学校嫌いな彼と鮮烈な少女たち   作:勇忌煉

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第8話「どうせ俺はクソだよ」

「ではここを――緒方くん」

「へあっ!?」

 

 英語の授業にて、またまた当てられてしまった。マズイ、全く読めない。

 これで五回目だ。もちろん、どれもまともに答えることはできなかった。

 隣のアイちゃんに助けを求めようにも、全員が俺に注目してる以上は無理だ。

 

「え、えーっとその……わかんないっす」

「はぁ、仕方ないですね。ではストラトスさん」

「はい」

 

 まただ。また答えられなかった。初等科のときもこんな感じだったな。

 そう思いつつ席に座ると、周りが少しだけざわつき始めた。

 

 

『あれ読めないとかあり得なくない?』

『俺、英文は読めないけどさすがに英単語くらいは読めるぞ』

『前期試験で補習確定だな』

 

 

 そして聞こえてくる俺への非難。一回だけならまだしも、何度も聞いてるとさすがに腹が立つ。

 とはいえ、ここで姉さんみたいに暴れたとしても自業自得でしかない。

 だからといって我慢できるほど人間ができてるわけでもなく――

 

「――っ!」

 

 俺は両手で机を思いっきり叩いて立ち上がった。もう無理だ。

 一気に先生やクラスメイトの視線がこっちに向けられたが、そんなことはどうでもいい。

 そのまま教室から出て、溜め込んでいたものを一気に吐き出した。

 

「はいはい、俺はバカだよ」

 

 まず最初に、廊下で呟きながら壁を蹴飛ばす。

 

「バカで悪いか文句あんのかオラァ!」

 

 次に反対側の壁に持っていた鉛筆を投げつける。

 

「俺は英単語も読めねえバカなんだよ。つーかわかってんだよ俺だってよ、学校が無理だってわかってんだよ!」

 

 さらに上着を脱ぎ捨て、噴水のある中庭みたいなところにたどり着いた。

 

「クソがぁ!」

 

 最後に近くにあった木を蹴飛ばし、ベンチに寝そべった。

 思わず上着を脱ぎ捨ててしまったが、今日はなぜかTシャツを着ていたために寒くはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「またやっちまったよ……」

 

 あれから時間が経ち、ただいま放課後。

 どうやら俺は寝てしまってたようだ。なんてこったい。

 ただ、姉さんみたいに暴れなかったのは不幸中の幸いだろう。

 

「この癖も治さないとなぁ」

 

 そう呟きながら、教室にあるであろう鞄を取りに行こうと起き上がったときだった。

 

「――見つけました!」

「ふぁいっ!?」

 

 後ろからいきなり声をかけられ、思わず跳ね上がってしまった。

 誰だ俺をビビらせようとしたバカヤローは。目から眼球が飛び出しそうになったじゃねえか。

 

「って、アイちゃん?」

「その呼び方はやめてください」

 

 だが断る。

 

「どしたよ? もう放課後だぞ?」

 

 一体何しに来たというのだろうか。見つけました! とか言ってたし俺に用があるのかな?

 いや、真面目なアイちゃんのことだ。きっと急いでいて誰かと間違ってしまったんだな。

 

「えっと……相手間違ってない?」

「いいえ、イツキさんで合っています」

 

 俺だったのか。

 

「なんの用かな? って言いたいところだけど今はそんな気分じゃないんだわ。んじゃそゆ――」

「鞄と上着ならここに」

 

 あるぇ? 俺まだなんも言ってないんだけど。

 

「今のイツキさんの考えなら手に取るようにわかります」

「マジか」

 

 すげえぞコイツ。読心術が使えるのか。今度教えてもらおう。

 さて、教室に戻る必要もなくなったし、帰るとしますか。

 

「………………い、イツキさん?」

「今度はなんだよ」

「その格好で帰るんですか……?」

「あ……」

 

 あらやだTシャツのままだった。けどこれ、下着じゃないから別に問題はないはずだ。

 そうだ、これはクールビズなんだよ。だったらなおさら問題ないな。

 

「クールビズだから別にいいよね?」

「よくありません」

 

 ダメだったようだ。

 

「そういや、お前何しに来たんだよ」

「そうでした! イツキさんに提案があるんです!」

「て、提案?」

 

 なぜだろう、イヤな予感しかしない。

 

「少し早いですが、前期試験に向けて勉――」

 

 

 ダッ(俺、猛ダッシュ)

 

 

「――い、イツキさん!?」

 

 勉強という言葉が聞こえそうになった瞬間、俺は条件反射でその場から逃げ出していた。

 勉強とか授業だけで足りてるっつうんだよこんちくしょう!

 

「あ、でもどうせ学校で会っちゃうしなぁ……」

 

 今逃げたとしても明日また学校で鉢合わせするに違いない。

 ヤバイ。退路なんてどこにもなかったんだ。明日までにいろいろ考えておくか。

 

 

 

 




《今回のNG》TAKE 4

「クールビズだから別にいいよね?」
「よくありません」
「じゃあ下も脱げってか!? お前は鬼か!」
「どうすればそんな発想に繋がるんですか!?」



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