ダンジョンに運だけで挑むのは間違っていると思う   作:ウリクス

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ギルドの武器支給

冒険者登録が完了した際、必要ならば各種の武器が支給される

しかし威力は最底辺


第20話 冒険者始めました(頼むから言うことを聞いてくれ編)

「……Zzzzz……Zzz……ん?」

 

カーテンの隙間から入ってくる太陽の光で目が覚める。

上半身を起こしてカーテンと窓を開けると待ってましたと言わんばかりに風が入り込んで来て爽やかで柔らかい風が俺の顔を撫でる様に通り過ぎていく。

村にいた時は別に何とも思わなかったのに、オラリオに来てからは何とも懐かしくて新鮮な感覚だ。

眠り眼で窓の外からオラリオの西側の広がっている草原を眺める。

オラリオに来てからまだ十日くらいしか経っていないのにもう何年も帰っていないような錯覚に陥ってしまう。

コレが前に本で読んだホームシックってヤツなのだろうか?

 

「……ん、ああ……」

 

このままボーっとして村の思い出に浸りたい気分だがそうはいかない。

今日は彼女達の初ダンジョン探索、こちらもまだまだ駆け出しの身ながらも後輩の為、是非とも協力したいところ。

欲を言えばもう少しだけ風に揺れる草原を眺めていたいが、そろそろ起きなけ

 

「リーダーッ!起きてるーーッ?!!起きて来ないからボク達から来ちゃったよーッ!!!!」

「リーダー君ッ!朝だよーーーッ!!!」

「起きてるーーー!?起きてるよね!!?絶対に起きてるよね!!!?寝込み襲っちゃうぞッ!!」

「ちょっとヘンリッタッ!冗談でも男の人にそれは……」

「ミレイ~、なに赤くなってんの~?」

「……リーダーさん……ここでずっと……ずっと……見ていますよ……うふふ……」

「最近のリリアンってさ、変わったよね。どんな時でも本は離さなかったし、この時間は絶対に部屋から出て来なかったし」

「……そう?モニクも分かる?……女は男の為なら……変わるもの……うふふ……本にそう書いてあったわ……」

「私たち双子だって負けてられないね!アンナ!!」

「当たり前じゃないメアリー!!」

「貴女達ッ!うるさいわよッ!!……も、申し訳ありませんアークボルト様。朝に集合って言ったらこんなに朝早くに起きるとは思っていなくて……」

「……ああ、フローラか。……いや、詳細を伝えていなかった俺にも落ち度はあるから気にするな。直ぐに起きるよ……」

 

彼女達の扉を叩く音と元気過ぎる声で完全に目が覚める。

まさかこれが毎日って訳じゃないだろうな?

少しでも遅れたら毎日毎日毎日毎日こうやって起こしに来るとかじゃないだろうな!?

 

「……はぁ……」

 

とにかく起きないと、鎧を着て剣を腰に付けてある剣を手に取り、バックパックを背負い扉を開ける。

 

「「「「「「「「リーダー(君)(さん)(様),おはようございます!!!!!!」」」」」」」」

 

可愛らしい女の子が笑顔で迎えてくれる。

本当、皆若いなぁ。

 

「……ああ、おはようお前達。そろそろ行こうか」

「んふふ~、ねぇリーダー」

「……ん?どうしたエミリア?」

 

何かニヤニヤしながらエミリアがこちらを見て来る。

まるで新しい悪戯を思いついた小さな子供のようだ。

 

「前々から思っていたけど、『お前達』でまとめているのって……もしかしてボクとフローラ以外名前覚えていないんじゃないの~」

「馬鹿言え、これからパーティーメンバーになるって言うのにそんなことあるわけないじゃないか」

「へぇ~。じゃ、言ってみてよ?」

「……はぁ、エミリア、モニク、ヘンリッタ、リリアン、アンナ、メアリー、フローラ、ミレイ。さっさと行くぞ」

「うん、上出来!流石ボク達のリーダー!!行こうッ!!」

「ちょ、ちょっと押すなって……階段あるだろ階段がッ……!」

 

彼女達にグイグイ押されながらホームの外へと連れて行かれた。

 

 

 

 

「……あ、リーダー。おはようございます」

「アンタ遅いわよ!どうせまた寝坊してたんでしょ!?」

「おークラリス、お前は朝から礼儀正しくていい子だね。それに比べてセリアは……」

 

本当、リーダーは悲しいよって顔をセリアに向ける。

 

「何よーーッ!……そ、その……オ、オハヨウ…ゴザイマス……リーダー……」

 

うんうん、セリアはいい子だ。

 

「あ、あの……おはようございますリーダーさん」

「リーダーさんおはようございます」

「……おはよう……ございます」

「おはよう、お前た……」

「「「んふふ~、リーダー(さん)(君)」」」

「……」

 

エミリアの他にヘンリッタとモニクも加わってニヤニヤと俺を見ている。

 

「いけないなぁリーダーく~ん。『お前達』で統一は」

「そうだよ~ボク達にだって名前はあるんだよ~」

「勿論リーダーさんなら分かるよね?」

 

ウゼえええええええええええええッ!!!

ってか何で朝からこんなにテンション高いのッ!?

 

「……はぁ、おはようクラリス、セリア、ララ、ドロシー、エマ。……これでいいか?」

 

朝から疲れさせてくれるなコイツ等は。

だが、どうやら全員集まったみたいだな。

 

「よし、俺はこれから朝食にオラリオに行く訳だが……食堂に行って来ても良いんだが」

 

っあ、もう何かもう付いて行きますって顔してるわコイツ等。

 

「……まぁ、付いて来たいんなら……うん、好きにして良いよ」

 

俺は、いや、俺達は朝食をとるためにオラリオへと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

「良し、お前達。さっさと済ませてダンジョンへ向かおう」

 

店…まぁ食い物の屋台は朝早くから開いていて且つ、まだ人が少なかった。

 

「そう言えばフローラ、お前達のファミリアで聞きたいことがあったんだが」

「はい、何ですか?」

「デメテル・ファミリアの過去の中で戦力になるような冒険者はいなかったのか?」

 

隣に座っているフローラに話しかける。

ベーコンエッグにナイフとフォークを差し込んで少し考えてから口を開く。

 

「……私の記憶じゃ聞いたことがありませんね」

「そうか、これだけ大きなファミリアなんだ他のファミリアに因縁をつけられたり、悪い買い手に足元を見られたり……とかで面倒になったことは無かったのか?」

 

フローラは首を縦に振り

 

「はい、少なくても私がこのファミリアに入団した時から一度もそんなことはありませんでした」

「う~ん。言い方は悪いと思うけど……戦力を持たない大手の商業系ファミリアは高い戦力を持っているファミリアに支配されているんじゃないかと思ってな。言ってしまえば金づるってヤツだ」

「確かにその可能性は十分にあるけど、不思議とボク達のファミリアじゃそんなことは一切無いんだよね。平和なファミリアだったんだよ!」

 

フローラの後ろからヒョッコリとエミリアが顔を出す。

 

「……だからこそ……賊の襲来は……ファミリアにとって……衝撃的なモノだったけどね……でも……言ってしまえば……あの襲来が無かったら……私達が冒険者になることなんて無かったと思う……でも……それはリーダーに出会うことも無かったって……ことになるから……私としては少し複雑なのよね……」

 

机の下からリリアンが顔を出す。

 

「それで、この異常事態に幹部達はボク達以上に焦ってるんだよ!」

「……と言うよりも……ファミリア全体がまだピリピリしている……」

「だからこそ、今私達が立ち上がらないと、ですね!」

「時間は掛かるかもしれない。それでも……今度こそアタシ達が農作物を、ファミリアを守らないといけないッ!」

 

皆が強い意思を宿った瞳で俺を見て来る。

あの時……俺が二度目のダンジョンに潜ろうとした時三人で俺のマントを掴んだあの子達のような、強い意思を感じる。

 

「……はぁ、そうか。だったら、今日はその第一歩だ。良し、行こうッ!!」

「あ、もうちょっと待って。まだボクのサラダが半分残ってる」

「……お、おう……」

 

朝食を済ませた後、彼女達を引き連れてバベルへと向かうことにした。

その道中エミリアが一言

 

「さっきの話だけど、それでも賊に襲来を受ける前まで平和だったのはデメテル様の人柄と人望のおかげって言うのもあるかもね!!」

「……まぁ、確かに。デメテル様のあの性格じゃ敵対する人も神もいないと思うな。俺には有り得ない無茶振りをして来たけどねッ!!」

「有り得ない無茶振りって?」

「……お前達には関係ないことだ」

 

特別講師の事だよ!

とは今更言えないよなぁ。

 

「でもデメテル様って確か一人だけ苦手な()がいたらしいんだよ」

「そうそう、確か……えっと……えっと……あ、そうだ!『ゼウス』って名前の神様だった気がする」

 

ゼウス……聞いたことが無い神様だな。

 

「どんな神様なんだ?」

「さぁ……知らない。昔オラリオにいた神様だとしか説明できないよ。リーダーはギルドでファミリアについての勉強したんじゃなかったの?」

「あの時の俺は現状のオラリオに存在するファミリアについての勉強をしたんだ。まぁとにかくバベルへ行くぞ」

 

 

 

 

 

「良し、着いた。今のうちに色々と話し合おう」

「作戦会議ですね」

「……まぁ、そうとも言う」

 

幸いまだ人が全然いない、来る前にさっさとダンジョンに潜ろう。

 

~ダンジョン第一階層入口~

 

 

「先ずはお前達の武器だ。何にした?」

 

各々がギルドから支給して貰った武器を取り出してくる。

 

 

フローラ=カーライル

ララ=オルコット

リリアン=ブラックリー

 

剣、ナイフ、槍、大剣

ヘンリッタ=イリークペン(大剣)

モニク=ボーフォート(直剣)

アンナ=ケアード(槍)

メアリー=ケアード(槍)

 

弓矢

ミレイ=ランパード

エマ=クウォーク

ドロシー=レジンスカ

 

 

「魔法が3人、前衛が4人、弓兵が3人……思った以上に魔法が使える奴がいるな」

 

中々にバランスが良くて少し驚いている。

前衛ばっかりだと思っていたのに。

 

「魔法使いと弓兵は固まって、俺が前に出るとして後は……アンナとメアリー、前に出ろ。後の前衛は後ろを警戒……っと、来るぞッ!」

 

アミュレットが敵の出現を警告する。

それと同時に壁に亀裂が走りその中からコボルトが一体出てくる。

 

「良し、俺が手本を見せ」

「その必要はないよリーダーさん!」

 

メアリーとアンナが俺の前に立つ。

 

「お、おい大丈夫かよ!?」

「大丈夫!私達双子を信じて!!」

「わ、分かった……だが無茶はすんなよ」

「「うん!フローラ、お願い!!」」

「分かりました」

 

後ろを振り向くとフローラが杖を手に取り詠唱を始める。

 

「【開戦の戦笛の音が鳴り響く、我が率いるは勇猛なる戦士達。勝利を、栄光をこの手に】コンバティメントッ!」

 

俺達を囲むように足元から赤く光る魔方陣が俺達を包み込む。

 

「……コレは?」

 

体が少しだけ軽くなったような気がするのは俺だけだろうか?

 

「行くよアンナ!」

「遅れないでよメアリー!」

 

双子の姉妹がコボルトの前に躍り出て、同じ速度で槍を構えずに走り寄る。

コボルトが二人を仕留めようと両腕を振り上げるがその瞬間にアンナが右に、メアリーが左とこれまた同じ速度で散開しガラ空きになった側面と背後に回り込む。

そして二人が同時に槍を構え、突撃する。

 

「「やああああああああああああああああッ!!!」」

 

一本は横腹に、もう一本は背中に深々と突き刺さり魔石を残して消えた。

 

「「やったぁッ!!」」

 

二人でハイタッチをして喜び合う姿を見て少し安心する。

 

「リーダー、見てた?見てた!?」

「私達の戦い!!」

「あ、ああ……とても初とは言えない戦闘だったよ」

「「本当!?やったーーー!!」」

 

手を合わせて喜ぶ二人だったが突然「「あ、そうだっ!!」」と手を止めフローラに近づいて行く。

 

「フローラ、さっきはありがとう。フローラの魔法のおかげでコボルトをやっつけれたんだよ!!」

「うんうん、ありがとうフローラ!」

「いえいえ、私の魔法は手助けに過ぎない。今のは正真正銘の貴女達二人の実力です」

 

っと笑顔で双子に声をかける。

 

「あ、そうだ。フローラ、お前の魔法……」

「はい、周りの味方のステイタスを[魔力]以外の全て引き上げる効果があります……と、デメテル様が言ってました。とは言え、駆け出しの私の魔法ではそこまで変わらないと思いますがね」

「そ、そうか……しかし、その杖に付いている旗って」

「はい、デメテル・ファミリアのエンブレムの書かれた旗ですよ」

 

フローラの杖の先にはデメテル・ファミリアを象徴する『杖と稲』が描かれた小さな旗が取り付けられていた。

 

「何で付けてんだ」

「いや~その、何かリーダって言うか司令官って感じしませんか?」

「いや、気持ちは分かるし別に良いけどさ……っと、また来た。しかもまたコボルトかよ……」

 

フローラも意外とお茶目なんだなって思ってる所にまたモンスターが壁から殻を破るように出て来る。

 

「っとまた来た、しかもまたコボルト……しかも二体!!」

「んっふっふ~、リーダー君。ここは私達に任せなさい!」

 

いつの間にか後ろに控えていたモニクとヘンリッタが剣を構えて前に出てくる。

いや、後ろを守れよ。

 

「今日、ここが私達のダンジョンデビューとなる場所!」

「カッコよく決めちゃうよ~」

 

いや、だから後ろを守れって!!

 

「「おりゃああああああああああああああああああッ!!」」

 

威勢のいい掛け声と共にモニクとヘンリッタが全速力でコボルトに駆け寄る。

 

「うおりゃああああああああああああああああああああああああッ!!!!」

 

ヘンリッタを見る。

年頃の女の子には似合わない咆哮を上げながら大剣を大きく振り上げ跳躍し剣の重みと渾身の力を込めて振り下ろす。

良い意味で言えば迷いの無い一太刀、悪く言えば避けられた後の事を考えていない一太刀だ。

だが運よくその一撃は見事に脳天を捉え、縦に真っ二つに割れて魔石を残して消えた。

 

「やあッ!」

 

モニクを見る。

コボルトの攻撃を右に左に振り下ろされる腕を紙一重、最低限の動きで回避していた。

 

「はぁッ!!」

 

そして隙を見つけるとこれまた初心者とは思えない見事な立ち回りでコボルトを切り刻んでいる。

堅実に安定して戦っているように見えたが回避を誤ったのか、コボルトの爪が彼女の左肩を捉え服の引き裂く音が響き渡る。

 

「痛ッ!!!」

 

だが彼女は怯むどころか、コボルトを睨みつけて

 

「この……やってくれたなああああああああああッ!!!」

 

っと殺意に満ちた咆哮をコボルトに向けながら痛みを顧みずコボルトの懐に潜り込み剣を腹部に深々と突き刺す。

そして戦いが終わったかのように魔石を残して消えていった。

 

「モニクッ!大丈夫ですか?!」

「痛たた……ゴメンララ。やっちゃったよ……」

 

全員がモニクの傍へ駆け寄る。

見ると彼女の左肩から出血していた。

俺はバックパックからポーションを取り出して

 

「モニク、ポーションがある。飲め」

「いいえリーダー。その必要はありません!」

 

後ろを振り返るとララが杖を手に取り両手で大きく掲げて詠唱を始める。

 

「【母なる大地よ、戦いで傷ついた勇敢な者達の傷を癒せ】ヒールサークルッ!」

 

今度は緑の魔方陣が足元に現れ、魔方陣から発せられる淡い緑の光が俺達を包み込む。

この光に包まれていると何とも落ち着いた気分になるのは俺だけだろうか?

 

「ララ、お前の魔法は……」

「はい、少しずつ効いてくる広範囲の回復魔法……とデメテル様が言っていました。何度か練習はしてたんですけど、実践でやるのは初めてですよ。でも……上手くいったみたいで一安心です。リーダーさんも傷ついた時はいつでも言って下さいね?」

「お、おう……」

「あ、そうそうモニク。ダンジョンから帰ったら後で話がありますから……」

 

頬に手を当てて微笑んでるんだけど、その笑顔がすごく怖い。

 

「……良し、着いたぞ。第二階層の階段だ」

 

ララの魔法の効果時間が切れるまで休憩した後、少し進んだ先あった第二階層に続く階段の前に立っていた。

 

「良し、今日はもう帰るぞ」

「え~ッ!!もう帰るの!?」

「早すぎない!?」

 

懐中時計を取り出して時間を確認する。

確かにダンジョンに潜ってまだ30分も経っていないけども……だからと言って、防具無しの私服で先に進むとか何言ってんだこいつ等?

ギルドで勉強したんじゃなかったのかよ?

 

「本来の目的はお前達がちゃんと戦えるか様子見だ。探索に来たんじゃない」

「え~もうちょっと行こうよ、いつも四階層まで進んでいるリーダー達がいるから大丈夫だって!」

「そうそう、見たでしょ!?私達の華麗な戦闘を!!?」

「モニク、お前怪我してたよな?」

「危なくなったら逃げれば良いしさ!」

「……」

 

結局、それから彼女達に押し切られて渋々降りることにした。

 

「……分かった、だが第4階層までだからなッ!それ以上は意地でも進ませないッ!!」

 

っと彼女達に念を押したが、それでも体の奥に湧き上がる不安を抑えきれないまま俺達は階段を下りて行った。

 

 

 

 

~ダンジョン第2階層~

 

「……ッ!早速来たかッ!」

 

第2階層を下りて少し進んだ先にゴブリンが2体、左右の壁から現れる。

 

「……リーダー……ここは私に任せて……」

 

魔法使いであるリリアンが左手に持っている杖をクルクルと回しながら左のゴブリンに向ける。

 

「お、おい……大丈夫かよ!?」

「大丈夫……【我らを害する無法者に地の災いを】グレイヴ!!」

 

壁から出て来たばかりのゴブリンの足元から槍のように尖った石が左から出てきたゴブリンの腹を貫く。

しかしその隙を突くように右のゴブリンがナイフを振り上げ襲いかかってくる。

 

「ま、不味いッ……リリアンッ!!」

「……フンッ!!」

 

ゴブリンのナイフを体を少しだけ傾けてモニク同様紙一重で回避する。

それと同時に杖を両手から左手に持ち替え、空いた右手で拳を作り、ゴブリンの腹を思いっきり殴る。

 

「ッ!!?」

 

ゴブリンからミシミシッ……っと嫌な音と共に壁に送り返すように殴り飛ばす。

 

「……触んじゃないわよ……異性で触って良いのはリーダーだけよ……」

「……あ、うん。ありがとう」

 

何とも言えないような微妙な気持ちを抱えながら俺達は階段を進めていく。

 

 

 

 

 

 

「……はぁ……」

 

それから彼女達は物凄い勢いでダンジョンに進んで行った。

防具も付けていないのに何でそんなに進めるのかと何度疑問を抱いたことか。

ってかお前等ダンジョン初めてだろッ!

モンスター見るのも初めてだろッ!!

少しくらい怖がれよッ!!!

クラリスとセリアは怖がっていたのにどうしてなんだろうか?

 

「弓兵隊前に出なさい!目標、目の前の壁に張り付いているダンジョン・リザード……今だッ!撃てーーッ!!!!」

「……楽しそうだなフローラ」

 

彼女達の戦果は予想以上だった。

これなら俺がいなくても十分に活躍できる程だ。

言っとくがお世辞じゃなく本心で言っているからな?

ただ一つ、ただ一つ強いて言うなら……

 

 

「見つけた!三階層の階段!」

「いっちばーん!」

「にぃばーん!」

「さんばーん!」

「…………」

 

頼むからもう少し慎重に進んでくれ。

出来たら俺の言うことも聞いてくれたら嬉しいんだが。

 

「ここが三階層かぁ……」

 

そして彼女達を追うように走り続けていたらもう三階層に辿り着いてしまった。

 

「ふっふ~ん、絶好調だね!」

「意外と私達イケるじゃない!」

「どんどん進むわよアンナ!」

「負けないわよメアリー!」

「……はぁ」

 

俺が少し後ろに離れて歩いているといつもの三人組が俺に近づいて来た。

 

「……エミリア、この状況をどう思う?」

「まぁまぁリーダー、そんなに怒らない怒らない」

「……クラリスは?」

「……た、楽しそうだと思います……」

「……セリア」

「ま、良いんじゃない。一度くらい痛い目を見せないと分かんないわよ。ああ言うタイプは」

「……痛い目、ねぇ」

「リーダーさんッ!リーダーさん!!こっちは行き止まりだよッ!!!」

「……ん?」

 

先頭にいるヘンリッタの声が聞こえる。

確かに目の前には道は無く、文字通りの行き止まりが目の前にあった。

 

「じゃ、引き返して別に道にでも行こうか」

 

って言って後ろを向いた瞬間に行き止まりの壁からヒビが入る。

 

「ああ、モンスター発生ね。……発生……えっ?」

 

アミュレットの警告が止まない。

それどころか次第に振動する間隔が短くなってくる。

 

「……何だよアレはッ!」

「何よ……コレ……」

「……えっ……」

「こ、コレは……」

 

壁から尋常じゃない数のコボルトとゴブリンとダンジョン・リザードが這い出てくる。

そして俺達を見るや否やゆっくりとこちらに群れて近づいて来る。

まるで圧倒的にこちらが有利と言わんばかりに。

 

「ってかここまだ三階層だぞッ!!何で上層でこんな大量にモンスターが発生しているんだッ!!」

 

なんて嘆いても仕方が無いのは分かっている。

でもマジでヤバいんだ。

ざっと見る限り俺達の三倍近くの数はあった。

何とかしないと。

 

「リーダー」

「何とかしなさいよ!アンタリーダーでしょッ!!」

「……リーダー……」

「……ッ!」

 

どうする俺…どうするよ俺ッ!

 

「リーダーさん!

「リーダー様、ど…どうしよう」

「り、リーダー!」

「リーダー君、コレは流石に無理だよ」

「リーダーさん……」

「……リーダーさん……」

「「「リーダー!!」」」

「喧しいッ!」

 

さっきまで俺の言うこと無視して先に進んだ人には聞こえないセリフだな畜生ッ!!!




良し、早く次の話書こう

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