「だらぁっ!」
「ぐっ……!」
俺はアイちゃんの懐目掛けて後ろ蹴りを繰り出し、動きが止まったところを狙って踵落としをかます。
さすがのアイちゃんもこれは効いたらしく、意識を失ったような感じで倒れた。
「…………そうこなくちゃな」
それでもアイちゃんは難なく立ち上がった。
すぐに右拳を突き出してくるも、俺はこれをかわしてハイキックをブチかます。
しかし左腕でガードされ、逆にその隙をつかれて脇腹に右蹴りをぶつけられた。
「っ! こんクソがぁ!」
「しまっ!?」
俺はその右脚が脇腹から離れる前に左腕で掴み、空いていた右手で肩を掴んでから頭突きをかました。
アイちゃんも頭突きされるとは思ってなかったらしく、二、三歩ほど下がっていた。
次にローキックを繰り出すもバックステップで避けられらてしまう。
「……っ!」
アイちゃんはそこから一瞬で俺に迫り、左、右の順で拳を打ち込んできた。
俺はこれをなんとか受けきり、右、左の順にミドルキックを繰り出す。
右はガードされるも、左はモロに食らってくれた。
しかしアイちゃんも負けじと俺の顔面に右拳を打ち込み、左でアッパーをかましてきた。
拳は食らってしまったが、アッパーはギリギリで回避した。
互いに一旦距離をとり、俺は口に溜まっていた痰を吐き出した。
「ははっ、そんなもんか?」
「……いいえ、まだやれます!」
そう言うとアイちゃんは右拳をアッパー気味に繰り出してきたが、俺はこれをアイちゃんとすれ違う感じで回避する。
次にその隙をついて顔面に二発ほど拳を叩き込み、右肩目掛けて回し蹴りをぶつけた。
アイちゃんはそれに耐えるとすぐさま左拳を突き出してきた。
俺はこれを受け止め、アイちゃんと取っ組み合いの状態になる。
だけどすぐに突き放し、右の拳による渾身の一撃を顔面に連続でブチ込む。
「う……っ!?」
思わずといった感じで膝をつくも、立ち上がったアイちゃんは体勢を整える。
すぐさま左拳が飛んでくるも、俺はこれを受け流して膝蹴りをぶつける。
それをガードしたアイちゃんは密着状態のまま再び左拳を打ち込んだ。
俺はアイちゃんを引き剥がし、そのままタックルをかました。
一瞬倒れそうになるも、なんとか堪えた。すげえな、お前。
互いの拳が顔面に突き刺さり、俺たちはようやく動きを止めた。
「……はあぁっ!!」
そしてアイちゃんはこれで終わらせると言わんばかりの気迫で顔面に右拳を打ち込んできた。
おそらく渾身の一撃だろう。これを食らった俺はマジで倒れそうになるも、どうにか踏ん張った。
「クソだらあぁっ!!」
そして俺も渾身のハイキックをぶつけた。
今度こそアイちゃんは倒れたが、意識を翔ばすまでには至らなかったようでフラフラながらも立ち上がられた。
ぶっちゃけ俺も立っているのがやっとだ。足がガクガクと震えてやがる。
そんな状態でも俺とアイちゃんは構え、アイちゃんは足下に魔法陣を展開した。
「覇王」
なるほど、必殺技というやつか。
「断空……!」
「こんの……っ!」
俺もそれに合わせて左拳を振り上げる。次こそブッ潰す!
アイちゃんもその一撃をストレート気味に繰り出そうとしていた。
そして互いに拳を突き出そうと――
――突き出そうとしたところで力を失った人形のようにぶっ倒れた。
「…………眠てえ」
あかん。マジで眠い。まさかここまで体に響くとは思いもよらなかったな。
「先輩!」
「アインハルトさん!」
俺のところにはティミルが、アイちゃんのところにはヴィヴィオが駆けつけた。
ウェズリーとノーヴェはいきなりぶっ倒れた俺たちを見て呆然としていた。
「大丈夫ですか!? アインハルトさん!」
「………………は、はい。今朝の筋肉痛が今になって響いてきたようです……!」
「えっ……?」
なんじゃそりゃ。
「先輩も大丈夫ですか?」
「…………ここ最近徹夜だったからなぁ」
「…………え?」
え? と言われても困る。だって精神統一ばっかしていたのだから。
ホントはちゃんと睡眠も取る予定だったけど、気づけば朝になっていたパターンが続いた。
寝不足になって当然である。ていうか冗談抜きでヤバイ。ヤバイぞこれは。
「………………起きたら、ぶっ殺す……」
「ダメです……! ここで寝てしまったら……!」
「お前らなぁ……!」
なんかノーヴェがお怒りのようだがどうでもいい。
俺はとにかく眠いんだ。悪いが寝かせてもらうぜコノヤロー。
ノーヴェの怒声を最後に、俺の意識はついに途絶えた。
《今回のNG》
※イツキが寝てしまったのでお休みします。