頭の中に直接話しかけるような感覚。コアネットワークでの通信に近い感じで、決定的に違う気もする。そんな不思議な声が聞こえたために慌ててあたりをキョロキョロして見ても私以外には誰もいない。
ファウストを展開してハイパーセンサーを使っても専用機持ちと教員機以外の反応はなかった。ひとまず幻聴だと自分に言い聞かせてもう一度ベッドに横になって目を閉じる。
「困ったなぁ……」
それから数日して、国連が送りつけてきた
今日はーー正しくは昨日の夜からーー倉持技研に入って一夏くんの白式をオーバーホールする準備に入っていた。私はメカニック兼、学園からの使者と言うわけだ。
「上坂さん、所長見てませんか?」
「ヒカルノ? さぁ、またどこか遊びに行ってるんじゃないかな」
「まったく、もうそろそろ織斑君も着くってのに…… 正面に人、お、織斑君来ちゃいました……」
「いってらー」
立ち去る男性職員を見送ってから数分、キーボードを叩いているとべちゃべちゃと音を立てながら我らが所長が帰って来た。タオルで乱雑に頭を拭きながら帰って来たヒカルノに職員は揃って「ああ、またか」と白い目を向けていた。
「やぁやぁ、織斑君を連れ帰って来たよー」
「何よりお前は体を拭け! 早く着替えろ!」
「えー、かいちょー着替えさせてー」
「よしわかった」
「え? ちょっ、待っ、いやぁぁぁ」
男女関わらず数人の職員がいる中でヒカルノのISスーツを裾から捲り上げると慌てて必死の抵抗を見せる。すかさずタオルを投げつけて「早くしろ、篝火博士?」と一言告げればヒカルノも黙って頷いた。
着替え終わったヒカルノが戻ってきたら待たせっぱなしの一夏くんの元に向かおう。
「で、どうよ、彼」
「んー? かわいいよ? 食べたら美味しそう」
「おし、わかった。すぐにブタ箱がお望みか」
「ジョーダンだよ、冗談! そんな顔で睨まないでよ、かわいい顔が台無しだぞ?」
語尾に☆でも付いていそうな声色がウザい。軽く脇腹を突いてから所長室のドアを開いた。
部屋に入ると同時に、挙動不審な一夏くんの姿が目に入る、なんというか、手を伸ばして立ち上がろうとするその瞬間って、すごくマヌケだよね?
「お待たせー、待った?」
「ええ、まぁ」
「…………」
「え、なんかマズイこと言いました?」
そりゃびしょ濡れの女に連れ込まれたと思ったら数十分待たされればそう言いたくもなるだろう。だが、ヒカルノはそんな対応が気に食わなかったらしい。
「君ねー、女の人が待った? って聞いたら、今来たところだよ、だろう!」
「は、はぁ……」
「美学のわからんヤツはだめだぞぅ? 女の子にもモテないぞう」
「そ、そうですか……」
「そのときは私がおいしくいただくから問題ないけどね」
サラっと問題発言をかっ飛ばしたのでスネを蹴って「千冬に殺されるぞ」と言うと一瞬ビクッと反応して、それから鳥肌が立っていた。過剰反応すぎやしないだろうか?
一夏くんも困惑しているし、ここはちゃんと仕切りなおさないといけないだろう。
「ま、まぁ、改めて。私は篝火ヒカルノ。倉持技研の第二研究所所長で、君のお姉さんの同級生」
「私は、言うまでもないか」
「あ、いえ、どちら様で」
「えー、一夏くん酷くない? 先生の事忘れるとかさ」
「かいちょー、髪、髪」
「髪? ああ、忘れてた」
夏に使った青いウィッグを少し手間取りながら取って、メガネも外せばいつもの格好だ。夏の一件以来、長く外に出るときは時折変装して出かけるようにしている。
「あ、杏姉…… んじゃ、同級生ってと……」
「ご明察。私たちはIS学園1期生だね。いやぁ、君のおねーさんハンパないね。昔も今も」
「え、じゃあ束さんも……」
「束さん、ねぇ」
一夏くんの顔が「やべえ事言った」とひきつるのを見るとヒカルノは見えないように笑ってからーー
「ちゃんとご飯食べてるかなぁ。悪いお兄さんにあのけしからん胸を弄ばれたりしてないかなぁ」
ふざけ飛ばした一言を発し、一夏くんが見事にリアクションをとってくれたところで本題に入るべく、研究室へと場所を移した。
一夏くんはヒカルノに関して突っ込むのを諦めたようで、ISスーツに白衣、もふもふのスリッパという珍妙な格好には一言も触れず(私もISスーツに白衣は時々やるし、そのせいかもしれない)、黙って距離感の取りにくい真っ白な廊下を歩き続けた。
「ここが私たちの仕事場だ。いいもんだろう?」
「アンタはここで仕事しないだろ」
「学園の整備室をすごくした感じですかね」
「ほう、学園の整備室もなかなかなもんみたいだねぇ。まぁ、杏音がいるなら納得っちゃ納得だわな」
「んじゃ、まずは真ん中で白式を展開してー。ISスーツはなくていいや」
言われた通りに白式を展開。そこに6本のアームが伸び、それよりもっと多いケーブルが繋がれた。
周囲を取り囲むホロディスプレイには大量の文字列が流れ、職員たちは一斉にキーボードを叩き始める。手渡されたタブレットを少し眺めたヒカルノは珍しく難しい顔をした。
「予想以上にダメージが溜まってるね。こりゃ一回降りてもらって機体だけを集中補修したほうが早いかも」
「外装は修復済みだけど、やっぱり無理やり自己修復を動かしたから変なバイパスできてるね」
「システムの方はこれといって変化はないから、ハードだけで済みそうだね」
「それでも大仕事だよ、これ」
「いつまでに終わる?」
「んー、技術者潰していいなら夕方までに。まぁ、おやつ食べながらでも明日までに終わるさ」
「そりゃ重畳。んじゃ、任せた」
「はいよ、所長殿」
どこからともなく釣竿を取り出して、一夏くんにそれを手渡したヒカルノは彼の背中を押して外に出ていった。さて、これからはわたしのターンだ。システム専攻の彼女は正直仕事がない。
束印の薬を口の中に放り込むと、ディスプレイを8枚、キーボードを6つわたしの周りに浮かべ、仕事を始めた。両手両足、眼球運動とボイスコマンド、それから思考キーボードも2枚使ってるので常人ならドン引きするレベルの仕事を一気にこなしている。そのせいでマニピュレータはせわしなく動き続け、新しいエネルギーのルートを作り出す。
それに合わせてソフト面も少し手直しすれば一気に仕事が減っていく。
他の職員たちは自己修復プログラムが働いて、見た目上は直っている外装を点検してくれている。彼らも学園の卒業生や大学でISを学んできたプロだ。十二分に働いてくれる。
そんな彼らも朝から働きづめのおかげでタスクの8割が終わり、そろそろ昼休憩を取ろうかという時に私の携帯が一番聞きたくないアラームを鳴らして震えた。通知のポップアップには赤い文字で「WARNING」とだけ書いてある。学園で緊急事態発生ーーしかも地下特別区画が使われるレベルのーーを意味する。ちなみに、隔壁が降りる程度なら「ALERT」を表示してくれる。
すぐさま通知を開き、学園のシステムに介入しようとするが、それすらも阻まれる事態だ。余程の事態とみえる。地下はスタンドアローンで動いているので、ファウストのコアネットワークで呼びかけると、おずおずとした様子で山田先生が応答した。
「IS学園防衛主任補佐上坂です、倉持の研究所から繋いでいます。応答願います」
「山田ですっ、上坂先生、緊急事態発生です! 外部からーー」
「概要は把握してます。メイン系統にアクセスできないみたいですね。生徒の避難は?」
「95%完了、あと1クラスの点呼を取っています。現在、システム奪還の為、1年生の専用機持ちには電脳ダイブして、コアネットワーク経由でのアクセスを試みています」
「それはマズいですね。コアネットワークに外部から未確認のISが接続されていないか常に監視を」
「ふぇっ!? で、ですが、織斑先輩が一人で敵性ISにの対処にっ、私もその応援に行かないと」
「ああっ、クソっ! 今すぐ向かいますがどんなに急いでも20分です。持たせてください!」
ちょうど帰ってきた一夏くんを白式に乗せ、データ取りを始めたところでヒカルノに耳打ちする。
「学園から呼び出し食っちゃったから悪いけど帰るわ。あとはそっちでできるよね?」
「んー、非常事態かにゃぁ? ま、わかったよ。計画よりずっと早く進んでるから今日中にはお家に帰れるね。気をつけて」
「ごめんよ、またご飯でも行こう」
「楽しみにしてる」
そそくさと建物を出てからファウストをステルスモードで展開。全ての展開装甲をスラスターにして音の壁を数秒で超える加速を得る。
それから数分、海面スレスレをかっ飛ばしているとちょうど白式が研究所を飛び出したのをハイパーセンサーで捉えた。
だか、原作通りの流れなので彼に構う暇はない。私が欲しいのはクロエ・クロニクル、彼女だ。
学園上空を華麗にスルーして、対岸の公園付近でハイパーセンサーを残してそっと量子化。それから温度センサーと大気センサーで半径2kmをスキャンすると、実体はあるのに姿が見えない不思議な影と、姿はあるのに実体はない妙な少女を1人ずつ見つけた。
「はろー」
「上坂杏音」
「うん、そうだよ。君のご主人から話は聞いているだろ?」
「束さまと共同で、ISを生み出した」
「そう教えたのか…… 黙ってろって言ったのに」
「私になにか?」
「精神干渉をやめてくれないかな? さもなくば君を殺す」
普段と変わらない声色で殺害予告というのも気持ちが悪いものだ。だんだん慣れてきたのが怖いけれど。
そんなことを言われてもクロエはなお目を閉じたままどこかを見つめている。そして、顔だけ私に向けると、ゆっくりと首を振った。
「そうか。なら、ごめんね」
「よろしいのですか?」
「ああ、これも、世界の為だ」
「いえ、貴女の守るべきものの事です」
「何をーー」
直後、学園の方から爆音が聞こえ、煙が上がる。色からすると砂煙だろうが、何かしらの爆発があったことに変わりはない。ここは1本取られたか。
「束に言っておいてよ、これ以上手を出すなって」
「承りました」
再びファウストを展開して学園に向かうと、今度は地下へのルートを飛んで進む。崩落した廊下と天井を飛び抜け、袋小路に向かうと大量の空薬莢とラファールから降りる山田先生が居た。
「う、上坂先生!? その機体は……」
「今は何も聞かないでください。千冬は」
「ここだ。遅かったな、私たちで片付けたぞ」
「良かった…… で、他は?」
「生身は更識が。電脳ダイブしている専用機持ちには妹の方がバックアップでついている」
「楯無に連絡は?」
「言われてみれば遅いな」
「見てくる」
反響センサーで周りを見ながら最後にミステリアス・レイディが使用された場所に来ると、切られたロープと血痕が残っていた。この血が楯無のではないことを願いつつ、血痕を追うと、途中で無くなっては居たが、数人の大きなブーツの跡は残っていたのでそれを追って外に出た。
「楯無さんを、離しやがれぇぇ!!」
隠し扉の一つを出ると、学園裏手に出た。ちょうど一夏くんが雪片を振るっているので彼の手が汚れる前に私が仕事をしよう。
楯無を担いでいる大男の足を小口径ライフルで射抜くと、彼女が地面に落ちる前に瞬時加速で一気に距離を詰めてキャッチ。それから、ハンドガンで周りを囲む男たちの足を撃って行動不能に追い詰める。
「一夏くん、楯無を地下に」
「杏姉! わかった」
物分かりの良くなった一夏くんにマップデータと一緒に楯無を渡すと、地面に這い蹲る男達の頭にビットを押し当てた。ちょっとばかし数が多いが、まぁ、まだ薬は効いているから余裕だ。
銃を彼らの手から離すと後ろ手に縛りあげてから結束バンドで留め、大木に括り付けて
「お、おい! コレを外せ!」
「なんでだよ、君たちの命はもっと安いんだ。厚いもてなしに感謝してほしいくらいだね」
「知ってる事なら話す! だから!」
「君たちの知っている情報は私も知ってる。そんな情報に価値はない」
男達の悲痛な叫びを後ろに聞きながら来た道を全速力で戻り、オペレーションルームに飛び込むと、タクティカルスーツのままの千冬がコーヒーを飲んでいた。
「楯無は医務室に運んだ。弾は貫通してるし、止血も早かったから大事にはならん」
「そう。で、今は?」
「一夏を電脳世界に送った。どうも向こうもまた妨害を受けているらしい」
「こっちから手は」
「打てたらコーヒーなんで飲んでない。今は、一夏だけが頼りだ」
少し乱暴にマグカップを置くと、中身が少し跳ねてテーブルに落ちた。薄暗い部屋に残された沈黙は重苦しく、山田先生は涙目になっている。
私が電脳ダイブ、という手も無くはないが、このコアがワールドパージに触れた時にどんな反応をするのかは未知数。最悪戻ってこれないことすらありえる。そんな手を打つべきではない。少なくとも、一夏くんなら、やってくれるだろう。
千冬が4杯目のコーヒーを開けた辺りで痺れを切らした千冬が「様子を見て来る」と隣の部屋に向かったのが3分前。そして聞こえたのは軽い打撃音の後に、世紀末の悲鳴と、怯えの声。そして、追悼の言葉だった。
「せ、先生、システム回復してます!」
「そのままモニタリングを、バックアップと誤差があった場合はバックアップで書き換えてしまってください」
「はいっ!」
そして、見事にシステムの回復に成功したのが今だ。部屋から戻って来た専用機持ち達と、千冬の背中で目を閉じる一夏くん。鈴はシャルロットとセシリアに両脇を抱えられて出て来た。どうも視線にいろんな感情が入り混じって見えるが、今はそう恨むな。
「おかえり、良くやったね」
「ミッションコンプリート。お姉ちゃんは?」
「楯無は……」
「何か、あったんだ」
「腹部を撃たれて医務室に。命になんとか、とかは無いから、安心していい」
「覚悟は、してた」
「泣き顔で言われても説得力無いよ。とりあえず、行こうか」
制服の襟を掴んで鈴を引きずりながら簪を連れて医務室に向かうと、部屋には担当の先生と、機械に繋がれ、ベッドに横たわる楯無の姿があった。
「お姉ちゃん」
「大丈夫だ、弾は貫通してるし、処置も早かったから命に別状はない」
「良かったよ、お姉ちゃん……」
「先生、ベッドをもう1床、お願いします」
「今度は…… とりあえず寝かせておけばいいですか?」
「はい、それで」
鈴の運び方が雑だったので、事情を察してくれた先生に感謝しつつ、ベッドに鈴を放ると、簪に一言言ってからオペレーションルームに戻り、システムチェックを終えると、日光の下に戻って来た。
「杏音、少し付き合え」
「ん、いいけど」
千冬に言われるがままに車を出し、私がさっきいた臨海公園の近くの喫茶店の前に車を止めた。
千冬は何も言わずに目だけで「ついてこい」と告げると車から降りて通りかかったウェイターにコーヒーを3つ頼むと、テラス席に座る少女と同じテーブルに着いた。
「相席させてもらうぞ」
少女の肩が跳ねるが、その肩に私が手を添えた。閉じた瞳が私と千冬を射抜く。
ちょうどやって来たコーヒーを千冬が受け取ると「ブラックで構わないな?」と脅しに近い言い草で、少女の震える手にカップを渡した。
「さて、結論から言おうか。ーー束に言っておけ、余計なことはするな。と」
「おっと危ない。ダメだよ、こんな人混みで殺意振りまいちゃ」
少女ーークロエの肩を押さえつけてから、私も席についてコーヒーに砂糖とミルクを入れてから一口飲んだ。
「やめておけ、やめておけよ。お前の戦闘能力で私を殺すことは不可能だ。杏音はわからんがな」
「ま、地の能力はダメだしね、飛び道具はあるから下手に手を出しちゃダメだぞ」
「ッ……!」
クロエの双眸が開かれると、吸い込まれそうな黒に金色の瞳。出来損ないの
「生体同期型ISねぇ、束もエグいことするなぁ」
「だが、あいつが命を天秤にかけるほどだ。この少女にはなにがある?」
コーヒーをもう一口、カップを置いた直後に目の前が真っ白になった。まるで上下左右が霧に包まれたような感じだろうか? 数十センチ隣に居たはずの千冬さえ見えない。
直後、死角から飛んで来たナイフをはたき落として目潰しの手を伸ばす。
「いい加減にしろよ、ガキの相手は飽き飽きしてるんだ」
すると、霧も晴れ、再び喫茶店のテラス席。千冬はスプーンを置いていたから、彼女も何かされたのだろう。
「電脳世界では精神干渉、現実では幻を見せると。大したものだな」
そう言ってコーヒーを飲み干す千冬。クロエはもう意気消沈と言わんばかりにポーカーフェイスを崩している。
私も私でコーヒーを飲み干して、気になっていた疑問を投げかけた。
「私がドイツに持ってる研究所、君もラウラもあそこの生まれだろ? どうして束に?」
「私は出来損ない、彼女は完成し、私はしなかった。それを救ってくれた、名前をくれたのが、束さま」
「ふぅん…… これは束に話すことが増えたね」
「お前に聞きたいことが増えたがな。まぁいい、手間を取らせたな」
千冬が席を立ったので、私も後を追って自分の車に乗り込んだ。なんかカッコよく去って行くわりに助手席、ってどうなのよ?
車を出してすぐに千冬はさっきの話に突っ込んで来た。
「ドイツの研究所の話、聞かせてもらおうか」
「シュヴァルツェア・レーゲンにVTシステムが載ってた事件、あったでしょ?」
「ああ。それがどうした」
「その後始末を束に頼まれたんだ、それで見つけて頂いたのがその研究所。妙に綺麗だとは思ったんだけどね。綺麗過ぎた理由がわかったよ」
「束が持って行っていた訳か」
「多分ね。ってことはパクったデータも全部束の見せたいものだけって訳だ。全く、してやられたよ」
千冬も黙ってそっぽを向いた辺りで、学園へと入る海底トンネルの入り口が見えて来た。
ちょうどその時、私の携帯が鳴ったためにゲートを通ってから路肩に車を止めると、発信元を確認せずにハンドルの受話ボタンを押した。
「御機嫌よう、杏音」
「スコール……」
「…………」
「今いいかしら?」
千冬の機嫌が急降下して私の胃がキリキリ痛むが問題ない。
「構わないよ。ディナーのお誘いかな?」
「ええ、そうよ。よくわかったわね。急で悪いのだけど、今夜、どうかしら?」
「いいよ、ちょっと遅くなるかもだけど」
「構わないわ。じゃ、場所と時間はメールするから」
ご丁寧に投げキッスまでしてくる辺り、スコールはかなりの上機嫌と見える。これは束が捕まったか……
そうなると私も覚悟を決めないといけないかな?
「行くのか」
「うん」
「お前は、どっちを選ぶつもりだ」