学校嫌いな彼と鮮烈な少女たち   作:勇忌煉

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第12話「これは酷い」

「それでは勉強を始めます」

「うっす!」

 

 翌日。自習室みたいな場所に呼び出された俺はアイちゃんと勉強を始めようとしていた。

 つーかよくこんな場所を確保できたな。てっきりアイちゃん家でやるのかと思ってたよ。

 さてさて、どんとこいってんだチキショー! どんな次世代英語だろうとぶっ潰してやんよ!

 

「まずは数学ですっ!」

「ゑ」

 

 オワタ。

 

「どうかしましたか?」

「え、あ、いや……なんでもねえです」

「そうですか。では始めてください!」

 

 その合図と同時に、俺は少し自棄になって教科書を開いた。

 ちくしょう!! 高等数学でもなんでもかかってこいやぁ――っ!!

 

 

 

 

 

 ――1時間目 数学――

 

「んー……………………」

 

 

 次の計算をしなさい。

 

 (χ+γ)×(-5)

 

 

「……イツキさん?」

「アイちゃん。これ数学だよな?」

「はい」

「なんで数学なのに英語入ってんだよ……?」

 

 

 答え -5(χ+γ)

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

「………………………………な、なるほど」

「……んー……………………」

 

 

 

 

 

 ――2時間目 英語――

 

「私が今から出すボードに書かれている英単語を読んでください。ではどうぞ(スッ)」

 

 

 bat

 

 

「……バット!」

「正解です(スッ)」

 

 

 notebook

 

 

「……の…………ノテボーク!」

「…………………………(スッ)」

 

 

 homework

 

 

「…………ホメウォアーク!」

「ホームワークです」

「ああ……ホームワーク!」

「………………(スッ)」

 

 

 tomorrow

 

 

「トモアロー!」

 

 パコッ(アイちゃんがボードで俺を叩く音)

 

「ふざけないでくださいっ!」

「地元の奴らがそう読んでたんだよ!」

「じゃあこれは!?(スッ)」

 

 

 orange

 

 

「……オ()ンジ!」

 

 パコッ(アイちゃんがボードで俺を叩く音)

 

「当たってんだろうがよ!!」

「そこはオ()ンジですっ!!」

「っ…………!!」

 

 

 

 

 

 ――3時間目 歴史――

 

「えーっと、ベルカ諸王時代の王様の名前だよな?」

「はいっ!」

 

 

[問題]

 ベルカ諸王時代を生きた三人の王。聖王オリヴィエ、冥王イクスヴェリア、あと一人は?

 

 

「ああ、聖王冥王ときたからには……あれだよ、顔は浮かんでんだよほら…………」

「…………誰ですか?」

「えー、あの人だよあの人……んー……あ、覇王だろ!? 世紀末覇者拳王だバカヤロー!」

「っ……………………!!!!」

「……あー……もういいや。知らねえよ!! どうでもいいよ覇王なんかよクソッ!!」

 

 

 

 

 

「………………やっぱ無理なんかな……」

 

 かれこれ数時間。俺は見事にボロクソにされてしまった。

 特に歴史なんかアイちゃんが自分ですっ! 自分ですっ! みたいなアピールしまくってたせいで集中すらできなかった。

 お前歴史の偉人じゃねえだろうが。仮に偉人だとしても何歳だよテメエ。

 

「また……また逃げるんですか?」

「あァ?」

「イツキさんは逃げてばかりの腰抜けですかっ!?」

「…………あークソッ!! やりゃいいんだろやりゃあ!!」

「はいっ! その意気です! まずはこれから始めましょう!!」

 

 俺がやる気を出したからか妙に張りきり出したアイちゃんは、俺の目の前に分厚い本を置いた。

 なんて分厚さだ! だけど俺は負けな――

 

「って、小学生が意気がってんじゃねえぞコノヤロー!!」

 

 思わず本にメンチを切ってしまった。だって仕方ねえじゃん、『小学校の問題』ってタイトルなんだからよぉ!

 ていうかそこはせめて中学校にしてくれよ! どんだけバカにされてんの俺!?

 アイちゃんに非難の眼差しを向けるも、すげえ涼しそうな顔でスルーされた。

 

「やってやる……! 俺はやってやるぞ……!!」

 

 持っていた鉛筆を鉛筆削りで思いっきり削り、本を適当に開く。

 さっそく数学かよ。だが、俺でもこのレベルなら簡単に解け――

 

 

 パキッ(鉛筆の芯が折れる音)

 

 

「クソッタレぇええええええっ!!」

 

 鉛筆の芯が折れた瞬間、俺は今日一番の叫び声を上げたのだった。

 

 

 

 




《今回のNG》TAKE 83

「やってやる……! 俺はやってやるぞ……!! この世から巨人を一匹残らず駆逐してやる……!!」
「イツキさん! それは何か違うかと!」
〈マスター、アウトです〉



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