よくある転生モノを書きたかった!   作:卯月ゆう

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致命的なミスに気が付きました。
クラリッサの年齢が作中でずれてます。作中で22歳なので千冬の2つ下ですね。

あちこち修正します。特に作中への影響はなさそうですが……


暮桜がセカンドシフトしたよ!

 第一回モンドグロッソから1年半程経ち、第2回モンドグロッソへの興奮と各国ともそろそろ発表できるレベルに達する第2世代の足音も聞こえてきた頃にその異変は起きた。

 いつもどおりの訓練を行っていた時のことだ、突如として暮桜のエネルギーレベルが跳ね上がったかと思うと機体が白い光に包まれて気がついたらおぞましいほどにスペックが上がっていた。

 文字に起こすと簡単だけど、理論上しか存在しなかったセカンドシフトをこの目で見てしまったんだから……

 まぁ、それを起こしたのが千冬ってのがソレらしいけど。私達は即座に訓練を中止させて暮桜の解析にかかった。と言っても外観上変わった場所は特に無く、唯一無二の装備として雪片が据えられ、単一能力(ワンオフアビリティ)として零落白夜の存在が確認できたくらいだった。

 内部はエネルギー利用効率が跳ね上がり、単純出力ならファーストシフト時の1.5倍から2倍は出ている。こりゃ、モンドグロッソで無双しますわ。

 

 

「上坂さん、コレ公表します……?」

 

 恐る恐る、と言った感じで聞いてきたのは昨年から部隊に入ったIS学園の卒業生、光岡さん。その後ろで他の技術者たちもこっちを見ている。一応技術面でのトップは私だけど、これは流石に私一人で決めていい問題では無いだろう。ヘタしたら外交問題だし。

 

 

「私一人の判断で決めていいことでは無いと思うので上官に判断を仰ぎましょう。それまで暮桜には今まで通り、物理ブレードの紫雷(しらい)を搭載しておいてください」

「わかりました」

「それと、千冬に私のところに来るようにと言伝をお願いします」

 

 敬礼してから踵を返して機体の下に向かう光岡さんを見てから散らかったテーブルの片隅にある電話を取ると内線で佐々野さんを呼んだ。

 

 

「おはようございます。IS研(特殊強化外装試験隊)の上坂です」

『ああ、上坂くん。どうした』

「暮桜がセカンドシフトを起こしました。機体解析は終了し、テスター上の問題は無いことを確認しています。ですが……」

『セカンドシフトを起こしたことをどうするべきか、ということかな?』

「その通りです」

 

 佐々野さんの唸り声を少し聞きながら答えを待つと案の定無難な答えが帰ってきた。

 

 

『モンドグロッソ開幕ギリギリまで公表を控えよう。機体のことはまた会った時に聞かせてくれ。その時に訓練スケジュールなどについて考えるべきならば考えよう。今のところはどう考えているかね?』

「外観上は殆ど変化が無いので、紫雷を今までどおり装備させて通常訓練を。セカンドシフトと同時に現れた特殊兵装については深夜などに沿岸部の訓練空域を使うべきかと」

『分かった。メカニック面はさっぱりだからね。今のところ君がソレでいいというならそうしよう。舟田くんや空井くんには私から伝えておく』

「わかりました。よろしくお願いします」

 

 受話器を置くとさっきから扉の向こうで待ちぼうけを食っている千冬を呼んだ。流石に気配察知くらい千冬と同じくらいできるようにはなった。

 ISスーツのままの千冬に私の白衣を投げてから椅子を勧め、コーヒーマシンで千冬が好きなのを1杯入れるとテーブルに置いた。

 

 

「暮桜のことだろう?」

「主には。どうよ?」

「大雑把だな……。あまり乗っていないからなんとも言えないが、機体が軽くなったような感じだな。ただ飛ぶだけでもそれがわかる」

「ほうほう。それで?」

「まだセカンドシフトしてから3分しか乗ってない人間に何を望む? セカンドシフトした機体に付いてならお前のほうが詳しいだろう?」

「いや、機体についてはそうであっても人間についてはねぇ……」

 

 私は何も変わっていない! と手元にあったファイル(厚さ10センチ、重さ2キロ)で頭を殴られ、危うく意識が吹っ飛びかけたが頭をさすりながら続ける。

 万が一千冬の体調に変化があっては困るのだ。

 

 

「いやぁ、体調はすこぶる良いようでよかった。万が一のことがあると困るからね」

「自業自得だ、馬鹿者」

「んんっ! それで、織斑2尉。これからのことを話そう」

 

 あえて千冬を織斑2尉(モンドグロッソで勝って昇進した。私もね!)と呼んでこれからする話が真面目なことであることをはっきりさせる。

 今までの話も真面目じゃなかったわけじゃないんだけどね?

 

 

「暮桜での通常訓練時は今まで通り紫雷を使ってもらうことにした。雪片の解析が終わったら重量バランスなどを似せたレプリカを作るからソレでイメージを掴んで」

「なるほど。公表はしばらく先か」

「うん、モンドグロッソ手前までね。それで、雪片とワンオフアビリティは深夜に洋上の訓練空域で使うことにするから訓練がちょっと辛くなるかも。ま、相手は私がやるつもりでいるからそこは安心して」

「安心なような不安なような……」

 

 一応私のほうが階級上なんだけど……とか思いつつ、部屋の片隅に実体化させて放置してある雪片を持ち上げるとなかなかずっしりとした重さがある。

 生身で使うのは厳しい重さ、ってまぁ、生身で使うことなんて無いだろうけどさ。

 剣先を引きずったまま千冬の前に持ってくると少し睨まれた。ごめんね、重くて持ち上がらないんだよ。

 

 

「これが雪片か」

「ですよ。見たところ物理ブレードとしてもエネルギーブレードとしても使えそうな感じだから暮桜に特殊なエネルギーバイパスがあったんだね。詳しい解析はこれからだから、コレを使った訓練は早くても明後日以降だね」

「お前のことだ、今日中に解析を終わらせて、空域を取るのに2日かかるとか言うんだろう?」

exactly(そのとおりでございます) って、わけで、これからのことは大雑把に伝えたからガンバ!」

「本当に大雑把だな!」

 

 カップに残ったコーヒーを流し込んでから千冬は訓練に戻った。

 リアルタイムで送られてくる各候補生と現代表の機動データと機体の稼動状態。私達IS研でオリジナルパーツを組み込みまくってメインフレーム以外はまるで違う機体になりかけている撃鉄はそろそろ進化の限界だ。倉持で開発されているであろう打鉄にその座を譲る日も近いと思う。

 IS研にある6機のISの内、1機は千冬の専用機、暮桜だが、残りの5機はその日によってまるで外装が変わっている。訓練する候補生に合わせたパッケージまでは行かないが、ブースターなどのパーツセットを私達で決めてその日に組み込むのだ。これによって作業の効率化と訓練の効率化はもちろん、機体の汎用性(マルチロール性)の向上も果たしている。今や自衛隊のIS研は世界に名だたるIS開発のトップランナーとも言えるのだ。だが、大人の事情でオリジナルISの開発まで行けないのが残念ではあるが……

 そして、私の専用機。コアナンバーA-000という特殊番号を持つコレもこっそりと束のラボで組み立てられている。私と束がやりたいことを全部詰め込んだチートで唯一無二で絶対無敵の第0世代(オリジナル)

 私が名前をつけたら「あーちゃんらしいくていいと思うよ」と言われたゲテモノ。そんな代物の時折届く作業の進捗状況まとめを見ながら、私は重くて仕方ない雪片を作業台に載せた。




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