暗部の一夏君   作:猫林13世

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なかなか難しい展開になって来た気が……


新たな少女

 再会して早々に、一夏は席を外し白式の調整に取り掛かっていた。現状の装備では厳しいと判断して、バススロットを空ける作業と別の武装を積み込めるかどうかの勝負だと言って束と共に研究室に閉じこもったのだった。そして、残されたのは気まずい雰囲気の三人だった。

 

「げ、元気だったか?」

 

「は、はい。姉さまたちの活躍はテレビで拝見しておりました」

 

「マドカ、わたしたちは姉妹だ。そんな堅苦しい喋り方はやめてくれ」

 

「で、ですが……」

 

 

 幼いころに別れ、離れている間に偉大な記録を残した千冬と千夏に対して、マドカはどう接すればいいのかに困っていた。また同時に、千冬と千夏もマドカにどう接すればいいのか悩んでおり、このように気まずい空気が流れているのだった。

 もし一夏か束がこの場にいてくれれば多少は緩和されたのかもしれないが、三人の緊張感は常に高い状態でキープされていたのだった。

 

「ま、まさかマドカが束の許にいたとはな……」

 

「どうやら兄さまが私がこの研究所を襲う事を突きとめ、束様に判断を委ねたようです。殺すも生かすも束様に任せたと」

 

「なるほど……実に一夏らしい行動だな。そして、束がマドカを殺すはずが無いと確信していたのだろう」

 

「記憶を失い、私たちと離れていてもやはり一夏は優しい子だな……お姉ちゃんとしてこれ程嬉しい事は無い」

 

 

 感動している千冬と千夏を他所に、マドカは困惑を強めた。二人がそのような考えに至った経緯が、マドカには分からないからだ。

 

「一夏とマドカは仲が良い兄妹だった。だがあのバカ共が家を出て行く時、マドカはあのバカに付いて行った。そして一年後、一夏は記憶を失いマドカの事も、わたしたちの事を忘れた」

 

「だが、一夏は変わらずマドカの事を思っている。そして私たちの事も邪険に扱いながらも心配してくれているんだ。実に優しい子だろ?」

 

「そう…ですね。兄さまは優しいお方です」

 

「おまたせー! まーちゃんの専用機の改良、終わったよ~!」

 

 

 姉妹が感動しているタイミングで、束が研究室から飛び出てきた。だが一夏の姿は無かった。

 

「おい、一夏はどうした?」

 

「いっくんなら白式とお話してるよ~。どうやら白式は束さんじゃなくっていっくんを生みの親と判定したみたいだしね~」

 

「どういう事だ?」

 

「向こうに行けば分かるよ」

 

 

 束に促され研究室に歩を進める織斑三姉妹。そしてそこで見た光景にかなりの衝撃を受けたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夏に調整された白式を見に来たはずだったのに、一夏の傍に白式は無く、一人の少女が一夏の膝の上に座っていた。

 

「おい、誰だその小娘は」

 

「その行為はわたしたちに喧嘩を売っていると判断して良いんだな?」

 

「兄さまの膝の上……羨ましい……」

 

「ほら、挨拶しろ」

 

「はい、一夏様。お初におめにかかr……いたい」

 

 

 無駄に堅苦しい言葉を使おうとして舌を噛んだのだろう。少女は涙目で一夏にしがみついた。

 

「普通に話せばいいんだよ。ほら、もう一回」

 

「うん……はじめまして、なのかな? 私は白式です」

 

「「「………、はい?」」」

 

「私は、白式です。一夏様と束さんのおかげでこのような姿になりました」

 

 

 きょとんとする織斑三姉妹の前に歩み寄り、小さくお辞儀をする白式と名乗った少女。振り返って一夏の表情を確認して、安心したように破顔した。

 

「えっと……この子が私の専用機? さっきまではブレスレットだったのに……」

 

「女の子であるマドカさんにあのブレスレットはちょっとって思って、一夏様が改良してくださったのです。そうしたらこの姿になれるようになりました。もちろん、元のブレスレットにもなれますので、迷惑はかけませんよ」

 

「信頼関係を築く為に、一緒に生活するのも手だと思うぞ」

 

 

 一夏から追加された武器の資料を渡されて、マドカは白式を改めて眺めた。自分とあまり変わらない身長、体付きもさほど変わらない少女。しかしその少女は人間では無くISだと言われたのだから、すぐに受け容れられる訳も無く呆然と立ち尽くす。

 

「まーちゃんは何時まで衝撃を受けてるのかな~? 現実に復帰させる為に束さんがあちこち揉んじゃおうかな~?」

 

「「待て、それは姉である私(わたし)の役目だ!」」

 

「……マドカ、早く帰ってこい。じゃないと酷い目に遭うぞ」

 

 

 一夏に軽く叩かれて、マドカは現実に復帰した。一夏の背後では変態三人が少し残念そうにしているのがマドカには見えていたので、一夏に感謝しつつ白式に視線を向けた。

 

「えっと……これからよろしく?」

 

「はい、こちらこそよろしくお願いします。あっ、それから展開する時ですが、一度ブレスレットに戻ってから展開する事になりますので、時間的余裕を持って展開してくださいね」

 

「う、うん……」

 

「それから武装ですが、雪片弐型の他にも色々と積まれましたので、その確認はしっかりと行っておいてください」

 

「こ、この資料だよね?」

 

「はい。本来なら私を展開してモニターで確認もらうのが一番だけど、一夏様がせっかく用意したのですから、そちらでお願いしますね」

 

 

 マドカと白式の会話を聞きながら、一夏は背後に迫ってきている変態たちから距離を置いていた。

 

「マドカもIS学園を受験するんだろ? 日本政府には更識から報告しておこう。束さんが関係してるとなると、またややこしくなるからな」

 

「そうして~。無能なやつらと話すなんて束さんには出来ないからね~」

 

 

 こうして白式は更識所属の扱いになり、何処の国からもクレームは来なかった。何せ織斑姉妹の末の妹であり、天下に轟く更識企業が関係しているのだ。逆らおうものならIS産業に関わる事は不可能になりかねない。

 そして月日は流れ、一夏たちのIS学園入学の為の試験当日がやって来たのだった。




とりあえず白式を擬人化させました。

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