ダンジョンに運だけで挑むのは間違っていると思う   作:ウリクス

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デッドリー・ホーネット
22階層から発生する成人の男性ほどの大きさを持つ巨大蜂。
黒い鎧を彷彿とさせる甲殻を纏い、鋏の様な強靭な顎と体の先端から突き出されるように飛び出す『杭』の様な毒針を持つ。
渾名は『ハイ・キラービー(上級殺し)
ドロップアイテム
『デッドリー・ホーネットの毒針』
『デッドリー・ホーネットの大顎』

ホブ・ボブリン
24階層から発生するゴブリンの上位種
M(メドル)を超えるその隆々とした巨体と見た目通りの膂力を持つ。
その見た目で上層のゴブリンと同じく群れて行動することが多い。
ドロップアイテム
『ホブ・ゴブリンの牙』

ダーク・ファンガス
24階層から発生する茸のモンスター
動きは鈍く、見つかっても簡単に逃げられるが仕留めるなら話は別。
近づいて来た相手に毒胞子を撒く、故に近づきたくないモンスターとして冒険者達の間では名高い。
ドロップアイテム
『ダーク・ファンガスの毒胞子』


ブラッドサウルス
30階層から発生する全身を血で染めた様に紅い肉食恐竜。
卵を有し、調合の素材になる為度々クエストが発注される。
最近になって美食家達にも注目されるようになるようになった。
食用に向いているかは定かではない。

ドロップアイテム
『ブラッドサウルスの紅鱗』
『ブラッドサウルスの紅牙』


第40話 …サポーター、始めました「手に入ったのは鉱石じゃなくて…」

「……ハッ……ハァ……」

――――どれくらい歩いただろうか?

足元に生える草を踏み均し、行く手を阻む枝木を切り払い、未開拓の密林を彷彿させる階層をアークが属する一群は歩き進めていた。

つい先程までは木目の床と壁、無秩序に群生された青い光を放つ苔、まるで巨大な大樹の中身をくり抜いたような構造だったのに、25階層に降りた途端にコレだ。

通路、部屋の至る所に草木が無造作に生え、冒険者達の視界を奪い、モンスター共の奇襲に適した地形へと変貌している。

 

23階層―――いや、24階層を降りた辺りまでは談笑の声が聞こえていた気がするが、それ以降、付け加えるなら階層を増えていく度に段々とその声が聞こえなくなっていった。

 

 

―――――パキン。

遠くの方で木の枝折れる様な音が聞こえた。

一群は歩みを止め警戒と緊張の空気に包まれる。

――――パキパキパキパキ……

何かが、こちらに近づいて来ている。

(……ああ、分かっている。分かっているさ……!)

アミュレットの警告を発するが、そんなモノ無くても、ハッキリと分かる。

そして、枝を折りながら進むその恐ろしい何かは確実に俺達の方へと近づいて来ている。

―――――パキンパキンパキン…バキン!!

違う…!枝だけじゃない……!!木も倒している……!!!

―――――――バキバキバキバキッ!!!!!

視界の先の木がゆっくりと横に押し退けられる様に倒れ、こちらに近づくモンスターの姿が見えた。

少なくとも5M(メドル)は超えている巨体、二足歩行で歩きその手足には血の様に赤い鉤爪、血の様に紅い牙、血の様に朱い鱗を持つ『竜』だった。

(――――……な、何だコイツはッ!!!?か、怪物!!?)

アークにとって、竜とは空を飛ぶ翼があり、口から火を噴く超越的な存在こそが竜と思っている為か、コレが竜と思わずただ単純に恐ろしい巨大な怪物――――としか思わなかった。

 

「『ブラッドサウルス』だ!!サポーターと下級冒険者は下がれ!!!」

先頭の方から怒声が聞こえる。

そして幾度目かの得物の抜刀音。

―――……ああ、これが………深層……。やっぱり、俺が来るのは早すぎたな……。

度重なる毎に増す脅威にアークは只々呆然と遠目で行われている死闘に目を向けることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

―――場面を出発前に、正確に言えば数時間前に遡る。

 

「……ああ、疲れた」

18階層、東部に位置する草原地帯に野営地が設立されていた。

此処なら見晴らしも良好で、何かあったら直ぐに駆けつけれるからだとか。

野営地の中心には本営だと思われる巨大なテント、そしてヘファイストス・ファミリアのエンブレムが描かれた旗が緩やかな風に靡かれていた。

 

「全く。何が『時間も大方予定通りって所か』―――だよ。予定より2時間以上遅れてんじゃねーか!!」

「大人数だと思った以上に遅くなっちまったんだよ!!良いじゃねーか!!!」

 

(……ああ、言い争ってんな)

テントの外から駄々漏れになっている構成員のやり取りを聞き流しながら昼食の受け取り、休憩を兼ねて辺りをうろついていた。

 

炉に火を焚き、熱した刀身を槌で打ち付けている者もいれば、同じファミリア、或いは仲間同士で談笑をしている者もいる。

 

親しい人がいないから、こうやってただ1人、辺りをウロウロしているのはアーク以外見当たらなかった。

アークは辺りを見回し、場違いなのを察しこう思った、(……良し、テントに戻ろう)―――と。

 

 

 

 

アークの張ったテントは本営から東に歩いて1分ほど離れた場所にある。

傍には身長の半分ほどの大きさの青水晶が三本くっ付いて並んでいるのが目印だ。

他の皆とはほんの少し離れている場所にあるが、特に誰も気にしないだろう。

何より俺が安心する。

テントを1人で作れるかって?勿論!

村にいた頃、狩猟が長引きそうなときは野営地作って野宿なんて当たり前だったからな。慣れた物だよ。

 

それに、偶然とはいえこの場所が気に入った。何故か?

テントから更に東に歩くと湖が見える。

その視線の先には島があって、その断崖の上には―――街があった。

 

村にいた頃、話には聞いていた。

名前は『リヴィラの街』、冒険者達が作った街で『世界一美しいならず者の街(ローグ・タウン)』って呼ばれているとか。

元冒険者の商人―――あの人が笑いながら言っていたのを思い出す。

『酒場、宿泊施設、道具の販売から素材と魔石の買い取りまで何でもあるが取引をするのはおススメはしない。いや、したくない。何故なら地上と比べてありとあらゆる物全部が法外価格だからな。最初は余りの高さに目が飛び出そうになったよ。何で1500ヴァリス前後の回復薬(ポーション)が10000ヴァリス以上もするんだ!』―――って。

 

物を売り込もうとすれば買い叩かれ、逆に買おうとすれば常に足元を見られる、そんな街だ。と耳にタコが出来るほど聞いた。

こんな場所で商売をするだけあって、当然腕っぷしも強い。

だからそこらの冒険者がぼったくりに逆上して襲い掛かっても返り討ちなのは当たり前。

聞けば聞く程行きたくなくなるしあの人も『出来るならなるべく利用するな』と言っているが、嫌ではなかった様だ。

だって、リヴィラの街のことを話していた時、笑っていたんだ。

『折角モンスターの脅威を抜けて俺様も仲間もボロボロになってまで18階層に辿り着いたのに、コレじゃ赤字だッ!!って喚いたっけな。…まぁ、その後ダンジョンにあるボロい酒場に行って18階層到達祝いでパーッ!と、祝ったがな』

 

あの人は基本丁寧な口調だけど、お酒と自分の好きな話になると、崩れると言うか、荒くなるんだ。普段は俺様って言わないのに、俺様って……。

 

『あの日ほど旨いぼったくりの酒は無かった。

あの日ほど仲間といて楽しい時間はなかった。

そして、あの日ほど俺様の人生が輝いている瞬間はなかった。

そう、まるで太陽に照らされて輝く金塊の様に―――――』

 

少し間を置いてからあの人は、『最高の日々と仲間達だった―――――』そう言ってあの人は窓の方を向いてジョッキに半分ほど残った麦酒(エール)を一気に飲み干した。

 

表情は見えなかった、俺とは明後日の方、窓の方を向いていたからだ。

 

 

 

「……」

アークは昼食として受け取った何度も折り畳んで封をした紙の袋を開ける。

中身はサンドイッチ。ハムと卵とチーズが入っている耳付きの四角いサンドイッチが2つ。

もう片方の手には事前に用意した蜜柑の果汁が入った革の水袋。

リヴィラの街を眺めながらサンドイッチに齧り付き、水分を失った口の中に水を流し込み、口を動かしながら街を眺めながら色々とどうでも良いことを考える。

 

―――いつか、俺自身の力であの街に行くことが出来るだろうか?

1年後?2年後?それとも、3年後?

その時の俺は、立派に冒険者として生きているだろうか?

デメテル・ファミリアの子達にリーダーとしてマシな姿になっているだろうか?

 

 

後は……後は、ランクアップして、神様達から【二つ名】が授かっているだろうか?

 

いやいや、【二つ名】を求めるのはまだ早すぎるか。

でも、名声とか富には興味はないけど、【二つ名】には興味がちょっとだけ、ほんのちょっとだけ欲しいと良いうか…興味がある。

だって、村に帰った時に話のタネになるじゃないか!

この前神様達から二つ名を貰ったって言える。

「……この二つ名は俺が今冒険者であり続けている証拠だッ!!俺は冒険者なんだッ!!」って。

……もしそうなったら、村の皆は喜んでくれるかな?

それとも、村長や母さんみたいに怒るのかな?

 

18階層の片隅で、そんな事を考えながらアークはサンドイッチの最後の一口を放り込み、両手を付着したパン屑を払いながら立ち上がる。

 

その時丁度「アークボルトさん。そこにいましたか」と言う聞き覚えのある声が遠くから聞こえる。

ブルークさんだ。

 

「……そろそろ、ですか?」

「はい。どうか、準備の方をよろしくお願い致します」

ブルークの言葉に従う様に、アークは自分のテントへと戻りバックパックを背負う。

そして、皆が集まっている野営地へ、36階層を目指して足を進めた――――

 

 

 

 

そして現在、アークが属する一行は30階層、31階層に続く階段の前にいる。

此処まで来るまでに、どれだけ戦闘をしたか……いた、俺は闘ってないけど。

進む度に増す戦闘回数、幾度となく襲い掛かるモンスターの波、不意に襲ってくるモンスターの大量発生。

いや、凄いんだよ。通路を抜けて部屋に入った瞬間、部屋の壁に至る所から亀裂が走り、モンスターが目の前で大量に生まれるんだ。

 

俺も一度デメテル・ファミリアを連れてダンジョンに潜っていた時に一度遭遇したことがあるけど、次元が違った。

数も、その規模も、個体のモンスターの強さ、何もかもが違い過ぎた!!

 

「むぅ、今日はちとモンスターの数が多い様な気がするのう…」

先頭に立っているドワーフが困ったような口調で言い、後ろを振り返る。

前衛の主力連中、下級冒険者にサポーター、そして荷車を曳いているヘファイストスの構成員それぞれに疲弊の色が見え始めていた。

 

アークも朦朧とした意識を持ち直そうと地面に座り込み、両手で頬を軽く叩く。

 

「…仕方ない」

一番前に立っているこの一群を率いていると思われる屈強なドワーフが「おいッ!!!」とこちらに手招きをする仕草を見せる。

その合図にヘファイストスの構成員が集まり何やら会話を始める。

 

アークも会話の内容を聞き取ろうとするが、如何せん頭がぼ~~~~っとして……。

……ああ、こんなにも衝撃的な日は生まれて初めてだ。

アミュレットが常時警告を出しっぱなしだわ見た目も恐ろしいわで兎に角大変だった。

 

(……何だよ『ホブ・ゴブリン』って。……あんなデカいゴブリンがいてたまるかよ……)

24階層で遭遇した『ホブ・ゴブリン』の群れ。

2M程ある隆々とした威圧感ある体躯が所狭しと並び、モンスターらしく相変わらずの殺意全開で走って来た時も怖かったけど、26階層に遭遇した『デッドリー・ホーネット』の群れも怖かった……。

人とほとんど変わらない大きさ、鎧を彷彿とさせる全身真っ黒な甲殻、そして杭の様な針が衝撃的だった。

 

 

「聞いてくれッ!!」

暫くして構成員達が此方を振り返り、その一人、この遠征を取り仕切っていると思われるドワーフが大声で叫ぶ。

 

「今日は撤退だ!!!さっさと18階層へ帰るぞ!!!!!」

と言い引き返す準備を始める。

 

「……!?」

(……アレ?もう帰るのか……?まだ30階層なのに)

てっきり「休憩終わりだ!!遠征を再開する!!!」と言うと思ってたのに。

そう言うや否や一斉に踵を返し、言葉通り本当にさっさと引き返し始めた。

 

 

 

道中は驚く程モンスターがいなかった。

降りる時はこれでもかと行く手を阻んでいたのに……。

そうはもう「これ以上先には意地でも進ませない……!絶対にだッ!!」と言いたげに行く手を阻んでいたのに。

 

そのせいか、遠征隊のメンバーにほんの少しだけ、余裕が出来た気がした。

 

「先ほどの戦闘、大変お疲れ様です。マジックポーションは如何ですか?」

「ああ、ソコは気を付けて下さい。段差がありますので」

「怪我をしているではありませんか。私が応急処置をしましょう」

「…む!あちらで『ダーク・ファンガス』の群生が…出来るなら戦闘は避けたいですか、毒胞子をばら撒かれても困ります。此処は我々が仕留めましょう。皆様は休んでいて下さい。臙脂さん、行きますよ!!」

先程からブルークさんが遠征のメンバーに対して声をかけまくっていた。

 

良い人だな。

戦闘をしないにしても、此処まで来るのに大分疲労が溜まっているだろうに。

でも、気のせいだろうか?

 

あの人、小人族(パルゥム)に声をかけている割合が多い気がするんだ。

気のせいだよな。偶々だよな。いや、絶対に気のせいだ。

 

一方、ブルークさんの相方、臙脂さんは相変わらず気だるげそうにダンジョンを歩いて―――――?

いや、待て?何かおかしい。笑っている?

先ほどの戦闘でモンスターが落としたドロップアイテムの入った袋を両腕で抱えながら、満足そうな表情で歩いていた。

物凄く不気味な表情だ。

 

「おい臙脂!!いい加減その『ダーク・ファンガスの毒胞子』を荷車に置けよ!!」

同僚と思わしき獣人から注意を受けるが耳を貸す気はないと見られる。

本当に協調性が無い人だなこの人!

……俺?俺は協調性ぐらい……多分ある、多分!!

コレばっかりは他人じゃないと分からないからな。

いやでも、村にいた頃は―――

 

「アークボルトさん」

「……!?は、はい!!?」

アークは自分の中にある協調性の思い出を必死に掘り出しながら歩いていると、いつの間にかブルークが「疲れてませんか?」と回復薬(ポーション)を差し出しながら声をかけてくる。

 

「……少し、疲れました(……主に精神的に……)」

アークの問いにブルークは「そうですか。ですが、先ほども言いましたが、怪我をしたり体に痛みが走ったら直ぐに言って下さい。冒険者は体が資本。無理をしないで下さい」と言い他の冒険者の元へ向かおうとするが、アークは「……あ、ブルークさん。ちょっと」と呼び止める。

 

「何でしょうか?」

「……あ、いえ。何で引き返すのかな…って思いまして。先ほど何やら話をしていたじゃないですか」

 

アークの質問にブルークは「理由は2つあります」と前置きをして答える。

 

「一つは、ただ単純にモンスターとの戦闘が予想よりも多く皆様の疲労が目立ち、これ以上の探索は危険だと判断したからです。2つ目は……」

ブルークはアークに「周りの荷車を見て下さい」と促す。

 

「……はぁ」

アークは辺りを見回し荷車を見る。

荷車の一つ一つには大量の何かが山のように積まれていた。

そう、少しでも下手に触れば一気に崩れ去る程に山盛りに。

 

 

 

 

「コレ、積まれている物全部ドロップアイテム(・・・・・・・・・・・・・・・・)なんですよ」

「……コレ、全部ですか」

「はい、モンスターから得られるもう一つの恩恵、ドロップアイテムは時に武器や防具の材料として利用され、性能を引き上げることが出来ます。アークボルトさんも知っている通り、今の我々は色んな素材が不足しています。それ故に、欲張って拾い集めている内にまさかこんなに集まるとは思いませんでした。ですので、一度これらを置いて今度は何も拾わずに明日もう一度遠征に向かう…と言う話になりました」

「……そ、そうなんですか」

アークは頷きながらブルークの話を聞く。

 

「全く。嬉しい誤算ではありますが、我々もこんな光景を見たことがありません。故に少々戸惑っているのです」

アークは山盛りになっている荷台に視線を写し、辺りに耳を傾ける。

 

「…しかしスッゲェな……!」

「18階層に着く前も何か色々落ちていた気がするけど」

「倒した数だけドロップアイテムが手に入るんだもん。こんなこと初めてだよ!!」

「これ全部売ったらいくらぐらいになるんだ?豪邸とか余裕で買えるかな!!?」

遠征のメンバーが口々に感嘆の声を漏らす。

 

「うぐぐぐぐぐぐ……ッ!!」

アークは如何にも重たそうに荷車を曳いている獣人を見てそう思った。

(……絶対重いよなアレ。うん、俺には無理だ)

 

アーク属する一群は、18階層を目指して進んだ――――――

 

 

 

 

 

 

18階層には空がある。

しかしその正体は天井に夥しく、そして菊の花の様に美しく生え揃えている水晶が輝き空を作っているのだと言う。

水晶の色には2種類あり白と青。

天井の中心には巨大な白い水晶があり、それが光り輝くことによって太陽の役割をしている。

そして、この水晶の面白い所は時間が経つと光が消え、まるで夜空の様に暗くなるんだ。

 

アーク達が18階層に帰還した時にはもうすっかり『夜』になっていた。

 

俺は今、遠征のメンバーと共に夕飯を済ませ、共に営火(キャンプファイアー)―――の様に見える複数の携帯用の魔石灯の光を囲い座っている。

 

アークは辺りを自然な感じに一瞥し、そっと耳を傾ける。

 

「いやー今日は大変だったな!!」

「あの数相手に怪我人が出なかったのも凄いと思うけどね!下手してたら確実に死人が出てた数だよアレ」

「楽しく刺激的な一日だったなァ!!ガハハハハッ!!!」

まだまだ余裕のある手練れの冒険者もいれば―――

 

「…全然歯が立たなかった」

「うん。僕達途中から何も出来なかったな」

「我々もまだまだ精進しないといけないな……!」

気落ちしている駆け出し卒業の冒険者もいれば――――

 

「…………もう寝よう……」

「………………うん」

「………逃げたい。地上に帰りたい」

完全に疲弊している駆け出しの冒険者とサポーターもいた。

 

(……さて、明日に備えてそろそろ寝よう)

疎らにテントに戻っていく冒険者に混じり、アークも自分のテントに戻り、休息を取ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜、そろそろ皆が寝静まると言う時間に、本営のテントの中では携帯用の大きな魔石灯を一つぶら下げ、ヘファイストス・ファミリアの構成員が何やら話し合いをしていた。

 

「モンスターが多すぎて中途半端な階層で引き上げてしまった……」

「やはり、引き連れる人数が多ければ多い程時間が掛かってしまうのだ!」

「と言うかお前達が遅刻しなかったらもう少し進めた筈だ!!」

 

内容は今日の探索の反省会もあるがそれよりも―――――

「う~~む、どうしたモノか……」

「いやあ、考え過ぎでしょ」

荷車全てがドロップアイテムで埋まると言う異常過ぎる成果についてが殆どだ。

 

今までモンスターからドロップアイテムを落とすことはあっても今日ほど落とすことはなかった。

精々1つの荷車の隅に置く程度の量しか取れなかったのに。

 

それ故に「コレは異常だ。近い内に不吉なことが起きるんじゃないか?」と勘繰りを入れる人がいれば、「ただ単に今日がツイていただけじゃないか!」とあまり気にしない人が雑談程度に、確証の無い意見を互いに出し合っていた。

―――まぁ、飽くまで雑談程度だ。

 

結局、「結果的に我々に利益があっただけだから良いだろう。この調子鉱石も集まれば直ぐに地上に帰れる。また鍛冶に専念できる」と言う結果になり、今は気にしない、東いう結論でお開きとなった。

 

「じゃ、俺達は周囲の警戒に行くよ。俺達が帰って来るまで休んでいてくれ」

「分かった」

 

そう言って構成員の数人がテントの外に出る。

安全階層と言っても、モンスターが別の階層から昇って来て、この階層で遭遇することがある。

だから、他のファミリアの上級冒険者を傍に付けて周囲の見回りをしている。

―――その分、支払う報酬が増えるが、下級冒険者がそこら辺をうろついていたモンスターに襲われて死者が出ましたって言われるよりは遥かにマシだ。

 

 

 

 

 

 

 

こうして、アークが属する遠征部隊の初日が終了した。

今日の結果に違和感と不安を感じる人はいながらも、皆の心は一つ、この調子で鉱石も集まれば早く終わって欲しい。

地上に帰り鍛冶の仕事を再開したい。

ただそれだけだった。




あけましておめでとう⇒バレンタインデーだよ⇒ひな祭りだよ⇒桜が咲いたよ⇒桜が散ったよ⇒ソード・オラトリア始まったよ!

書いて、気に入らないから全部消してまた書いてを繰り返していたらいつの間にか4ヵ月ですよ4ヵ月。
筆が進まないな。

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