よくある転生モノを書きたかった!   作:卯月ゆう

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人気作品を原作にするとPV稼ぎやすくて良いですねぇ…(遠い目


むりくり原作の流れに……戻せなかったよ……orz

 千冬に白騎士を渡し、さらに束が黙って私のための専用機、コアナンバー002"黒騎士"を作っていたことも(身を持って)分かった翌週。束はISの開発を世界に発表することにした。原作通りに。タイミングは大分早いように思ったが、ここで束はフルボッコにされてブチ切れ、日本に向けて2000発のミサイルを叩き込むはずだ。

 そして、きっちり原作通りに束は学会でISを発表し、一蹴された。泣きながらキーボードを叩き続ける束を私は必死でなだめながら内心「もっとやれ」とか思ったりしたが、ソレで原作以上にミサイルを飛ばされても捌ける気がしないので必死になだめつつ、最低限のラインで白騎士事件を起こさなければならなかった。

 その結果、日本に向けて発射されたミサイルの総数は2500発。少し増えたのには諸外国のイージスシステム"も"乗っ取られ、軍事行動や訓練中の艦船からもミサイルが発射されたからだ。

 そんなこんなで、私は今日本の上空で千冬と共にミサイルの撃墜に当たっている。

 

 

 《千冬!》

 《そこかっ》

 

 ホント、刀一本であんなことしてる千冬マジ人外。私なんて束二刀流と束お手製の"エナジードリンク"で反応速度を極限まで上げてギリギリ捌き切れてるというのに千冬は素でアレだ。チートやチーターや! ベータテスターに当たるのは私ですけど……

 んなことはさておき、ミサイルを捌ききると次は自衛隊やら在日米軍やらの戦闘機が飛んで来るわけで、これを"無力化"するってのはなかなかに骨が折れる。

 無闇矢鱈にぶった切ればパイロットごと吹き飛んじゃうし、翼をもいでもきりもみされて明後日の方向にイジェクトされたら非常に困る。なのでとりあえず機体のコントロールを失わない範囲でどうにか損害を与えてお帰りいただいているわけだが、ここでも千冬のチートっぷりは健在で、綺麗な太刀筋で翼の1/3ほどを切り取っていくのだ。私はさっきから失敗して尾翼をまるごと吹き飛ばしたりキャノピーだけ切り離したりととんでもないことになっていて、普段から訓練を積んでいるパイロットたちが脱出してくれて居なければ人殺しになってしまうところだ。

 

 

 《剣を迷うな! 迷いは太刀筋に出るぞ!》

 《はひぃ!》

 

 時折千冬からこうしてお叱りを受けるのも大分慣れてきた。というよりそこまで意識を向けるほど今の私に余裕が無いというのが正直なところだ。コアネットワークを使った通信なので左から右へ受け流すわけではないが、機体のコントロールと刀を手放さないことで精一杯なのだ。

 そして1時間は空で暴れただろうか、綺麗になった空を見回し、千冬と合流すると一度変な方向に飛んでから人気のない山奥でISを解除した。

 

 

「うへぇ……」

「情けないな、杏音。これくらいで音を上げるとは」

「千冬が人並み外れ――いふぁいいふぁい!」

 

 うにうにと私の頬を引っ張る千冬。満足したのかパチン、と手を放すと「いくぞ」と男前な振る舞いで登山道に出た。

 量子化していた荷物を背負うと千冬の後を追う。このまま下山して電車で帰宅だ。登山道の入口付近ではやはりというべきか人々がパニック状態で駅に向かっていて、私達もその中に紛れ込むと駅に向かった。ただ、想定するべきだったが、非常事態宣言もあって電車が止まっていて帰宅するのがとても遅れたことを申し添えておこう。

 束は私達が空域を離脱した辺りで全世界に向けてISのアドバンテージを発表した。だが、その方法がマズかったといえる。こんな戦略兵器を叩き落としたパワードスーツがただの「宇宙進出用」だなんて信じられない話だろう。勿論世界はISを欲した。束を欲した。だから、束はソレと同時にこうも宣言した。

 

 

「ISを教えて欲しければ場所を用意してくれればいくらでも教えてあげる」

 

 このセリフで世界は慌ててIS委員会を立ち上げ、今後のISについての展望を考えることとなったのだ。その結果生まれたのが原作でいうところのアラスカ条約の草案で、名前はまだ「ISの運用に関する国際条約」なんていう身も蓋もない名前だった。そこにはアラスカ条約に繋がるISの軍事的運用の禁止などが既に盛り込まれており、「ISに関する教育機関の設置」も存在した。そこで、日本にアメリカが押し付けて急ピッチでIS学園を設立することが決まった。私達が中学3年の春の話だ。そこから束の下には世界中からのラブコールが送りつけられ、束は一貫して「ISの学校を作るのは結構。私はそこに入ることにする。ただし教える相手は高校生(ティーンエージャー)だ」と言い切った。もちろん、その裏では公開された情報を世界中の科学者や技術者が解析し、気まぐれに作られた467個のコアを求めて机上の戦争が勃発したりするのだが、束はそんなくだらないことには一切目もくれずにただ自身の技術向上に勤め続けた。

 勿論、そんな束のそばにいる私は嫌でも様々な理論や理屈を身に着けていってしまうわけで、束からは「あーちゃんもIS学園で先生やればいいのに」とまで言われたが、私は「普通に入る」とだけ言って断り続けていた。ここで束とのつながりが明らかになれば束のような才能を持たず、千冬のような力を持たない私はどうなるかわかったものじゃない。

 

 半年で世界は大幅に科学技術を進化させた。ひとまず束がテンプレートを発表することで各国の企業が後に第1世代と呼ばれるISを開発し、PICを使うこととそれにあわせて必要な構造を学ぶ機会を得たのだ。

 そして冬休みが開ければ4月入学が慣習化している日本では受験シーズンに突入する。私と千冬はなんの迷いもなくIS学園を受験、筆記テストは私が、実技テストは千冬が主席で入試を突破し、見事IS学園への切符を手に入れた。

 総合点で千冬を突き放した(千冬は座学は人並みだった)私は入学式で新入生代表挨拶なんてものを任されることになってしまい、入学許可証と一緒にそんな手紙が入っていたことに両親はとても喜んでくれた。

 勿論成績トップの私は3年間授業料免除など、学校らしい特典が着いたことも両親を喜ばせた一因だと思う。なにせ普通に行けば私立大学医学部並の費用がかかるのだから……

 次席の千冬も学費免除が付いたらしく、少しは家計が楽になると喜んでいた。ただ、全寮制なので一夏をどうするかはとても悩んでいたようだが、私が両親に掛け合って上坂家で預かることになったのは千冬にとってもいいニュースだっただろう。

 

 初登校日、慣れない白い制服に身を包み、赤いネクタイを締めると両親にしばらくの別れを告げるとちょうど一夏を連れた千冬がやってきた。

 

 

「おはようございます。おじさん、おばさん。一夏のこと、よろしくお願いします」

 

 きっちりと頭を下げた千冬に両親は「大丈夫。これから大変だと思うけど、しっかりと勉強してきてね。時々帰ってくるのよ」と言ってくれた。

 千冬は泣きそうな一夏を撫でてから「お前なら大丈夫だ。月に一回は帰るから。おじさんとおばさんに挨拶するんだ」と一夏を自身の前に立たせた。

 

 

「織斑一夏です、これからお世話になります」

「よろしくね、一夏君。それじゃ、おねえちゃんたちにちゃんとお別れ言って? また帰ってきてねって」

「千冬姉、またね。杏姉も」

「ああ、ちゃんといい子でな」

「んじゃ、いってくるよ」

 

 私達の波乱に満ちた学園生活が幕を開けた。

 学校に着いて真っ先に行うことといえばクラス分けを確認すること。全世界から数千人、ヘタしたら5桁の数の応募者の中から選ばれた60人(2クラス)。とんでもない倍率の中に飛び込んでしまったと内心戦慄したものだ。IS学園設置にあたり、日本が1年でやったことはひとまずISを使えるシールドバリアー付きの大きなドーム。それから3学年4クラスまで対応した日本の教育要項に必要な設備を備えた校舎。そして体育館。IS用のドームがあること以外は普通の高校と変わりない。今はドームに隣接する整備棟が建設されている最中だ。早ければ夏休みに完成し、来年からIS技術者としての教育も行う予定らしい(もっとも、人に教えられる程の理解度に至る技術者、科学者が束以外に現れれば、の話だが)。

 そしてそのまま体育館に移動して教職員含め100人程度が一堂に会した記念すべきIS学園第1期生の入学式が行われた。1年1組に割り振られた私と千冬は体育館に入ってそうそうに留学生の多さに圧倒された。いくら束が「私外国語出来ないから、ISに関する教育は日本語オンリーで。わかりたいなら日本語覚えてきてよ」と言ったからとはいえこの中に束の言葉を理解できるほどの日本語理解が出来る子は何人いるのだろうか……

 不安になりながらも私は一番前の端の席、3つ隣に千冬が座った。間には2人の日本人と1人の白人の子。さらさらの金髪が似合う人形みたいな子だなぁ、なんて思いながら小太りの教頭の言葉で入学式が始まった。

 委員会の偉い人やら国連の偉い人やらの長ったらしくて下手くそな日本語の挨拶を聞き流してから新入生代表挨拶、と言われて私は意識を切り替えて「はい」と返事をして壇上に上がった。

 転生前からこんな壇上で何かするなんてこととは無縁だった私は緊張で振るえる手で前もって渡された台本を読み上げた。

 

 

「春の暖かい風がやってくる季節、私たちは最先端の技術を学ぶべくこの場所に集まりました――」

 

 なんて日本的。そして世界各国から言えって言われたことを詰め込んだような吐き気のする台本をどうにか読み上げ

 

 

「――新入生代表。1組、上坂杏音」

 

 ありきたりな言葉で〆ました。まばらな拍手の中で席に戻ると学園生活上の諸注意を大まかに伝えられ、詳細は各クラスで、と言う運びになった。

 ひたすらに広い人工島に建物が4つと言うのはなかなかに寂しいもので、道中に周りを見渡せば遠くに市街地か、何もない土地の向こうに水平線が見えるだけだった。

 4階建ての校舎の2階、たくさん並ぶ教室の内の2つが1年生の割当だ。机にはタッチパネルが埋め込まれ、ホログラム投影用のプロジェクターもついているために今は名札が投影されていた。

 手持ちの機器をつなげるコネクタもあったりハイテクな机を眺めながら自身の机を探すと最前列の廊下側から3番目、隣には千冬の席もある。この時ばかりは「え」の人が居ないことに激しく感謝した。

 静まり返る教室で私は早速ハイテク机をいじってみることにした。中身は普通なパソコンのようだが、学内ネットワークで様々な場所からデータを閲覧できるようだ。だから今日出た課題のデータを自分のメモリーに入れ替える必要なく寮にあるデバイスでこなせると。なんて素敵なんだろう。

 その調子でネットワークの深部へ。ちゃんと生徒閲覧禁止区域とロックが掛かるが難なく突破。生徒の調査票を眺めていると担任らしき人が入ってきたので即座にウィンドウを閉じた。

 

 

「おはよう。私がこのクラスを1年か預かる織田由香里だ。担当科目は体育とIS実践。以前は自衛隊で戦闘機を飛ばしていた。私も君たちと同じくISについて学んでいく身だ。よろしくたのむ。それでは自己紹介からはじめよう」

 

 キリッとした目つきに長い黒髪。女性としては高めの身長とハスキーな声。多分男だったら惚れてるね、それくらいイケメンな女性が我が1組の担任だそうだ。

 織田先生はおそらく「ISについて生徒が教わるついでに自分も」と言う思惑を持ったお上様に命令されて赴任したのだろう。自衛官をわざわざよこす理由がないからね。世界中から似た理由で数学やら理科やらの先生が送られてきているようだ。さっきの入学式の時に並んでいた教員も1/3くらいが外国人だったし。

 

 

「では出席番号1番、井上からだ」

 

 そうして私達の学生生活は幕を開けました。1組に1つの空席を残して。


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