暗部の一夏君   作:猫林13世

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やっと本編に掠ったな……長かった


IS学園入学

 入学式で挨拶をする刀奈を眺めながら、一夏は四方八方から突き刺さる視線と戦っていた。IS学園とは女子の為に造られた学校と言っても過言ではない――というか、ISは女性にしか動かせないのだから、女子しかいない方が正しいのだ。

 だが今年はその中に異分子が紛れ込んでいるのだ。興味や嫉妬、観察するような視線が向けられない方がおかしいのだと割り切っていた一夏だったのだが、さすがに視線の集中砲火に耐えきれないくらいにまで視線の量が増えているのだ。

 

「――最後に、あんまり私の義弟を苛めないであげて欲しいかな。とある事情でまだ人を怖がる事があるし、あんまり人前に出て何かをするような男の子じゃないから」

 

 

 壇上から助け船が出されて、一夏に向けられる視線は一気に減った。一夏は壇上にいる刀奈に目礼をして肩の力を抜いた。

 

「(……ん? 肩の力を抜くという事は、俺は緊張していたのか……)」

 

 

 克服したと思っていた人間恐怖症がまだあったのだと再確認して、一夏は人知れず苦笑いを浮かべる。注目されると分かっていながら入学したので、今更この程度で音をあげるわけにはいかないのだった。

 

「一夏、クラス分け表を見に行こう」

 

「そうだな。同じクラスならありがたいんだが」

 

「さすがに全員は無理じゃない? 特に私と簪ちゃんは同じ日本代表候補生だし」

 

「そうだね~。かんちゃんと美紀ちゃんは別々かもね~」

 

 

 そそくさと何時ものメンバーと合流した一夏は、マドカがいない事に気が付き辺りを見回す。

 

「本音、マドカはどうした?」

 

「ほえ? マドマドならここに……ほえ? いないや」

 

「「「………」」」

 

 

 呆れた視線を本音に向ける三人の視線の先に、人波に呑まれているマドカの姿が映った。

 

「アイツ、こういうところに慣れてないのか……」

 

「助けに行ってくる」

 

「さすがに一夏に行かせるわけにはいかないもんね」

 

 

 簪と美紀がスルリと人ごみの中を移動し、あっさりとマドカをこの場所へと連れてきた。その動きは一夏でも感心するほどであった。

 

「お見事としか言いようがないな。簪と美紀の成長は俺でも驚く」

 

「一夏が丁寧に教えてくれたからだよ」

 

「そうですよ。人ごみをスムーズに移動する方法は、一夏さんが編み出したんじゃないですか」

 

「兄さま、申し訳ありませんでした。人波に呑まれてしまうなんて……」

 

 

 ションボリと俯くマドカの頭を、本音が何故か撫でる。普通なら一夏が取るはずの行動なのだが、まぁ本音だからという理由で誰もツッコミは入れなかった。

 

「えっと……簪は四組か」

 

「後は全員一組だね~」

 

「何だか疎外感……」

 

「専用機持ちが四人も一組になんておかしいと思ったけど、担任が織斑姉妹で副担任が碧さん、それと補佐って何だか分からないけど、山田真耶さんが担当なら何となく分かるわね」

 

「暴走すると思われているのでしょうか?」

 

 

 マドカのセリフに答えをくれる人はいなかった。一夏以外は答える事が出来ず、一夏は別の事に意識を割いていたからだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室に移動しても、一夏に向けられる視線は多かった。まぁ体育館の時と比べれば幾分マシなので、一夏は目を瞑り精神を落ち着かせていた。

 

「皆さん、おはようございます。このクラスの担任・及び副担任の補佐を務めます、山田真耶です。よろしくお願いします」

 

「(試験の時に見たけど、随分と子供っぽいな)」

 

『それは一夏さんが大人びているからではありませんか?』

 

「(いや、クラスメイトだと言われても違和感が無いほどだ)」

 

 

 童顔である真耶であるが、身体の一点は学生とは比べ物にならないほど成長している。ただし一夏がその部分に興味を示さないので、クラスメイトと言われても違和感が無いと思われているのだが……

 

「じゃ、じゃあ自己紹介をしてもらおうかな」

 

 

 真耶の進行で自己紹介を始めるクラスメイトたち。順番は五十音順だ。

 

「織斑マドカ。本当なら皆の一学年下に当たるのだが、特例でこの学年に組み込まれた。姉である千冬・千夏や兄である更識一夏を目標に頑張って行きたいと思う」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

 質問は受け付けないと言外に真耶が進行する事で騒がしくなる事は無かった。

 

「更識一夏だ。訳あって苗字が違うがマドカの兄にあたる。それと入学式で義姉である刀奈さんが言ったように、とある事情で若干の対人恐怖症があるので、一斉に近づいて来られるとちょっと怖いかな。それ以外はまぁ、常識の範囲内でなら仲良くしたいと思ってるので、よろしくお願いします。あっ、もう一つだけ言っておきますが、俺は大して強くないので」

 

 

 そう締めくくり、一夏は真耶に視線を向けた。つまり先に進めろという合図だと理解した真耶は、スムーズに先に進めた。

 

「布仏本音だよ~! いっちーやマドマド、そしてこの後自己紹介をする美紀ちゃんと同じ更識所属だよ~。皆、よろしくね~」

 

「はい、布仏さんありがとうございます」

 

 

 間延びした自己紹介にクラスメイトが肩透かしを喰らっているのを見て、一夏が真耶に先に進めるよう促したのだった。

 

「えっと、最後は四月一日さんですね」

 

「はい、四月一日美紀と言います。日本代表候補生ですが、一夏さんの護衛も務めていますので、万が一一夏さんに害をなそうとした場合は、私と本音ちゃん、後はそうですね、四組の簪ちゃんや先輩の刀奈お姉ちゃん、虚さんに加えてこのクラスの副担任である碧さん、そして最後に織斑姉妹が制裁を加える事になるでしょうからお気を付けてください」

 

 

 美紀の自己紹介に、何人かの生徒は恐怖しただろう。それだけ美紀が出した名前は有名で、また強力な印象があったのだった。




教師が多い理由は次回に説明出来るかな……

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