ダンジョンに運だけで挑むのは間違っていると思う   作:ウリクス

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何か新しい名前が沢山出てくると思いますが別に覚えなくても全然大丈夫です。

パ、パソコンとスマホじゃこんなにもスピードが違うのか……


第17話 冒険者始めました(リーダーだけどコミュニケーション力を求めないで下さい編)

「……あ、朝か……」

 

 

カーテンを開け朝日を浴びるついでに窓の外を見る。

最初に目に入ったのはオラリオを繋ぐ街道と大陸の西側へと続く壮大な草原だ。

聞いた話によるとオラリオの西には『ラキア王国』と呼ばれる国があり、非常に好戦的な軍事国らしい。

他にも魔法大国の『アルテナ』や、旅商人が向かった『極東』って島国もある。

 

「……いつか、一度でもいいから行ってみたいよな……」

 

そんな思いを巡らせていると扉に誰かが近づいてきてノックする音が聞こえる。

 

「……誰だ?」

「リーダー、いる?」

「……リーダー、少し話があるんですけど……」

「早く開けなさいよ」

「お前達か……ああ、ハイハイ。少し待ってくれ」

 

着替えを済ませ扉を開けると7人の女の子が部屋の前に立っていた。

エミリア、クラリス、セリアと確かフローラって子と……ゴメン、後の3人は知らない。

 

「おはようリーダー!」

「……おはようございます……」

「おはよう、今日は珍しく早起きじゃない」

「……おはようございます……リーダーさん……うふふ……」

「いくよアンナ!」

「分かってるわよメアリー」

「「……リーダーさん!おはようございまーす!!」」

「……おはよございます、アークボルト様。こんな大勢で押し掛けてしまい、班を代表して謝罪します……申し訳ございません……」

「……いや、別に気にしなくていいよ。それよりもどうしたんだ?こんな朝早くから……」

 

彼女達に問いかけるとフローラが前に出ておずおずと

 

「はい、実はファミリアの事情で今日の冒険は休ませていただくようにお願いしに来たんです」

「……凄く自分勝手なのは分かっています。でも今日は現状のファミリアにとってすごく大切な日なんです……」

「……別にそれは構わないけど、ファミリアで何かあるのか?」

「……はい!他所から頼んでいた大量のクワが予定より早く届いたんですよ……」

「それで、一日がかりでボク達も土ごと流されてしまった農場を直す作業をするんだよ!」

「ファミリアの新期組総員での作業だからアタシ達だけ休む訳にはいかないの」

「……ああ、そう言うことね……」

 

そう言えば、デメテル・ファミリアは野菜や果実などを栽培して売り出す商業系のファミリアだったな。

この子達もそっちが本業だし仕方ないね。

 

「分かった、お前達はファミリアの仕事に専念してくれ。今日のダンジョンは俺一人で潜るつもりだから」

 

鎧を纏い、バックパックを背負い腰に剣を差込み準備を済ませダンジョンへと向かおうとした時

 

「え?」

「……えっ?」

「ハァ!?」

「……リーダーさん」

「……アークボルト様……」

「「……リーダーさん……」」

 

っとこの子達から『何言ってんだコイツ』みたいな目で俺を見始めた。

 

「……どうしたお前達……?」

「リーダー、手伝ってくれないの?ボク達はそのつもりでこの事を言いに来たんだけど……」

「……私も、今日はリーダーとダンジョン探索以外で過ごせるから嬉しいな〜っとか思ってたのに……」

「アンタ、デメテル様に農場の手伝いをするって約束したじゃない……」

「…………」

 

確かに、デメテル様との間に農場の手伝いをするって約束はした、でもその約束は冒険に出ない空いた時間がある日だけって話の筈だ。

 

「まさかお前達、俺に今日のダンジョン探索は休めとか言わねぇだろうな?」

「「「「「「「「はい、休んで下さい!!!!!!!!」」」」」」」」

「……お前達、もしここで俺が嫌だと言ったら?」

「……泣きます……」

「怒るよ」

「殴るわよ」

「ずーっと……付いていきます……どこまでも……どこまでも……うふふ……」

「班を代表してホームから出しません」

「「通せんぼしまーっす!!」」

 

そう言った直後にコイツらセリアを先頭にして俺を部屋から出さない様に身を寄せあって扉の前を封鎖してきやがった。

 

「……どうしても駄目か……?」

「「「「「「「駄目ッ!!!!!!!」」」」」」」

「……はぁ……。分かった分かった分かった。もう分かった、 だからもう分かったって……今日は休んで農場の手伝いするからそんな顔するなって……」

「「「「「「「やったー!!!!!!!!」」」」」」」

 

もう少し粘れって?初対面の女の子がいるのにそんな事が出来る訳ないじゃないか。

まぁ、少し予想外だけど、確かに彼女達の言い分もある。

部屋を貸してくれて何もせずにハイお世話になりましたは流石にマズイ。

ここは1つ扉の前で粘るよりも、リーダーとしての威厳をデメテル・ファミリアの女の子達に見せつけようではないか。

……ゴメン、心の中だけど少し見栄を張った。

 

「じゃあ俺は朝飯でも行ってくるよ」

「ええ、またぁ〜。朝ご飯くらいボク達と一緒に食べようよリーダ〜」

「……前にも言ったろ?俺の分は無いんだって」

「なら、ボク達の朝ご飯分けてあげるからさ〜……駄目?」

「駄目だ、育ち盛りなのにそんなことするんじゃないっての」

 

俺は不満げに顔を膨らませるエミリアの頭を撫でた後、扉を閉め、鎧から普段着に着替え、バックパックをベッドの上に放り投げてオラリオへと向かう。

 

〜オラリオ北部〜

 

「……えっと、コーンポタージュにホットサンドに旬の果物のカットフルーツ……アリだな」

 

屋台で朝食を調達し近くの丸テーブルに置かれている6つの椅子のうち1つに腰掛け一息つく。

そしてエミリア、クラリス、セリア含めた13人のデメテル・ファミリアの団員が周りの丸テーブルの椅子に座る。

 

「……マジかよ……」

 

その男女比はなんと『1:13』

…ふざけんじゃねぇよ、折角の数少ない一人の時間が台無しだよ畜生ッ!

 

「……お前た……キミ達、ホームの朝食はどうしたんだい?」

「アレ…アンタに言ってなかったけ?アタシ達のファミリアは朝食と昼食は任意だって。ま、その分他所で食べるならお金がかかるけどね」

「でも大丈夫だよリーダー!ボク達ちゃんと朝食を払えるお金は持っているから!!」

「……あっそ」

 

右にセリア、左にエミリアと、さも当たり前のように両隣に座ってくる。

そしてクラリスはと言うと

 

「……こうやって皆と一緒にご飯食べられるのって、すごく大切なことです……」

 

俺と向かい合う椅子に座って微笑んできた。

そして後ろのテーブルから聞いたことのある声が聞こえる。

 

「おはよーリーダー君っ!イヤ〜、8班の皆がコソコソと朝ご飯も食べずにホームから出ていくのを見て、面白そうだからララとアタシ達の班全員で付いて来ちゃった!」

「……モニクが余計に騒がしくしてごめんなさいね、リーダーさん……」

「……ねぇねぇリーダーさん、リーダーさん!今ダンジョンでムグッ……何すんのよミレイッ!」

「それはこっちのセリフよヘンリッタ!リーダーさんにいきなり失礼じゃないのッ!!」

「はいはいストップ!喧嘩しない」

 

フローラがミレイと呼ばれる女の子と、ヘンリッタと呼ばれる女の子を制して全員をまとめ始めた。

 

「分かっていると思いますが、今日は農場を復活させる為の大切な日です。遅れるなどもってのほか……ですがアークボルト様に私達第8班と第7班のことを知ってもらう良い機会です。各々が自己紹介をする時間を設けましょう。勿論朝食は食べながら、ですが」

 

フローラの提案で俺に名前を名乗っていない子の自己紹介が始まった。

 

 

 

〜第7班〜

 

「……初めまして……リリアン……リリアン(Lilian)ブラックリー(Blackley)です……本を読むのが趣味で……えっと……その……あの……以上です……」

 

 

「次は私達だね!私はアンナ、アンナ(Anna)ケアード(Caird)と」

「メアリー、メアリー(Mary)ケアード(Caird)ッ!アンナとは双子だけど似てないって良く言われるの」

「「リーダーさんッ!これからよろしくねッ!!」

 

 

第7班

班長

フローラ=カーライル

副班長

クラリス=ハーベスト

班員

セリア=ハーベスト

エミリア=ハーベスト

リリアン=ブラックリー

アンナ=ケアード

メアリー=ケアード

 

 

 

〜第8班〜

 

 

「次は私!私の名前はヘンリッタ、ヘンリッタ(Henrietta)イリークペン(Irikpen)よ!リーダーさんの冒険話、すっごく気になるから色々教えてくれると嬉しいなっ!」

 

 

「……え?…あっ次私?!……え、えっと……ミレイ、私の名前はミレイ(millet)ランパード(Lampard)よ。……その……よろしく、お願いします……」

 

「……その……ドロシー、ドロシー(Dorothy)レジンスカ(Leginska)です……」

「……エマ、エマ(Emma)クウォーク(Kwouk)です。……あ、あの……リーダーさん……」

「「こ、この前は嫌な思いをさせて……ご、ごめんなさいっ!!」」

 

 

第8班

班長

ララ=オルコット

副班長

ミレイ=ランパード

班員

モニク=ボーフォート

ヘンリッタ=イリークペン

ドロシー=レジンスカ

エマ=クウォーク

 

「大体こんな所かしらね。皆もう食べ終わったところだし、そろそろ農場へ向かいましょう。アークボルト様にも後で農具を渡すのでこのままついて来てください」

「……ああ、うん……」

 

俺も彼女達の後ろに付いて農場へと向かう。

多分フローラって子、俺よりもリーダーとしての素質があると思う。

 

 

 

〜デメテル・ファミリア 農場〜

 

「では、始めましょうか。まずは更地同然の土を耕すところから。はい、アークボルト様。クワをどうぞ」

「……どうも……」

 

村にいた頃を思い出す。

1年おきに違う畑で野菜を栽培するんだけど種を蒔く前に畑を耕すんだ。

これがまた体力と時間を使うからあまり好きじゃないんだよね。

 

「……よい、しょっとッ!!!」

 

クワを少し振り上げて地面に食い込めせる。

何とも懐かしく思える光景だよ全く。

毎日と言う訳じゃないけど、10年以上やってきたんだ、そう簡単に忘れる訳が無い。

 

「……アークボルト様、随分と手馴れていますね……」

「ああ、自慢になってないけど10年以上やってたから体に染み付いてんだ……」

「おお、流石は男の人。頼りになりますなぁっ!」

「……モニク、口よりも腕を動かしてください」

 

とは言え、慣れてるからと言ってもこの広さはキツい。

フローラも俺の事を気遣ってくれたのか、人目の少ない端の方を選んでくれた事はありがたいけど、こりゃ単純作業でも一日だけで出来るモンじゃないよ。

 

 

 

 

〜夕方になりました〜

 

「……大体8割ってところですかね。時間もいい具合になりましたし、今日はこれくらいで切り上げて食堂に向かいましょう」

 

フローラの合図で各々がクワを片付け始める。

 

「じゃあ俺も、夕食に行ってくるよ」

 

俺もクワ片付けてオラリオに向おうとした時、あの子達に呼び止められる。

 

「あ、待ってリーダー!」

「……あの、リーダー。夕食が終わった後、私達の部屋に来てくれませんか?」

「嫌なら来なくていいわよ?」

「……分かったよ」

 

さっさと夕食を済ませるために小走りでオラリオへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

〜彼女達の三人部屋〜

 

「……応、来たぞ」

 

牛肉の串焼きにミートボールスパゲッティでした。

最近肉ばっかり食べてるような気がする。

村にいた頃は魚と野菜と果物ばっかりだったのに。

 

「あ、おかえりリーダー!」

「……おかえりなさい、リーダー……」

「随分と早かったわね」

「……夕飯以外に特に用事が無かったからな。で、何か用か? 」

「いや、特に用事はないけどさ……」

「……私達と、お話しませんか?……」

「嫌なら別に良いけどね……」

「あ、ああ……そう言う事ね。分かった分かった」

 

部屋の壁にもたれる様に座り彼女達と少し雑談をする事にした。

 

「リーダーリーダー!リーダーが産まれ育った村のことについて知りたいな!!」

「ん?ああ、ユージュアル村のことか。……えっとだなぁ……他の村と比べて人は多いし規模もデカイ、特産品は無いけど、ユージュアル村からさらに東に進んだら『極東』って所に向かう港町に出る。だから極東とオラリオに行き来する商人が休んだり食料を調達したりする中間地点みたいな村だよ」

 

そうだ、あの旅商人だって極東に向かうためにユージュアル村に滞在してたんだっけ。

 

「へぇ……食料を調達ってことはアンタの村は食べ物には困らなかったの?」

「勿論!食料はいつも飽食の年ばかりだよ。飢餓になったことは一度もない。何もないけど年に1度、3日の間村で収穫祭が行われるんだ。それを狙って集まってくる商人も少なくないよ」

「……そう……」

「…セリア、どうした……?」

「……な、何でもないわよッ!」

 

セリアの顔が少し曇ったように見えたのは俺の気のせいだろうか。

 

「じゃあその……お前達が産まれ育った村、えっと……ウィザー村だっけ……どんな所なんだ?」

「……あ、あ〜……」

「……えっと、そのぉ……」

「大体アンタの村と同じようなものよ。強いて言えば、村のド真ん中にデッカい教会があったわ」

「……そ、そうそう!!ボク達はその教会で育ったんだ!!」

「……はい、シスターさん達がすごく優しくて……」

「……?……そうか……」

 

何で焦っているのかは分からないけど。

 

「お前達、俺からもう1つ質問良いか?」

「うん」

「……はい……」

「何かしら?」

「……お前達は」

「おっと、リーダー君っ!早く部屋に戻らないと!!消灯時間が迫ってきてるよ〜」

 

俺の言葉を遮るように扉が開きモニクが話しかけてくる。

懐中時計を取り出して

 

「……む、もうこんな時間か……お前達、明日こそはダンジョンに潜るからな、忘れるなよ」

「はーい!リーダーおやすみー!!」

「……おやすみなさい、リーダー……」

「アンタこそ遅刻しないように早く寝なさいよ」

「ふふんっ!だったらモーニングコールは私に任せなさいリーダー君っ!!」

「……遠慮しとくよ……」

 

俺は素っ気ない返事をして彼女達に背を向け、明日のダンジョンに備えて個室へと向かっていった。




リリアン=ブラックリー
16歳
ドワーフ
デメテル・ファミリア 新期第7班
腰まで届く紺色のロングヘアー
パッツン前髪で目が隠れている
ファミリアの仕事以外は部屋に引きこもって本ばかりに目が向いてしまう少女
お世話にも明るいとは言えないが班のメンバーとはそれなりに仲が良い
実は班(アーク含めて)の中で一番の怪力


メアリー=ケアード
16歳
小人族(パルゥム)
デメテル・ファミリア 新期第7班
背中ギリギリ届くくらいの長さで緑髪の右サイドポニー
アンナの双子の姉で常に妹と共に行動している
明るい性格で誰とでも打ち解けられ、行動力があり妹のアンナと一緒ならどんな困難でも乗り越えられると本気で思っている


アンナ=ケアード
16歳
小人族(パルゥム)
デメテル・ファミリア 新期第7班
肩くらい長さで藍色髪の左サイドポニー
エミリーの双子の妹で常に姉と共に行動している
姉と同じ明るい性格なのだが、打たれ弱い一面を持ち、過去に『双子なのに似ていない』と言われた過去があり、一種のコンプレックスになっている(姉は全然気にしていない)


ミレイ=ランパード
17歳
犬人(シアンスロープ)
デメテル・ファミリア 新期8班
膝くらいまである白髪の三つ編み
第8班の副班長を務めている
ヘンリッタとは長い付き合いでファミリアに入ったのも彼女の誘いがあったから
生真面目で少しツンケンした性格だが、周りの人に対する面倒見が良い
異性に対して免疫がなく、男性が前にいると緊張して上手く喋れなくなる


ヘンリッタ=イリークペン
17歳
人間
デメテル・ファミリア 新期第8班
クセっ毛のある茶髪のショートヘア
ミレイとは長い付き合いでファミリアに半ば強引にファミリアに引き込んだ張本人
思いついたら即行動!の突撃おてんば娘
班の中では度々モニク&ヘンリッタVSララ&ミレイの2対2の対決が繰り広げられている


ドロシー=レジンスカ
16歳
人間
デメテル・ファミリア 新期第8班
黒髪の小さいポニーテール
元はダイダロス通りの貧困層に暮らしていた娘で貧しさ故に、両親から家を追い出された末にデメテル・ファミリアに拾われた経歴を持つ
捨てられたせいか、捻くれて嫉妬深い所を露にする一面も見られる
同じ境遇を持つエマとは仲が良く、彼女を通じて周りの人とも触れ合い仲良くなることができた
美少女の部類に入るが目付きが悪い


エマ=クウォーク
16歳
人間
デメテル・ファミリア 新期第8班
腰くらいまである金髪のツーサイドアップ
美少女が多いデメテル・ファミリアの中でも特に万人受けする優れた容姿を持つ
しかし育ちはダイダロス通りの貧困層故に、16歳になった誕生日に両親から『誕生日は素敵な所へ連れて行ってあげるからね』と歓楽街の娼館へと連れて行かれそうになる。たまたま通りかかったドロシーに救出された後、デメテル・ファミリアに拾われる
無邪気で前向きな性格のため、ドロシーと会話をしている際、彼女が悪口を言っているのに気づかず自分も悪口を言っていることが度々ある
そのことを周りの人に諭され悪口だと気づきドロシーと一緒に謝る……までがいつもの流れとなっている

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