ダンジョンに運だけで挑むのは間違っていると思う 作:ウリクス
使用した相手のステイタスを暴く事ができる非合法のアイテム
発展アビリティ神秘を習得した者が神血をもとに製作する事が出来る
第13話の後書きと本文をを少しだけ追加しました。でも見なくてもストーリーに全く影響ありません
「今……何て言った?」
「だから、今からリーダーの背中に書いてあるステイタスを見るの」
「セリア……ボクとクラリスならまだ良いけど、リーダーのステイタスを盗み見るのは感心しないな……」
「私もエミリアと同意見です。リーダーのステイタスを見るのは反対です」
二人が反対の声を上げる中、セリアも少し黙って口を開く。
「……確かに、ステイタスを許可無く勝手に見るっていうのは決して良いとは言えないのは分かっているわ。……でも、やっぱり気になるじゃない。私たちを助けてくれた恩人が今どこまで強くなっているか……」
「ボクもリーダーのステイタスは気になるよ。でももしリーダーのステイタスを覗いたとして、セリアはどうするの?リーダーだってボク達と同じ駆け出しだから劣っている所だってあると思う。最悪ボク達の中でステイタスが一番低いかもしれない。その時はどうする?」
「……」
「……リーダーのステイタス、正直に言えば私だって気になります。でも、ステイタスを覗くって事は……今こうやって私達に背を向けて眠っているリーダーの信用を裏切る事になります。本当にそれでいいのセリア?本当にそれで……」
「……もし、それでリーダーの事見下したり軽蔑したりするんだったら……ボクはセリアを軽蔑するよ……」
「私も……セリアの事絶対に許さない……」
二人が怒りを込めた眼差しを向けるがセリアは臆することもなく口を開く。
「……ただ……知りたいだけよ。たとえリーダーのステイタスがアタシ達より下でスキル無しでも……見下したり軽蔑なんかしない。アタシ達三人がレベル2にランクアップしてた時、リーダーのステイタスが全然変わらなくても……それでもアタシはリーダーについて行くつもりよ。勿論口外なんて口が裂けても絶対にしない」
「……セリア、口だけなら何とでも言えるよ。もし破るような事があればその時はどうするつもりだい?」
「……その時は……その時は……その……」
セリアの言葉を遮る様に不意に扉がコンコンッとノックする音が聞こえる。
「セリア、クラリス、エミリア……いるかしら?」
「「「ッッッ!!!はい、デメテル様!!!」」」
「ッ!!?」
彼女達の声に飛び起きると同時に、扉が開かれる。
「……」
眼前に現れたのは蜂蜜色のウェーブのかかった長い髪の女性で第一印象は如何にも包容力が高そうな大人の魅力のある人って感じだ。そして何より……メッチャデカい!!アレ多分うちの
「……あら、お邪魔だったかしら……」
それに比べて俺は寝起き+涎と言う2コンボを晒している。
~ホーム 応接室~
「……先ほどの醜態、面目ありません……」
「いえいえ、お気になさらず……」
再び革の鎧を纏い武器を腰に差して彼女の案内する部屋に入る。
「改めて……初めまして、俺の名前はアーク、アークボルト=ルティエンスと言います……」
「初めまして、私はデメテル。このファミリアの主神を務めているわ。前にこのホームに殿方が来ってファミリアの子達が騒いでいたからどんな殿方かと一度会ってみたかったのよ」
「……田舎者が珍しいだけですよ。どうせ直ぐに収まりますから」
「……それで、アーク君はどうしてこのファミリアに来たのかしら?」
「は、はい……それは」
「デメテル様、それはボク達が説明します!」
「リーダー、実は明日から泊まっていた宿の滞在期間が切れて住むところが無くなるんですよ。だからボク達の提案で暫くの間デメテル・ファミリアのホームに寝泊まりすればいいって言ったんだよ」
彼女は頬に手を当て
「あらあらまあまあ……それは確かにかわいそうね。ホームに滞在するだけなら、好きなだけいてくれても構わないわ。それに、その方が
「……え?」
何か思った以上にあっさりと話が決まって焦っているんだが……
「い、いや……その……良いんですか?こんな初対面の田舎者を女だらけの中に置いておいて……」
「そこは別に気にしてないわよ。それにうちのファミリアの子達を助けてくれた恩人に野宿しろなんて言えないわ。……ただ一つ、条件があるわ」
「……な、何ですか?」
「多分この子達から聞いているとは思うけど……今このファミリアは没落に近い状態にあるの。……でも、私たちの取引先が支援してくれるおかげでこのファミリアは没落せずに済んでいるの。この期待に早く応えるために復旧しなければならないわ」
「……つまり、ファミリアに置く代わりに農場の方も手伝ってくれって……事ですか」
まぁ、確かに厄介になっておいて何もしないのは気が引けるな。
「冒険する日がない空いた時間だけでいいの。……頼めるかしら?」
「……勿論です。元よりタダで寝泊まりするつもりはありません。俺も村で何年も農場をしてきましたから少しくらいなら力になれそうです」
「じゃあ、話は決まりね。貴方の部屋は後日他の子が知らせてくれるわ」
……なんか呆気無く交渉が成立して拍子抜けしてしまった。
「分かりました、少しの間ですが……お世話になります」
気が付いたらもう夕方だ、今日はもうさっさと帰ろう。部屋を退出してバックパックを取りに行く為に三人部屋へと向かった。
~三人部屋~
「うーん、なんかあっさりと決まってなんか拍子抜けするというか何と言うか……」
「……」
「……」
「……」
何て言うかその……この子達はどうしたものだろうか?まるで喧嘩した後の気まずい空気がこの部屋から漂っているのは俺の気のせいだろうか?
「その……お前達、何かあったのか?」
「……別に、何でもないよ!何でも……」
「そうよ、アンタには関係の無い話よ」
「リーダーは気にしないでください」
「そ、そうか……なら良いんだけど……」
そりゃあ、いつも三人一緒にいるんだ。些細な事で喧嘩するのは良くあることかもしれんが、一応お前らのリーダーとしてだな……
「じゃあ、俺はもう帰るよ」
「あ、はいリーダー」
「バイバイリーダー!明日からよろしくね!!」
「…………」
部屋を退出する。多分問題はセリアのようだな。うーん……難しいなぁ。
~オラリオ西側門の前~
「オラリオに入りたいんですが……」
「デメテル・ファミリアと一緒にいた人だね。こっちの扉から入ってね」
「……どうも」
うっわ、マジかよ。顔覚えられてるよ……
~聖鳥の泊まり木~
「……ただいま……」
「ああ、お帰り。もう夕食ができてるよ」
「……いただきます」
デメテル・ファミリアからここまでは意外と距離があって思った以上に帰るのに時間がかかった。
「しかし寂しくなるな、今日で最後だと思うと」
「そうですね、でも今日何とか住む場所を見つけたんですよ」
「それは良かった、すまないな。うちも商売でやっているものだから……」
「それは仕方ありませんよ。商売なんですから……」
~個室~
「……一週間か……」
思えば色々あったな、ファミリア探したりダンジョン潜ったり突然パーティ組んだり……本当、色々あったよ。ファミリアに入れてくれるか不安になった夜もあった、ダンジョンに潜った時の喜びと死の恐怖を感じた夜もあった、あの子達に罪悪感を抱いて眠った夜もあった。村じゃ到底味わえない事だよ全く、まだまだ始まったばかりだけど……ゆっくりで良い、自分なりの速さで行こう。こればっかりは焦ったって仕方がないんだからさ。
「……もう寝よう……」
さようなら聖鳥の泊まり木。そして初めまして、デメテル・ファミリアのホーム。
~翌日の朝~
「……おはようございます、主人」
「やぁ、おはよう。もう身支度してるのかい……まだゆっくりしても良いのに……」
「いやいや、早く住む場所に荷物を置いてダンジョンに潜りたいモノで……」
「ハハハ、アーク君も立派な一人の冒険者だね」
「……まぁ、冒険がしたいからオラリオに来た訳ですし……」
「……その、アーク君。こんな事をもう一度言うのは何だけど……君は本当に変わった。最初に会った時、失礼だと思ったけど本当に冒険者になってダンジョンに潜れるのか心配だったんだ……今の君は正しく別人だ」
「……確かに、今の俺が村に帰ったら皆の第一声は『誰だお前』……ですかね」
と言っても今は手を切られている身。帰って良いモンですかねぇ……
「主人、世話になったよ……」
「ああ、アーク君の冒険の武勇を祈るよ」
主人に背中を見守られながら、新しい住居デメテル・ファミリアのホーム足を運んだ。
~デメテル・ファミリアのホーム前~
「良し、着い」
突然目の前の扉がバンッ!!
「リーダーさん!いらっしゃい!!」
「ようこそデメテル・ファミリアへ!!!」
「……見ています……いや、本じゃなくて彼を見ています……うふふ……」
「……ゴメンなさいねアーク君。この子達にアーク君の事を言ってしまったの」
「いや、歓迎してくれてありがとうございます……」
まぁ、少し……いや、かなり恥ずかしいけど歓迎してくれているのは素直に嬉しいよ。
「……ん?」
そんな中、群がる彼女達を通り抜けて俺の目の前に女の子が現れた。
「おはようございます。私、アークボルト様の部屋に案内をさせて頂く
フローラと名乗る水色の二つ結びをした髪の女の子に言われたままついて行く。
……その後ろにデメテル様含め周りの皆が付いて来る。いや、デメテル様。俺がどこに寝泊まりするか知ってるんでしょ……?何でついて来てんの?
~ホーム個室前~
「ここが今日から暫くの間アークボルト様に住んで頂く部屋になります」
ホームから入ってすぐの近くの階段を全部上った先の一番手前にある部屋が俺の部屋で、個室のようだ。
「この階は誰もいないのか……」
「はい、この階は男性を想定した階なので今はアークボルト様以外誰も使用しておりません」
それでもまだまだ余裕があるのかこのホームは……
「身支度が済みましたらデメテル様が一度応接室に来て下さいと言っていました。では、私はコレで失礼致します」
頭を下げて階段を下りていく彼女を見送り。部屋を一通り見てみる事にした。
「ねぇフローラ……どうだったのよ?」
「すッッッッッごく緊張した!!!」
「良いなぁフローラ」
「……羨ましい……凄く羨ましい……」
「やっぱり真面目に仕事していると良い事あるわね!」
~個室~
「まぁこんなモンか。悪くないな」
聖鳥の泊まり木に比べると正直な話、部屋が質素だけど暮らしていくには十分過ぎる部屋だった。
「……よし、行くか……」
部屋に荷物を置いて応接室に向かう事にした。
~応接室~
「お待たせしました、デメテル様……ってお前達もいたのか」
デメテル様の隣にあの子達が座っていた
「おはよ~リーダー!」
「おはようございますリーダー」
「……おはよう」
「待っていたわよ、さぁ座って」
「あ……はい」
彼女に促され向かい合うように座る。
「これからあの子達とダンジョンに出かけるの?」
「あ、はい。漸く第二階層から第四階層に進んで良いって言われたんですよ」
「……その、こんな事を聞くのもおかしいと思うけど、この子達は役に立っているかしら?足を引っ張ってるんじゃないかしらって……」
「……ん?いやいや全然。活躍中ですよデメテル様」
今の質問を理解するのに3秒位かかってしまった。
「多分……その子達三人なら俺よりも強いですよ」
彼女たちがそんな事は無いって顔してるけど実際にはそうなんだよ。その子たちのおかげで俺も降りられるからな。
「そう……良かった、聞きたい事はそれだけよ。ゴメンなさいね、引き留めてしまって」
「いやいや、自分のファミリアを心配する事は素晴らしい事ですよ」
それに比べてうちの
「それじゃ、行ってきますデメテル様」
「デメテル様、行ってくるよ!」
「デメテル様……行ってきます……」
「……行ってくるわ……」
彼女に挨拶をして俺はダンジョンに向かう事にした。
~ダンジョン前~
「良し……忘れ物はないかお前達」
「ボクはいつでも行けるよリーダー!」
「はい……大丈夫です……」
「……」
「おーい、セリア~大丈夫か~?」
らしくない。いつもハッキリ物言うセリアが……
「……その……リーダー……悪かったわね……」
「……ん?何言ってんだお前?」
「…何でも無いわよっ!!!」
「痛て……背中叩くなって」
セリア、今日のお前は凶暴だな……でも、元気になって何よりだ。
「良し、今日も張り切ってダンジョン探索行ってみようか!」
「「「はい!!!リーダー!!!」」」
しかし探索は第四階層まで。振り出しに戻った気がする脱力感と新しい住居に対する大きな不安を抱き、ダンジョンに足を踏み入れる。
フローラ=カーライル
16歳
人間
デメテル・ファミリア
サラサラな水色の髪で二つ結びをした女の子。セリア、クラリス、エミリアと一緒の班で仲が良い。誰とでも打ち解けられる性格でクラリスと同じ位真面目な為、周りの人達からの信頼は厚い。今回の案内人を任命されたのも彼女の真面目さの賜物である