よくある転生モノを書きたかった!   作:卯月ゆう

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学校生活を端折るよ!

 さて、私は今学年が2つ上がって3年生になった。そしていまは7月。どうして時間軸がこんなに飛ぶのかは察して欲しい。書くネタがなかったんだ。それに話が間延びしちゃうしね。

 1年の臨海学校から帰ってから私は「生徒会長は学園で最強の存在とする。生徒会長は常に生徒たちのあらゆる挑戦を受け、負けたら生徒会長の座を譲る」と言った原作にあった「生徒会長は最強たれ」を自分なりに解釈したルールを作った。だが幸いなことに私はまだ生徒会長の座に座っている。

 その理由は簡単で、「あらゆる挑戦を」と言ったのにISバトルしか仕掛けてこないからだ。そしたら専用機持ちで搭乗時間も世界最長の私が勝てないわけ無いだろうに。それを見越してか、学園の訓練機で、といった条件をつける子も居たがもれなくフルボッコにしてさし上げた。

 学年が上がった時にも新入生から挑戦を受けた。特に、クラリッサ・ハルフォーフとイーリス・コーリング。この2人は原作登場キャラだったから覚えている。入学前から国内でISに関する教育を受けただけあってそこら辺の代表候補生と同じくらいにはやれたがその程度だった。

 そして、一番のニュースはハルフォーフが"まだ"まともな人間だということだ。つまりこちら側(オタク)じゃない! なんということでしょう……

 山田真耶? 知りませんねぇ…… 嘘だよ。知ってるよ。だけど、彼女はまぁ、あんな性格だから私に挑戦してくることはなかったけど、放課後に黙々と練習する姿をよく見かけた。あの実力も普段からあれだけ練習してれば納得できるというものだ。

 私とその周辺の出来事をいうと、千冬が国家代表になった。そして、私を技術者として日本国ISチームに入れる計画があるなんてことも織田先生から聞いた。だから最近はあれやこれやと悩みが尽きないのだ。

 

 

「うがぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「うるさいぞ杏音。……私のことか?」

 

 生徒会室で唸りながら机に突っ伏せば千冬からお叱りが飛ぶ。だけれど、千冬もこの件は聞いていたそうで、すぐに私の悩みを突いてくる。

 

 

「そうだけど、そうじゃないんだよねぇ」

「半分は私のせいだろう? 話を聞くことくらいしかできんが……」

「だってさぁ、私はいまある意味で篠ノ之束の部下なわけじゃん? そんな"やばい人"を日本がただの技術者で終わらせると思う? でもさ、技術者として雇われれば将来安泰のちーちゃんと一緒だよ? でもさ、束も置いていけないじゃん? 家族もいなくなった今、私がいなくなったら束死んじゃうよ? もうどうしたらいいんだよぉ」

 

 うわぁぁ、と変な声を上げる私のココ最近の一番の悩みはコレだ。私が日本に正式に雇われるには束との縁を切るべきだ(偉い人はおそらくそのままで居て欲しがるけどそんな便利屋みたいな真似はしたくない)。だけど証人保護プログラムなんていうクソ制度のせいで一家離散してしまった束はもともと無かった生活能力がプラスマイナスゼロを振りきってマイナスに突入している。と言うか、自棄になってひたすらに色んな物を作っては私に送りつけてくるのだ。いくら第1世代機最大(最大級じゃない、最大)のバススロットがあるからって全部は収まらないし使い切れない。おかげで整備棟の一室は今やただの倉庫と化している。時々ものがなくなるが、解析できるもんならしてみやがれクソったれぇ。

 

 

「この件は束も知っているのか?」

「もちろん。束は『あーちゃんの好きにしていいよ』って言うけど、私は両方取りたいの!」

「(駄目だ、杏音が束になっている……)そ、そうだな……私が国家代表を辞めるっていうのは――」

「ダメに決まってるじゃん! どうやって生活する気? 今だって代表候補生だからその給料でなんとかなってるのにIS学園なんて出てもロクな仕事できないよ! 大学だってお金かかるしさ!」

「そ、それはIS関連のだな……」

「ちーちゃんIS理論苦手じゃん! テストパイロットだって安々と成れるものじゃないしさぁ。もうどうしたらいいんだぁぁぁ」

 

 千冬が「どうしてお前が私の将来を嘆くんだ……」というつぶやきはさておき今の私は絶賛人生の岐路なのだ。原作通りに進ませたいなら私はここで"どちらも捨てる"という選択をするべきなのかもしれない。だけれど、この世界で18年も生きれば情だって湧く。今の私は2人が居ないとつまらないのだ。一緒にISを作ってきて、一緒に高校生活を歩んできた2人が。

 絶賛指名手配中の束は時々私を拉致してラボに連れ帰ってはひたすらにお喋りに明け暮れ、千冬は千冬でテスト前に私がIS理論を見ないと赤点で少しばかり面倒になるのだ。どこかで突出した2人の欠けている所を私が補う。そんな関係がいまは最高に気持ち良い。だから今の関係を捨てたくない。

 そんな子供のような考えが私の中で渦巻いていた。

 

 

「なら両方とも切り捨てろ」

「ふぇ……?」

 

 冷酷なセリフとともに部屋に入ってきたのは生徒会顧問、織田先生。学年が変わって担任じゃなくなっても何かと気にかけてくれている。特にここ最近はお世話になりっぱなしだ。

 

 

「上坂、いつまで悩んでるつもりだ? 政府からの要請が来たぞ。お前は1週間で選ばないといけない。どちらかを選ぶのか、両方とも捨てるのか。少なくとも今のお前は両方を選ぶことはできない」

「でも、でも!」

「解かれ。お前は篠ノ之束と世界をつなぎ、織斑千冬と世界をつなぐパイプなんだ。下心しかない世界に放り込まれるのは遅かれ早かれ決まっていたんだよ。残念だがな」

「杏音、お前が私たちのことをどれだけ大切にしてくれているかはわかっているつもりだ。そろそろ自分のために生きてもいいんじゃないか?」

 

 

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 先生に渡された手紙に「クソ喰らえ」とラテン語で書きなぐって返信し、私は自室に篭もるようになった。

 これは私が1週間で立てた今取れる最善の方法。それは、私が博士号を取り、束の下を離れてフリーの科学者として日本のISチームに入り込むことだ。私はそれを3日で決めて織田先生に報告。先生はただ「そうか」と言っただけだった。

 そして4日でIS関連の機械工学、エネルギー工学、量子力学に関する論文を書いてアメリカとイギリスの論文審査に出した。96時間フル稼働で数万字を書くのは想像以上にハードだったが、おかげで今の私は最高に気持ちいい疲れでベッドから動けなくなっている。チート能力様々だ。

 最初は机の上で死んでいたそうだが、同室の千冬の手によってベッドに運ばれた。私がひたすらに論文を書いているときもただ何も言わず、黙ってエナジードリンクを差し入れてくれた千冬には感謝しきれない。ちなみに、この後生体機能や心理関連の学位も取るべくネット上に転がる論文を読み漁ってまとめてそれっぽく仕立てあげる作業もあったが、夏休み明けには私に6つの学位が付くことになり、学校で表彰されてしまった。

 その後に千冬から言われた一言がコレだ。

 

 

「杏音、お前はバカだ。周りからドクターだの博士だの言われても私はお前をバカだと言い続ける」

 

 多分、言葉の裏には「自分のためにという理由で私達のために動くなバカ」って意味だと私は解釈しているが、千冬はツンデレでありつつも時折真面目だからどのような意味かはわからない。

 はてさて、無事に博士号を手に入れ"院卒と同等以上"と言う保証をもらい、論文に合わせてIS関連の特許もとってマジでラッキーだが、これからは自分の売り込みをはじめなければならない。手始めに束に連絡をとって「仕事辞めます」と言わなければ……

 携帯を手に、束の番号を電話帳から選んで後は発信ボタンをタップするだけ。その動作にたっぷり30秒ほどかけてから発信ボタンをタップした。

 

 

『もしもし、束さんだよ。要件はわかるよ、あーちゃん』

「うん。束、一身上の都合により退社させていただきます」

『分かった。黒騎士はどうする? 持っててもいいけど』

「返すよ。私は篠ノ之束の力も織斑千冬の力も無しで就職活動を始めるから」

『そう。束さんは、あーちゃんの選択がベストだと思う。私からも、ちーちゃんからも離れたようで両方とも仲良くできる。それはただの"友達付き合い"だからどこも干渉できないし』

「だから私、頑張るよ。束」

『頑張れ、あーちゃん。あぁ、そうだ。あーちゃんの論文読んだけどさ、コレって見方によってはIS化けるよね?』

「え? あぁ、"全領域・全局面展開運用能力"の事? そんなの机上の空論だよ。だからこそ論文って形で出せたんだけどね」

『あーちゃん、コレ作れる?』

「ん~、無理かなぁ?」

『分かった、今度お仕事をお願いするね、ドクター上坂』

 

 言いたいことだけ言って束は電話を切った。相変わらずだなぁ、と思いつつも私は目の前のモニターに映る文面に目を移した。

 そこには政府からの招待状にあったISチームの責任者のアドレスと「私を雇わないか?」という内容の強気な文章が5行ほど書かれている。ココで下手に出てつけあがらせるのも気に食わない。私が"雇われてやる"必要があるのだ。あくまでも立場は私が上だと言い聞かせなければならないのだ。

 もういちど内容を見返して失礼のない言葉使いで失礼であることを確認したら送信ボタンをクリックした。こっちは束に電話するより緊張しなかった。

 村八分に怯える女子高生のような返信速度で帰ってきたメールを見返すと「一度あって話をしたい」ということが書いてった。まぁ、そうでしょうね。学校が休みの日を指定して返すとこれまたとんでもない速さで「楽しみにしている」と帰ってきた。


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