暗部の一夏君   作:猫林13世

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どうやって終わらせればいいんだろう……


卒業イベント

 IS学園とアメリカとの戦争は、何処の国でも触れられることなく終結した。それだけIS学園の動きが迅速であり、アメリカの動きが稚拙だったと言えよう。

 

「何だかスッキリしねぇ終わり方だな」

 

「あら、あれだけの事で自由が手に入ったのよ? 少しは気が晴れるんじゃないかしら」

 

「自由と言われてもよ……結局監視は付いてるんだし、戦争前とあまり変わってねぇじゃねぇか」

 

「学園内を自由に歩けるようになったし、私たちに向けられる視線に恐怖が感じられなくなったのよ? 精神的に楽になったんじゃないかしら?」

 

「別に餓鬼にビビられようが関係ねぇからな」

 

 

 戦争が終わり、スコールとオータムも自由にIS学園内を歩く事が出来るようになった。前は時間に制限が付けられており、VTSなどの設備を使うにも深夜のみだったのだが、今は一夏が許可を出せばいつでも使えるようになったのだ。

 

「てかよ、監視されているオレらが、織斑姉妹の監視ってどうなんだ?」

 

「使えるものは何でも使う、それが一夏だからね」

 

「あの時に風圧で窓ガラスを大量に破壊した罰として、そのガラス片の片付けとついでに中庭の掃除ね……世界最強の双子が餓鬼一人に勝てないとは」

 

「まぁ、一夏だもの」

 

 

 世界最強の双子も形無しだと嘆くオータムに対して、スコールは一夏相手では仕方ないと慰める。自分たちも一夏には勝てないと分かっているが、どうしても一夏の実力を認めたくないのか、オータムはつまらなさそうに舌打ちをして視線を逸らす。

 

「てか、オレたちの処遇ってSHより下じゃね?」

 

「SHにも監視は付いてるわよ」

 

「何処に?」

 

「サイレント・ゼフィルス、それがSHの監視なのよ」

 

「あっ? ……あぁ、あの餓鬼はISの声が聞こえるんだっけか」

 

「だからサイレント・ゼフィルスを通じて闇鴉に報告が入るんだってさ。もしSHに怪しい動きがあれば、すぐにこの最強の双子が飛んでいくことになってるらしいわよ」

 

「こいつらが飛んで行ったら、また風圧でガラスが割れるんじゃね?」

 

「さぁ、それはどうかしらね。IS学園のガラスは更識が開発した超硬度なガラスらしいから、生身で出せる風圧程度で割れるかどうか」

 

「こいつらは普通の人間じゃねぇだろ」

 

「まぁ、彼女たちも貴女には言われたくないと思うわよ。何せレズだものね」

 

「かっ、関係ねぇだろうが! そもそもオレはレズじゃねぇ!」

 

「はいはい。あんまり叫ぶと、一夏に怒られるわよ」

 

「お前がそんなこと言うから叫んだんだろうが……」

 

 

 何処か疲れ切った表情で呟くオータムを、スコールは楽しそうに眺めていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悩み事も減り、一夏は学園側が勝手に決めていた卒業生強制参加の大会について、細々としたルール変更を行っていた。

 

「そもそも、全員参加なんて無理に決まってるじゃないのよ」

 

「まぁまぁ、恐らく虚さんを参加させたかったんだと思いますよ」

 

「だったら、虚ちゃんにまず参加の意思があるかを確認するべきじゃないの?」

 

「その辺りいい加減ですからね、この学園は……」

 

 

 この一年で、どれだけ学園の尻拭いをしてきたかと思うと、一夏は呆れるのを通り越して泣きたい気分になってきた。

 

「そもそも、卒業生の中にだって、まだ進路が決まっていない人もちらほらと見受けられるのに、何処にそんな余裕があると思ってたんですかね」

 

「進学はもう無理だと思うけど、一夏君が手を貸せばすぐに就職先なんて決まる、とでも思ってるんじゃないのかしら? 実際、戦争が起こったお陰で、アメリカの復興やら再整備やらに人手が必要になったんだし」

 

「それほど派手に壊しては無いんですがね……殆どアメリカ側の自爆ですし」

 

「まぁまぁ。アメリカの殆どの企業が更識の援助を求めてきたんだし、そこに卒業生を派遣して更識とのパイプ役になってもらうのも良いんじゃない?」

 

「卒業生たちにその気があるなら、ですがね」

 

 

 一夏としては強制するつもりは無いが、もし頼み込まれたらそのつもりだったと明かす。刀奈は一夏の悪い表情を見て、苦笑いを浮かべる。

 

「一夏君ならこの程度考え付いてたか」

 

「更識だって人手があるわけじゃないですしね。虚さんも結局代表は引退して教師になるみたいですし」

 

「つまり、この大会が虚ちゃんが更識代表として戦う最後、ってわけね」

 

「元々虚さんは大会とかに出るために代表になったわけじゃないですけどね」

 

「でも、虚ちゃんの後釜が本音で大丈夫なの? 護衛としてまともに機能してなかったんだし、ちょっと不安だわ」

 

「仕方ないじゃないですか。簪も美紀も国家代表になったんですし、残ってるのは本音だけですよ」

 

「静寐ちゃんとか香澄ちゃんにお願いするわけにはいかなかったの?」

 

「あの二人は更識の人間ではありませんよ。更識所属ではありますが」

 

 

 一夏の言葉に、刀奈は思わず納得してしまった。確かに優秀さで言えば二人の方が上だが、本音は更識の人間なのだ。更識の為に働かせるのは当然だと思えたのだ。

 

「とにかく今は、このイベントを終わらせることだけを考えましょう」

 

「そうね……てか、本音は何処に行ったの?」

 

「アイツなら簪と美紀の訓練の相手をしていますよ。マドカと一緒に」

 

 

 何時も通りの展開に、刀奈はため息を吐いて一夏と二人でイベントの改変に勤しむのだった。




箒がどうなるかで、終わり方が変わりそうです……

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