学校嫌いな彼と鮮烈な少女たち   作:勇忌煉

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第20話「意外と重いんですけど」

「で、なんか心当たりない?」

「心当たり、と言われましても……」

 

 翌日。どんなに頑張っても常時全力全開のアイちゃんを捕まえることはできなかった。

 なのでアイちゃんとそれなりに交流のある初等科三人組に事情聴取をしている。

 

「せーんーぱーいーっ!」

 

 しかし調査は難航を極めている。特にウェズリーが邪魔でしかない。

 おいコラ背中に引っ付くな。お前意外と重いから。

 

「ティミル、この構ってちゃんを降ろしてくれないか?」

「わたしじゃ無理だと思います……」

「じゃあヴィヴィオ」

「無理じゃないんですけど……むしろそうしてほしそうにしてるからやりにくいです」

 

 えー。

 

「ウェズリー、そろそろ降りてくれ。お兄さんめっちゃ苦しいから」

「あたしそんなに重くありませんよ!?」

「そういう問題じゃねえよ」

 

 俺が窒息してしまうから降りてほしいんだよ。あとお前は重い。

 思いっきり後ろに体重をかけてるからホントに重い。

 

「倒れて下敷きになっても責任は取らねえぞ」

「そんなものはいりません! だから早く下敷きにして――じゃなかった、早く倒れてください!」

 

 お前はそれでいいのか?

 

「…………ティミル、ヴィヴィオ」

「「……は、はい」」

「今すぐこれを引き剥がせ」

「「はいっ!」」

 

 このままだと本気で窒息するのでティミルとヴィヴィオに八重歯を引き剥がしてもらった。

 やっと息ができるようになったよ……空気が吸えるってすばらっ!

 

「なんで引き剥がしたのさ!?」

「先輩が死んじゃうからだよっ!」

「人殺しはダメだよっ!」

「あたしはそんなことしないよ!?」

 

 なんか言い争いが始まったので退散してもらうことにした。

 残念ながら収穫はなしっと……。

 

 

 

 

 

 

 

「なんで俺がお前なんかと……」

「ふぇ!? ですからボクに聞かれても……」

「男ならメソメソしない!」

「ボクは女です~!」

 

 翌日。俺はリナルディと街中をぶらついている。

 なんでも八神さんが言うにはせっかくの休日なんだし、俺と出掛けてこいだと。

 チッ、今日はカメラのメンテナンスでもしようと思ったのに。

 

「まあいいや。で、これどこ行けばいいんだ?」

「さ、さあ――」

「じゃあ帰るか」

「えぇぇー!?」

 

 お前はさっきからうるさいんだよ。気が弱いつってもここまでのはいないぞ。

 それにしてもホントに女の要素がない。せめてスカートぐらい履けよ。

 

「ほら、行くぞ」

「で、でも……」

「お前だって休みの日くらいゆっくりしたいだろ?」

「いえ、練習したいです……!」

「休みの意味を調べてこい!!」

「ひぃっ!?」

 

 そこまで怖がることはないだろ。

 

「俺なんも間違ったこと言ってないよね……?」

「すみませんすみませんっ!」

 

 あれ? 俺なんも悪くないはずなのに罪悪感が湧いてきたんですけど……。

 リナルディはというとさっきからずっと可愛らしくオドオドしてる。

 

「そろそろ泣きたい……」

「何かあったんですか……?」

「いろいろあるんだよ」

 

 アイちゃんの事とか初等科のガキやお前によるストレスとか。

 

「とりあえずアイスでも買うか」

「はいっ!!」

 

 アイスという言葉を聞いた瞬間、リナルディは元気になりやがった。

 もしかしてコイツ、アイスが好きなのか……?

 

 

 ――数時間後――

 

 

「美味かったな、アイス」

「久しぶりに食べました~!」

 

 あれから俺とリナルディは適当に買ったアイスを食べ、近くにあった公園で散歩した。

 しかし、まさか数時間も経つとは思ってなかったけどな。

 頼むからその笑顔をこっちに向けないでくれ。もうそろそろ鼻が限界だから。

 

「さてと、今度こそ帰るぞ」

「い、イツキさん……?」

「ん? どうかしたか?」

「そ、その……」

「なんだよ――あ」

 

 なるほど、いつの間にかリナルディの手を握っていたみたいだ。

 俺はその手を離し、少し距離を置いてから歩き出す。

 

「帰ったら勉強だよ全く……」

「あ、あはは……ボクもです……」

 

 そんなこんなで、俺とリナルディは帰路についたのだった。

 

 

 

 




《今回のNG》TAKE 2

「帰ったら勉強だよ全く……」
「ボクはトレーニングですっ!」
「…………シバくぞ」
「ふえぇ!? すみませんすみませんっ!!」



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