よくある転生モノを書きたかった!   作:卯月ゆう

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お気に入り100超えました。ありがとうございます
|ω・`).。oO(けど、続きが全然書けてないんだよなぁ…



国家代表決定戦……の裏で生徒会のお仕事もするよ!

 私が自衛隊の制服にも大分慣れた10月、1年後に控えたモンドグロッソに向けての日本代表選抜試験が行われようとしている。要は候補生同士の総当りトーナメントなわけだが、すでに本人以外の誰もが千冬の代表決定を疑っていなかったし、候補生同士でも「千冬なら仕方ない」的な諦めにも似た雰囲気があった。

 だが、それでも候補生5人は勝負自体を放棄するような人ではないのでハンガーでは絶賛5機の撃鉄を急ピッチで調整している最中だ。

 

 

「野上機、セッティング終わりました!」

「坂本機いけます!」

「近藤機上がりです!」

 

 ハンガー内で声が飛び交う。まだ数週間しか経っていないが私のIS講座の成果は確実に出ているようだ。作業効率が上がって所要時間も短くなった。それでいてISのスペックも上がるんだから皆満足! 最高ですね。

 私の仕事は全体の進捗を6枚のホログラフィックディスプレイで眺めながらカフェオレを飲んで、時々キーボードを叩くだけだ。管理職って本当に適当でいいんだな、と改めて思った。私がISに直接手を出そうとするといろんな人から止められちゃうからいじれないんだけどさ。

 5機中の3機は終わり、もう1機もそろそろ終わりそうだけど。やっぱりというべきか千冬の機体が手こずっている。あの子は皮剥いだりエネルギー配分変えたりでかなりいじくりまわされてるからバランスがとてもシビアなのだ。日本代表候補生No.2と言われる坂本さんはオールラウンダーだから機体も特にいじらず、全体的に効率を上げていく方向のセッティングなのでとてもやりやすい。他の子も千冬ほど極端にいじることはしないのでさっさと終わるのだが……

 

 

「柊機、終わりました!」

 

 残っていた柊さんの機体も終わって残すは千冬の機体のみ。ちなみに柊さんの機体には私と舟田さんで組み上げた射撃補助システムを試験搭載している。だから彼女は射撃に不向きと言われてきた撃鉄で世界3番めの長距離狙撃を成功させ、彼女の制服には記念章が一つ増えた。

 4機の撃鉄が外に運び出されるなか、作業台の上に乗ったままの千冬の機体には2人がつきっきりであれやこれやとやっているのが見えるが、データを見る限り芳しくない。今日の不機嫌はエネルギー系らしい。

 

 

「上坂博士、織斑機のセッティングが……」

「みたいだね。今日は時間もないし私がやるよ。2人は機材運びの手伝いよろしく」

「わかりました」

 

 10人居るメカニックの中の1人、松田1曹に伝えると私はそのまま千冬の機体の隣でIS開発時から使っているソフトを使ってもう一度システムチェック。無理やり繋いだエネルギーバイパスが思うように安定していなかったのでレスポンスダウンを最小限に抑えながらエネルギー回路を組み替える。

 多数ある回路から適正なものを選びとって書き換えていくだけだ。この取捨選択は慣れるしか無い。彼女たちの悩みどころはおそらく安定させると千冬の期待するレスポンスが得られず、そのギリギリを探ると他所にも響いて全体がグダグダになってしまっていたところだろうから。

 3分ほどで機体を仕上げるとジャッキを使って台に乗せてハンガーの外に出すとすでに4人はISを纏って慣らしと言わんばかりに飛び回っている。千冬はそんな4人を複雑な表情で見ていた。

 

 

「千冬、おまたせ」

「ん、杏音。今日もコイツがぐずったか」

「全く手のかかる子だよ。いつもよりちょっとレスポンスが下がってるかも」

「分かった」

 

 千冬もまた撃鉄を纏うとPICだけで浮き上がってからブースターを吹かして一気に飛び上がった。

 5人が揃ってからしばらくしたところで舟田さんが全員を一度おろして機体にはエネルギーを補給。5人には選抜試験のルールが改めて説明された。使用するのはここから40キロ離れた海上。そこまで移動し、こちらの合図で試合を始める。制限時間は20分。シールドエネルギーを多く削った方が勝ちだ。

 その間整備の人間はとっても暇になる。私は現場で予備機の撃鉄に計測機器や補給機器、エネルギーパックを詰め込んでのモニタリングと弾薬エネルギー補給、最悪の場合に飛び出していく役目だ。コツコツ作ってきた高機動パッケージもどきが予備機には装備されているので負傷した場合はもちろん、考えたくないが逃げ出した時にも追いつける。

 舟田さんの話も終わって5人がこっちに来たので私も合わせてやたらとゴテゴテした撃鉄に身を預けた。私のISスーツは空自指定の紺色のものではなく、黒騎士の時に使っていた白いスーツだ。というのも、私はそもそも飛行要員ではないので私用のスーツというのが無いのが理由だが。

 

 

「あ、今日は杏音ちゃんも飛ぶの? 久しぶりに杏音ちゃんがIS乗るの見るよ」

「おい、野上。今は上坂さんだろ?」

「え~、ユキ(近藤さん)は固すぎるんだよー。舟田さんも適当でいい、ってよく言ってるじゃん」

「だから時と場合を選んでだな……」

 

 生真面目な近藤さんとおっとり系の野上さんが言い合っているがコレもまたいつもの光景だ。近藤さんも学校では普通にみんなをアダ名なり名前で呼び合うが基地内では苗字で、としっかりと分別をつけている。彼女らしいといえばらしいが、野上さんも言うように上司である舟田さんが適当なので案外どうでも良くなっていたり……

 流石に他所の隊の上官が居たりする前では苗字で呼び合うが、隊内ではこんな感じでもいいんじゃないかなぁ、とは思っている。

 

 

 《5人共、早く空域に移動してください。時間は限られていますから》

 《了解》

 

 オープンチャンネルで飛んできた舟田さんからの指示を聞いてから5人が目で合図をして一斉に飛び上がった。私はそれに一歩遅れてついていき、道中の彼女らすら記録する。

 私の視界には自分の機体のステータスの他に5人ぞれぞれの機体のステータスも表示されているので何かあればドクターストップを掛ける仕事もある。

 5人のキレイな編隊飛行に一定の距離をおいてピッタリとくっついて飛ぶこと数分。閉鎖された海域につくと予定通り、1回戦の野上さんと柊さんを先行させてからシールド発生装置のスイッチを入れた。

 

 

 《それではこれより代表選抜試験を開始します。1回戦、野上、柊。準備が完了し次第、現場指揮官の指示で試合を開始してください》

 

 舟田さん、こっちでのことは私に丸投げですかい……

 口調はしっかりしてるのにやってることはひどいよ。

 

 

 《それでは、2人共所定の位置に付いてください》

 

 シールドで作られたドームの真ん中、2人は10メートルほど間を開けると互いに視線を合わせた。

 

 

 《2人共機体は良さそうだね。心の準備は?》

 《大丈夫。いつでも》

 《私もいいぞ》

 

 クール系な柊さんが即座に返事を返すと野上さんも自分の頬を叩いてから返事をした。

 

 

 《では、試合を開始してください》

 

 その一言で2人はそれぞれの得物を展開、柊さんは長いライフルを1秒もかからずに展開すると即座に射撃を開始。野上さんは短いマシンガンを展開すると応戦するように弾幕を貼る。

 この後の細かい描写は省かせていただくが、結果だけ言えば1回戦は柊さんの勝利に終わった。

 続く2回戦、近藤さんと坂本さんの一戦は坂本さんが勝利。3回戦は柊さんと坂本さんで、これもまた坂本さんが取った。4回戦でやっと千冬が出てきて難なく近藤さんを下すと続く5回戦で野上さんを下した。その後も数試合をこなし、結局上から千冬、坂本さん、柊さん、野上さん、近藤さんの順になった。

 この結果はまぁ、言ってしまえば予想通りってやつで、この中で最下位になってしまった近藤さんもIS学園ではトップクラスの実力者なのだ。日本の候補生は世界的に見てもトップクラスの実力だと思うし、学園の中で時々模擬戦をやっているのを見ていても日本の候補生に追いつけるのはそれこそナターシャとほか数人と言ったところだ。その中でもやはり千冬は絶対的なトップに居る。ん、トップ……? ヤバい、そろそろ次の生徒会長を決めないと!

 

 

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 試験を終えて戻ってからと言うもの、私は即座に稼働データをまとめて舟田さんに提出すると片付けをエンジニア達に任せて「学園の仕事を思い出したので先に帰ります」と言って千冬達よりも早く学園に戻った。

 薄暗い学園の中を通り抜けて生徒会室に直行するとすぐに校則のデータを立ち上げたPCで見返す。生徒会の項目には私が書き足した「生徒会長は学園の生徒のあらゆる挑戦を受け、敗北した場合生徒会長の座を譲る」という項目と「生徒会長は学園の生徒の学園生活を守り、有事の際には生徒の身の安全を確保するべく行動する」という項目があるが、それ以外"生徒会長"と文中に存在するのは「生徒会は生徒会長以下副会長、会計、書記の幹部を中心とした適切な人数で運営される」という項目しか無い。

 つまり、生徒会長を選ぶ手段が今のところ私に挑む以外無いのだ。これはいけない……

 夕飯を食べていないのでぐるぐる言うお腹を会長の机の引き出しに常備されている(理由は察して欲しい)エナジーバーとエナジードリンクでごまかすと生徒会長を選ぶ"選挙"に関する項目を書き足すべく草案を起こすことにした。

 

 IS学園学則 第○条 委員会 第1項 生徒会 その○△ 生徒会の人員

 付記1,生徒会長の任期は3年生3学期までとする。その間に生徒会長が変わらなかった場合、全校生徒による普通選挙を行い、最多数表を取った生徒を次期生徒会長とする。

 付記2,副会長以下の人員は生徒会長の選考した生徒とする。

 

 こんな感じでどうだろう? ごく普通になったのではないだろうか? 会長の任期は3年3学期までっていうのは本当は2年半って言う時間にしたかったけど、そうすると私がアウトだからやむなく……

 副会長以下の人員は生徒会長がチョイスっていうのは原作がその通りだったからそうしただけ。案は無難すぎて止められる気がしないのでついでに生徒会長選挙の下準備として候補者一覧や投票用紙のテンプレートを作って各クラスに配布するためのプリントも書き起こして……とやっていたら日付が変わっていたので椅子の横のレバーを引いてフラットにすると引き出しに入っていた化学繊維の毛布を取り出してそれに包まって目を閉じた。

 

 

「上坂、起きろ。上坂」

「ん……? ちーちゃん?」

「残念だが織斑ではないな」

「ん、あ? ゆかりん?」

「教師に対してゆかりんは何だ、ゆかりんとは。そんな呼ばれ方したのは小学校以来だぞ」

「うごっ、織田先生!」

 

 上半身を気合で起こすと腕についたスマートウォッチを軽く叩いて時間を見るとすでに10時半。いくら3年で授業に出なくていいからって言ってもコレは怒られる。

 

 

「あ、っその、えと」

「お前がそこで寝ていた理由は画面を見ればわかる。私が来たのはまさにその要件だからな。部屋にも整備棟にも居ないから探したぞ」

「なんか、その。すみません」

「謝らなくていい。生徒会に科学者に自衛隊での仕事もあるんだろう? とりあえず来週までに候補者をまとめてから来月の頭には選挙でいいか?」

「はい、それで」

「ここまで下準備が終わっていれば私の仕事も大したことないな。ダメそうなときには篝火を呼ぶからお前は部屋で寝ておけ」

 

 先生に言われるがまま自室に戻ると千冬が握ったと思われるいびつなおにぎりがテーブルに置いてあり、一口かじるとまだ芯が残っていて正直あまり美味しくなかったが「千冬だから仕方ない」と納得して用意されていた3つを食べた。ちなみに全部塩っ辛い塩むすび。

 皿で抑えられていた手紙には「部屋に戻らないなら私に連絡をしろ。寝るならベッドで寝ろ。飯はちゃんとしたものを食え」ともう少しやさしい言い方で書いてあった。

 

 

「ほぇ、ではお言葉に甘えて……」

 

 


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