魔で、ヤルバダオトと結託して、連絡を取るための魔法陣なのか?

 

「モモン殿・・・ッ・・・」

 

 わずかに身じろぎをすれば、不自然に膨れ上がったお腹に重みを感じる。

 

 エントマの拷問・・・いや、そんな生易しいことなどではない。No105と呼ばれた少女におぞましい肉体改造を行い、さらに、あのような背徳的な行為を・・・汚された悲しみは今でもお腹の奥がジクジクと痛みを感じ、さらに、失ったモノを思えば、思わず瞳に涙が溢れてしまう。

 

 いや、今はそんな感傷に浸っている場合ではない。日に日に膨れ上がるお腹に、心肺機能が圧迫される感覚、エントマは「卵を産み付けましたのぉ、元気な赤ちゃんを産んでねぇ」などと言っていたが・・・お腹をのたうつ様なおぞましい感覚に、吐き気すら催してくる。

 

(とにかく、これをなんとかしなければ)

 

 幸い、やつの言ったことが本当ならば切り札はある。わずかに意識を集中しする。自分を目標に蟲殺しの魔法を発動させれば、お腹の中の蟲は死ぬはずだ。いや、卵の死骸をどうするかとも考えたが、化物の卵を出産するくらいなら、腹を割いて取り出したほうがましだ。幸い、自分はその程度では死ぬことのない体なのだ。

 

 意識を集中し、唇から魔法を紡ぐ・・・魔力が、力になり自分の体を包み込む・・・はずだった。

 

「――ッ、ッゥ!!」

 

 声にならない悲鳴と、意識が点滅し集中ができない。お腹の奥が焼けるような痛みと快楽に、身体が波打ち下半身が弛緩する。

 

「あ、あぁ・・・ぁあぁっ・・・ぐうっ・・・ぁ」

 

 意識が途切れ、さらに弱々しい水音が床を叩き、温かいアンモニアの匂いが広がった。

 

 何が起こったのか、混濁した思考のなか、聞こえた足音に警戒をあらわにする。呼吸を整え顔を上げれば現れた女を睨みつける。

 

「汚いし臭いからぁ、おトイレの時は言って欲しいのぉ」

 

「ふん、ならばこの鎖を外せばいいだろう。早く片付けろ。不衛生なのだろう。」

 

 強がってはいるが、このような行為、見られて平静でいられるほどイビルアイは図太くはない、羞恥に赤く染まった顔で思わず視線を逸らしてしまう。

 

 わずかに首を傾けて、不思議に思っているのか人間の心理などわからないのか、考える素振りをするエントマ、甲高い犬笛のような音を口から出せば、下半身を這う蛭が、先ほど排泄した場所を探り

 

「な、何を・・・や、そこは・・・い、ぐぃ・・・痛ッ、ぃ・・・やめ、ろぉ・・・くぅうぅぅっ」

 

 刺すような痛みが尿道管を逆流する。思わず首を振り痛みを拡散しようとするが、暴れればそれだけ痛みがひどくなる。生理的な嫌悪感と激痛に身悶えしながらエントマを睨む。

 

「だいじょーぶぅ、人間の排泄物を食べてくれる子だから、これからはトイレに行かなくてすむよぉ、いくらでも逃げようとしてもいいけよぉ、逃げられないけどぉ」

 

 甘ったるい声で笑うエントマに殺意のこもった視線を向ける。が、それは羞恥と被虐に耐える強がりにも見えた。そして、頭の冷静な部分が警告を出す。エントマが何故、魔法を使っても良いと言わなかったのか・・・

 

(つまり、対魔法効果の拘束ではないということか・・・)

 

 どういう理屈かしれないが、対行動阻害のスキルを持つイビルアイを拘束し続けるのだから、かなりのマジックアイテムなのはわかっていたが、おそらく盗賊の技術などにも対応しているのだろう。つまり、正攻法では抜け出せないということだ。

 

 イビルアイがそう結論付けたが実際には違った。胎内に帰省した蟲が逃げようと“考えた”イビルアイの神経に激痛を流したのだ。一部の蟲は宿主の行動を規制する能力を持っている。他の強力な消化器官を持った動物に食べられるのを防ぐためだ。宿主は決して殺さない、それが寄生虫の本能と生存戦略だからだ。

 

 いや、この際、逃げられなくても良い。早く、この腹の中の異物を取り除かなくては・・・内蔵が押し上げられるような感覚は時間ごとに強まり、乳房が張るような痛みを感じる。

 

(――まさか、出産・・・いや、産卵が近いの・・・かッ・・・)

 

 孵化が近いのか、お腹の奥に暴れるような感覚、その妊娠線が浮き上がる腹部を、エントマの指が撫でる。

 

「う、ううぐっ・・・うがぁあぁぁっ!!」

 

 お腹がねじれるような痛みに、気を失いそうになる。が、必死に耐える。何かが、自分の腹の中で暴れまわり、生理現象か母性本能が、それを吐き出す。いや、産み出そうと産道を伸縮させるのだ。

 

 

「ふっ、ううっ・・・い、いやぁあぁぁぁっ・・・生まれる。蟲の赤ちゃん、産んで、しま・・・うぅ、うわぁあぁぁぁーッ」

 

 

 何かの足音を聞いたような気がするが、気にはしてられない。出産という行為は、相手が愛する男性でも恐怖が付きまとう。それなのに、私は・・・

 

「――モモンどの・・・ぉ、助け・・・ぇっ、て・・・」

 

 お腹の奥を掻き回され、意識が点滅する。今までの比にならないほどの痛みが強くなり、イビルアイはお腹に力を入れて抵抗する。

 

(化物の子供など、産んで・・・やるか・・・ッ)

 

 喉元まで迫る切迫感に呼吸が乱れる。数日前に広げられた彼女の胎内が、また、内側から押し広げられようとしているのだ。しかし、それでも耐える。が・・・

 

 彼女自身にも、それは虚しい抵抗だとわかっていた。ゆっくりと、お腹の下に降りてくるような異物感、さらには、猛烈な陣痛・・・それに産んで楽になりたいという分娩欲、すべてが、イビルアイの心をゆっくりと溶かしていき・・・

 

「あ、あぁっ・・・イギィッ・・・あ、モモ、ン・・・どの、ごめんな・・・さ、いぃいぃぃっ――」

 

 最初の一つが産み落とされた瞬間、絶望か歓喜か、頬に一筋の涙が伝う。目玉が裏がえり意識が飛んでしまう。霞のかかったような思考で、誰かが話しているような気がするが、それすらも理解できない。

 

 産道を逆流し伸縮器官、それに嫌悪感ではなく快楽を感じ始めたとき、心の中の何かが、壊れたような気がする。

 

 エントマが顎をつかみ、自分の顔を上げさせたのも、何か他人事のように感じてしまう。そして、口が縦に開き、線虫のような物が鼻の穴に侵入してくる。僅かな傷みと息苦しさを感じるが、もう、それもどうでもよくなった。

 

 しばらく、耳鳴りと嘔吐・・・そして、脳を直接、鷲掴みにされるような激痛が走り痛みにのたうつが、徐々に、その痛みが快楽に変わっていく・・・あれ、私は何をしていたんだろう。そして、胸に僅かな傷みが走った。先ほどの卵から生まれた気持ち悪い蟲が、母乳を求めて吸い付いてきたのだ。ん、誰の子を産んだのだったっけ・・・そうだ、私とモモン殿の子供ではないか・・・なぜそれを、気持ち悪い蟲など思ったのだろう。

 

 抱きしめてやりたい。キスしてやりたい・・・そんな欲求がかなったのか、鎖を外され身体が自由になる。蜘蛛と蝗を掛け合わせたような愛しい我が子は、驚いたように跳ねてどこかに逃げてしまった。ははっ、元気な子供だ。誰に似たのだろう。

 

 ふらつくような足取りで、マジックキャスターだろう。ローブを着たスケルトンの前に跪く、そのまま頭を下げその靴にキスをした。あれ、おかしいな、どうしてわたしは、そんなことをしているのだ?

 

 みれば、えんとまとすけるとんがまんぞくそうにうなずいている。あれ、わたし、たちあがった、なんでこいつらに、いちれいしているんだ・・・あれ、じぶんのいしで、てをうごかせない・・・ぞ・・・

 

 あは、あはは・・・もう、それも、どうでもいいや・・・ももんどの、また・・・こども・・・げんきなこどもうみますからね。あは、あははははははははっ・・・

 

 

 

 

 

 

「しかし、便利な機能だなぁ・・・いや、ここはペロロンチーノさんに感謝すべき、なのか?」

 

 スカートから露出させ、産卵した刺激にアエギ声をあげ下半身を摺り寄せ刺激を求めるイビルアイを見下ろしながら、アインズは感嘆のため息をついた。

 

 エントマがイビルアイに取り付かせた寄生虫・・・屍操蟲の効果で、完全に操り人形になったイビルアイが情欲に濁った瞳で見上げてきた。なんでも、卵巣寄生蟲で意識を混濁させた状態でないと、効果を発揮しないというのだから使い勝手はやはり悪いような気がするが、現状では効果は満足すべきものだった。

 

 彼女の扇動で行われた王国の革命で、なんなく軍事的領土を手に入れたアインズ、時折、産卵の手伝いをしなければならないのが面倒だったが、まぁ、それも許容範囲内のことだった。産まれた卵と蟲に「ああっ、モモン殿の赤ちゃん・・・」など言うのはやめて欲しかったが、それも仕方がない。

 

 唯一、問題なのは評議国と険悪な関係でいることだが、相手はドラゴンや異種族の国だ。下手に手を出すのは遠慮したい。文字通り竜の尾を踏むことになりかねないからだ。

 

 それを除けば、平和そのものの魔導都市アインズ・ウール・ゴウンの空を眺めた。これで、ほかの仲間も見つかれば最高なんだけど・・・半ば諦めている事案を考えながら、アインズは青い空に飛ぶ何かを見つけた。

 

 

 

 

 

 それは、雁のように編隊を組んだ何かだった。いや、雁にしては速度が速すぎる。

 

 その空飛ぶ物体は、編隊の向きを変え、見事な角度で急降下をする。鳥や他の飛行する魔物ではありえない甲高い音を立てて角度を付けこちらに向かってきた。

 

 予想より小さい何か、それの、足の部分から何かを切り離した。ぼんやりと見ていたアインズは、思わずその場に伏せてしまう。ファイヤーボールの魔法が発動したような衝撃と爆音、学校、教会・・・その他、各施設が爆音と火炎に包まれる。殆どの人間が、最初の一撃に衝撃を受け、何をすべきか戸惑っているようだ。

 

「全員、校舎に隠れろッ――頭を低くして、机の下に隠れるんだ。」

 

 後者から逃げ惑う子供に、そう声を飛ばした。が、全ては遅すぎた。次の瞬間、まるで、紙人形のように吹き飛ばされる子供、衝撃を受けた心が冷静に戻っていく、ユリ・アルファが子供を抱え蹲っているのに、対物理攻撃防御の魔法をかけてやる。どういった類の攻撃かわからないので、それしか方法がない。

 

「ア、アインズさま、お怪我は?」

 

「私は良い、それよりも子供たちの避難を――」

 

 嵐のような攻撃が過ぎ去り、後に残ったがれきの中、様々の呻きが聞こえる。先ほどまで、人間だったもの、その千切飛んだなにかを避けながら、街の様子を見ようと、飛行(フライ)の魔法を使おうとした時に、頭の中に伝言が響く

 

 余程慌てているのか、デミウルゴスらしからぬ早口で機械的な言葉が流れた。

 

 

 

一二〇八(ヒトフタマルハチ)入伝、発、ナザリック戦闘司令部、宛、関係各部署。魔導都市及びナザリックは、正体不明の敵兵力の攻撃を受ける。これは演習にあらず。繰り返す。これは演習にあらず。』 

 

 

 

 




痒幼蟲・・・ヒルを大きくしたような蟲、モンスターというよりギミック扱い、相手に取り付いて、HPを微妙に吸い取りながら、恐怖、動揺、毒の効果を与える。少なくてもユグドラシルではそういう扱いだった。全て、ペロロンチーノが悪い。

生殖触手蟲・・・アルシェに寄生したアレ、露出した部分はウナギとイソギンチャクを足したような、そういうゲームに出てくる触手だが、そっちは尻尾、本体はサソリかカブトガニの形、爪で腰にしがみつきアルシェの下半身に寄生している。ちなみに、不正改造した不正データなので運営にバレたら垢BANされる。ペロロンチーノが悪い。

卵巣寄生蟲・・・お腹の中に寄生し卵を産み付ける蟲、ほかのゾンビより強くないと困るので、寄生させてもらうかわりに、筋力増強や速度強化などのバフがある。本来なら、倒したゾンビから羽化して現れるギミックモンスターだったのだが、不正改造した不正データなので運営にバレたら垢BANされる。ペロロンチーノが悪い。

屍操蟲・・・ゾンビやグールといった意思のない死体に取り付き、脳に寄生して操る蟲、あくまで電気信号という魔法?で操作するという程度で、少しでも魔法抵抗があれば、効果がない。ちなみに、生物には寄生できない。意思のあるアンデッドには、条件付きでできる。

排せつ物を食べる蟲・・・虫の殆どは糞食性



インベルン「ドン引きだな。」

エントマ「最低ぇー」

アインズ「全て作者とペロロンチーノが悪い。」


でも、最後の一文は結構気に入ってます。
よーし、別のシリーズを書くぞー




▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。