よくある転生モノを書きたかった!   作:卯月ゆう

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バレンタインなのでサクッと書いて上げ。
私は義理チョコ以外もらえませんね。残念ながら……


バレンタイン短編だよ!

 IS学園が出来て2年。間もなく学年が上がろうかと言う日にそいつはやってくる。

 2月14日はどこの製菓会社の陰謀か、親しい人や愛する人にチョコレートを渡す日、なんて風潮を作ってくれたおかげで昨年は大量のチョコレートが生徒会(と言うか千冬)宛に送られてきた。かくいう私も買ったものではあるが生徒会メンバーや親しい数人にはチョコレートを渡している。生徒会メンバーは学園創立以来良くも悪くも目立つ人間が揃っているだけあり、千冬とナターシャのパイロット2人を筆頭に事あるごとに人が集まってくるのだ。1年の終わり、去年のバレンタインに2人の元に届いたのはおよそ10kg。チョコならざるものも含むとはいえ、私にはせいぜい10人ほど、量にしても500gも無かったと思う中であの量は驚異的だった。1つしか学年がなかった時代にそれなのだから、今年はどうなるのか見当もつかない。まぁ、2人の顔が悲惨なことになるのは決定事項だろう。

 あの手のお菓子には送る人の性格が現れるというが、それは概ね事実なようで、千冬やナターシャへ送られるチョコレートは時々重すぎる愛に溢れていたりするが、私へのチョコレートは大概市販品で、手作りは1個〜2個だった。それでも市販品と見紛う丁寧な仕上がりの物だったのは覚えている(私にも一応女子としてのプライドというものはある)。

 今年も放課後の生徒会室では大量のお湯とインスタントのコーヒーを用意して廊下で騒めく思春期女子達のオーラをひしひしと感じながら(束を除く)役員共がそれぞれのデスクに着いている。

 

 

「いよいよか……」

「今年も顔ができものだらけになっちゃうわ……」

「千冬もナターシャも大変そうだねぇ。私は日陰者だから楽だね〜」

「くっ、ヒカルノぉぉ〜!」

「堪えろ、ナターシャ。人気者の宿命だ」

 

 そしていよいよ運命の扉が開かれる。コンコンという軽快なノックの音が響くと私が一応3人とアイコンタクトを取ってから「どうぞ」とひとこと告げた。

 扉が勢い良く開かれると見慣れた影が人間を超えた軌道で千冬に迫る。私は腰に据えていたテーザーガンを引き抜くと飛翔する物体()に発砲。千冬は机を蹴って椅子ごと部屋を滑って行く。

 

 

「ちぃぃぃぃちゃぁぁぁぁぁぁん!! 束さんの愛をーーやばっ!?」

 

 部屋の入り口から比較的奥の千冬の机まで数mの距離を飛んだ束は受け止められる前提で飛び立ったのかもしれないが、今着地予想地点にあるのは立派な椋の机だ。

 そして脇腹にテーザーガンの電極を刺したまま千冬がさっきまでいた場所に頭から突っ込み、見事机の下に潜り込んで壁にぶつかって止まった。束はこんなことで死ぬほどヤワじゃ無いのはわかりきっているのでテーザーガンの引き金を引き、電気を流す。

 

 

「束さん復かーー痛い!」

「まともにチョコも渡せないのかこの駄兎は!」

 

 復活を遂げようとしたところで再び机に頭を打つ天災。これではただのアホである。そこに千冬の容赦無い罵倒。そして束が言い訳してなんだかんだで千冬にがデレるまでがテンプレだ。

 

 

「だってだって! ちーちゃん普通に渡したって「要らん」とか「飽きた」とか言って受け取ってくれないじゃん」

「それは私がチョコの食べ過ぎでダウンしてるところに持ってくるからだろうが」

「それでも束さん特製チョコレートなら一発だよ! 栄養分全てカットしてくれるからね!」

 

 生徒会役員やこれからチョコを渡そうと扉の外で待つ多くの少女達の前で繰り広げられる夫婦漫才。ここでニコニコしながら見てると千冬にシバかれるので笑いを堪えつつ2人の行く末を見守る。そろそろ千冬がデレるだろう。

 

 

「わかったわかった。食べれば良いんだろう? それに、貰ったものはちゃんと頂かないと失礼だしな……」

「最初からそうしてくれれば束さんもこんなに長々と面倒な説明をせずに済んだんだよ。あ、あーちゃんの分もあるよ。もちろんみんなも」

「ああ、束が神に見えるわ」

「それ言って良いのかねん……」

 

 キリスト教徒であるはずのナターシャが自身の神を変えようとする隣で千冬はにこやかに(私はあの笑みが営業スマイルなのを知っている。だって微妙に引きつってるもん)チョコを受け取っては隣に用意した袋に入れていく。私は時折やって来るクラスメートにお茶を出してヒカルノも交えてただのおやつタイムだ。今年は後輩もできたし、千冬とナターシャの列は去年の2倍ほどの長さはありそうだ。先生に小言を言われるのは私なんだけど……

 何はともあれ、IS学園のバレンタインは生徒会にチョコを持った少女達の列が作られる謎の伝統が出来てしまうのを知ったのは6年後の話だ。


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