暗部の一夏君   作:猫林13世

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正反対の性格ですしね……


ダリルと虚

 一夏と刀奈が生徒会室でイベントのルール見直しをしている中、生徒会を引退した虚は暇を持て余していた。進学するでもなく、企業に就職するでもなく、このままIS学園に残って教師として働くと決心してから、急にすることが無くなってしまったのだ。

 

「本音はこんな時間を過ごしていたのでしょうか……」

 

 

 妹である本音が何時も何もしないでだらだらしていた事を怒っていたが、こうして自分がこの状況に陥ってみると、まるで苦行ではないかと感じてしまったのだ。こんな苦行を本音は楽しそうにしていたのかと考えて、虚は慌ててその思考を追いやった。

 

「あの子はただだらけていただけです。こんな風に思ってたわけがありません」

 

「何を独りでぼやいているのかしら?」

 

「ダリル・ケイシー……何か用でしょうか?」

 

「別に。ただ貴女が急に老け込んだように思えてね。何かあったのかしら?」

 

「何もありませんよ。ただ、手持無沙汰なだけです」

 

「まぁ、この一年は更識君だけじゃなくて貴女も忙しかったから、急にすることが無くなって黄昏ちゃうのも仕方ないのかもしれないけどね」

 

 

 ダリルの言うように、この一年は物凄く内容の濃い一年だったと虚も思っている。まずは一夏の入学から始まり、セシリアへの粛正、シャルロットのスパイ疑惑にデュノア社の併合、アメリカの自作自演の被害者であるナターシャの保護、篠ノ之箒の亡国機業移籍、文化祭への襲撃など、上げて行けばきりがないくらいの出来事や事件があったのだ。

 

「後は卒業イベントをやったら本当に卒業だもんね。私は更識企業の指示でアメリカの軍再編成の手伝いだけど、貴女はこのまま学園に残るんでしょ?」

 

「一夏さんのお手伝いが出来るならという事で、IS学園に教師として残る事になっています」

 

「まぁ、貴女なら良い教師になれるでしょうしね」

 

「貴女に褒められても嬉しくありませんね」

 

「それはそうかもね」

 

 

 自分も虚に褒められても嬉しくないなと感じで、ダリルは苦笑いを浮かべて虚の言葉に同意した。

 

「ところで、貴女は学園に通っていなかった時期がありますが、よく卒業出来ましたね」

 

「更識君が便宜を図ってくれたのよ。補習と追試を受ける事で、出席日数不足を補ってくれたの。まぁ、織斑姉妹は反対してたらしいけど、更識君に逆らえるわけないしね」

 

「そうですか、一夏さんが……」

 

 

 よっぽどダリルを学園に残したくなかったのだろうなと、虚は一夏の思考の裏を読んで苦笑いを浮かべたのだった。

 

「スコールやオータムも私と同じくアメリカ軍再編成の手伝いらしいし、元亡国機業で学園に残るのはフォルテだけね」

 

「篠ノ之さんやマドカさん、マナカさんも元亡国機業扱いなのですが?」

 

「篠ノ之箒は兎も角、マドカちゃんやマナカちゃんは更識君の妹さんだからね。誰も元亡国機業だって思ってないんじゃない?」

 

「まぁ、すっかり打ち解けてますからね」

 

 

 一夏を中心としたグループ以外でも、マドカとマナカは受け入れられている。元々一つ年下、という事もあるが、今では完全にちょっとしたマスコット扱いになっているのだ。

 

「千冬さんや千夏さんと見た目が同じで、それでいて凶暴じゃないからと一夏さんは言っていましたが」

 

「分からなくはないけどね、その気持ち」

 

「あの二人は何時までも一夏さんの悩みの種ですからね……」

 

「この前のガラス修繕も、織斑姉妹が原因だったんでしょ?」

 

「ちょっとやり過ぎたと言っていましたが、ちょっとどころではありませんでしたけどね」

 

 

 校舎一階の窓ガラスすべてと、二階の窓ガラスを半分、これの何処がちょっとだと一夏は最強の双子にカミナリを落としたのだ。その噂は瞬く間に更識所属と元亡国機業のメンバーに知れ渡り、これ以上織斑姉妹の株が暴落しないようにそのメンバーの心の中に留める事にしたのだった。これでもし黛薫子にでも知られていたら、あっという間に全校生徒に知れ渡っていたか、薫子がこの世から消え去っていたかのどちらかだろうと虚は思っていた。

 

「よく校舎が無事だったわよね……更識が作った強化ガラスだったんでしょ? それを粉々にする風圧なら、校舎が傾いてもおかしくなかったんじゃない?」

 

「奇跡的に校舎は無事だったと、一夏さんが呟いていたのを聞いたので、もしかしたら本当に傾いていたかもしれませんね」

 

「やっぱり人間じゃないわね、あの二人は……」

 

「まぁ、一夏さん曰く『人外変態三人衆』らしいですからね」

 

「織斑姉妹と篠ノ之束を捕まえてそんなことが言えるのは、世界中でも更識君一人でしょうね」

 

「そうでしょうね。というか、あの三人に首輪をつけられるのも一夏さんだけでしょうしね」

 

「首輪……IS界のレジェンドとか言われているのにね、あの三人」

 

 

 本気で面白がっているダリルに対して、虚は本気で呆れている様子だった。反応の違いはあるが、二人ともIS界のレジェンドは尊敬に値しないと思っているのだった。

 

「更識君一人で、あの三人の栄光を上塗りできるかしら?」

 

「一夏さんは表舞台には立ちたくないみたいですけどね」

 

「更識の広告塔なんだから、無理じゃないの?」

 

「本音じゃ弱いですからね」

 

 

 自分が広告塔を下りたことで、本音と一夏がその役目を継ぐのかと思うと、虚は少し一夏に申し訳ない気持ちになったのだった。




でも意外と仲良し……なのか?

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